後日、正式な伝達のもと、宿毛湾泊地には、戦力増強のため、大本営から駆逐艦が配備された。
配備された駆逐艦は、
朝潮、敷波、潮、時津風、舞風、山風。
の6名だった。
執務室において、整列し、武中へ着任の挨拶をそれぞれ述べる。
「く、駆逐艦、あ、朝潮です。勝負ならいつでも受けて立つ覚悟です……」
朝潮型1番艦朝潮。
背中辺りまで伸ばした黒髪。
サスペンダー付きのプリーツスカートを身に纏う。
ひたむきな軍人気質を匂わせる雰囲気。
しかし、挨拶はぎこちなく、語尾に近付くにつれて声のトーンが下がる。
明らかに怯えてると、見るからに分かる。
(なぁ、瑞鶴。怯えてるだろこれ)
(大丈夫よ。気にしすぎ)
武中は目配せで、瑞鶴とやり取りする。
「アタシ…じゃなくて、私の名は敷波です。以後よろしくお願いします」
綾波型2番艦敷波。
茶髪で短めのポニーテール。
茶色のセーラー服。
個性を殺してまで、口調を変えての挨拶。
「と、特型駆逐艦…綾波型の潮です。もう下がってよろしいでしょうか…」
綾波型10番艦潮。
長い黒髪に色白の肌。
青色のセーラー服。
微妙に声が曇っており、後ずさっている。
恥ずかしさからなのか武中に怯えているのか。
言うまでもない、後者である。
(態度に出てるぞ!? 絶対怯えてるだろ?)
(大丈夫大丈夫。緊張してるだけよ)
再び武中は目配せでやり取りする。
「陽炎型駆逐艦10番艦。時津風……です」
陽炎型10番艦時津風。
黒髪のショートヘアーで、頭には小さな煙突型の帽子。
青と白のワンピース型セーラー服。
何とも可愛いらしく、笑顔が似合いそうだが、その表情は強ばっている。
「こんにちは……陽炎型駆逐艦、舞風です。暗い雰囲気は苦手です…はい…」
陽炎型18番艦舞風。
金髪のショートポニーテール。
白の半袖ワイシャツに黒のブレザーベストで白手袋を着装している。
自己紹介とは裏腹に、既に暗い雰囲気を漂わせている。
「あたし…白露型駆逐艦……その八番艦。山風…」
白露型8番艦山風。
緑色で長い癖のある髪を上でまとめている。
青と白の制服。
武中とは目を合わせようとせず、そっぽを向いている。
(瑞鶴……!)
(大丈夫、自己紹介で巻き返しましょ)
武中は、咳払いをして、自己紹介を始める。
「宿毛湾泊地所属、武中正義だ。ここは、皆仲良くがモットーなんでな。くれぐれも喧嘩するんじゃねぇぞ。分からない事があったら、何でも聞いてくれ」
武中は笑顔を浮かべると、駆逐艦達は悲痛な表情を浮かべる。
武中が浮かべた笑顔は、猟奇的な表情そのものだった。
武中は駆逐艦達の反応を見て、轟沈した。
※※※※※
午後8時、宿毛湾泊地食堂。
「ひゃははは! それはウケる!!」
明るい紫髪の跳ねた長髪。
白の和装を着た艦娘が爆笑する。
飛鷹型2番艦隼鷹。
武中とは、飲み仲間である。
「ちょっと隼鷹、言い過ぎよ…ね、提督」
黒髪のストレートロング。
白の和装を来た艦娘が、武中の肩に手を添える。
飛鷹型1番艦飛鷹。
「提督は、優しいんですけどね」
黒髪のロングヘアーで、白の弓道着を身に纏う艦娘は、日本酒を一口啜る。
祥鳳型1番艦祥鳳。
「貴方の笑顔で差し迫られたら、怖いけどね」
瑞鶴は、落ち込んでいる武中に追い討ちをかけるような一言を放つ。
当然、武中はより一層に落ち込む。
「俺…やって行けるか不安になって来たぜ…」
豪快かつ唯我独尊の武中から、その言葉を聞けるとは思っていなかった3人は流石に心配する。
「これは重症ね…」
瑞鶴は言い過ぎたと、口を噤む。
いつもなら、冗談で返してくれるからと言って軽率な発言をしてしまった。
「初対面だから、仕方ないですよ! あっ…」
飛鷹が励ますが、その言葉も武中にとっては禁句だ。
慌てて自分の口を塞ぐ。
「その内、慣れるって! 飲もう飲もう! いつもの面子呼んでさ!」
隼鷹はそう言って、他の飲み仲間である艦娘達に電話をかける。
「はぁぁぁ……」
武中は溜め息をしつつも、日本酒を水のように飲み干す。
次回は、宿毛湾泊地の飲み会!