イズハが着任して1ヶ月。
鎮守府の再建やそれぞれ、生活しやすい環境を整えた。
引き継ぎなどの雑務に追われるイズハは秘書艦を務める不知火とともにこなしていった。
不知火はもう、艦娘ではない。
検査の結果、艤装を起動させる妖精さんの能力が機能していなかった。
艤装のみを解体し、戦場に出られなくなったため、秘書艦を務めてもらっている。
「叢雲、留守は頼んだぞ」
イズハは軍帽を被ると、不知火が荷物を持つ。
「ええ。道中気を付けて」
「ああ」
イズハと不知火は軍用車両に乗り込み、大本営へと向かった。
宿で一泊して、大本営へと到着する。
流石、大本営と言うだけあって、軍備は整っていた。
イズハは受付嬢に尋ねる。
「佐世保鎮守府の者ですが........」
「お疲れ様です。話は伺っております。では身分証を提示して下さい」
イズハは身分証を持ち合わせていないのだ。
「司令。これでは?」
不知火が荷物から、士官である事を証明する手帳を取り出す。
「では、確認させていただきます」
受付嬢が手帳を開くと、イズハの写真と所属が記されていた。
この手帳には見覚えがないイズハは不思議だったが、とりあえず安心する。
「イズハ中尉ですね。総司令官は、5階の会議室でお持ちです」
「ああ。ありがとう」
イズハと不知火は会議室へ向かい、扉を開けると、以前の格好とは別の有本がいた。
整えられた白服で、勲章が並んでいる。
その横には大和型一番艦大和が静かに立っていた。
イズハは思わず、目をやる。
(資料で読んだが........あれが最強と謳われる大和か)
大日本帝国海軍最強の大和。
実力は言うまでもない。
「遠路遥々ご苦労」
有本がそう言うと、イズハと不知火は敬礼する。
「改めて、大本営所属、有本だ」
「佐世保鎮守府所属、イズハ中尉です」
「同じく、不知火です」
と、軽い挨拶を済ませる。
「先日の件は、苦労をかけたな」
「いえ。当然の事をしたまでです。あのような輩が他にもいるのですか?」
「うむ、残念ながらな。君もそう言う輩を見たら報告してくれ」
大日本帝国海軍が抱えている問題の一つ。
権力を無駄に行使する者が現れた。
深海棲艦との戦争中だというのに、軍内部の治安はよろしくない。
賄賂や偽造、問題は様々だ。
「ところで、佐世保鎮守府の軍備強化だったな」
有本は、事前に送られて来た資料を確認する。
佐世保鎮守府の戦力は、暁、雷、電、叢雲、天龍、龍驤、祥鳳だ。
鎮守府としては、戦力がかなり低い。
「はい。こちらで何とかしようとしましたが、資材が足りず........」
イズハは、色々な方法を試したが、効率が悪くなる一方だった。
せめてもの救いは、深海棲艦との戦況は硬直状態であるという事だ。
「それは、こちらで手配しよう。不知火がリストに入っていないのは何故かね?」
「申し訳ありません。不知火の艤装は機能しておらず、艤装のみを解体したからです」
「なるほど。君は利益よりも艦娘の意志を取ったという訳か」
「もし、命令であれば、不知火を解体します。不知火と決めた事です」
イズハが答えると、不知火は頷く。
「君のような人材は少ない。その心意気は感服する。手続きは儂が手配しよう」
「ありがとうございます」
イズハは安心する。
「これから、佐世保鎮守府は頼むぞ」
「はっ」
イズハと不知火は敬礼する。
「中庭に行くといい。彼がリハビリ中だからな」
イズハと不知火は中庭へと向かう。
中庭では、談笑を楽しむ者もいれば、休憩している者もいる。
すると、不知火は一人の青年に目を向ける。
「赤中司令........」
不知火が口にすると、赤中はこちらに気付いたようだ。
松葉杖を付きながら、こちらへ歩いて来る。
「久しぶりだな。不知火........と」
「イズハ中尉だ」
「ああ。君が」
3人は椅子がある場所へと移動する。
「元佐世保鎮守府の赤中中尉だ。迷惑をかけてすまない」
赤中は深々と頭を下げる。
「気にしないでくれ」
「不知火にも辛い思いをさせたな」
「いえ」
「それにしても、君はこうなる事を予想していたのか?」
イズハが尋ねる。
「まぁな。だが、艦娘達が轟沈させられているとは思わなかった........」
赤中は幽閉された後、轟沈の事情を知らなかった。
拷問は酷く、口も聞ける状態ではなかったからだ。
「そうだ。叢雲は元気か?他の皆も」
「ひとまずはな。当面は俺が指揮する。誰も沈ませるつもりはない」
「皆を........頼む........」
赤中は声を震わせながら、頭を下げる。
情けないという気持ちで溢れてしまった。
その気持ちは分からなくはない。
イズハと不知火は大本営を後にした。
「もっと話さなくて良かったのか?」
「不知火には、話せる事などありません」
不知火は唇を噛み締める。
「そうか........」
イズハは車を走らせる。
イズハ達は佐世保鎮守府に戻り3日後、不知火は今一度、検査を受ける。
不知火は検査用のカプセルの中へと入る。
工廠艦と呼ばれる艦娘がいないため、叢雲が運用しているのだという。
「叢雲。これが妖精さんという奴か」
小さい生物が、イズハの肩に乗っかっている。
この生物........、妖精さんは艤装に宿る生物らしい。
艦載機や砲撃が出来るのは、妖精さんのおかげだ。
「そうよ。あんまり、乱暴しないようにね」
叢雲が冗談混じりに話すと、妖精さんはイズハの眼帯が気になるようで、取ろうとしている。
イズハは妖精さんをつまみ、近くのテーブルの上に置いた。
「それで、どうなんだ。不知火は」
「残念だけど、艦娘というよりは、普通の女の子みたい」
身体能力はともかく、銃弾でも傷付く体になってしまっていた。
検査用カプセルから不知火が出る。
「やっぱり、不知火は........」
不知火は落胆し、拳を握り締める。
「そう落ち込むな。戦場に出るだけが戦いじゃない」
「しかし........!不知火にも戦わせてください!」
「命を粗末にするな。君が出来ることはたくさんある」
明けましておめでとうございます。
お暇がありましたらどうぞー!