それが出来たらどれほど楽なのか。
陽炎型駆逐艦二番艦不知火。
今、執務室にいる。
提督はコーヒーを不知火の前に出した。
「いただきます」
コーヒーを一口飲み、その場に置く。
「それで?話ってなんだ?」
「失礼な事を言うようですが、不知火達の前に司令は自分の命を大事にして下さい」
そう........。
司令は、不知火達のことは気にかけるくせに、自分のことは棚に挙げている。
命を粗末にするなって言うくせに........。
「そうだな、気を付けるよ」
ため息混じりに頷く。
司令は時々、悲しそうな目をします。
司令自身、何か悲しい過去を背負っている。
そんな気がしてならない。
この人は、変わっている。
艦娘を道具として見ない。
一人の人間だと言ってくれた。
あの司令とは比べ物にならない。
なるわけがない。
だから........。
だから........。
だからこそ........この人には死んで欲しくない。
口に出せば、どれだけ楽なのだろうか。
でも、この人はきっと........。
自分の命を、躊躇わずに捨てるだろう。
だから、はっきりと言うべきなんだ。
でも言えない。
不知火はなんて臆病なんだ。
「ところで、俺が指揮する艦隊には慣れたか?」
「え?はい、おかげさまで」
「そうか、なら良かった。でも、文句があるならいつでも言ってくれよ?」
「分かりました、命を大切にして下さい。不知火が司令に対する文句です」
「分かったよ。もうあんな真似しないよ」
「約束ですよ」
「ああ。約束だ」
司令が笑みを浮かべる。
「ようやく笑ったな」
「え?」
不知火の表情が少し緩んでいた。
「どうやって笑わせようか、悩んでたけど不知火の笑顔を見れてよかったよ」
なんて、不器用な人なのだろう。
「不知火だって、笑ってれば可愛いんだからな」
か、可愛い........?
不知火は顔が赤くなるのを感じた。
「し、不知火に落ち度なんてありません!」
そっぽを向いてしまう。
どんな顔をしているのか、分からない。
頬が緩んでいることは確かだ。
恥ずかしくて、司令の顔を見れない。
「これからも、よろしく頼むぞ」
司令は、私の頭を撫でる。
不知火も甘えてもいいのかな........。
不知火は、ずっと司令に付いていく。
あの日、不知火達を救ってくれた時から、恋に落ちてしまったのかもしれない。
「はい........!」
必ず、護ってみせる。
不知火達の司令を........。
今度こそ何も失わせはしない........!
不知火の名にかけて........。
今度こそ失わせはしない。
不知火の思いはどこまでも。