咲 オーラスの向こう側 作:影法師
「…これは何ですか」
「和…」
「貴女の手、本来なら役牌三色一盃口も狙える配牌でした」
「…一盃口なんて、後付けですよ」
「つまり役牌三色は最初から出来ていた…そういう事ですよね?」
さて、どうしようか。
私は別にこれから此処に来るわけじゃないので、別に彼女達と仲悪くなるのは…ああいや、学生議会長とギクシャクするのは大変そうだけど…良いのだけど。
それでも初めて出会った縁は大事にしておきたい為、私はすでに対処法を考えていた。
「三色…ですか」
「そうです!どうして捨てたんです…」
「…すみません。最近やってなくて忘れてましてね。なんでしたっけ三色って」
「…え?」
私が考えた作戦、すっ呆ければ良いじゃない大作戦。
「お姉ちゃんが嶺上開花を良くする人でして、私にとって麻雀は槓して嶺上開花する位しか覚えてないんですよ」
「…じゃあさっきのあれは?私に見せてくれたあの役満は!?」
「…えっ?役満?」
そういえば確かにあんな役満があった気がする。
…咲がくれた役満リスト、国士無双と四槓子しか書いてないから覚えてなかった。
「…嘘は言ってないわね…まぁ、忘れてるならしょうがないわよね」
「そうだじぇ!」
「そうですだじぇ」
元気少女の真似をしつつも、私は勝ったと確信する。
「じゃあ、どうして点計算出来たのかしら?まさか役忘れて符計算覚えてる訳ないでしょうし?」
「あ…えっと…それはですね…」
「幾ら何でも、符計算は記憶と一緒だなんて言えないわよね?しかも、あんな点を捨てる様な真似をしてるなら猶更よ」
さて、どうしようか。
お姉ちゃんも±0で遊んでたと言えばそれで良いのだが、流石にお姉ちゃんの株を知らない間に下げる事はしたくない。
だからこそ…私はあいまいに微笑んだ。
「じゃあ東二局行きましょうか。今度はお遊び一切なしで…ね?」
その言葉と共にドラが表示された。
ドラは…{①}だ。
{一}{一}{一} {①}{①}{①} {1}{1}{1} {9}{9}{9} {九}
さてどうしようかと悩む。
このまま何も考えず四槓子しても良いのだが…流石にあれだろう。
そう考えながら…私は新しく第一打を打とうとしていると…
「…って、陰!?」
お姉ちゃんである咲が私の所に現れた。
「良い所に!私の代わりに打っておいて!」
「えっ!?」
「な、何言ってるんです!?」
「…お、お手洗い行きたいの…駄目?」
「……分かったわよ。取り敢えず行ってらっしゃい」
そう言って私は急いで外に出つつ…次いでに荷物を取ろうとして…
「陰?私、ちょっとお姉ちゃんとしてお話したいなぁ…って」
そういわれて苦笑しながら放置し、私は全力で家に帰ろうと思った。
どうせ荷物って言っても鞄はアピールの為に持ってるからどうでも良い。
後咲が持って帰ってきてくれる筈だ。
多分…きっと…
☆{一}☆{①}☆{1}☆{9}☆
取り敢えず時間を潰す為に教室でだらけていると、私の教室には知らない女性が居た。
…本当に誰だろう。
「えっと…宮永陰さん?」
「はい?」
「ちょっとお話聞きたいんですけど…良いですかね?」
「…まぁ良いですけど…?」
私がそういうと、目の前の女性は早く早くと机の裏に隠れていた男の人を呼んでいた。
「…貴女が宮永照さんに紹介された宮永陰さんで良いんですね?」
「えっ?」
あの人何したんだ。
私はそう思いつつも、取り敢えず笑みを浮かべる。
「実は私達、Weekly麻雀TODAYって所の…知ってる?」
「えっと……すみません」
「ああいえ、大丈夫です!宮永照さんも同じような反応をしてましたし!」
「そ…そうなんですね」
知ってたよ。
だってあの人毎日麻雀してたもん、私が飽きてもお姉ちゃんが泣くまで絶対終わらなかったもんね。
「…それでは、早速。子供の頃天和で何度も上がっていたと聞きましたが、流石に冗談ですよね?」
「当たり前ですよ」
「そ、そうですよね…流石に天和で上がり続けるなんて、出来る訳が…」
「天和は一ゲームに一回しか出来ないんですから“何度も”上がったなんて言えませんよ」
「え?」
「?」
思わず漏れていた驚きの声に、私が逆に驚いて首を傾げた。
はて、私は不思議な事を言ったのだろうか?
「つ、次の質問です。確か宮永家は三姉妹と聞きましたが、一番強かったのは誰ですか?」
「…一番強いですか。そうですね…」
私は取り敢えず強いという定義を考える。
私達の卓で強いと言えるのは…自分で決めた意思を貫き通す実力だろう。
…連続和了をする照。
…±0と嶺上開花で遊ぶ咲。
…なるべく長く遊びたい私。
数合わせのお父さんと監督役のお母さん。
「…照お姉ちゃんですかね。一番強いのは」
「…成程、やはり姉の威厳は守っていたんですね」
「えぇ。良くラスになって泣いていました」
「そうなんですか…皆子供らしい一面があるんですね」
「そうですね」
嬉しそうに話してくる彼女を見つつ、私も同じように微笑んだ。
泣いてたのはお姉ちゃんだし姉の威厳はホコリも無いけど別に良い。
だってきっと、この雑誌を読んだ照が難しい顔をしてくれるのだろうから。
「…最後に、お姉さんに向けて一言あります?妹を代表して…ってことで」
「……そうですね。
じゃあまずはお菓子を食べすぎない事ですかね?…最近お母さんが私に愚痴を入れてきましたから。
次に道に迷わない事、教室に行くまでに慣れたとか言いながら帰って来たのが深夜だったと聞きました。気を付けてください。
最後に…今度東京に行く時がありましたら、私と一緒に“案内役”を付けて出掛けましょう。咲は騙せていましたがアイスを買いに行く時に道に迷って花畑行きましたよね?嶺上開花の話なんてしてないで家に帰るまでの道探してください」
以上ですと言って私は息を吐くと、彼女が私に対して本当にこれを書くのか聞いてきた。
…確かに言い過ぎたかもしれないけど、表に出す様なものはこれくらいで良いだろう
どうせ、手紙は月に一回出しているのだから。
「…じゃ、じゃあお疲れ様でした。私達はこれで…」
「えぇ。私も帰り…」
そう言いながら私は後ろ側の扉から出ようとすると…其処には…
「へぇ…帰るんだ。私、待っててっていったのに帰っちゃうんだ?へぇ…しかもお姉ちゃんにメッセージして私には何もないんだ」
魔王が居た。