【銀河青果店】
「お、嬢ちゃん久しぶりだな、今日は良いにんじん入ってるぞ」
「大将、お久しぶりです。なるほどにんじんですか…」
ああ皆さんこんにちは
今日はここ、銀河青果店で夕食の買い出し中のスタッフ(休日モード)です
「安くしとくよ、今ならジャガイモも特典だ」
「相変わらず商売がお上手ですね、買いです」
「毎度あり〜!」
いい買い物が出来ました
今日はカレーですね……
いやシチューも捨てがたい
「そいや嬢ちゃん、今どこで働いてんだ?」
「む?」
夕食の事を考えながらよだれを垂らしているところを珍しく店主に話しかけられる
唐突にどうしたんでしょう?
「嬢ちゃんの事だ、どうせまた転職くり返してあっちこっち行ってんだろうなと思ってよ、ガハハ!」
豪快に笑い飛ばされる、ぐぬぬ…よくも私のトップシークレット情報を…
お察しの通り実は私は上京したての頃からどれも長続きせずに職を転々としていました、時には積み重ねた職歴が原因でどこの会社も落ち、毎日日銭を稼ぐ生活を送っていた事もあります
店主とはその頃からの馴染みでたまにダメになった野菜などを分けてもらったりと大変お世話になっていました、今時情にアツい素敵な方なのですがたまにこういう事をストレートに言ってしまうところは直して欲しいものです…
「大将…その癖相変わらずですね…まあいいです。それよりなぜ突然そんな事を?」
「おっといけねえ、嬢ちゃん相手だとつい娘と話してるみたいで口が滑っちまう」
「娘って大将…大将には…」
「呼んだか?」
言いかけたところで店の奥から歩いてくる少女がひとり
汎用うさぎのスカジャンにいつの時代だよと言ってみたくなるようなとても長い丈のスカート
極め付けにまるで狂犬のような目付きとド金髪
「ん?おー久しぶりだな」
「久しぶりですね、ますきち」
彼女は佐藤ますき 白雪学園というお嬢様学校に通い、ここ銀河青果店の一人娘である
見てくれは誤解されがちだが父親に似てとても情にアツい優しい子だ
「おう、ますき、店、手伝ってくれんのか?」
「ごめん、今日はこっち」
そういって彼女が指差す先にはとあるライブハウスが建っている
【Galaxy】
「ああそうそう、それについて話そうとしてたんだった」
「ここについて…ですか?というか大将のライブハウスじゃないですか…」
そう、ここ銀河青果店にはもうひとつの顔がある、それがここGalaxyというライブハウスだ
「そうそう、嬢ちゃんこれみてみな」
渡されたのは1枚の求人票
その内容は要するにここGalaxyのスタッフ募集という事だった
「ほう…これはなかなか魅力的な…」
「だろ?嬢ちゃん確かバンド好きだろ?ちょうど新しいやつ欲しくてな、そしたら嬢ちゃんの事思い出して持ってきた」
「いや持ってきたって…」
しばらく顔も見せてないのによく持ってきたな…
まあその気持ちは素直にとても嬉しいですのですが
「で、どうよ?」
しかし私の答えは
「ご好意、本当にありがたい限りです、ですが…残念ながら大将、その求人、出るのがひと足遅かったようですね」
「というと?」
「おかげさまで新しい就職先が決まりまして、ようやく落ち着いたところです」
「そうだったのか!?やったな嬢ちゃん!」
本当に良い人だなこの人は…
「ちなみにどこだ?」
「CiRCLEって知ってますか?」
「CiRCLE?なんだそれ、ますき知ってるか?」
店主が横で聞いていたますきちに話しかける
「ライブハウスだよ、けっこう最近じゃ有名らしい、あたしは行ったことないけど」
「まあすぐ隣にあるし移動する必要もないというか…まあとにかく、そこのスタッフとして働いてます」
「へえ、まさかのそこのスタッフ…あんたが…面白そうじゃん…」
「っ!」
そう言って背を向け歩き出すますきちから一瞬殺気のような挑戦的な気迫を感じたのだが気のせいだろうか
「あ、そうだ」
と、入り口に入ろうとしたところをますきちは振り返り
「久しぶりに来たならついでにあたしの演奏、みてくか?ていうか見ろ」
「え」
その後は答える間も無く私はますきちにそのままGalaxyの中へ引きずられてとてつもない演奏を聴いて帰った
✳︎
その日の夜、あたしに一通の連絡がきた
「へぇ…ガールズバンドチャレンジ…か…」
みせてやるよ、あたしたちの音を…