【仮名】必ず僕達がお前を治す。   作:紅の覇者

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16話『最終選別後』

 僕が藤襲山に入って、炭治郎と合流してから6日が経過した。

 

 つまり、僕達は最終選別に無事に生き残ることができ、試験を突破したということになる。

 

 この6日間は、正直いって楽だった。

 

 理由としては、夜になっても鬼は俺たちの目の前には現れなかったからだ。だから、俺が戦闘したのは炭治郎と合流する前に倒した雑魚鬼3体と異能の鬼体の計4体となる。炭治郎は計8体倒したらしいが。

 

 炭治郎は昨日あたりから、根性で最低限歩けるぐらいまでには回復していた。しかし、まだ戦闘できるぐらいまでには回復していなかったので、こいつが刀を持って戦闘に行くと言った時は全力で止めたものだ。

 

 そして、現在。僕達は最終選別のスタート時点まで戻ってきた。戻ってくると、数名の生存者と見送ってくれたあの少し不気味な子供2人が並んで立っていた。

 

 「お帰りなさいませ」

 

 「おめでとうございます。ご無事で何よりです」

 

 ご無事で何よりって………。本当にそう思ってんのかよ、この子達は………。

 

 生存者は僕達合わせて5人………か。以外といるのな。

 

 明らかに育ちが悪そうなイカつい少年に、さっきから僕の傍でブツブツと永遠と呟いている金髪の少年。それにーーー

 

 「あ」

 

 何を考えているのか、分からない表情を浮かべたまま蝶と戯れている1人の少女………栗花落だ。やっぱり、生き残っていたか。

 

 「炭治郎、知り合いがいたから少しだけここから離れるぞ。」

 

 「あ、あぁ。分かった」

 

 炭治郎に声を掛けたあと、僕は栗花落に向かって歩き出す。あいつ、蝶と戯れてて未だに気づいていないな。

 

 「栗花落〜」

 

 「ーーーッッ」

 

 僕が彼女に手を振りながら声をかけると、栗花落はようやく僕の方に顔を向ける。表情は変えなかったものの、少しだけ動揺しているように見えた。

 

 「いやぁ、栗花落も最終選別を突破してて良かったよ。ごめんな、7日前はいなくて。心配しただろ。」

 

 僕の言葉に、栗花落はコクリと浅くだが頷いてくれた。そして、彼女は何も言わないものの詳細を早く言え、と目線で訴えてくるので7日前にあった出来事を手短に説明した。

 

 アオイ先輩が結核によって倒れたという事を聞いた瞬間、栗花落は僕の両肩をガバッと掴みあげる。

 

 「アオイは………無事なの?」

 

 珍しく、彼女はコインを使わずに険しい表情を浮かべながら口を開く。それほど、アオイ先輩の様態が気になるのだろう。流石は、好きな食べ物がアオイ先輩が作った料理全般と言うだけはある。元々、2人は仲良いしな。

 

 僕は震える栗花落の手を優しく除けながら、言葉を出した。

 

 「大丈夫。一応、治療したから。今は胡蝶さんが先輩を診てくれている。」

 

 「…………そう」

 

 アオイ先輩が無事だと知った栗花落は安心したそうに呟く。

 

 よし。栗花落に謝ったし、言いたかった要件も伝えられたからもう大丈夫かな。

 

 炭治郎の元へと戻ろうとした瞬間ーーー

 

 「……………え?」

 

 なぜか、栗花落に腕を掴まれてしまった。

 

 「な、何だよ………?」

 

 

 「あ、ありがとう…………」

 

 

 「ーーーッッ」

 

 あの栗花落が……………僕にお礼を言っただと!?嘘だろ?コインを投げて普段は物事を決めるあの栗花落が!?(←凄く失礼)

 

 しかも、彼女自身も少しだけ緊張、もしくは恥ずかしさだからなのか頬を赤く染めている。やめろよ、そういうの。ちょっとだけ可愛くてドキッとしちゃっただろ。

 

 言いたいことが終わったのか、栗花落は僕の腕を離す。………もう、炭治郎の方に行って大丈夫だということだよな?

 

 「またな」と栗花落に言い残して、僕は炭治郎の方へと早足で戻る。

 

 「まずは隊服を支給させていただきます。身体の寸法を測り、その後は階級を刻ませていただきます。」

 

 炭治郎の元へと戻ると、白髪の女の子が僕達に向かって言葉を出していた。

 

 「階級は十段階ございます。癸・壬・辛・庚・己・戊・丁・丙・乙・甲。今、現在皆様の階級は1番下の癸でございます。」

 

 ほぅ………。十段階も階級があるのか。1番上は"柱"っていうのは分かっていたけどな。

 

 「刀は?」

 

 「本日中に玉鋼を選んで頂き、刀が出来上がるまで10日から15日となります。」

 

 刀ってことは………日輪刀のことだよな?そっか。今使ってるのは胡蝶さんからの借り物だっていうことをすっかりと忘れていたわ。

 

 「更に今から鎹鴉をつけさせていただきます。」

 

 白髪の女の子がそう言って、パン!と手を叩くとーーー

 

 「わわっ!?」

 

 空中から6匹の鎹鴉(その内、1匹だけ何故か雀)が旋回しながら現れる。まさか………鎹鴉も貰えるのかよ。

 

 各1匹ずつ、鎹鴉は主となる人物の肩に止まるのだが…………

 

 「え?」

 

 僕の肩に乗った鎹鴉は、他の子達と違って真っ白で綺麗な鎹鴉であった。これは………稀に産まれてくるアルビノっていうやつか?

 

 「ヨロシクオネガイシマス、主人。」

 

 真っ白な鎹鴉は僕の耳元でそう囁き、ペコりと頭を下げた。礼儀正しい良い子じゃないか。

 

 名前が無いということなので、この子にはコユキと名前を付けてあげた。真っ白だし、ピッタリだろ?

 

 「鎹鴉は主に連絡用の鴉でございます。」

 

 『連絡用』と聞いて、炭治郎は首を傾げる。もしかして、こいつ。鎹鴉が喋るということを知らないのか。

 

 

 「どうでもいいんだよ、鴉なんて!!」バシッ

 

 

 「ーーーーーッッ!?」

 

 突然、イカつい少年は肩に止まっていた鴉を強引に払い除けながら大声を上げ、白髪の女の子に殴り掛かり最後に髪の毛を引っ張りながら言葉を出す。何してんだよ、こいつ!?

 

 「刀だよ、刀!!今すぐに刀をよこせ!!鬼殺隊の刀!!"色変わりの刀"!!」

 

 こいつ………さっきのこの子の話を聞いていなかったのか??刀は10日から15日かかるって言っていただろ!?頭狂ってんのか?

 

 それにしても、未だに髪の毛を掴まれているあの女の子が可哀想だ。助けなければ。

 

 そう思っていたのは、どうやら僕だけじゃなかったらしく、炭治郎もイカつい少年の腕を掴んだ。やっぱり、お前も見逃さねぇよな。

 

 「この子から手を離せ!!離さないのなら折る!!」

 

 「そうだぞ!!離さないと折………、いや、ちょっと待て、炭治郎。」

 

 折る?折るって何?この子、めっちゃ物騒なことを言い出したんですけど。

 

 「あぁ!?なんだ、テメェらは。やってみろよ」

 

 「ちょ、おま!?」

 

 馬鹿野郎!!炭治郎にそんなこと言ってしまったら…………

 

 

 ーーーボキッ!!

 

 

 「がはぁ!!」

 

 本気で折るぜ、馬鹿正直なこいつは。うわ、マジで折れてるじゃん。めっちゃ痛そぉ…………。

 

 診てあげたいところではあるが、まずは女の子を優先にしなくては。痛いだろうが、我慢しろよ。

 

 「大丈夫か?」

 

 僕は懐から袋と櫛を取り出しながら、白髪の女の子の様態を確認する。頬に痣が出来てしまい、殴られた際に切ってしまったのか口からも血を流していた。こんな幼い子に怪我させるなんて………許されねぇな。

 

 「……………」

 

 女の子はジッ、と僕の方を見るだけで何も言葉を出さない。栗花落2号かよ。

 

 袋からは薬草を滲ませてある布を取り出して、女の子の頬に貼り付け、綺麗な布で口から出ている血を拭き取る。その後、櫛で乱れてしまった髪の毛を梳いてあげる。

 

 どうして櫛を持っているのか、というと炭治郎の母親である枝衣さんに教えて貰ったことがあり、よく幼かった禰豆子ちゃんや花子ちゃんの髪を梳いていた。

 

 その技術は衰えることなく、蝶屋敷でもなほちゃん、きよちゃん、すみちゃんの3人組にもお願いされて髪を梳いてあげているので常に櫛を持つようにしたのだ。

 

 「よし。これで、大丈夫だろ。」

 

 髪を梳いたあと、僕は白髪の女の子の頭を数回撫でてから立ち上がった。これで、多少は楽になっただろ。

 

 「お話は済みましたか?」

 

 黒髪の男の子が言葉を出す。てか、お前。この子の兄か弟だろ。家族が怪我したのに何もしないのか?どういう育て方されてきたんだよ。

 

 「刀を造る鋼を選んでくださいませ」

 

 いつの間にか石の塊が用意されていた。これが、さっき言ってた玉鋼っていうやつか。

 

 でも、どれを選べばいいんだろうか。他の子達もそのような表情を浮かべている。

 

 「鬼を滅殺し、己の身を守る刀の鋼はご自身で選ぶのです。」

 

 僕達の表情を見て、心情を察したのか男の子は補足としてそう告げる。

 

 誰もが納得しそうな言葉ではあるが、言い方を変えれば自己責任だということにも聞こえるのは僕だけだろうか?

 

 まぁ、いいや。適当に目の前にあるやつを…………違うな。隣の方にしておこう。

 

 炭治郎も選び終えたみたいかので、一緒に女の子から隊服を貰う。結構………重いな。

 

 「よし………、早く鱗滝さんのところに戻らないと………」

 

 炭治郎はそう言って、藤襲山から降りようとする。おいおい、ちょっと待て。お前、その怪我で狭霧山まで戻ろうとしてるのか?無理あるだろ!!

 

 ったく……しょうがねぇな。

 

 「よいしょっと………」

 

 「鈴蘭………??」

 

 炭治郎の腕を自分の肩へと寄せると、炭治郎は不思議そうにこちらの方に顔を向ける。

 

 「そんな怪我で狭霧山まで歩かせる訳ねぇだろ。鱗滝さんの家まで肩ぐらい貸すわ。親友だろ」

 

 「鈴蘭…………」

 

 あと、久しぶりに鱗滝さんや禰豆子ちゃんの様子も見たいしな。

 

 あ、そうだ。

 

 「栗花落。少しだけ知り合いを前の"育手"の所まで送って来る。終わり次第、蝶屋敷に帰るから胡蝶さん達にそう伝えといてくれ」

 

 僕の言葉に栗花落は頷いた。よし、これで大丈夫だろ。

 

 「さぁ、帰るぞ。狭霧山に」

 

 「おう。」

 

 こうして、僕達は並んでちょっとずつだが鱗滝さんと禰豆子ちゃんがいる狭霧山へと向かった。

 




次回もよろしくお願いします。

キメツ学園編読みたいか、どうか。

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