【仮名】必ず僕達がお前を治す。   作:紅の覇者

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タイトルだけで、ある程度は察してしまいますよね笑


17話『錆兎と真菰』

 「やっと着いた……」

 

 日が暮れる前に、なんとか鱗滝さんの家のすぐ目の前まで辿り着くことが出来た。分かっていたことだけど、遠かった。

 

 「禰豆子………」

 

 炭治郎は禰豆子ちゃんの名前を弱々しく呼ぶ。最終選別の時にこいつから聞いた話によると、未だに禰豆子ちゃんは目覚めることなく眠り続けているという。

 

 兄の立場としては唯一生き残った妹のことで心配になるのは当然だよな。僕も平常心を装っているつもりだが、正直言ってキツイ。

 

 「はいはい。もうすぐそこだからーーー」

 

 

 ーーーバタン!!!

 

 

 僕が声をかけると、突然に鱗滝さんの家の扉が吹っ飛んだ。

 

 そして、家の中から1人の少女がててて、と歩きながら姿を現す。

 

 その子は、今までずっと眠り続けていた禰豆子ちゃんであった。

 

 「「あーーーーーーーー!!!!」」

 

 禰豆子ちゃんを視界に捉えた僕達は、揃えて大声を上げる。

 

 「禰豆子!!お前、起きたのかぁ!!」

 

 炭治郎の言葉に、禰豆子ちゃんも僕達を目にしたあと、こちらの方へ走り出す。

 

 「禰豆子!!……あっ」

 

 「炭治郎!!」

 

 禰豆子ちゃんの方へ向かおうとした炭治郎であったが、選別の疲労と彼女が目を覚ましたという驚きによってあまり力が入れることが出来なかったのか、勢いよく転んだ。

 

 「禰豆ーーー」

 

 炭治郎は立ち上がり、禰豆子ちゃんの方へ再び向かおうとしたところで

 

 

 ーーーギュッ

 

 

 先に辿り着いた禰豆子ちゃんが炭治郎を優しく抱き締めた。

 

 それによって、炭治郎は徐々に瞳から涙を溜め「あ………あ」と声を漏らす。

 

 我慢しなくていいんだぞ、炭治郎。今まで溜めてきた気持ちを吐いてしまいな。

 

 

 「わーーー!!!お前、何で急に寝るんだよぉ!!ずっと起きないでさぁ!!死ぬかと思っただろうがぁー!!」

 

 

 我慢の限界を超えた炭治郎は瞳から大粒の涙を流して声を上げる。

 

 禰豆子ちゃんが眠り続けてきたこの2年間、炭治郎は恐怖心を抱きながら今日まで過ごしてきた。大事な家族を殺され、唯一残った禰豆子ちゃんは鬼になり、御堂の鬼との戦闘以降、何故か起きることなく眠りについてしまった。

 

 心配しただろう。怖かっただろう。キツかっただろう。辛かっただろう。

 

 もしかしたら禰豆子ちゃんこのまま……….、と最悪な未来を予想してしまうのも何度かあったに違いない。

 

 そんな炭治郎にとって地獄のような日々は今日を以て終わりを告げた。

 

 良かったな、炭治郎。

 

 「…………あれ?」

 

 いつの間にか、僕も涙を流して頬を濡らしていた。気付かなかっただけ、もしくはそのことについて目を逸らしていたからなのか、どうやら僕も炭治郎と同じ気持ちだったらしい。

 

 

 ーーーバタバタ

 

 

 「………あ」

 

 横から、何かが落ちる音が聞こえた。振り向くと、そこには鱗滝さんが立っていた。禰豆子ちゃんと同じく1年ぶりの再会だ。

 

 ーーーガシッ

 

 炭治郎を目にした鱗滝さんも早足で抱きしめ合っている2人の傍に駆け付け覆うように抱きしめる。

 

 「よく……生きて戻って来た」

 

 僕が狭霧山から出ていくと同じように、天狗のお面の隙間から涙を流しながら言葉を出した。

 

 

 そして、2人は落ち着くまで泣き続けた。

 

 

 ♠♠♠♠♠

 

 「久しぶりじゃな、鈴蘭。」

 

 「1年ぶり……ですね。」

 

 炭治郎と鱗滝さんは落ち着いたあと、僕達は鱗滝さんの家へと招き入る。

 

 僕は炭治郎をここに連れて来るというのと、鱗滝さんと禰豆子ちゃんの姿を見れたので蝶屋敷へと帰ると言ったが、鱗滝さんはもう日が暮れているから今晩は泊まってけ、ということなので甘えることにした。

 

 その際、泊まりの件を書いた紙を僕の相棒である白色の鎹鴉、コハクの足に縛り付けて蝶屋敷へと送ってもらった。

 

 「それにしても、以前と比べて見違えたな。相当、努力したと見える」

 

 「あ、ありがとうございます。」

 

 流石は、元"水柱"といったところか。僕の姿を見ただけで、この1年間、何があったのかをある程度理解するなんてな。

 

 「むー」

 

 鱗滝さんの家に入ってからは、ずっと僕の膝にちょこんと座っていた禰豆子ちゃんは僕の頭を優しく撫でる。慰めてくれているのかな?

 

 「あはは、ありがとう。禰豆子ちゃん」

 

 笑みを零しながら、今度は僕が禰豆子ちゃんの頭を撫でてあげる。すると、とても嬉しそうな表情を浮かべてくれた。

 

 因みに、炭治郎は夕飯を食べ、鱗滝さんと会話をした後にすぐに眠りについていた。よっぽど、疲れていたのだろう。

 

 その後、僕達も大事な内容を含めた会話を弾ませたあと寝床につこうとした。したのだが………

 

 「暑い………」

 

 禰豆子ちゃんが僕に抱き着きながら、スピスピと寝ているため少しだけ息苦しく感じる。しかも、可愛らしい顔がすぐ目の前にあり、女の子特有のいい匂いもするため、余計に寝ずらかった。

 

 「夜風に当たるか………」

 

 抱き締める禰豆子ちゃんから何とか解放できた僕は3人を起こさないように家を出る。

 

 ビュー、と吹く夜風はとても気持ちが良かった。

 

 「散歩にでも行くか」

 

 もう少し、夜風に当たりたかったため、僕は狭霧山へと足を踏み入れる。あぁ、この空気が薄い雰囲気とか久々だ。

 

 「ん?」

 

 途中、僕は気になるものを見つけ、そちらの方に足を進めると

 

 「おぉ………」

 

 そこには、僕に比べると遥かに大きい岩があった。しかも、その岩はただの岩では無く、何者かによって斬られたような跡があった。

 

 「あぁ、これか。炭治郎が言ってたやつは」

 

 炭治郎曰く、僕が狭霧山に離れたあと、鱗滝さんから最終選別に行く条件として、この岩を斬れと言われていたらしい。

 

 それを炭治郎は1年かけて斬ったのか。凄いな。そもそも、刀って岩を斬るもんだっけ?……相変わらず、鱗滝さんは鬼畜な人だな。

 

 炭治郎が斬った岩を眺めているとーーー

 

 「ん?」

 

 背後から、何かが僕に向かってくる気配を感じる。振り向くと、僕のすぐ目の前には木刀らしきものがあった。

 

 「おっと………」

 

 僕はそれを軽々しく躱す。そして、反射的に蹴りを入れようとしたが、僕を狙った何かは後ろの方に跳んで距離を取った。

 

 「お前………やるな。」

 

 その何かは、僕に向かってボソッと言葉を呟く。声的に炭治郎や鱗滝さんではない。

 

 そして、月の光によって照らされたことにより、その何かは姿を現した。

 

 見覚えのある狐のお面を被った宍色の髪型が特徴的な人間だった。恐らく、先程の声からして男だと思われる。

 

 「人に急に木刀を振るってはいけないって、母ちゃんに習わなかったのか?」

 

 「俺と戦え」

 

 「いや、人の話を聞けよ。」

 

 なんなの、この子。少し怖いんだけど。

 

 「男として生まれたのなら、俺と戦え。逃げるな。戦え」

 

 「えぇ………」

 

 やばいよ。全然、話が通じない。

 

 「ごめんね。1度熱くなっちゃうと最後までこうだから相手してあげて」

 

 謎の戦闘狂に困っていると、また別の方向から声が聞こえる。今度は女の子の声だ。

 

 振り向くと、そこには1人の女の子が座っていた。別の狐のお面を頭に付けた可愛らしい女の子だ。

 

 「君は………君達は何者なんだ?」

 

 「私は真菰。あっちにいるのは錆兎だよ。」

 

 真菰?錆兎?どっかで聞いたことがある名前だな。…………………………あっ!!

 

 「鱗滝さんの………弟子か。」

 

 確か、1年半ぐらい前に珍しく酒を飲んで酔っていた鱗滝さんが前の弟子の名を呼んでいたことがあった。12人ぐらいの名前を呼んでいたが、そのうちに真菰と錆兎の名前もあった覚えがある。

 

 つまり、簡単に言えば錆兎と真菰は僕と炭治郎にとって兄弟子、姉弟子でもある。

 

 でもおかしい。なぜ、2人が俺の目の前に?

 

 

 2人は……………既に亡くなっているはずだ。

 

 

 「例え死んでも俺たちは鱗滝さんの傍にいる。それだけは変わらない」

 

 「うんうん!錆兎の言う通り!私達は鱗滝さんが大好きだからね〜」

 

 なるほどな…………。鱗滝さんに対する想いが強くなって、魂がここで落ち着いているのか。しかも、この2人だけじゃない。残り11人の魂もこの狭霧山から感じる。

 

 「それに、お前のことは炭治郎からよく聞いている。」

 

 「ーーーッッ!?炭治郎のことを知ってるのか!?」

 

 「うん!!お医者さんを目指しているとても頼りになる男だっていつも言ってたよ。」

 

 まさか………、炭治郎のことも知ってるなんてな。

 

 「話はこれぐらいにしよう。さぁ、成矢 鈴蘭。俺と戦え!!」

 

 錆兎は木刀を構える。ったく……、しょうがねぇな。

 

 「俺の分の木刀は?まさか、ないってことは無いよな」

 

 「これ、使って」

 

 真菰は僕に目掛けて木刀を投げる。僕は「ありがとう」と言いながら落とさずにそれを掴み上げて錆兎と同じように構える。

 

 「はぁ!」

 

 先に仕掛けてきたのは錆兎だ。お面を被った状態でも分かるほどに勢い良く息を吸い上げる。

 

 

 「水の呼吸 弐の型 "水車"!!」

 

 

 身体を勢いよく回転させながら僕に迫り来る錆兎。やはり、水の呼吸法を使うか。

 

 

 けど、悪いな錆兎。この勝負はーーーー

 

 

 一瞬で終わる。一瞬で終わらせる。

 

 

 僕はスゥゥゥと、落ち着きながら息を吸い、狙いを定めるようにして木刀を上へとあげ、

 

 

 「"全集中" 水の呼吸 捌の型 "滝壺"」

 

 

 錆兎の"水車"が僕に当たる寸前で、木刀を振り下ろした。

 

 

 ーーードォォォォォォォォォォォン!!!

 

 

 「かはっ!!」

 

 僕の"滝壺"で、彼が繰り出した"水車"ごと錆兎を叩き潰した。

 

 まともに喰らった錆兎はそのまま倒れ込む。

 

 「はい、僕の勝ち。」

 

 その光景を見た真菰は目を丸くして言葉を失っていた。まさか、こんなに呆気なく終わってしまうとは思っていなかったのだろう。

 

 「凄い………。まさか、こんなにあっさりと錆兎に勝つなんて」

 

 錆兎に勝てた理由。それはごく簡単なもので、"全集中"常中をしているか、してないによるものだ。

 

 残念ながら、錆兎は"全集中"常中を身につけていない。むしろ、その存在自体知らないだろう。なにせ、認知する前に死んでしまったのだから。

 

 "全集中"の呼吸を常にすることによって、身体能力は漠然と上がる。

 

 だから、僕は勝てた。もし、錆兎も"全集中"常中を身につけていたら、恐らく負けていたと思う。

 

 「悔しいが………俺の負けだ。」

 

 錆兎は立ち上がり、僕に言葉をかける。表情は分からないが、とても清々しい雰囲気を漂わせる。

 

 「ありがとう」

 

 そして、彼はスッと手を差し出した。なので、僕も手を差し出して彼と握手する。

 

 「こちらこそ。」

 

 「炭治郎のことを頼む。あと………義勇のことも。」

 

 「冨岡さん?」

 

 なぜ、冨岡さんの名を?あの人のことも知っているのか?一体、どういう関係なんだ?

 

 「分かった。」

 

 理由は分からないが、兄弟子の頼みだ。引き受けるに決まっている。

 

 「鈴蘭〜」

 

 「真菰?」

 

 「これ、あげる〜。」

 

 真菰は花飾りを僕に差し出す。凄く繊細に作り込まれている立派な出来であった。

 

 「いいのか?」

 

 「うん!!しっかりと炭治郎のことを守ってあげてね。」

 

 「あぁ、任せろ。」

 

 俺の言葉に、真菰は可愛らしく微笑んだ。

 

 「………わわっ!?」

 

 その後、ビュー!!!と唐突に突風か生じたため、目を閉じる。

 

 そして、ゆっくりと目を開けると………錆兎と真菰の姿が無かった。

 

 もしかしたら、今のは夢だったのかもしれない。と思っていたが

 

 明らかに錆兎と交戦したあとがくっきりと残っているし、真菰から貰った花飾りもしっかりと手にしていた。夢でない。

 

 「ありがとうな、2人とも」

 

 僕はその場でペコッと頭を下げたあと、鱗滝さんの家へと戻り眠りについた。

 

 ♠♠♠♠♠

 

 「では、お世話になりました。」

 

 朝日が昇り、朝食を頂いたあと、僕は荷物をもって鱗滝さんの家の前に立っていた。

 

 「もう行くのか?もう少しゆっくりしていけばいいのに」

 

 「僕もそうしたいけど、やっぱり蝶屋敷の人達にも報告しないと。」

 

 栗花落やコユキによって、僕が最終選別は突破していると蝶屋敷のみんなは知っていると思うけど、やっぱり自分の口で言わないとな。

 

 「そうなのか。」

 

 残根そうな表情を浮かべる炭治郎。ごめんな。

 

 「その内、合同任務で一緒になる時が来るだろう。その時にまた会えばいい」

 

 慰めるように、鱗滝さんは言葉を出してくれた。基本的に、鬼殺隊に入った新人は同期と共に任務することが多いらしい。 つまり、炭治郎とまた会う機会が今後あるということだ。

 

 「まぁ、もし任務が一緒になったら、その時はよろしくな」

 

 「あぁ、もちろんだ!!」

 

 「それじゃ…………僕は行きます。」

 

 「気をつけるんじゃぞ。偶には帰ってきなさい」

 

 「はい!!」

 

 「またな、鈴蘭!!」

 

 「おう!!禰豆子ちゃんのこと、ちゃんと守れよ〜」

 

 「任せろ!!」

 

 因みに、禰豆子はまだ眠っている。もし、起きていた場合、帰してくれない気がしたため、ちょうど良かったかもしれない。寂しいけどね。

 

 

 こうして、僕は2人と分かれ、蝶屋敷へと戻るのであった。

 

 




次回は蝶屋敷のメンバーとのやり取りです。お楽しみに!!

あと、新しくアンケートを作ったので投票よろしくです!!

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