「ほえー、ここが浅草かー。」
コユキに浅草に迎えとつつきながら言われた僕は2日かけてようやく浅草に辿り着いた。いやぁ、遠かった遠かった。
それにしても、浅草っていうか都会ってこんな感じなんだな。夜なのに周りは街灯や店の電気で明るいし、人がめちゃくちゃ多い。それに、なにより建物が全て高いんだけど。何あれ。田舎者にとっては衝撃的な光景だった。炭治郎とか、人の多さでめまい起こしてそうだな。
さぁて、浅草に鬼が潜んでるっていう噂を早速調査しますか。今回は噂だから鬼がいるかどうかは分からないんだよな。まぁ、いない方がいいんだけど。
「うぅ………痛いよぉ………。」
「ん?」
調査を開始しようとしたら、大勢の隅に1人の三つ編みが特徴的な女の子が何か痛そうな表情をして涙を浮かばしていた。よく見てみると膝から血を流している。転んでしまったのだろうか。
医者を目指す者として、見逃せるはずがない。僕はすぐさま女の子の方へと駆け寄って声をかける。
「君、大丈夫?」
「…………お兄ちゃんは誰?」ビクッ
優しく声をかけたつもりだったが、女の子は怯え始める。まぁ、急に声をかけたら不安になるよな。なんて答えよう…………。そうだ。
「僕はお医者さんだよ。ほら、お医者さんがいつも着てる服だろ?」
「ッッ!!本当だ!お医者さんの服だぁ!」
僕は医者だと偽り、白衣らしき真っ白な羽織を女の子に見せつける。すると、案の定、女の子は僕が医者だと信じた。なんか、この子の純粋な心を利用してる気がして申し訳ない気持ちになる。ごめんね。
「怪我してるみたいだけど、転んじゃったの?」
「うん………。お母さんとお父さんからはぐれちゃって探してる時にころんじゃったの」
予想通り、怪我の原因は転倒によるものか。しかも、この子の周りに誰も居ないなと思ったら迷子か。見つけれてよかったな。
「そっか。痛かったね」
「うん。」
「よし、お兄ちゃんに任せてて」
僕はそう言って、腰に掛けている小さな袋を取り出して中から綺麗な布と塗り薬を手にする。
まず、綺麗な布で女の子の膝から出ている血を拭き取る。その後、「少しだけ染みるから我慢してね」と声を掛けてから塗り薬を塗った。
「うっ………」
やっぱり染みたのか、塗り薬を塗った瞬間、女の子は痛そうに声を上げる。だけど、それは一瞬のこと。すぐに痛みが引くはずだ。
更に別の布を取り出してテキパキと女の子の膝に巻いていく。………っし、こんなもんだろう。布も花柄のやつにしたから見栄えも悪くない。完璧だ。
「どう?痛くない?」
「うん!全く痛くなくなった!お医者さんのお兄ちゃん、ありがとう!!」
女の子は可愛らしい笑顔でお礼を言ってくれた。それを聞いて心が温かくなる。
「どういたしまして!それじゃあ、ママとパパを探しに行こっか。」
「うん!!」
怪我を応急処置して、はいバイバイっていう訳にはいかない。この子に関わったからには、最後まで面倒を見てあげるのが責任ってもんだろう。少なくともバチは当たらないはずだ。
「よし、じゃあお兄ちゃんの肩に乗りな」
「いいの!?」
「あぁ!!」
「わーい!」
僕は15歳にして身長は170と何気に身長は高い方だ。そこからさらにこの子を肩車にすれば、見晴らしも良く、両親を探しやすくなると思う。
女の子を肩車してから立ち上がり、大勢の中へと入り歩き始める。昔はよく、竈炭家のチビ達を、今となればきよちゃん達に肩車してあげてるから慣れたもんだ。さて、この子の両親を探しに行きますかね。
それに、我が子がいなくなれば、きっと、両親もこの子を探しているはずだ。だから、そんなに遠くには行っていないと思う。
「どう?ママとパパいた?」
「うぅん、いなーい」
女の子は首を横に振る。いないかぁ………。まぁ、こんだけ人が多かったらな。探すのも困難か。
「もう少しだけ奥行ってみよっか」
「うん…………」
声をかけても、女の子は不安そうにする。そりゃあ、僕がいたとしても両親がいなかったら寂しいし、怖いよなぁ。
「あ………」
この子の両親を探しに歩いていると、街の中央にりんご飴を販売している店が視界に入った。りんご飴…………、確かりんごを砂糖水でコーティングしているお菓子だっけな。胡蝶さんが柱の友人と食べに行ってとても美味しかったと嬉しそうに言葉を出していたのが記憶に新しい。
よーし………。
「おいちゃん、りんご飴2つください。その1番大きいやつ2つね」
「あいよ〜。」
お金を払って、店員からりんご飴2つを貰う。そのうち1つを僕の頭の上でグッタリしている女の子に渡す。
「はい。」
「ッッ、わぁ………!!りんご飴だぁ!!お兄ちゃん、ありがとう!!」
「どういたしまして。」
ふふ、やっぱり子供なのか、りんご飴を見せたら、さっきの不安そうな表情が嘘みたいに一気に元気になった。受け取ったりんご飴を美味しそうに頬張り始める。美味しそうに食べるじゃん。
気になった僕も女の子が落ちないように片方の手で足を固定しながらもう片方の手で持っているりんご飴を口に近づけ、1口だけ齧る。
「美味っ!!」
あまりの美味しさに叫んでしまった。何これ、めちゃくちゃ美味しいんですけど!?元々は田舎出身でこういう甘味系な食べ物は滅多に口にしてなかったからな。より一層、美味しく感じてしまう。
女の子と仲良くりんご飴を食べながら色々と話しながら歩いているとーーー
「瑠璃!!!」
人混みの中から、この子の名前を呼ぶ女性が涙を浮かばせて飛び出してきた。もしかして、この人が…………
「あ、お母さん!!」
女の子は飛び出してきた女性を目にした瞬間、安心したかのような笑顔を浮かべる。やっぱり、この子の母親だったか。
僕は女の子………瑠璃ちゃんを降ろしてあげると、彼女は真っ先に母親の所に飛びつき
「お母さぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」
母親の胸元で泣き始めた。それを見て、「全くこの子は………」と言いながらギュッ!!と抱きしめる瑠璃ちゃんの母親。見つかって良かった。
「麗さん……瑠璃は見つかったのかい?」
人混みの中から、瑠璃ちゃんの母親に続けて1人の白い帽子を被り、あまり表情が見えない男性が姿を現した。この人が、瑠璃ちゃんの父親か。
「えぇ、月彦さん。」
「ッッ、それは良かった………。」
「お父さん!!」
「瑠璃………、どこにいたんですか。お父さん、心配してたんですよ。」
母親の元を離れ、今度は父親に飛びつく瑠璃ちゃん。それを優しく受け止めて母親と同じく抱きしめ始める。
「おや……、そのりんご飴はどうしたんだい?それに……膝に巻いてあるこの布も。」
父親は瑠璃ちゃんが手にしているりんご飴と膝に巻いてある布を目にして気になったのか、言葉を出す。すると、瑠璃ちゃんは俺に向かって指をさしながら
「あのね、私がお母さんとお父さんを探してる時に転んじゃったの。その時に、このお医者さんのお兄ちゃんが助けてくれたんだ。りんご飴もお兄ちゃんから………」
「そうですか………。」
瑠璃ちゃんの言葉を聞いて、父親は彼女を抱っこする形で持ち上げたあと僕の方に近づき、
「この度はどうも、うちの娘を助けてくれてありがとうございました。」
「いえいえ、自分も…………」
僕は改めて瑠璃ちゃんの父親の顔を見ながら言葉を出そうとした瞬間、
"こいつが鬼舞辻無惨だ!!!"
「ーーーーーーーーーーッッッ!!??」
勘が突然、僕にそう告げた。
その瞬間、言葉を出すことが出来なくなってしまった。それと同時に全身から嫌な汗と鳥肌が立ち始める。
これは『気がする』とかではない。確信だ。
よくよく思い出しみれば、この胸騒ぎ………、葵枝さん達が襲われた時に感じたのと全く似ている。
瑠璃ちゃんの父親が………鬼舞辻無惨だと??まさか、人間のふりをして今まで暮らしてきたのか!!??それだったら、何百年と続く鬼殺隊が一向に鬼舞辻無惨を見つけることが出来なかったのも納得がいく。
「………どうかされたんですか?」
鬼舞辻無惨は心配している瑠璃ちゃんの父親を装って、俺に言葉を出してきた。そのさり気ない一言一言で心臓を締め付けられるように感じる。
こいつが…………こいつが炭治郎の家族を殺し、禰豆子ちゃんを鬼にした張本人!!僕は内心、かなりの怒りを募らせる。当たり前だ。こいつのせいで炭治郎は………いや、鬼殺隊に入っている者全ての人生を大きく狂ってしまったのだから。
しかし……、だからといって悔しいことに何も出来ないっていうのが現実だ。現に、僕はこの人が鬼舞辻無惨と知ってからは微かに身体が震えている。それに、震えを断ち切って、無惨に立ち向かったとしても、周りの人がこいつのせいで被害に遭ってしまう可能性もある。ここは無理に動かない方がいいだろう。
不幸中の幸いなのが、無惨は今のところ僕が鬼殺隊の隊員だと気付いていないことだろう。瑠璃ちゃんの言葉通り、医者だと勘違いしているはずだ。
だから…………、せめて何か少しでも、こいつの情報をここで手に入れることにしよう。
動揺するな…………って言われても、それは無理な話。だから、せめて不自然に見えないように意識する。
「お兄ちゃん?どうしたの?」
「あぁ、すみません。実は僕、山育ちでして。こういう都会のような人混みの多いところには余り慣れてなくて、偶にめまいを起こしてしまうんです。」
まぁ、嘘ですけどね。炭治郎だったらありえそうだけれども。僕は大丈夫だ。
「そうなんですか。それはお気の毒に。」
「あはは、よく言われます。」
「あの………、実はですね、私たち今から食事をしにある店に向かう所だったんです。なので、お礼と言ったらなんですが………ご一緒にいかがですか?ね、月彦さん。」
「そうですね。瑠璃がこうして無事に見つけることが出来たのも貴方のおかげですし………。是非、お礼させてください。」
「あ、いえ!自分、そんなつもりでは……」
グゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
「あ………」
「あはは、どうやら身体は正直みたいですね。今から行く店、牛鍋が有名でとっても美味しいんです。良かったら一緒に行きませんか?娘もどうやらあなたと一緒がいいみたいだ。」
「うん!お兄ちゃん、一緒に牛鍋食べに行こ?」
「…………そうですか。では、お言葉に甘えて」
まさかの鬼の頭に食事を誘われることになるとは。絶対に胡蝶さんや栗花落、アオイ先輩に話しても信じて貰えないだろうなぁ。
僕は瑠璃ちゃんと会話しながら、鬼舞辻無惨が瑠璃ちゃんの母親と楽しそうに会話しているのを眺める。こうして見ると、マジで普通の人間にしか見えない。まさか、奥さんも瑠璃ちゃんも目の前にいる人が鬼で大量の人間を殺めてるなんて思ってもみないだろう。
「ん?どうかしましたか?」
視線で察しられたのか、無惨は僕に話しかける。動揺しそうになった僕は誤魔化すかのように
「あぁ、特に何もありませんよ。ただ、月彦さん少し顔色が悪いように見えたのでお疲れなのかな………と。」
「顔色が…………悪い??」
ゾッッッッッッッッッ!!!???
「ーーーーーーーーーーッッ!?」
無惨のこの一言で一気に空気が変わった。まるで押しつぶされそうな、圧倒的威圧を無惨から感じる。なんだよ、これは!?
「そんなに私の顔色が悪いように見えますかね?」
ギリッと無惨の紅い瞳が僕を睨みつける。その瞳には、少しだけ怯えていると分かる僕の表情が映し出されていた。
落ち着け………、自然に対応するんだ。
「一応、医学の道に精進してる者として気になったもので………。癇に障るようなことでしたら謝ります。すみませんでした。」
平常心をなんとか装い、僕は頭を下げる。
「…………確かに、ここ最近は仕事続きで疲れているのかもしれません。私の方こそ、すみません。なんか問い詰めるような言い方をしてしまって。」
無惨はそう言って、僕に謝罪の言葉を出した。どうやら、僕の言葉を信じてくれたらしい。先程の威圧のようなものは全く感じられない。今のは、一体なんだったのだろうか。
念の為、さらに行動に出ることにしよう。
「あの、月彦さん。これ、良かったらどうぞ。」
「これは?」
僕は懐から小袋を2つ手にして無惨に差し出す。すると、無惨はそれを受け取り興味深そうにする。
「栄養薬です。疲労回復に特化してるので就寝前とかに服用してください。次の日、楽になってると思います。」
「そうなんですか?ありがとうございます」
無惨は真顔でそう言いながら、僕があげた薬を懐へとしまった。まぁ………、栄養薬っていうのは嘘なんですけどね。
そして、麗さん曰く、牛鍋のお店が近くなっているということを耳にした瞬間ーーー
「ん?」
何かがこちらに目掛けて走って来ている気がする。しかも、この感じ…………。まさか!?
すると、人混みの中から1人の男性が、まるでこの世の全てを恨んでいるかのような表情で現れて鬼舞辻無惨の肩を思いっきり掴む。
「ーーーーーーーーーーッッ!!!」
その掴んだ相手とは、俺の親友であり、この目の前にいる鬼舞辻無惨に家族を殺され、妹である禰豆子ちゃんを鬼にされた竈門炭治郎であった。
キメツ学園編読みたいか、どうか。
-
読みたい
-
読みたくない