【仮名】必ず僕達がお前を治す。   作:紅の覇者

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休学になったので、なんとか完成させました。
よろしくお願いします。


23話『あります』

 自ら鬼だと、そして、鬼でありながら鬼舞辻無惨を抹殺したいと明かした女性に詳しいことを聞こうとしたが、彼女から場所を変えたいと言われたため、うどん屋さんに置いてった禰豆子ちゃんを回収するべく一先ず別れた。

 

 てか、いくら鬼舞辻無惨の匂いがあったからって禰豆子ちゃんを置いてくなよ………。何かあったらどうしてたんだ。全く………。

 

 炭治郎の後をついていくと、うどん屋さんの屋台の前にいた禰豆子ちゃんが1人の禿げている男性に大声で何か言われていた。

 

 「俺はな!!俺が言いたいのはな!!金じゃねぇんだ!!お前が俺のうどんを食わねって心づもりなのが許せねぇのさ!!」

 

 禿げている男性……、恐らく、このうどん屋さんの店主だろう。

 

 僕はジト目で炭治郎を見ながら言葉を出す。

 

 「お前………、まさか注文してから来たのか?」

 

 「………あぁ。」

 

 「バカなの?」

 

 それだったら、あの店主が怒るのは無理はない。見た感じ、自分の腕に誇りを持っている人だと思われる。そんな人が、一生懸命作ったというのに、その場には知能が低下して、まともに人と話せない女の子1人となれば、怒って当然だ。まぁ、状況が状況が仕方が無いとはいえ、せめて一言、店主さんに何か言うべきだっただろう。

 

 「まずその竹を外せ!!何だ、その竹!!箸を持て、箸を!!」

 

 そう言って、店主が禰豆子ちゃんに無理矢理、箸を持たせようとしたので……

 

 「すみません、店主さん!!」

 

 僕は急いで、両手を広げながら2人の間に入りこみ、箸を持っている方の腕を掴む。

 

 「あぁ!?なんだ、お前は!!」

 

 「この子と、注文しておきながら、何も言わず、この場に離れたあのバカの友達です!!すみませんが、山かけうどん追加で2個、お願いします!!ちゃんと食べるので!!」

 

 「食べるんだな!?」

 

 「はい、食べます!!汁1滴残さず!!」

 

 「よし!!少しばかり待っとけ!!」

 

 「お願いしゃす!!!」

 

 屋台に戻っていく店主を頭を下げながら見届けた僕は、近くにある長椅子に腰を降ろした。なんか、変なテンションで話を進めたから、疲れたわ。

 

 「ほら、炭治郎も隣、座れよ」

 

 「あ、あぁ。ごめんな、鈴蘭。迷惑かけて」

 

 「迷惑かけるのはいつものことだろうが。まぁ、気にするなよ。うどん、ちゃちゃっと食べて行こうぜ。」

 

 「分かった。」

 

 そんな会話を炭治郎と交わしていると、目の前に美味そうな山かけうどんが2つ置かれる。

 

 「へい、お待ち!!山かけうどん2杯だ!!味わって食いな!!」

 

 「「いただきます!!!」」

 

 

 ーーーズルズルズル

 

 

 「なっ!?」

 

 勢いよく、食べ始める僕達の姿を見て、店主は驚きの声を上げる。それにしても、マジで美味しな、この山かけうどん。麺はしっかりとコシがあるし、汁も出汁がちゃんと効いてる。そして、上に乗っている山芋のトロロと生卵が絡みついて最高な味付けだ。

 

 美味しすぎて、あっという間に完食してしまった。我ながら良い食いっぷりだと思う。今度、きよちゃん達を連れて来ようかな。

 

 隣を見ると、炭治郎も食べ終えていたので、2人揃って腰をあげる。

 

 「ご馳走様でした。美味しかったです!!」

 

 店主さんにお金を渡しながらそう言うと、少しだけ照れながら大声で言葉を出した。

 

 「分かればいいんだよ、分かれば!!毎度ありがとうな!!」

 

 なんだ、普通にいい人じゃん。是非とも、またの機会に足を運ぶとしよう。

 

 「さて、どうする?あの2人がどこにいるのか分からないんだが。」

 

 「大丈夫だ。俺、2人の匂いを覚えているから、それを辿って行こう」

 

 「了解。頼むよ」

 

 こういう時に、炭治郎の鼻の良さは本当に助かる。炭を街に売りに行く時も、炭治郎の鼻を頼りに何かお願いする人も何人かいたっけな。あの日々が本当に懐かしく感じる。

 

 そして、炭治郎が匂いを頼りに歩こうとした所で

 

 ーーーグッ

 

 「禰豆子ちゃん??」

 

 手を繋いでいる禰豆子ちゃんが唐突に足を止める。そして、何かを睨みつけていた。その先に視線を移すと、そこには、鬼と名乗った女性のそばに居た男性が立っていた。この人も、禰豆子ちゃんと対抗するかのように僕達のことを、睨みつけている。

 

 「待っててくれたんですか?俺は匂いを辿れるのに………。」

 

 「目くらましの術をかけている場所にいるんだ。辿れるものか。それより………」

 

 男性は、禰豆子ちゃんに指をさしながら衝撃的な言葉を呟いた。

 

 

 「鬼じゃないか、その女は。しかも、醜女だ。」

 

 

 しこめ………しこめ?しこめって確か、漢字で書くと……酷い女でしこめだったよな………。え、誰が?この場にそんな奴いたっけ??

 

 

 え?もしかして、禰豆子ちゃんのこと言ってる!?

 

 

 「醜女のはずがないだろう!!よく見てみろ、この顔立ちを!!町でも評判の美人だったんだぞ、禰豆子は!!」

 

 醜女と言われたのが禰豆子ちゃんだと気づいた炭治郎は青筋を浮かべながら反論する。確かに、炭治郎の言う通り、町では評判だったな。歳の近い男どもが何人も禰豆子ちゃんに好意を抱いているのも知っている。

 

 んー、それより、こいつ。どうしようかな?流石に、大切な可愛い妹分を馬鹿にされては、こちらとしても黙ってはいられない。態度も何か気に入らないし。

 

 殺るか?今、この場で。そんで、死体を屋敷に持ち帰って、毒の媒体用として使い物にならなくなるまで、永遠に僕の実験道具として活用させて…………っと、いけない、いけない。医者を目指す者としてあるまじき思考をしていた。落ち着け、僕よ………。

 

 それでも、こいつの発言は許されないから、いつか仕返しをすることにしよう。マジで覚えておけよ?

 

 「行くぞ」

 

 「いや、行くけれども!!醜女は違うだろう、絶対!!もう少し明るいところで見てくれ!!ちょっとあっちの方で」

 

 炭治郎は何とか、醜女発言を撤回するように、奮闘するが、この男性は気にすることなく歩き始める。安心しろ、炭治郎。お前の仇は僕が討ってやるから。

 

 歩いていると、立派な豪邸へとたどり着いた。あれ?ここ、さっき通った覚えがあるけど、こんな豪邸なかったぞ?

 

 よく見ると、その豪邸には不気味な札が貼られていた。なるほど、あの札が目くらましとして役に立っているのか。これなら、一般人がこの豪邸を見つけるのはほぼ無理だろう。

 

 「戻りました」

 

 豪邸の中に入り、ある部屋に入ると、そこには先程の女性と、被害にあった奥さんが顔を青くしながらベットの上で横になっていた。

 

 「この口枷のせいかもしれない!!これを外した禰豆子をもう一度見てもらいたい!!」

 

 いや、まだ対抗していたのかよ。いい加減、黙れや!!

 

 「おかえりなさい。」

 

 「あっ、大丈夫でしたか?おまかせしてしまい、すみません。」

 

 女性と奥さんの姿を見た炭治郎は正気を取り戻して、申し訳なさそうに言葉を出す。

 

 「この方は大丈夫ですよ。ご主人は気の毒ですが、拘束して地下牢に。」

 

 女性は、奥さんのおでこに手を添える。被害にあった奥さんに命に別状がないことを知れて安堵の息を吐く。でも、心は肩の傷以上に酷い傷を負ってしまったことだろう。なにせ、彼女は大事な人に襲われてたのだから。それも、唐突に。

 

 「……人の怪我の手当をして辛くないですか??」

 

 は?お前、急に何を言って………

 

 

 ーーードン!!

 

 

 「ぐえっ!?」

 

 炭治郎は隣いた男性に暴力を振るわれる。これは炭治郎が悪いわな。だから、こちらから特に何か言う必要は無い。

 

 「鬼の俺たちが血肉の匂いにヨダレを垂らして耐えながら、人間の治療をしているとでも?」

 

 そう。僕達からすれば、基本、鬼というのは血肉を貪る生き物だと認識している。現に、過去に出会ってきた鬼もそうだった。御堂で会った鬼、選別や初任務で戦った鬼、どいつもこいつも。

 

 しかし、この人達は違う。これは、別に勘とかではない。実際に、人を助けている。それに、そこら辺にいる鬼ならば、そもそも鬼舞辻無惨を抹殺したいなんて思わないだろう。

 

 「よしなさい。なぜ、暴力を振るうの?」

 

 女性が軽く注意すると、男性はぐぬぬ……と手を引っこめる。なんか、お母さんに怒られている子供みたいだな

 

 「名乗っていませんでしたね。私は珠世、と申します。その子は愈史郎。仲良くしてやってくださいね」

 

 仲良く?ははは、それは無理な話だろう。愈史郎くん、凄い僕達のことを睨みつけてるから。

 

 「辛くはないですよ。普通の鬼より、かなり楽かと思います。私は、私の身体を随分、弄ってますから鬼舞辻の呪いも外しています。」

 

 「呪い?」

 

 呪いとは何だろうか?まだ、鬼には何かあるのか?

 

 「身体を弄ったというのは?」

 

 気になった単語について、僕は珠世さんに質問する形で聞く。

 

 「人を食らうことなくして暮らしていけるようにしました。人の血を少量飲むだけで事足りる」

 

 「血を?」

 

 「不快に思われるかもしれませんが。金銭に余裕のない方から輸血と称して血を買っています。勿論、彼らの体に支障が出ない量です。」

 

 なるほど。なんか、この人たちが鬼でありながら不思議な雰囲気を漂わせていたのはそれが理由か。

 

 医者となれば、普通にお金に余裕はあるはずだし、それを利用して血を買うとは中々上手いことして活動しているな。

 

 「愈史郎はもっと少量の血で足ります。この子は私が鬼にしました」

 

 「えっ!?あなたがですか!?でも、え!?」

 

 炭治郎が驚くのも無理はない。僕も内心、驚いている。人を鬼にすることが出来るのは、鬼の頭である鬼舞辻無惨だけのはずだ。

 

 「そうですね、鬼舞辻無惨以外は鬼を増やすことが出来ないとされている。それは概ね正しいです。」

 

 

 「200年以上かかって、鬼にできたのは愈史郎ただ1人ですから。」

 

 

 200年かかって、鬼にできたのは愈史郎くん1人だけ?やはり、鬼舞辻無惨以外が人を鬼にするのは難しいことだと分かる。

 

 

 「200年以上かかって、鬼にできたのは愈史郎ただ1人ですから!?珠世さんは何歳ですか!?」

 

 

 「馬鹿やろう!!女性に歳を聞くな!!」

 

 炭治郎の言葉で、またしても愈史郎くんが暴力を振りそうになったが、その前に僕が炭治郎の頬を思いっ切り叩く。周りが女性ばかりの環境にいた身として、その質問は絶対にしてはいけないものだと分かっているからだ。

 

 「すみません、うちの阿呆が。たまに、馬鹿正直に言葉を出す時があるんです。今後、そうならないように僕の方からしっかりと注意しておくので許したって下さい。」

 

 「だって、気になるじゃないか!!」

 

 「無礼者!!」

 

 「ぐえっ!?」

 

 僕の謝罪を崩すかのように、炭治郎は追い討ちの言葉を出す。もう、ダメだ。こいつ。それによって、結局は愈史郎くんに殴られてるし

 

 「愈史郎!次にその子を殴ったら許しませんよ!」

 

 「はい!」

 

 「いえ、珠世さん。悪いのは炭治郎なんで。」

 

 珠世さん、少し優しすぎない?悪いのは炭治郎ですよ?

 

 「1つ誤解しないで欲しいのですが、私は鬼を増やそうとはしていません。不治の病や怪我を負って余命幾許もない、そんな人にしか、その処置はしません。その時は必ず本人に、鬼になっても生きながらえたいか尋ねてから………します。」

 

 医者としての気持ちが故の行動……という訳か。しかも、それだけじゃない。最後の一言を言う時、表情にあまり出していなかったが、彼女はとても悲しそうにしていた。

 

 まるで………、自分の様にはならないように。という気持ちが込められているように感じる。

 

 それも、彼女が鬼舞辻無惨を抹殺したいという想いになったきっかけなのだろうか。

 

 これは、僕の勘に過ぎないので、聞こうとは思わないが。けど、僕の勘は当たるしなぁ……、多分、そうなのだろう。

 

 彼女が、放った言葉に嘘がないということが分かったのか、炭治郎は真剣な表情を浮かべて、言葉を出した。

 

 

 

 「珠世さん。鬼になってしまった人を……、人に戻す方法はありますか?」

 

 

 

 炭治郎の言葉に珠世さんは、ゆっくりと一言。

 

 

 

 

 「あります。」

 

 

 

 

 ーーーーーーーズキッ

 

 

 

 

 本当ならば、喜ばしいことなのに。

 

 

 鬼になってしまった禰豆子ちゃんを人に戻せるかもしれないというのに。

 

 

 珠世さんが発した一言で、僕は胸に強い痛みを感じた。




なぜ、鈴蘭は胸に痛みを感じたのか。その理由は次回で。

キメツ学園編読みたいか、どうか。

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