【仮名】必ず僕達がお前を治す。   作:紅の覇者

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24話『嫉妬』

 「ッッ!?教え下さーーー」

 

 「寄ろうとするな!!珠世様に!!」

 

 鬼から人間に戻す方法があると確信的に発言した珠世さんに対して、炭治郎は彼女に飛びつくような形で教えを乞うが、愈史郎くんに投げられた。

 

 「………愈史郎」

 

 手を出してはいけないと愈史郎くんに注意した珠世さんは少しだけ顔を怖くして愈史郎くんの名を呼ぶ。あ、こいつ終わったな。

 

 「投げたのです。珠世様、殴ってません」

 

 愈史郎くんはそう言って、目をキランとさせる。いや、ダメでしょ。

 

 「どちらもダメです」

 

 ほらね。普通に考えて分かるだろうが。

 

 「……どんな傷にも病にも必ず薬や治療法があるのです。ただ、今の時点では鬼を人に戻すことは出来ない。」

 

 「………………」

 

 

 "今の時点では鬼を人に戻すことは出来ない"

 

 

 珠世さんのこの言葉を聞いて、今度は胸が少しだけ軽くなったのを感じた。さっきまでは凄く痛かったはずなのに。

 

 いや、……………なぜ、胸が痛くなったり、軽くなったりした理由は本当は分かってる。分かってるんだ。

 

 自分がこの現実に対して受け入れていないだけ。それだけのこと。

 

 それは…………

 

 「ですが、私たちは必ず、その治療法を確立させたいと思っています。」

 

 

 

 この人達なら…………、僕の望みを。本来なら、僕が鬼殺隊になってまで、やり遂げたかった禰豆子ちゃんを鬼から人に戻すことを、この人たちがやり遂げてしまうかもしれない、と言う嫉妬のようなものだ。

 

 

 

 医者であり、鬼でもある珠世さんならば、当然、僕達よりも圧倒的な差で鬼について詳しいはず。なんなら、もう遥かに長い年月をかけて鬼について研究していることだろう。

 

 ならば、彼女は近いうちに鬼になってしまった者を人間に戻す方法を見つけるのは時間の問題かもしれない。

 

 

 しかし、もし、そうなったら………僕はどうなる??

 

 

 僕は………何のために鬼殺隊に入ったんだ??何のために鱗滝さんや胡蝶さんの元で地獄のような修行の日々を乗り越えてきたんだ??

 

 

 鬼になってしまった親友である竈門炭治郎の妹である禰豆子ちゃんを…………人に戻す方法を見つけるためだろう。

 

 

 そのために………僕は今まで頑張ってきたんだ。

 

 

 だからかもしれない。今は素直に喜べない自分がいる。複雑な気分だ。

 

 

 「治療薬を作るためには沢山の鬼の血を調べる必要がある。貴方達にお願いしたいことは2つ」

 

 そう言って、珠世さんは僕達に2つの願いを言ぅた。

 

 1つは禰豆子ちゃんの血を調べさせて欲しいということ。珠世さん曰く、禰豆子ちゃんは鬼の中で極めて稀で特殊な状態だという。2年間という長い年月の間、人の血肉や獣の肉を口にしないと間違いなく凶暴化するのにも関わらず、禰豆子ちゃんに特に異変がないということはやっぱり、彼女の中で何かがあるらしい。

 

 そして、もう1つはできる限り鬼舞辻無惨の血が濃い鬼から血液を採取して欲しいというものだった。奴の血が濃いければ濃いほど、鬼舞辻により近い強さを持つ鬼だということ。そんな鬼から血を採取するのは簡単なことでは無いが、治療薬を作る上では欠かせないものらしい。

 

 「それでも、貴方達は………この願いを聞いてくださいますか?」

 

 珠世さんは申し訳なさそうに僕達に言葉をかける。

 

 ここで、すぐに「分かりました」と言えればいいが、そう簡単に口を動かすことは出来なかった。僕の中で、まだ色々と追いついていない気持ちがあったからだ。

 

 だから、先に言葉を出したのは炭治郎からだった。

 

 「…………それ以外に道が無ければ俺はやります。珠世さんが沢山の鬼の血を調べて薬を作ってくれるなら。けど………」

 

 炭治郎は炭治郎らしい言葉を出したあと、僕の方をチラッと見る。多分…………、自慢の鼻で僕が抱えている内容について察したな。

 

 仕方がない。ここは正直に言うことにしよう。

 

 

 「僕は……………、はっきり言ってそう簡単に首を縦に振ることはできません。」

 

 

 「ーーーッッ」

 

 「………そうですか」

 

 僕の発言に、炭治郎は少し悲しそうな表情を浮かべ、珠世さんは真顔ながらも目を伏せて呟いた。

 

 「貴様!!珠世様の願いを受けないというのか!!」

 

 「ッッ、愈史郎!!やめなさい!!」

 

 愈史郎くんは青筋を浮かべながら、僕の胸ぐらを強引に掴みあげる。しかし、珠世さんも愈史郎くんに大きく声を上げたため、すぐに僕は解放された。

 

 「ごめんなさい。」

 

 「いえ、大丈夫です。」

 

 「あと………、理由を聞いてもいいですか?」

 

 珠世さんに謝れたあと、僕が首を縦に振れない理由を聞かれる。まぁ、気になるか。

 

 

 「僕が鬼殺隊になった理由………。それは禰豆子ちゃんを鬼から人に戻す方法を炭治郎と一緒に見つけるためなんです。」

 

 

 「……………そうなんですか?」

 

 珠世さんが炭治郎に目線を移すと、炭治郎は肯定するかのように頷いた。

 

 

 「はい。んで、僕は将来………医者になるという夢も持ってます。だから、尚更………もしかしたら炭治郎以上に"鬼"になる病気に患ってしまった禰豆子ちゃんを人に戻したいという気持ちがあるかもしれません。医者にすらなってない奴が何言ってんだ、って話になりますけど。」

 

 「……………………鈴蘭さん」

 

 

 「だから………、こうして珠世さん達の存在を知ってですね………、その………嫉妬みたいなのが出てきちゃった訳です。僕じゃなくて、珠世さん達が禰豆子ちゃんを人に戻すんじゃないかって。」

 

 

 「…………………鈴蘭」

 

 

 「そりゃあ分かってますよ。僕なんかより、貴女に任せた方が絶対に良いって。その方が、炭治郎の為にもなるって。それが分かってるからこそ………その………めちゃくちゃ悔しい。まるで、僕がこの場にいらないみたいに感じてしまう。」

 

 

 「ーーーッッ、そんなこと!!」

 

 ないって言ってくれるんだろ?炭治郎ならそう言うと思ってた。けど、違うんだよ。

 

 

 「鬼を倒して血を採るとかだったら、別に僕や炭治郎以外の隊員でもできるだろ。問題はその先だ。鬼から人に戻す方法を僕は見つけ出したいんだよ。禰豆子ちゃんを助けるために」

 

 

 

 「だから………すみません。僕は………貴女のお願いことを簡単には引き受けることができないです。」

 

 

 

 「そうですか」

 

 自分の気持ちをある程度さらけ出した僕は珠世さんに頭を下げながら言葉を締める。それを聞いて、珠世さんはーーー

 

 「なら、鈴蘭さん。私の方から1つ提案があります。」

 

 人差し指をピンと上の方にさして、そう言葉を出した。

 

 「提案?」

 

 一体、なんなのだろうか。少しモヤモヤとさせながらも興味津津で彼女の言う提案を聞こうとした。

 

 「はい。それはーーー」

 

 

 

 ーーーピシィィィィィン!!!!

 

 

 

 「ーーーーーーッッ!!!???」

 

 

 珠世さんが言葉を出そうとした瞬間、俺の勘が今すぐにこの場から伏せろと頭の中でガンガン告げた。

 

 

 ここに何かが…………凄い勢いで来ている!?

 

 

 「まずい!!伏せろ!!」

 

 

 僕同様に何かに察した愈史郎くんは僕達に声を上げる。それによって、彼は珠世さんを。僕と炭治郎は禰豆子を覆う形でその場から離れた。

 

 

 ーーーガガガガガガ!!!

 

 

 離れて瞬間、壁から何かが突入し、それは部屋中を駆け巡る。床や壁、家具は崩壊し、一気に周りがボロボロへと化した。

 

 なんとか、全ての攻撃を躱したあと、突入した何かは勢いをなくし、次第に動きが止まった。

 

 

 これは………………

 

 

 

 「毬??」

キメツ学園編読みたいか、どうか。

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