【仮名】必ず僕達がお前を治す。   作:紅の覇者

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とりあえず、本編1話は終了できました。
あと、作品タイトルにミスがあったので訂正しました。まぁ、一人称を間違えてたのでそれを変えただけです。


3話『僕達が治す。』

 刀を持った男は黒い制服らしき服に片方は無地。そして、もう片方は亀甲柄といった今時珍しい羽織を羽織っていた。

 

 「なぜ庇う??」

 

 男は冷たい目線を送りながら、呟く。

 

 どうして庇うのか??そんなの決まってるだろう。

 

 「妹だ!!俺の妹なんだ!!」

 

 「俺にとって大切な知り合いだからに決まってるだろう!!」

 

 俺達がそう言葉に出すと

 

 「ガァァァァァ!!!」

 

 「こら、禰豆子!!やめるんだ!!」

 

 禰豆子ちゃんはまたしても、その場から暴れ出す。

 

 その様子を見た男はまたしても一言だけ呟く。

 

 「それが妹か??」

 

 それが……だと??この人………まるで禰豆子ちゃんを人間じゃないような発言しやがった!!

 

 そして、その男は俺達に目掛けて走り出す。炭治郎は禰豆子ちゃんを覆い、僕はナイフを振り下ろして対応しようとしたが……

 

 「…………は??」

 

 僕と炭治郎の背後にいつの間にか移動していた男。そして、彼の手には咆哮をあげる禰豆子ちゃんがいた。

 

 瞬く間にこの男は僕達を通り過ぎて、彼女を抱えたというのか。本当に人間か、この男は!?

 

 「「禰豆子(ちゃん)!!」」

 

 僕達は男から禰豆子ちゃんを取り戻そうと動き始めるが、その場から動くなと男に言われてしまい足を止める。

 

 「俺の仕事は鬼を斬ることだ。勿論、お前の妹の首も刎ねる」

 

 平然と禰豆子を殺すと発言したその男。それに対し、炭治郎は慌てながら声を上げる。

 

 「待ってくれ!!禰豆子は誰も殺していない!!」

 

 炭治郎に続いて、僕も声を出す

 

 「そうだ!!その子は朝、家の前で倒れてて医者に診せようとしたら、こうなったんだ!!」

 

 「……………」

 

 男は僕達の言葉を聞いても、無言のままだ。

 

 「俺の家にはもう1つ、嗅いだことの無い誰かの匂いがした!!みんなを殺したのは多分そいつだ!!」

 

 「……………」

 

 「禰豆子は違うんだ!!どうして、今そうなったのかは分からかいけど。でもーーー」

 

 「簡単な話だ。傷口に鬼の血を浴びたから鬼になった」

 

 「「ーーーーーーーーッッ!?」」

 

 「人喰い鬼はそうやって増える」

 

 つまり、竈門家を襲った犯人は鬼で…………運悪くその鬼の血が禰豆子ちゃんの傷口に入ったことによって鬼になったということなのか!?

 

 「禰豆子は人を喰ったりしない!!」

 

 「良くもまぁ、今しがた己が喰われそうになっておいて」

 

 「違う!!俺のことはちゃんと分かっているはずだ!!」

 

 さっきの出来事があったからか、炭治郎は禰豆子を必死に庇おうと弁護する。

 

 「俺が誰も傷つけさせない。きっと禰豆子を人に戻す!!絶対に治します!!」

 

 炭治郎はそう言うが、男は更に僕達を絶望に陥れるかのように発言をする。

 

 「治らない。鬼になったら人間に戻ることは無い」

 

 「探す!!必ず方法を見つけるから殺さないでくれ!!」

 

 「家族を殺した奴も見つけ出すから!!俺が全部ちゃんとするから!!だから……」

 

 炭治郎が必死に弁護するも聞いていないように禰豆子ちゃんに刃先を突き出す男。

 

 「やめてくれぇぇ!!!」

 

 そして、ゆっくりと炭治郎は冷たい雪に両手と額を付ける。簡単に言えば土下座だ。

 

 これ以上、失いたくないのだろう。奪われたくないのだろう。

 

 そんな想いが込められているからか、涙を流しながら弱々しい声を炭治郎は出す。

 

 「辞めてください………。どうか、妹を殺さないでください。お願いします。」

 

 先程の勢いが嘘のように、弱々しい声で炭治郎は何度も何度も禰豆子ちゃんを殺さないで欲しい、と口に出した。

 

 お願いします、お願いしますと何度でも。

 

 こんな姿の炭治郎を僕は始めて見た。普段はあんなに強い男がこうして冷たい雪の地面に額を擦りつけて許しを乞うている。

 

 彼を見ていて、とても自分の胸が痛くなる。

 

 そんな炭治郎の姿を見て男は………

 

 

 「生殺与奪の件を他人に握らせるな!!」

 

 

 無表情だった顔が一気に険しくして、俺達に大声を出す。突然の事だったので炭治郎だけでなく、僕もビクリとしてしまった。

 

 なんなんだ、この気圧は!?

 

 「惨めったらしくうずくまるのはやめろ!!そんなことが通用するならお前の家族は殺されていない!!」

 

 「奪うか奪われるかの時に主導権を握れない弱者が!!妹を治す??仇を見つける??」

 

 「笑止千万!!」

 

 「弱者には何の権利も選択肢もない。悉く力で強者にねじ伏せられるのみ!!」

 

 「妹を治す方法は鬼なら知っているかもしれない!!だが、鬼共がお前の意思や願いを尊重してくれると思うなよ!!」

 

 「当然、俺もお前を尊重しない!!それが現実だ!!」

 

 「なぜ、さっきお前は妹に覆い被さった!!あんなことで守ったつもりか!?」

 

 「なぜ、そいつのように俺に目掛けてナイフを振るったようにその斧を振るわなかった??なぜ、俺に背中を見せた!!そのしくじりで妹を取られている!!」

 

 「お前ごと、妹を串刺しにして良かったんだぞ!!」

 

 

 男は大声で何度も何度も俺達に向かって厳しい言葉を投げかけた。それによって、炭治郎の精神はドン底まで突き落とされたように絶望に地した表情へと変わっていた。

 

 それほど、この人の言葉が炭治郎の心に突き刺さったのだろう。

 

 しかし、なんでだろう。本来なら、俺も男の怒涛な言葉によって絶望するか、それとも怒りに任せるはずなのだが。

 

 不思議と気持ちが落ち着いていた。

 

 この人は………きっと悪い人じゃない。これは、僕の勘だが。

 

 彼自身の意地悪で俺達に言葉を送っているようにはどうしても見えないのだ。

 

 まるで、自分自身にも言っているかのように感じる。

 

 まさか……………試しているのか??炭治郎のことを。

 

 本当に鬼になってしまった禰豆子ちゃんを助けたいという気持ちが。決心が。覚悟があるのかということを。

 

 きっと、炭治郎がやろうとしていることは脆弱な覚悟では成し遂げることは出来ない。

 

 だから、この男はそれを見極めようとしているんだ。

 

 そして、案の定。男は刀で禰豆子ちゃんをぶっ刺した。刺された箇所からは禰豆子ちゃんの血が飛び散る。

 

 それを見た炭治郎は手元にあった石を男に目掛けて放り投げる。男がそれを刀の柄で弾く。それを見計らって炭治郎は斧を手にして木々の間を駆け巡る。

 

 間髪入れず、炭治郎は続けて木々の間から小石を投げるが男は容易く躱す。

 

 そして、炭治郎は男に目掛けて立ち向かうが………

 

 「愚か!!!」

 

 男は持っていた刀の柄頭で炭治郎の背中に思いっ切り当て、逢えなく撃沈されてしまう。

 

 「感情に任せた単純な攻撃とは……」

 

 男はそう呟く。この人…………どうやらまだ気づいていないようだ。

 

 炭治郎の本当の攻撃に。

 

 「ーーーーーーーーッッ!!」

 

 だが、最後の最後でどうやら気づいてしまったらしい。炭治郎が手にしていた斧が無いということ。

 

 そして、その斧が現在進行形で、自分に目掛けて飛んできているということに。

 

 咄嗟に、男は首を左に傾けると、つい数秒まで顔があった場所に斧の刃が突き刺さる。もし、あと1秒でも気付くのに遅かったら男の顔面は大変なことになっていただろう。

 

 炭治郎は木の影に隠れる直前に男に石を投げ、隠れた直後に手にしていた斧を上へと放り投げていたんだ。

 

 丸腰であるのを悟られないように振り被った体勢で手元を隠していた。斧を手にしていないというのをバレないために。

 

 炭治郎は分かっていたのだ。この男に勝つことが出来ないということに。

 

 だからこそ、自分が倒された後にこの男を倒そうとした。

 

 凄く上手くできた戦術だ。

 

 親友がやられ、気絶してしまったのをのほほんと見学しているほど、僕の性格は腐ってはいない。

 

 すぐに炭治郎の傍まで駆け寄り、様子を伺う。うん….……、気絶しているだけだ。そのうち、目を覚ますだろう。

 

 「しまっーーーー」

 

 突如、男の焦ったような声が聞こえてきた。そちらの方に顔を向けると、なんと禰豆子ちゃんが僕達の方に目掛けて走って来ているではないか。

 

 だけど、焦る必要なんてない。なぜかって??

 

 さっき、炭治郎が散々と男に向かって何度も何度も言っていただろうが。

 

 

 禰豆子ちゃんは…………

 

 

 

 人を喰ったりしないって。

 

 

 

 禰豆子ちゃんはまるで俺達を守るような動作を見せ、男を威嚇していた。

 

 やっぱり………禰豆子ちゃんは鬼になっても分かっているんだ。

 

 兄である竈門 炭治郎という存在と、その親友である僕、成矢 鈴蘭のことが。

 

 きっと、すぐに、男に向かっていくだろう。そんな気がする。

 

 それはそれで、嬉しい気持ちだけど…………

 

 「ごめんね、禰豆子ちゃん。」

 

 

 ーーーバキッ!!!

 

 

 「ガハッ!!」

 

 僕は全力で禰豆子ちゃんの後頭部に目掛けて両手を重ねた打撃を入れた。打撃を与えた場所が良かったのか、禰豆子ちゃんはその場から気絶して倒れた。

 

 

 「…………なんのつもりだ。」

 

 

 僕の不審な行動を見て、男は言葉を出す。

 

 「どうせ、アンタだってこうするつもりだっただろ。それを早めただけだ。」

 

 「言ってる意味が分からないが。」

 

 「惚けても無駄だ。アンタがいくら隠そうとしても僕の前では無駄なことだ。」

 

 「…………その根拠は??」

 

 「根拠なんてない。僕のただの勘さ。」

 

 「ますます意味が分からない」

 

 「僕の勘はよく当たるんだよ。これはマジの話。」

 

 僕は誇るように、勘がいい事を自慢する。それを聞いて呆れたのか男は無言になった。

 

 まぁ、この人に聞きたいことは幾つかあるが、今は置いておこう。まずは禰豆子ちゃんの処置だ。

 

 僕は、普段いつも使っている竹で出来ている水筒を取り出して中身に入っている水を捨てる。

 

 その後、禰豆子ちゃんの口元に当ててサイズを確認し、ナイフで切り落としてサイズを調節していく。

 

 「何をしている」

 

 気になったのか、男は僕に声を掛ける。

 

 「口枷を作ってるんですよ。人は襲わないとしても念には念です。」

 

 「…………そうか。」

 

 男はボソッと呟くと、シュン!!とその場から消えた。

 

 …………は??

 

 どんな身体能力してるんだ、あの人。禰豆子ちゃんに向かって人間じゃないとか言ってたけど、アンタも大概だよ。

 

 変な気持ちになりながらも、良い感じにサイズを調節したら、それに紐を括って竹製の口枷を完成させる。

 

 それを気絶している禰豆子の口元に当て装着させる。年頃の女の子にこんなことするなんて罪悪感しか感じないが、仕方がないことだ。うん、仕方がない仕方がない。

 

 「おい」

 

 「わぁ!!ビックリした!!」

 

 背後から急に声が聞こえ、振り向くと男がいた。いつの間にか戻って来ていたようだ。そして、手には薄い紫色の少し大きめの着物を手にしていた。

 

 「これを、そいつに着せてやれ」

 

 「まさか、それを取りに??」

 

 「………………」

 

 何で、ここまで来て何も答えないんだよ。どうして、そこで無口になる。逆に怖いよ。

 

 男から着物を貰い、禰豆子に着せる。これで、少しは暖かくなるだろう。

 

 そして、僕は彼女を未だに気を失っている炭治郎の隣へと寝かせた。

 

 よし。これで竈門兄妹に関する処置は終わった。

 

 今度は……………

 

 「ーーーさて。お兄さん」

 

 「…………何だ??」

 

 男に声をかけると、このときを待っていたかのように反応を見せる。

 

 「お兄さんが知ってる鬼に関することを………ここで全部教えてよ。」

 

 「………いいだろう。」

 

 こうして、僕は目の前にいる男……冨岡 義勇さんから鬼に関する全ての情報を聞き出した。

 

 「なるほどな。その鬼を倒すための組織、鬼殺隊っていうのに入れば鬼を倒せるのか。」

 

 「だが、入隊するには藤襲山で行われる最終選別で生き残る必要がある。」

 

 「強くなければいけないってことだよな??」

 

 「………あぁ。だから、お前らには、ある人を紹介する。その人の元まで行け。そしたら、多分だが強くなれる」

 

 「ある人??」

 

 一体、誰のことだろう??

 

 「それは、そいつが目覚めてから言う。二度手間は時間の無駄だ。」

 

 「あぁ、そうですか。」

 

 「………1ついいか??」

 

 「……どうぞ??」

 

 「お前は…………あいつが妹を本当に人間に戻せれるも思うか??」

 

 冨岡さんの言葉に、僕は思わずに鼻で笑いそうになってしまった。

 

 炭治郎が禰豆子ちゃんを人間に戻せれるかって??そんなの決まってるだろう。

 

 「できる。僕『達』なら。絶対に。」

 

 この世に、治せない病気だってない。今は治せなくても研究を重ねたら、いつかはできる。今もそうやって治療薬は作られているし、今後も今は治せないと言われている病気を治すことができる薬がどんどん開発されていくはずだ。

 

 だから、鬼になってしまうという可哀想な病気を治す方法を絶対に見つける。炭治郎と一緒に。

 

 「………そうか。因みに、お前は医師を目指しているのか??」

 

 「そうだけど。」

 

 冨岡さんの質問に応えると、彼は顎に手を置いて何かを考えるような仕草を見せる。

 

 「………もし、ある人に出会い、1年以内に全集中を覚えたら、お前には蝶屋敷に向かうようにということも伝えておこう。」

 

 「……は?は?は?待て、言ってる意味が分からないのだが!?」

 

 全集中!?蝶屋敷!?ごめん、何言ってるか全然分からんわ!!

 

 「今はわからなくて良い。時期に分かる。」

 

 本当かよ。なんか、信用できないんですけど。

 

 そんなことを、思ってるとどうやら炭治郎は目を覚ましたらしく禰豆子ちゃんが着ている着物を掴んで涙を流していた。

 

 「おはよう、炭治郎」

 

 「鈴………蘭」

 

 「起きたか??」

 

 冨岡さんが炭治郎に声を掛けると、すぐに寝ている禰豆子ちゃんを抱える。まぁ、当然だよね。ついさっきまでは殺す発言されてたし、なんから刃で刺してたし。

 

 「狭霧山の麓に住んでいる鱗滝左近次という老人に尋ねろ。冨岡義勇に言われて来たと言え。」

 

 鱗滝左近次……、その人が冨岡さんが言っていた人物なのだろうか。

 

 「今は日が差していないから大丈夫のようだが、妹を太陽の下に連れ出すなよ。」

 

 最後に冨岡さんはそう言って、またしてもシュン!!消えた。だから、なんだよ。その瞬間移動的な速さは。今度、僕に教えてくれないかな。

 

 あと、鬼は日光に弱いというのは既に教えて貰っているので、その危険性についての詳細は僕から教えればいい。

 

 その後、僕らは竈門家に戻り死体である葵枝さん達を土の中に入れて弔った。彼女達の死体を見て、またしても泣きそうになってしまうが、炭治郎だって我慢しているんだ。耐えないと。

 

 その後ら炭治郎と並んで手を合わせる。その頃、禰豆子ちゃんはボーッとしていた。

 

 葵枝さん。今まで僕に優しくしてくれてありがとう。炭十郎さんと一緒に天国で僕達を見守って下さい。

 

 そう心の中で思いながら、しばらくその状態でいた。

 

 「鈴蘭、禰豆子。行くぞ」

 

 「…………おう。」

 

 

 ーーーギュッ

 

 

 禰豆子ちゃんの左手を炭治郎が。右手を僕が繋いで3人並んで竈門家から離れ、冨岡さんの言う狭霧山まで目指して僕達は歩き始めた。




本編1話で3話………と考えるとゾッとします笑

今日はこれで終わりです。また、明日、会いましょう。

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キメツ学園編読みたいか、どうか。

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