【仮名】必ず僕達がお前を治す。   作:紅の覇者

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5話『鱗滝左近次の試験』

 鬼の身体との戦闘があったため、この場に何があったのかは分からない。

 

 しかし、すぐ傍の木には…………うわっ、何あれ。首元に手が生えてる鬼がいる。気持ち悪っ!!斧によって身動きできない状況になっているようだ。

 

 ところで、あの天狗のお面を付けている人は誰なんだ??味方なのか??それとも敵なのか??

 

 すると、炭治郎が足元に置いてあった大きな石を持ち出して、気絶している鬼の頭まで近付く。

 

 まさか………それで、その鬼の頭を打ち付けるつもりなのか??

 

 しかし、炭治郎はすぐ目の前で躊躇う。こうなることは、分かっていた。

 

 なぜなら、こいつはとても優しいからな。例え、相手が人を喰う鬼だとしても同情心を抱いてしまうほどにな。

 

 炭治郎がモタモタしていると、夜が明け、朝日がすぐそこまでのぼろうとしていた。まずいな、禰豆子ちゃんを避難させなければ。

 

 「禰豆子ちゃん。お堂の中に行きなさい」

 

 「むー。」

 

 禰豆子ちゃんはコクリと頷いて、トテトテとお堂の中へと入っていく。これで、安心だな。

 

 「ぎゃああああ!!!」

 

 そんなことをしているうちに、朝日は完全に昇り、それによって鬼は断末魔を上げながら灰になってしまった。なるほど。禰豆子ちゃん含め、鬼が日を嫌う訳だ。

 

 天狗のお面を被った人は、殺されてしまった人を丁寧に埋葬していた。なので、俺も手伝うことにする。

 

 「手伝います」

 

 「…………助かる」

 

 天狗のお面からは、かなり渋めの低い男性の声が聞こえてきた。なので、俺も死体を運んで土に埋めてから、その人と並んで手を合わせた。

 

 「あの………」

 

 炭治郎が超えると、天狗のお面を被った人は……

 

 「儂は鱗滝左近次だ。義勇の紹介はお前らで間違いないな??」

 

 鱗滝………左近次!?てことは、冨岡さんが言っていた人じゃないか。わざわざ、迎えに来てくれたのか??

 

 「は、はい。竈門 炭治郎と言います。妹は禰豆子で、そっちの藍色の髪型をしているのは友達の成矢 鈴蘭です。」

 

 「どうも」

 

 「ふむ、それじゃあ。炭治郎、鈴蘭。妹が人を食った時、お前らはどうする??」

 

 禰豆子ちゃんが人を喰った時??そんなのある訳ーーー

 

 ーーーバチン、バチン!!

 

 「…………へ??」

 

 突如、鱗滝さんは僕達の頬にビンタを入れる。意味がわからないんだが。痛いし

 

 「判断が遅い」

 

 はい??

 

 「お前らはとにかく判断が遅い。朝になるまで鬼に止めを刺さなかった??今の質問に間髪入れず答えられなかったのは何故か??お前らの覚悟が足りないからだ!!」

 

 鱗滝さんはキツく言葉を続ける。

 

 「妹が人を食った時にやることは2つ。妹を殺す。お前らは腹を切って死ぬ。鬼になった妹を連れていくということはそういうことだ。」

 

 鬼という人類の中で異形的である存在を連れていくということは僕達にとって茨な道であること。そして、相当な覚悟が必要であることをこの人は伝えているんだ。

 

 「これは絶対にあってはならないと肝に銘じておけ。罪なき人の命をお前の妹が奪う。それだけは絶対にあってはならない。儂の言っていることが分かるな??」

 

 「「はい!!」」

 

 「………では、これからお前らが鬼殺の剣士として相応しいかどうかを試す。」

 

 試験がある………ということだよな。少しは予想していたことだけれども。ゴクリと思わず生唾を飲んでしまう。

 

 「妹を背負って儂について来い」

 

 そう言って、鱗滝さんは走り出す。ちょ、おいおい。まだ禰豆子ちゃん、背負ってねぇって!!!

 

 「炭治郎!!急げ!!」

 

 「分かってる!!」

 

 すぐにお堂へと入った炭治郎は禰豆子ちゃんの入った籠にまたしても布を被せてから背負い、僕と共に走り出す。

 

 2人で鱗滝さんのあとを走るが、追いつく気配が全くない。あの爺さん、速くない??一体、何歳なんだよ。高齢者が出していい足の速さじゃない。

 

 それと、不思議になぜか足音が全く聞こえない。本当になんなの、この人。

 

 「炭治郎!!大丈夫か??禰豆子ちゃん、背負おうか??」

 

 息が上がって辛そうにしている炭治郎にまだ余裕がある僕は声をかける。しかし、炭治郎は辛そうにしながらも

 

 「大丈夫だ!!最後まで………俺が背負うんだ!!」

 

 長男としてのプライドだろうか。本人がここまで言うんだ。なら、炭治郎の意見に尊重するのが親友ってもんだろう。

 

 「そうか!!じゃあ、最後まで頑張ろうな!!」

 

 「あぁ!!」

 

 こうして、僕達は鱗滝さんのあとを永遠と追いながら走り続けて数時間。

 

 狭霧山の麓にある一軒家の前で鱗滝さんは止まった。ここが、この人が住んでいる家なのだろうか。

 

 現在、体力に自信がある僕ですら辛い状況だ。息が上がるのは、いつぶりだっけ。炭治郎に関しては死にかけていた。

 

 「これで………俺たちは認めて貰えましたか??」

 

 そうだ。この人の言葉通り最後までついていけたんだ。だから、認めてもらえーーー

 

 「試すのは今からだ。山に登る」

 

 …………は??おいおい、嘘だろ??今までのは試験じゃなかって言うのか。冗談もそこら辺にしておけよ、このクソジジイ!!

 

 イライラしながらも僕は炭治郎と一緒に狭霧山の頂点付近まで登る。

 

 な、なんなんだ、ここ………。やけに空気が薄いし霧があるせいで周りがよく見えない。あと、疲労で膝がガクガクしてきた。

 

 くるりと僕達の方に振り向いた鱗滝さんは口を開いた。

 

 「ここから、山の麓の家まで下りてくること。今度は夜明けまで待たない。」

 

 鱗滝さんはそう言って、シュン!!と冨岡さんと同じく姿を一瞬で消した。アンタもできるのかよ、それ。

 

 てか、試験内容が………山に下りるだけ??

 

 「そうか。鱗滝さんはこの霧で俺達が迷うと思っているんだ」

 

 なにかに気づいた炭治郎はそう言う。確かに、霧は見えないぐらいまで濃い。下手したら永遠と迷うこともありえるかもしれない。

 

 しかし、こっちには鼻が利く炭治郎がいる。きっと、鱗滝さんの匂いはもちろん、さっき自分たちが登った時の匂いとかも嗅ぎとることができるに違いない。

 

 でも、本当にそうなのだろうか。

 

 何か………違う目的があると思うが。

 

 「鈴蘭!!時間が無い!!夜明けまでに下ろう!!」

 

 「待て!!炭治郎!!」

 

 ダッ、と走り出す炭治郎に俺は声を掛けるが、あいつは聞いていないのか、そのまま向かおうとした。

 

 すると

 

 ーーーグイッ

 

 「え??」

 

 走っていた炭治郎の足が、何かの紐に引っかかる。何なんだ、この紐は??

 

 ーーービュン、ビュン、ビュン!!

 

 「炭治郎、危ねぇ!!」

 

 横から、勢い良く炭治郎に向かって小石が飛んでくる。僕は炭治郎を弾き、彼の代わりにその小石を受けた。

 

 「痛っ!!!」

 

 「鈴蘭!!………うわぁ!!」

 

 小石を喰らった僕に近づこうとした炭治郎は、落とし穴に引っかかってしまった。

 

 「いてて………」

 

 「大丈夫か、炭治郎。」

 

 「あぁ。仕掛けがあるんだ。」

 

 「だろうな。これは少し厄介だぞ??」

 

 ーーーグイッ

 

 「「うおぉ!!??」」

 

 炭治郎を穴から抜けさせる際に、足がまたしても紐を引っ掛けてしまい、それによって背後から大きな木が襲い掛かかってきた。なので、咄嗟に躱す僕達。

 

 これはマジでヤバいぞ。いちいち、こんな仕掛けに引っかかってたら夜明けまでに鱗滝さんの家まで戻れない。

 

 しかも、タチが悪いのがこの山………空気が薄い!!脳や身体に酸素が回らないためか、クラクラするし、身体も思ったように動かせれない。

 

 だけど、僕達は戻るしかない。そうしなければ、鬼殺の剣士として認めて貰えない。

 

 「炭治郎………、仕掛けの匂いって分かるか??呼吸を整えて嗅いでみてくれ」

 

 「スゥ…………クンクン、分かる。やっぱり、人の手で仕掛けられてるから微かに匂いが違うんだ。」

 

 よし。炭治郎の鼻が利くならどうにかなるかもしれない。

 

 「炭治郎!!お前は匂いで罠がある位置を教えてくれ!!」

 

 「分かった!!鈴蘭は??」

 

 「僕は炭治郎が嗅ぎ逃した罠を探し出してお前に伝える!!」

 

 「そんなことできるのか!?」

 

 「僕は勘が良いからな!!まぁ、任せてくれ!!」

 

 「あぁ!!分かった!!絶対に鱗滝さんの家まで戻るぞ!!」

 

 「おう!!」

 

 そして、僕達は鱗滝さんの家に向かって山を下り始める。匂いで仕掛けの位置を嗅ぎ分けた炭治郎は的確に伝えることで、難なく躱すことが……………出来れば良かったんだけどな。

 

 「ぐはっ!!」

 

 「うぐっ!!」

 

 例え、匂いや勘で罠の位置が分かったとしてもそれを、躱せれるほど、一気に身体能力が上がる訳では無い。

 

 向かう道中、何度も何度も躱しきれなかった罠の仕掛けを僕達は喰らった。

 

 痛い、苦しい、辛い、楽になりたい。

 

 そんな気持ちが頭の中で過ぎるが、すぐに消し去る。とにかく集中して罠を躱すことだけを考えろ。

 

 足を止めるな。本当に禰豆子ちゃんを助けたいと思うのならば。

 

 そんな想いを抱きながら、僕達は山を下り続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして………遂に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「コラァァァァ!!下りきってやったぞ、このクソジジイがぁぁぁぁぁ!!!」

 

 「も………どりました。」

 

 罠によって身体中に傷を負った僕達は、ボロボロになりながらも、なんとか鱗滝宅に辿り着いて扉を開ける。

 

 僕達のそんな姿を見て鱗滝さんは………

 

 

 「お前たちを認める。竈門 炭治郎。成矢鈴蘭。」

 

 

 この一言を聞いたことによって、僕と炭治郎は微笑みながら拳を合わせた。

 

 

 それと同時に朝日が昇り、太陽の光が今の僕達にとって、とても眩しいものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




大正コソコソ噂話。
鈴蘭は機嫌が悪くなると、例え相手が目上な人だろうが関係なしに口が悪くなる。

キメツ学園編読みたいか、どうか。

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