【仮名】必ず僕達がお前を治す。   作:紅の覇者

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8話『蝶屋敷』

 まさか………この人が柱だったとは。

 

 胡蝶しのぶさんは、ヒラヒラとまるで蝶のように屋敷の屋根から僕の目の前まで飛び降りる。

 

 「冨岡 義勇殿、鱗滝左近次殿の両方のご厚意によりこの度は参上させていただきました、成矢 鈴蘭といいます。今日からよろしくお願いします!!」

 

 僕は向かう途中にずっと考えていた言葉を、胡蝶さんに言って頭を深く下げる。今日からはこの人の元で医学の勉強や剣術を学ぶのだ。それなりの態度を見せないといけない。

 

 「はい。こちらこそよろしくお願いします。では、早速ですが屋敷の中を案内させていただきますね」

 

 「はい!!」

 

 屋敷の中へと入っていく胡蝶さんのあとを追っていく。屋敷の中に入ると、ツンと薬品の匂いが微かに鼻を貫く。僕の好きな匂いだ。

 

 「まずここがーーー」

 

 そして、僕は胡蝶さんにより蝶屋敷を丁寧に案内され各部屋の説明を聞かされる。診療室や、鬼殺隊員が入院している病室、薬品などを調合する部屋に保管室、そして機能回復訓練というリハビリ的なのを行う大きい道場などがあった。

 

 屋敷というだけあって、やっぱり広い。これ、全部覚えられるか不安なんだけど。

 

 「ーーーと、だいたい蝶屋敷の中はこうなっています。今は覚えきれないと思いますが、徐々に覚えてくださいね。」

 

 「…………はい。」

 

 僕の心情を察したのか、胡蝶さんはニコニコとしながら言葉を出す。そんなに、顔に出てたかな。

 

 「では、ここに住んでいる子達を紹介したいと思います。もう、集まってもらっているので行きましょう」

 

 「分かりました。」

 

 再び、胡蝶さんが歩き出すので後を追う。彼女が向かった先は、そこそこ広い一室でそこには何人かの女性が座っていた。彼女達が、ここに暮らしている人達なのだろうか。

 

 僕と同い年くらいの女の子2人に、幼い女の子が3人だ。どの子も、蝶の羽根を模している髪飾りを付けている。

 

 「彼が、以前から伝えていた今日からこの蝶屋敷で私の"継子"になる成矢 鈴蘭くんです。まだ、右も左も分からないと思うので色々と教えてあげてください」

 

 「「「はい!!」」」

 

 「分かりました」

 

 「…………………」

 

 胡蝶さんの言葉に、幼い女の子3人は元気よく返事し、ツインテールの女の子は返事をして頷き、サイドテールの女の子は何も言わず、ただ無表情だった。

 

 てか………、"継子"??"継子"って何??初めて聞いたんですけど。

 

 「では、成矢くんからも自己紹介をかるくお願いします。」

 

 初耳の単語で動揺していると、胡蝶さんが僕に向かって言葉を出す。まぁ、自己紹介は大切だよな。

 

 「今日から、蝶屋敷にてお世話になります、成矢 鈴蘭といいます。歳は14で趣味は薬草採取と料理です。将来の夢は、医者になることです。色々と迷惑を掛けてしまうことがあるかもしれませんが、よろしくお願いします。」

 

 自己紹介をしたあと、胡蝶さんと同じように頭を深く下げる。

 

 「では、貴女たちもお願いします」

 

 胡蝶さんが、彼女達に声をかけると真っ先に反応したのは、やはり幼女3人組だ。

 

 「なほです!!」

 

 「きよです!!」

 

 「すみです!!」

 

 三つ編みの子がなほちゃん。前髪を垂らしたおかっぱ頭の子がきよちゃん。おさげの子がすみちゃんね。やばい、顔が似てるから髪型で区別するしかないや。

 

 「神崎アオイといいます。今日からよろしくお願いしますね、成矢さん。」

 

 ツインテールの女の子は神崎アオイさんね。神崎先輩と呼ぶことにしよう。しっかりとしてそうな人だ。怒ると怖そう…………。

 

 「…………………」

 

 そして、未だに一言も言葉を発さないサイドテールの女の子はただ、僕のことを見つめていた。え、何??もしかして、僕のことが嫌いで話したくないとか??それだったら、泣くよ??

 

 すると、その女の子は懐から1枚の銅貨を取り出した。………何しようとしてるんだ??

 

 女の子はピンッ!!と銅貨を上に弾く。グルグルと勢いよく回転する銅貨は宙を舞ったあと、すぐに落下する。

 

 落下した銅貨をバシッ!!と手の甲で受け止めた女の子はゆっくりと開ける。すると、その銅貨には『表』と書いてあった。

 

 「……………………」

 

 銅貨を確認した女の子は、それを懐へと仕舞い、何事も無かったかのように大人しくなった。

 

 は!?は!?はぁぁ!?意味が分からない。何がしたかったんだ、この子は。さっきのアレ、何??する意味あった??

 

 「ごめんなさいね、成矢くん。この子は栗花落カナヲっていうの。」

 

 胡蝶さんは僕に、彼女の名前を教えてくれた。栗花落さんというのか。不思議な女の子だなぁ。

 

 これで、互いの名前を知ったあと、胡蝶さんについてきて欲しいと言われたため、またしても彼女のあとを追う。

 

 やって来たのは、先程案内された診療室だった。

 

 「ここに座ってください、成矢くん」

 

 椅子に座るよう促されたため、僕は彼女の指示通り座る。すると、目の前に置いてある椅子に胡蝶さんが座った。

 

 「1つだけ最後に聞きたいことがあるのですが、良いですか??」

 

 「ど、どうぞ。」

 

 聞きたいこと??一体、何なのだろうか。

 

 「成矢くんは医学の道に進みたいそうですね。」

 

 「はい。」

 

 「それなのに、どうして鬼殺隊に入ろうとしたのですか??」

 

 「ーーーッッ、それは………」

 

 僕が鬼殺隊に希望する理由。それは、鬼になってしまった禰豆子ちゃんを治す手掛かりを炭治郎と共に見つけるためだ。

 

 しかし、これは教えることは出来ない。

 

 今、目の前にいる女性は"蟲柱"胡蝶しのぶだ。鬼を狩るエキスパートでもある彼女にそんなことを教えてしまったら、真っ先に禰豆子ちゃんを殺しに行くだろう。

 

 それだけは避けなければならない。

 

 「言えません。ごめんなさい」

 

 頭を必死に回転させながら言葉を探しても思い当たる言葉が見つからなかったため、正直に言えないことを伝えた。

 

 「そうですか。まぁ、深くは聞きません。きっと、成矢くんにとって辛いことがあったのでしょう。」

 

 幸い、胡蝶さんはそこまで追求しなかった。

 

 鬼殺隊の剣士のほとんどは鬼によって家族が殺されたりと被害があった者たちが復讐心を持って入隊を希望すると聞く。恐らくだが、そのうちの1人だと胡蝶さんも思ったのだろう。

 

 「では、医学の勉強と全集中の訓練に関しては明日から行います。これを両立させるのは相当大変だと思いますが、覚悟はよろしいですか??」

 

 「はい!!」

 

 「いい返事です」

 

 

 こうして、"蟲柱"胡蝶しのぶさんによる修行が、この蝶屋敷にて始まろうとしていた。

 

 




今日はこれでおしまい。
次回は明日からですな。今からバイト行ってきます

キメツ学園編読みたいか、どうか。

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