【仮名】必ず僕達がお前を治す。   作:紅の覇者

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9話『"全集中"常中』

 蝶屋敷に来てかれこれ、半年が経過した。

 

 僕は以前と変わらず日記を続けている。だから、軽くそれを読み返してこれまでの半年を振り返ろうと思う。

 

 まずは、胡蝶さんによる医学の勉強。これは、とても大変だが有意義な時間を過ごさせてもらっている。

 

 今までは独学でやってきた人間だから、ちゃんと医師免許を持ってる人に教えて貰うのは自分にとって、すごい為になる。

 

 胡蝶さんの教え方がとても分かりやすいから学んだ内容がドンドンと頭の中に入っていく。忘れないように、僕はメモをとるがその枚数はもう少しで3桁を越しそうだ。

 

 "全集中"の呼吸の訓練に関しても丁寧に教えてくれている。基礎は狭霧山にて出来てるから、あとはひたすら呼吸法の型を磨いていく。その際、胡蝶さんからアドバイスを貰う。これが、また的確なアドバイスだから助かるんだよな。

 

 だけど、唯一の難点といえば胡蝶さんがとても鬼畜で怖いということ。どれくらい怖いかと言うと、鱗滝さんが可愛いく思えてしまうぐらいのレベルでヤバい。

 

 まぁ、胡蝶さんは"柱"だから忙しいのは承知だよ?承知だけど、胡蝶さんが不在の間にめっっっっちゃ分厚い医学の本の内容を全部、紙にまとめろっていうのはダメでしょ。

 

 しかも、まとめるのを間に合わなかったら毒を注射するとか言い出すんですよ。普通の人がやっていけないことをやろうとしてるよ。おかげさまで、ここ2ヶ月は目の下に隈が出来てしまってる。

 

 そんな寝不足である僕に、胡蝶さんは"全集中"の呼吸をずっとしろと指示してくるんだ。マジで、は?ってなるよね。

 

 少し"全集中"をやっただけで、あんなに疲れるというのに、それを続けろと?無理でしょ。常中がなんだか知らんけど、本当に無理なんですよ。

 

 しかし、これも拒否したら毒を注射をすると胡蝶さんに言われる。ふざけんなよぉぉぉ!!こっちは寝不足だって言ってんだろ。そんなのやったら、今朝食べた焼き魚、吐き出すぞ。

 

 だけど、僕は彼女に逆らえないので指示通りに実行する。…………はい、無理でした。5分も持ちませんでした。しかも、宣言通り、朝食べた焼き魚をそのままリバースしてしまいました。神崎先輩………申し訳ない。

 

 胡蝶さんとのやり取りはこんな感じかな。これが、あと半年以上続くと考えると………生きてるかな、僕。

 

 まぁ、未来のことは未来の自分に任せればいいだろう。

 

 神崎先輩は、初対面で会った時に思った通り、しっかりとしていて常にテキパキと動いている。無駄な動きがない。

 

 彼女には本当に助けられている。色々と蝶屋敷で分からないことがあれば、すぐに教えてくれるし、勉強や訓練で疲れた時に励ましてくれる。あと、料理が上手でご飯が美味しい。なので、偶に料理を教えて貰っている。

 

 なほちゃん、きよちゃん、すみちゃんの3人組は見ているだけで和む。常に元気で、一生懸命に看護師として動いている。

 

 3人の相手してあげると、すっごく楽しそうにしてくれるから、思わず口がほころんでしまう。あ、なるほど。これが、蝶屋敷の飴と鞭っていうやつか(多分、違う)

 

 

 そして、僕が1番この蝶屋敷にて気にいらない人物が1人。

 

 

 「……………」

 

 栗花落カナヲだ。今日も相変わらず、朝会っておはようと挨拶をしても返事してくれなかった。泣きそう…………。

 

 なんか、神崎先輩曰く何か物事を決める時は銅貨を投げて決めるというよく分からない癖がある。

 

 しかも、僕の時に限って銅貨の出たのが決めていたのと違うやつらしく、反応を見せてくれない。いや、どんな確率?普通に僕と話すのが嫌すぎて嘘言ってるとかじゃないよね?

 

 それに、栗花落も胡蝶さんの"継子"であるため、たまに木刀で打ち合いをするのだが……………

 

 

 「水の呼吸 壱の型 "水面斬り"!!」

 

 

 鱗滝さんに教わった水の呼吸の型を、栗花落に目掛けて振り下ろすのだが

 

 

 ーーースカッ

 

 

 「くっ!!」

 

 こいつ……、まるで僕が振り下ろす位置が分かっているかのように容易く躱しやがる。どんな、視力してんだよ。

 

 

 「花の呼吸 陸の型 "渦桃"!!」

 

 

 そんで空振りして体勢を整えようした直前に、栗花落は空中で大きく捻りながら木刀を振り下ろし、それが僕の頭部に直撃して気絶するっていう日が何度かありました。殺す気か!!

 

 それにしても、どうしては栗花落はあんなに素早く動き回れるんだろうか。

 

 …………癪だけど聞いてみるか。

 

 「なぁ………」

 

 「………………」

 

 声を掛けても、彼女はこっち向いて微笑んでいるだけ。まぁ、分かってたけどさ。

 

 「どうして、あんなに素早く動けるのか教えて欲しいんだけどいいかな??」

 

 「………………」

 

 僕がそう言うと、栗花落はいつものように銅貨を取り出して、ピン!!と弾く。そして、それを手の甲に受け止めてどっちか出たか見る。

 

 銅貨は………"裏"を向いていた。

 

 どっちだ!?決めてたやつか!?

 

 「………………」

 

 喋ってくれないということは、"表"だったのだろう。どうして、こんなに外れるの!?いい加減にしないと、本当の本当に泣いちゃうよ?

 

 ………あ、そうだ。

 

 「栗花落。もう一度、チャンスをくれ。あと、銅貨の表裏は僕が決めさせてもらう。」

 

 ないとは思うが、もしかしたら栗花落はズルしているかもしれないからな。だったら、僕自身で決めた方が信用性は上がる。

 

 「"表"だ。"表"が出たら教えてくれ」

 

 コクリと栗花落は浅く頷いたあと、またしても栗花落は銅貨を上に弾き手の甲で受け止める。

 

 どっちか出たかと言うと…………

 

 

 "裏"だった。

 

 

 

 「………………」

 

 「………………」

 

 

 

 ……………気まずい。

 

 

 

 

 

 この後、神崎先輩に半泣き状態で教えて下さいと頼み込んだら普通に教えてくれた。

 

 栗花落は胡蝶さんが言っていた"全集中"常中をマスターしているためだということ。へぇ、常中ができるようになれば、あんなに身体能力が上がるのか。

 

 

 …………キツそうだけど頑張ってやってみるか。

 

 

 こうして、僕は1ヶ月かけて"全集中"常中をマスターした。正直言って死ぬかと思いました。

 




大正コソコソ噂話

カナヲはそれなりに鈴蘭のことを気に入っている。(外れた時の反応が面白いため。

キメツ学園編読みたいか、どうか。

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