ブチギレ立香ちゃんの漂白世界旅   作:白白明け

6 / 21
ロシア異聞帯編が八割がた書き溜められましたので投稿します。

皆様の暇つぶしになれば幸いです(__)


※予約投稿をしていたら三話先くらいのものを間違って投稿してしまいましたので、削除しました。




ロシア異聞帯編
立香ちゃんは許さない①


2017年‐世界は“漂白”され、人類の歴史は幕を閉じた。

 

宇宙からの侵略が始まってから90日。人々は諦めを抱きながら空を見上げる日々のみを過ごしていた。数日前に最後まで侵略に抗っていた合衆国も姿を消した。もはやこの地上に人類は築き上げた国は一つもなく、もはやこの地上に人々が縋るものは一つもなかった。

 

今日という日が地球最後の一日になるかもしれない現実を、絶望に濁った瞳で誰もが受け入れている。‐けれど、“彼”はどうしても納得がいかなかった。最後の祈りに没頭する人々を尻目に、駄々をこねる子供の様にキャンプを飛び出した。

世界は終わった。‐それはいい。侵略者は宇宙人だった。‐それはいい。だが、その動機が、目的が、経緯が、あまりにも秘されていた。

 

空から七つの光が堕ちてきた日‐彼は天からの声を聞いた。その声は自分たちの歴史が間違っていると言った。‐どういうことだ?その声は惑星を造り直すと言った。‐どういう意味だ?その声は最後まで自分たちを見もしないまま傲慢に告げた。‐彼にはそう聞こえた。

 

‐『歴史は我々が引き継ごう』

 

ふざけるな。ふざけるな。ふざけるな!叫びだしたかった。たとえ天から聞こえる声に届かないと知りながらも、叫びたかった。否、()()()()()()()()()()()()()()―――彼は空を見上げていることしか、出来なかった。

 

だが、代わりに叫ぶ声を聞いた気がした。空を見上げることしかできなかった自分たちの代わりにどこかで誰かが叫んでいる声を確かに聞いた。それは少女の声だったように思う。あるいは獣の咆哮の様な声だったとも思う。物理的に聞こえるはずの無い声だった様にも思う。分からない。天からの声と同じように、その声の事もまた彼には何も分からない。

けれど、わかることもある。その声は、その叫びは、確かに地上から天へと向けられた怒りの咆哮であったのだ。

 

人類の歴史は幕を閉じた。残された一握りの人々は絶望に濁った瞳でその結末を受け入れている。―――否である。世界のどこかで諦めを踏破しようとしている誰かがいる。理不尽な結末にブチギレている誰かがいる。その事実が彼の身体を動かした。

 

もう人類には逆転の目も、生存の目もない。あらゆる活動は何の成果も現わさない。けれど、その上でみっともなく、彼は過去の記録を漁ろうとしていた。片道切符の燃料で、旧式の自動二輪に跨って白い世界と化した荒野を走る。

 

それが人間。それが人類。それが誰でもない彼が最後に認め、一人の少女が最後まで守ろうとするものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

立香の朝は早い。汎人類史最後の砦‐虚数潜航艇シャドウ・ボーダーの中にあっても立香の体内時計は狂わない。午前5時に目が覚める。寝台から起き上がり上体を反らして身体を伸ばす。ちなみに立香は寝る時は下着は付けない派‐寝間着の下で人並みはある胸が揺れた。

 

「フォウ君。おはよー」

 

枕の横で丸くなっていた白い小動物‐フォウ君に声を掛けるがフォウ君はまだお眠の様で返事はない。身体を揺する立香の手を邪魔だと思ったのだろう、尻尾でテシテシと叩いてくる。立香はフォウ君を起こすことを諦めて着替えを始めることにする。

潜航艇‐船であるが故にスペースの限られるシャドウ・ボーダーではあるが汎人類史最後のマスターであり、現段階のシャドウ・ボーダーにおいて最大戦力を有する立香には狭いながらも個室が与えられている。他の一般職員は四人部屋だというのに、立香は恵まれた環境に申し訳なさを感じながらも感謝してクローゼットを開ける。

 

「オッレンジ、オッレンジー。ラッキーカラーはオレンジだよー」

 

時間の概念から切り離された虚数領域にあるシャドウ・ボーダーには勿論テレビもラジオもない。そんな誰に聞いた占いだという突っ込みを入れる者が誰もいない空間で適当な事を言いながら立香は着替える。ボディラインの協調されるオレンジ色のスーツ。魔術礼装・カルデア戦闘服に着替え終えた立香は部屋を出た。

このシャドウ・ボーダーが外見のわりに意外と広いことは乗り込んだ初日に行った探検で知っていた。なんでも空間を湾曲して空間を確保しているらしい‐難しいことは立香には分からない。空間×2? ともかく意外と広い船内を歩く。ただ広いと言っても限りはあるので目的の場所には直ぐに辿り着いた。

 

「おじゃましまーす」

 

返事も待たずに部屋に入る。その部屋には色々な機械に繋がれたカプセルが置いてあり、カプセルの中で1人の美少女が眠っていた。その美少女の名は‐ダ・ヴィンチ。そうカルデアで立香がお別れも言えないまま消滅してしまった万能の人‐ダ・ヴィンチである。ただし、外見からわかるように今まで立香が一緒に冒険をしてきたダ・ヴィンチ本人ではない。万能の人が“こんなこともあろうかと!”と用意していたスペア(ロリ)ボディ。ホームズ曰く低燃費故に低出力らしい“新しいダ・ヴィンチちゃん”だ。

 

以前のダ・ヴィンチの記憶を知識として引き継いでいるらしい新しいダ・ヴィンチ。なら、どうであれ立香にとっては“大切なダ・ヴィンチちゃん”。

 

彼女はこのシャドウ・ボーダーの要であり、虚数潜航を行っている間はその演算制御の為、こうしてカプセルの中に居なければいけないらしい。たまにカプセルの中で目を覚ましていることもあるが、今日は目を覚ましていない日の様なので立香は起こさないようにコソコソとダ・ヴィンチの様子を伺うことにする。

 

「ああー、ダ・ヴィンチちゃんは可愛いな。前の大人のダ・ヴィンチは綺麗だったけど、ロ・リンチちゃんはかわゆいよー。早く虚数空間からでて一緒にお風呂に入ろうね!…っ、静かにしなきゃだった…」

 

人としてギリギリアウトなことを言いながらダ・ヴィンチの寝顔を堪能した立香は部屋を後にする。寝ているようにみえるが今も仕事をしているダ・ヴィンチの邪魔をすることは立香の本意ではない。

 

次に立香が向かうのは司令室兼操舵室(コックピット)。先ほど同様にさほど離れていない距離をスキップする。

 

「おはよーございまーす!」

 

司令室兼操舵室に着いた立香は元気よく片手を突き上げながら挨拶をする。早朝だというのに詰めていた職員たちは立香を出迎えながら各々に返事を返してくれた。立香はその一人一人に二度目の挨拶をしながらキョロキョロとあたりを見渡す。どうやらまだ此処にはゴルドルフもホームズも偉い人は誰もいないらしい。‐厳密にいえばダ・ヴィンチの意識が存在しているが‐立香は早起きは得だとはしゃぎながら一番大きな椅子‐船長が座る椅子に腰かける。

普段、この席に座っているゴルドルフはまだ来ていない。立香は無駄に大きな椅子に身を預けながらボーっとする。どれくらいボーっとしていただろうか、気が付けば立香の膝の上にフォウ君が乗っていた。

 

「えへへー、寝坊助フォウ君めー」

 

立香が膝の上で丸くなっていたフォウ君を弄り始めると、フォウ君は抵抗する様に立香の顔を肉球でテシテシと叩いた。どれくらいそうしていただろうか―――立香は気が付けば眠りに落ちていた。

フォウ君は“二度寝してんじゃねぇ”とでも言いたげな鳴き声を上げていた。

 

 

「ええい、いい加減にせんかヘボ探偵!なぜ浮上しない!もうとっくに安全圏に脱しただろう!」

 

 

立香はそんな声で目を覚ました。寝惚け眼を擦り時計を見る。寝ている間に何時の間にか午前7時を回っていた。そして、気が付けば立香の寝ていた椅子を挟んで新所長‐ゴルドルフと名探偵‐ホームズが何やら口論をしていた。寝惚け少女の頭にはその内容が入ってこない。いや、たとえ意識が覚醒していたとしても立香がホームズの話を完全に理解できたかどうかは疑問だ。何やら難しい単語が飛び交っていた。‐まあ、二人の口論(ホームズにやり込められるゴルドルフ)は最近よく見る光景だったので立香は気にするのを止めた。

 

とりあえずゴルドルフが来たので立香は彼の椅子から立ち上がる。ゴルドルフの身体が驚いたようにビクリと震えた。

 

「ふお!?な、なんだ起きていたのか…ええい、ならば一声かけてから立ち上がらないか!それに私の船長席に毎度毎度勝手に座るんじゃない!」

 

「ゴルドルフさんがいない間だけだからいいじゃん」

 

「よくない!いいか、このボーダーの船長である私には相応の威厳と言うものが求められるものなのだよ。君の行為はそれを損なう行為だ」

 

「あは、あはは、なに言ってるのゴルドルフさん。ゴルドルフさんの威厳はそのでっかいマシュマロみたいな身体(ボディ)で十二分に事足りているんだよ?威厳十分。御利益十二分だよ」

 

「………それ、褒めてないよね?」

 

「えー、褒めてるよー。ねー、マシュ」

 

寝ている間に傍に来ていた立香の可愛い後輩は苦笑いをしていた。

 

珍妙な言い回しではあったが、どうやら褒めているらしかった。短い期間ではあるが立香と接し、ゴルドルフはそういったことで立香が嘘を吐かないことを知っていた。立香はこの年頃の少女としては極めて普通に“うざい”や“嫌い”と感情をあらわにするタイプだ。だから、普通に傷つくのだが‐ともかく今は立香が自分の味方なのだろうと考えることにしたゴルドルフは畳みかけるように言う。

 

「そうだ。君からもホームズに言ってやりたまえ。我々は何時までこの虚数空間を漂っていなければならないのだと!こともあろうにコイツは世界が滅びたなどとデタラメを言っているのだぞ!」

 

2017年‐世界は“漂白”され滅びた。しかし、それは世界の“漂白”が明るみに出る前にシャドウ・ボーダーに乗り込み虚数空間へと退避‐以降、虚数空間に留まっていた立香たちは知る由もないことだ。ゴルドルフの様に信じられなくて当然。ホームズの様に計器の反応を見て推測‐推理して正解を確信できることの方が異常なのだ。

立香はゴルドルフの言葉を受けて、ホームズの方を見た。人類史上最高の名探偵は容易に答えを口にしない。口にしている時点でそれは確固たる事実なのだろうと‐立香は理解する。

 

「………世界は、滅びてなんていないんだよ」

 

「それ見た事か!コイツもそう言っているのだ!世界が滅びる筈がない!」

 

()()()()()()()()、世界は滅びてなんていないんだよ」

 

「そうだ!我々が最後の………え?」

 

ホームズに詰め寄る梯子を外されたゴルドルフは振り返り立香の顔を見る。立香は目を見開きながら、強がりを口にしていた。奥歯がギリリと音を立てている。

 

「え?いや、そんな顔で強がりを言うの?おまえさん、絶対に負けを認めないタイプじゃなかったの?」

 

ゴルドルフからすれば強がりを言うことは事実上の敗北宣言だ。立香の狂気じみた激情を垣間見たゴルドルフとしては絶対にそんな言葉を口にしないと思っていた。

ただゴルドルフと立香の考え方は少しだけ違った。

 

「やダナー、負けてないですよ。強がりを言えるほどまだ強いんですから、負けじゃない。負けるのは全部を諦めたときだけ!私はまだ何も諦めてない。そこんトコロを理解してもらえなくちゃ立香ちゃんは激おこぷんぷん丸だよ。ぷんぷん」

 

激おこぷんぷん丸な立香は怒りを鎮める為に傍にいたフォウ君を抱き上げて白い毛並みに顔を埋める。‐駄目だ。治まらない。前足でテシテシと頭を叩かれた。仕方がないのでフォウ君を床に下ろして、立香は傍にいた可愛い後輩‐マシュの胸に顔を埋めることにする。

 

「マシュ、慰めてー、はわわ、マシュのマシュマロは柔らかいなー。おっきいなー。まさしくマシュマシュマロだねー」

 

「え…ちょ!?先輩っ、こんな皆さんの前でそんな、せめて人のいない所で…で、ではなく!今は真面目な話の最中ですよ!?せんぱーい!?」

 

なんかもうめちゃくちゃだった。色々と酷かった。桃色の波動が乱れる光景を目の当たりにしたゴルドルフは逆に冷静さを取り戻しながら、ホームズの説明に耳を傾けることにした。

ホームズはゴルドルフがこうなることを予測して立香がマシュとイチャコラし始めたのかとも考えたが‐たぶん違うので考えるのは止めた。

 

その後、ホームズの説明により関係性という“楔(アンカー)”が無ければ浮上できない虚数空間を航行するシャドウ・ボーダーが、唯一浮上できる場所は“漂白”された世界でシャドウ・ボーダーを知り、また立香たちも知っているという相互関係性の結ばれた相手‐白い皇女のサーヴァント‐アナスタシア‐並びに殺戮猟兵(オプリチキニ)の存在する座標。つまりは敵の本拠地だと言う事が判明。

また今まで生体ユニットとしてシャドウ・ボーダーの演算を担っていたダ・ヴィンチの計算により、その浮上のタイミングは今しかないことがわかった。

 

これによりシャドウ・ボーダーは現段階より虚数空間より浮上。―――つまりは反撃を開始する。

 

「やっほーい!戦だ戦だ!優秀な立香ちゃんはちゃんとカルデアの残ってた資料から(クリプター)の情報を見たもんね!森君風に言うなら、あの普通そうな子は一点!凄そうな子は三点!超凄そうなのは百点でどうかなっ!勿論、生死問わず(デッド・オア・アライブ)!」

 

「まま待て、浮上するなら、シートベルト、シートベルト!総員、席に座れ!怪我などで脱落するな!藤丸立香、貴様もだ!車内であればシートベルト一つで大事にはならん!私の経験則だからな!」

 

「わー、ゴルドルフさんが船長みたいなこと言ってる。プークスクス、かっこいー(棒)」

 

「みたいも何も私は船長だからね!?そしてやっぱり君は私が嫌いだよねぇ!?」

 

―――反撃は始まった。これより、立香たちの向かう世界は弱肉強食の理論を突き詰めた永久凍土の世界。絶え間ない雪嵐‐産み落とされる魔獣に対抗する為、人が進化を遂げた歴史。脆弱さは邪悪であり、死は敗北であり、強靭さこそが正義と称えられる異聞(いぶん)

 

異聞深度:D『永久凍土帝国アナスタシア』 開幕。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

虚数空間(トンネル)を抜けるとそこは白銀の世界だった。‐否。情報は適切に表現しなければならないだろう。一面の銀世界どころではない。シャドウ・ボーダーが浮上した緯度経緯共にロシアの大地である筈の世界には修正液で塗り潰したような風景が広がっていた。

 

雪雪雪。絶え間ない雪嵐。外気温マイナス100度の極寒の世界。人類の健全な生存など望むべくもない環境。

 

その光景を目にした一同は文字通り身が震えた。故に行動は迅速を貴ぶべき状況。既に食糧面で猶予の限られていたシャドウ・ボーダーが浮上した先が生物の生息が困難を極める極寒の世界だと知ってすぐ、シャドウ・ボーダーの頭脳であるダ・ヴィンチとホームズの二人はゴルドルフに立香と彼女のサーヴァント達による周囲の情報及び食糧の収集を進言。“立香を自由にする”ということに不安感を抱いているゴルドルフであったが、太っちょ紳士たる体型維持の為に食糧の確保は彼としても急務であり一度考えながらも要請を受理。

 

立香は単身で極寒の世界に向かうこととなった。

 

それに対してマシュは自分も着いて行き力になりたいと言おうとして、けれど言葉にはできなかった。今のマシュにはデミ・サーヴァントとしての力が少ししか残っていない。短時間ならまだしも長時間の戦闘には耐えられない。あるいは立香に誰でもない彼から貰った力がなければ、ホームズとダ・ヴィンチもそんなマシュを危険だと知りながらも立香と共に送り出すしかなかっただろうが、今の状況はそうではない。立香にはチカラがある。だから、単身での極寒の世界の調査が許されたのだ。

 

でも、それでもと自分も一緒に行くと口にしようとしたマシュの脳裏に浮かんだのは‐自分を守り消滅してしまったカルデアのダ・ヴィンチの姿だった。次はない。もう次はない。それを知るからこそ悔し気に唇を噛むマシュを立香は出立の前に優しく抱きしめて、言った。

 

『マシュ。行ってきます』。まるで妹を思う姉の様な、本当に優しい声だった。立香は笑う。優しく笑う。楽しそうに笑う。その笑顔にマシュは‐『行ってらっしゃい。先輩』と言葉を返すしかなくなった。

 

こうして立香は単身、魔術礼装‐極寒地用カルデア制服に身を包み極寒の世界に旅立った。

 

 

―――それが数日前のことである。

 

 

「魚魚魚―、さかなーをーたべーるとー、頭頭頭―、あたまがーおかしくっと、獲物を発っ見―。残念ながら蜥蜴です。さて、クイズです!ムニエルさんの郷土料理を食べるのはいつになるのでしょか!」

 

極寒の世界で蠢く魔獣。()()()()()()()()()()、基本は常時平常運転の立香は()の頭をテシテシと叩いた。無論、彼の頭は痛まない。なんなら立香の手が痛くなるくらいだ。

 

見下ろされた魔獣。本来ならうら若き乙女である立香の柔らかな肢体を容易く引き裂くことが出来る魔獣は‐彼の手により叩き潰される。立香は飛び散った魔獣の血を気にすることなく彼の肩から飛び降りると魔獣の肉片を集め始める。これは食料。シャドウ・ボーダーで立香の帰りを待つ皆の大切な食糧。だから、手を休めることなく魔獣の肉片を片っ端から背負う天才印の特製特大バッグに詰め込んでいく。そして、積み込み終えると彼の名を呼んだ。

 

「積み込み完了!また肩に乗せてー、バベッジさん」

 

「了解した。我が手に乗り給え」

 

立香の呼びかけに答え‐極寒の世界で起動する巨大ロボ。もとい、蒸気王‐チャールズ・バベッジは蒸気を噴き上げながら巨大な手を立香の前に差し出した。立香はその手に乗りバベッジの肩の上に帰還する。

立香を肩に乗せ、バベッジは進行を開始する。

 

蒸気王‐バベッジのスキル‐『機関の鎧』。それは彼の宝具‐渇望と夢想とが昇華された固有結界より生み出された全身機械鎧であり、バベッジは常にそれを身に纏っている。

故に彼の行動には常に駆動音と蒸気が発生する。

 

バベッジの歩みは蒸気を巻き上げ周囲の雪を少なからず溶かしながらの進行であり、歩を進める度に鳴る駆動音は辺りの魔獣たちに自分たちの存在を知らしめながらの進軍であった。

 

そして現れる魔獣たちを文字通りの鎧袖一触にする様はまさしく“王”そのものであり、だからこそ、数日前より立香とバベッジの存在に気が付きながらも近づくことが出来ずにいた()()は、今日も魔獣を狩り去っていく二人の姿を見送ることしかできなかった。

しかし、()()を荒らされた彼らの怒りは強い。

 

―――彼ら(ヤガ)の爪と牙は既に研がれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 





アンケート機能と言うものを使いたくて使ってみました。
アンケート次第で今後の展開が変わったり変わらなっかったりするかもしれません。

この後の立香ちゃんの行動はどうする?

  • 態度は少し軟化する
  • 態度はだいぶ軟化する
  • クリプター達とお友達になる
  • 激怒する

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。