魔剣を手にいれた2週間以上過ぎた現在、俺達は【オルクス大迷宮】の入口にある広場に集まっていた。
ここ2週間の間、俺達は迷宮の魔物と戦うための訓練をしており、その結果のステータスがこれだ。
如月優樹 17歳 レベル:9
天職:魔剣使い
筋力:160(+α)
体力:160(+α)
耐性:100(+α)
敏瞬:150(+α)
魔力:490(+α)
魔耐:490(+α)
技能:言語理解・剣術・物理耐性・魔剣適性・魔剣契約・魔剣魔法
光輝がレベル10で全て200のステータスなのだからレベル9でこれはかなりいい方ではないだろうか?
このステータスについては、メルド団長以外には誰も言っていない。現状1番強力とされる光輝よりも、例え魔力と魔耐の2つだけとはいえ2倍以上のステータスなのだから面倒事に巻き込まれる可能性があると、メルド団長に言われた。魔剣のことも言っていない。
訓練の途中でハジメが、檜山達に攻撃されることもあったが、魔剣との
迷宮の入口は、博物館のゲートのようなしっかりとした入口になっており、受付窓口まであった。
ここでは、ステータスプレートを確認し記録をして死者数を正確に把握しているらしい。
辺りには露店なども所狭しと並んでおり、まるでお祭りのようだ。
迷宮の浅い階層では、この世界の人でも対抗できる魔物が多いために良い稼ぎ場所として人気があるようで人も自然と集まり賑わっている。ゲートができる前までは酔った勢いで迷宮に突撃して命を散らしたり、犯罪の拠点にする人間もいたようで、戦争の最中に国内に問題を抱えたくないと冒険者とギルドとが協力して設立したのだとか。入場ゲート脇で素材の売買もしているので、迷宮に潜る者には重宝しているらしい。
俺達は、お上りさん丸出しでメルド団長に付いていくのであった。
◆
迷宮の中は、外の賑やかさとは無縁であった。
上と横幅が5メートル以上はありそうな通路は明かりもないのに薄ぼんやりと光っているため、ある程度視認が可能だった。なんでも緑光石という特殊な鉱石があり、この迷宮はこの巨大な緑光石の鉱脈が掘られて出来ているらしい。
訓練をした隊列を組みながら、ゾロゾロと進む。しばらく進んでいるとドーム状の大きな広間にでた。
と、その時、壁の隙間という隙間から灰色の毛玉が湧き出てきた。
「よし、光輝達が前に出ろ。他は下がれ! 交代で前に出てもらうからな、準備しておけ! あれはラットマンという魔物だ。すばしっこいが、たいした敵じゃない。冷静に行け!」
その言葉通り、ラットマンが飛びかかってきた。
その容姿はラットマンの名にふさわしくネズミのようだ……二足歩行で上半身がムキムキでさえなかったら。
前衛にいる雫の顔が引き攣っているのがここからでも良く分かる。やはり気持ち悪いのだろう。
間合いに入ったラットマンを光輝、雫、龍太郎の3人が迎撃。後衛の香織、中村恵理と谷口鈴が魔法を発動するための詠唱を開始する。訓練通りの堅実なフォーメーションだ。
光輝は純白に輝く聖剣を振るい、数体まとめて葬っている。
光輝の持つ魔剣は、光源に入った敵を弱体化すると共に自身を強化するという聖剣というには中々に嫌らしい性能している。
3人がしばらく戦っていると広間に詠唱が響き渡る。
「「「暗き炎渦巻いて、敵の尽く焼き払わん。灰となりて大地へ帰れ──"螺炎"」」」
同時に発動した螺旋状の炎がラットマンを燃やし尽くす。
気がつけば、既に広間のラットマンは全滅していた。やはり1階層の敵は、光輝達には弱いらしい。
「ああ〜、うん、よくやったぞ! 次はお前達にもやってもらうからな、気を緩めるなよ。……それとな……
今回は訓練だからいいが、魔石の回収も心がけろよ。今のは明らかにオーバーキルだからな?」
そう言って釘を刺すメルド団長。その言葉に後衛の魔法組は、頬を赤らめるのであった。
そこからは特別問題も無く順調に進み、迷宮を攻略していった。
そして、一流の冒険者か否かを分けると言われる二十階層にたどり着いた。
現在の迷宮最高到達階層は六十五階層らしいのだが、それは百年以上前の偉業であり今では、四十階層で超一流、二十階層を越えれば一流の扱いになるという。
クラス全員がチート持ちな為にここまではあっさり降りることが出来た。
「よし、お前達。ここから先は一種類の魔物だけでなく複数種類に魔物が連携して襲ってくる。今まで楽勝だったからとはいえくれぐれも油断するなよ!」
メルド団長の声が洞窟に響く。
ここまで俺とハジメは殆ど何もしていない。まぁ、仕方がないだろう。何せ表向きならハジメも俺も無能扱いだ。一応騎士団員が弱らせた魔物を魔剣で切りつけたりこっそり、魔剣魔法を使ったりはしたがそれぐらいだ。
再び弱らされた魔物を騎士団員がこちらに弾き飛ばされてくる。 それをタイミングよく魔剣で切り裂く。魔剣の切れ味は鋭く、一切の抵抗も無しに斬ることが出来た。最初は、この肉を斬る感触に慣れることが出来ずに余り動くことが出来なかったのだが、今ではこんな風な芸当もできるようになった。それがいい事なのかは分からないが……。
かぶりを振って、後ろ向きな思考を振り払う。これに慣れなければ帰ることができないのだ、割り切らなければいけない。
ふとハジメを見ると前方にいる香織と見つめ合っていた。が、気恥しくなったのかハジメが目を背ける。
それを見た俺は、ハジメに
「な〜に見つめ合ってんだ? あれか? ラブコメか?」
「そんなんじゃないよ! ただ香織さんがこっちみてたから……」
モゴモゴと早口で喋るハジメ。そんなハジメを見るとついリア充爆発しろ! と思ってしまう。
そんな考えをしていると、随分と粘つくような視線を感じる。ハジメも気づいたようで辺りを見回す。すぐに視線は感じなくなったが視線の主は予想がつく。檜山だろう。
深々とハジメと共にため息をつく。何か嫌な予感が頭の中に感じ始めていた。
ついに二十階層に到着する。階層の1番奥の部屋はまるで鍾乳洞のように壁が飛び出していたり、溶けたりしたような複雑な地形をしていた。この先を進むと二十一階層への階段がある。そこまで行けば今日の訓練は終わりだ。
この世界には転移魔法はないのでまた地道に帰らなければ行けない。
全員が若干の疲弊を感じながら狭い道の中縦列を組み進む。
すると先頭のメルド団長達が止まる。どうやら魔物がいたらしい。
「擬態しているぞ! 周りをよ〜く観察するんだ!」
メルド団長から忠告が飛ぶ。
その直後、せり出していた壁が変色しながら起き上がった。体色は褐色に変化し、二本足で立ち上がる。ドラミングをしていることから、ゴリラの魔物のようだ。
「ロックマウントだ! 2本の腕に注意しろ! 豪腕だぞ!」
団長の声が響く、一番近かった光輝達が相手をするようだ。飛びかかったロックマウントを龍太郎が弾き返す。光輝と雫が取り囲もうとするが足場が悪く思うように行かない。
通り抜けられないと感じたのか、ロックマウントが後ろに下がり大きく息を吸った。
「グゥガガガァァァァアアアアー!!」
部屋に地震が起きたと錯覚するような咆哮が発せられる。
咆哮により硬直した前衛組の隙を突き、ロックマウントが近くにあった岩を持ち上げ、後衛に向かって本当に魔物かと疑うほど綺麗な投球フォームで投げつけた。
後衛組は魔法で迎撃しようとして思わず硬直する。
なんと、その投げられた岩もロックマウントだったのだ。空中で華麗に一回転を決め体を広げながら香織達に迫る。さながらル○ンダイブだ。女子は「ヒィ!」と悲鳴をあげ魔法を中断してしまう。
「こらこら、戦闘中に何やってる!」
慌てたメルド団長がダイブしているロックマウントを切り捨てる。
香織は謝るが、かなり気持ち悪かったのか、顔が青ざめていた。
そんな様子を見てキレる人物が1人。我らが勇者天之河くんである。
「貴様……よくも香織達を……許さない!」
光輝は青ざめているのを死の恐怖だと勘違いして怒りの声をあげる。相変わらずの光輝クオリティだ。
「万翔羽ばたき、天へと至れ──"天翔閃"!」
「あっこら、馬鹿者!」
メルド団長の声も聞こえてないのか、光輝は大技を発動させる。
その瞬間、聖剣が纏っていた光が斬撃となってロックマウントを縦に切断、さらに壁を破壊しようやく止まった。
パラパラと破片が落ちる。歯がキラリと光る笑顔を向けようとして、メルド団長の拳骨を食らう。
「へぶぅ!?」
「この馬鹿者が! 気持ちは分かるがな、こんな狭い所で使う技じゃないだろうが! 崩落でもしたらどうするんだ!」
メルド団長の説教に声を詰まらせ、バツが悪そうに謝罪する光輝。
「……あれ、何かな? キラキラしてる……」
香織のその言葉に全員がそちらに向く。
そこには、青白く発行する鉱物が壁から生えていた。
「ほぉ〜、あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい」
グランツ鉱石はそれそのものには特に効果はないが、綺麗な鉱石な為に求婚の際に選ばれることも多いらしい。
その説明を聞いた香織がハジメにチラリと目を向けた。
「だったら俺らで回収しようぜ!」
そう言って急に動いたのは檜山だった。大方香織にいい所を見せようとしたのだろう。ヒョイヒョイと鉱石に向かっていく。
「こら! 勝手なことをするな! 安全確認もまだなんだぞ!」
メルド団長が慌てて止めようとするが、もう遅かった。
「団長! トラップです!」
トラップを見分けることのできるフェアスコープという魔道具をもった騎士団員が大声をあげる。
檜山が鉱石に触れた瞬間、魔法陣が広がる。
「くっ、撤退だ! 早く部屋から出ろ!」
メルド団長が大声をあげ、生徒達が急いで外に向かうが……間に合わなかった。
光が部屋に満たされる。まるで教室から召喚された時のようだ。
一瞬の浮遊感を感じついでドスンと床に叩きつけられる。すぐに立ち上がり周囲を見ると、他にも何人もが床に尻もちを付いていたが一部の前衛組が起きて周囲を警戒していた。
やはり先程の魔法陣は転移魔法だったのだろう。今じゃできない魔法を簡単に使えるのだから神代の魔法は規格外だ。
転移した場所は石造りの橋の上でかなり広い。橋の外は崖のようになっており下は真っ暗で見えない。橋には手すりなどもなく足を滑らせれば真っ逆さまだ。
「お前達、すぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け。急げ!」
轟く号令にわたわたと動きだす生徒たち。
しかし、橋の両端にあった魔法陣からそれぞれ骨のような魔物と巨大な一体の魔物が現れたことによってそれは叶わなかった。
その時、現れた巨大な魔物を呆然と見つめるメルド団長の呻くようなつぶやきが嫌に響いた。
──まさか……ベヒモス……なのか……
ちょこっとブレ×ブレの解説
序盤でオリ主が魔剣と対話って言ってたのは、原作のブレ×ブレでは魔剣が喋るからです。今の段階では、まだ魔剣の力を出し切れてないために話せていません。
奥の手はまた次回。