唯一無二の魔剣使いで世界最強   作:モノノ怪

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ようやくオリ主が活躍します。いやー長かった。


奥の手

 橋に現れた小さな無数の魔法陣から、大量のトラウムソルジャーが出現する。骨だけの体で剣を携え、空洞の眼孔からは、赤黒い光が見える。

 

 だがしかしその大量にガイコツよりもたった一体の巨大な魔物が俺の頭の警鐘をガンガンと掻き鳴らす。

 

 団長がベヒモスと言ったそれは体長約十メートルの四足で頭部にカブトのようなものを携えており、そのカブトから生えた角から炎を放っている。

 

 ベヒモスは大きく息を吸うと、先程のロックマウントとは比にならない程の咆哮を放つ。

 

 その咆哮にメルド団長は意識を取り戻したのか矢継ぎ早に指示をだす。だが、

 

「待ってください、メルドさん! 俺達も一緒にやります! あの恐竜みたいなのが一番ヤバイでしょう! 俺達も」

「馬鹿野郎! あれが本当にベヒモスなら今のお前達には無理だ! 奴は六十五階層の魔物! かつて最強の冒険者と言わしめた者をしてかなわなかった化け物だ! さっさと撤退しろ!」

 

 助太刀しようとする光輝に怒鳴りつけ、撤退を促すメルド団長。だが怒鳴りつけられながらも踏みとどまる光輝。

 

 1度向こうから目を離しトラウムソルジャーを切り捨てながら辺りを見回す。クラスメイトはパニックになっており隊列もとっくの昔に崩れている。騎士団員が混乱を収めようとしているが耳を傾ける者はいない。

 

「マズイ!」

 

 その内の1人の女子生徒が突き飛ばされ転倒する。その目前には一体のトラウムソルジャーが剣をを振りかぶっている。

 

 足に力を込め向かう。だが、魔剣により上昇したステータスを持ってしても間に合わない。

 

 トラウムソルジャーが彼女の頭目掛けて剣を振り下ろす。

 

 が、

 

 突然とトラウムソルジャーがバランスを崩す。足元が突然隆起したからだ。

 剣は頭から逸れ地面をカンッと叩くに留まる。そのまま隆起は続き、トラウムソルジャー数体を巻き込みながら奈落に落ちる。

 

「ナイスだハジメッ!」

 

 これをやったのはハジメだ。荒い息を吐いているハジメ。だがもう大丈夫だろう、それよりもこの状況を何とかしなければならない。

 

 息を大きく吸い、裏返りそうになる声を抑えながら叫ぶ。

 

「オマエらぁ! いつまでパニクってやがる! お前らチート持ってんだろう。さっさと落ち着けぇ!」

 

 だが、殆ど意味をなさない。幾許か落ち着いた奴もいるものの隊列は崩れたままだ。

 

「クソっ! やっぱりこういうのは光輝じゃねぇと意味がねぇ!」

「優樹! 付いてきて! 天之河くんをこっちに来させるんだ!」

 

 ハジメも同じ考えに行き着いたのか俺に声を掛ける。ハジメに「わかってる!」と返事をして光輝のいるベヒモスに向かって共に駆ける。

 

 

 

 ベヒモスは団長達が唱えた聖絶の障壁に向かって何度も突進を繰り返していた。

 障壁に衝突する度に衝撃が撒き散らされ、橋が悲鳴をあげる。障壁にも既に亀裂が入っており砕けるのは時間の問題だ。

 

「ええい、くそ! もう持たんぞ! 光輝、早く撤退しろ!」

「嫌です! メルドさん達を置いていく訳には行きません! 絶対、皆で生きて帰るんです!」

「くっ、こんな時にわがままを……」

 

 押し問答している光輝達にハジメと共に割り込む。

 

「天之河くん!」

「おいっ光輝!」

「なっ南雲に如月!?」

 

 全員が驚いているがそんなのに構っている時間はない。

 

「早く撤退を! 皆の所に! 君がいないと! 早く!」

「いきなりなんだ? それより、なんでこんな所にいるんだ! ここは君達がいていい場所じゃない! ここは俺達に任せて南雲達は……」

「そんなこと言ってる場合じゃないだろうが!」

 

 耐えきれずに光輝の言葉を遮って胸ぐらをつかみあげ、口調を荒らげる。怒鳴られることに慣れていないのか硬直する光輝に構わずまくし立てる。

 

「あれが見えねぇのか!? 皆パニックになってるんだよ! お前がいないからだ!」

 

 指を指す方向にはトラウムソルジャーに囲まれ右往左往している。今は誰も重症は負っていないが時間の問題だ。

 

「1発で皆の希望になれるやつが必要なんだ! 俺じゃできなかった! それができるのはお前だけだろう!? 光輝!」

 

 呆然とクラスメイトを見ていた光輝は、ぶんぶんと頭を振って頷く。

 

「ああ、わかった。直ぐに行く! メルド団長! すみま──」

「下がれぇ──!」

 

 "すいません、先に撤退します"──そう言おうとして光輝が振り返ったその瞬間、団長の悲鳴と共に遂に障壁が破られた。

 

 暴風のような衝撃が襲いかかってくる。咄嗟にハジメが錬成で壁を作るが呆気なく砕け散り吹き飛ばされる。

 

 舞い上がる土煙がベヒモスの咆哮によって吹き払われた。体に走る痛みを耐え立ち上がりあたりを見渡すとそこには倒れ伏す団長と騎士団員達。光輝達も倒れていたが、直ぐに立ち上がる。後方にいたのが幸いしたらしい。

 

「ぐっ…龍太郎、雫、時間を稼げるか?」

 

 光輝が問う。団長達が倒れて動けない以上、自分達でどうにかするしかない。

 

「やるしかねぇだろ!」

「……なんとかしてみるわ!」

 

 2人がベヒモスに突貫する。

 

「香織はメルド団長達の治癒を!」

「うん!」

 

 光輝の指示で香織が走り出す。俺達は団長を背負って後ろに退避している。ハジメが壁を作っているが無いよりマシだろう。

 

 光輝が、詠唱を開始する。今までにない長さだ。

 

「神意よ! 全ての邪悪を滅ぼし光をもたらしたまえ! 神の息吹よ! 全ての暗雲を吹き払い、この世を聖浄で満たしたまえ! 神の慈悲よこの一撃を以て全ての罪科を許したまえ! ──"神威"!」

 

 詠唱と共に突き出された聖剣から極光が迸る。

 

 先の天翔閃の比ではない威力で石畳を削りながらベヒモスに直撃する。

 

 時間稼ぎをしていた2人は既に離脱しており、ボロボロだ。この時間だけでも限界だったのだろう。

 

「これなら……はぁはぁ」

「はぁはぁ、流石にやったよな?」

「だといいけど……」

 

 龍太郎と雫が光輝のそばによる。光輝自身は膨大な魔力を使ったようで肩で息をしている。

 

 そんな中、徐々に砂煙が収まる。

 

 その先の光景を見てヒュッと息を呑む。

 

 視線の先には、無傷のベヒモスがいた。

 

 先程の攻撃で苛立ったらしいベヒモスは、急にスっと頭を掲げた。頭のカブトが甲高い音を立て頭部にがマグマのように燃えたぎる。

 

「ボケっとするな! 逃げろ!」

 

 ベヒモスが突進する中メルド団長の叫び声によって退避する光輝達。ベヒモスはかなり手前で跳躍すると赤熱化したカブトを地面に向けて流星のように落下する。

 

「ぐっ、うわぁああ!」

 

 光輝達は横っ飛びで直撃を避けたもののベヒモスの着地時の衝撃で地面を転がり、ようやく止まった時には、満身創痍だった。

 

 思わず動けるようになったメルド団長と共に駆け寄る。他の騎士団員は未だ香織に治療されている。

 

「お前達、動けるか!」

 

 メルド団長の叫ぶような問いかけに対する返答は呻き声だ。まともに声も出せないらしい。

 

 何ができるか考えて()()に行き着く。

 

「……メルド団長、提案があります」

 

 メルド団長に声をかけ考えを話す。成功すれば全員が生きて帰れる。

 

「……本当にできるんだな」

 

 メルド団長は苦虫を噛み潰したように問いかけてくる。当然だ。これは賭けだ、もし失敗すれば俺は確実に死ぬだろう。だがやらなければいけない、その賭けができるだけの力が俺にはある。

 

「優樹! 僕もやる! 手伝えることがあるんだ!」

 

 メルド団長の問いに答えようとした時にハジメが駆けてくる。

 

「ダメだ。もし失敗したら死ぬんだぞ!」

「そんなの優樹だって同じでしょ! 僕の錬成があれば成功率が上がるんだ!」

 

 既にベヒモスは戦闘態勢に入っている。時間が無い。

 

「仕方がない。メルド団長、2人であいつを何とかします」

「本当に……良いんだな?」

 

 メルド団長の問いに迷いなく頷く。団長は「くっ」と笑みを浮かべて、

 

「まさか、お前達に命を預けることになるはな。……必ず助けてやる。だから……頼んだぞ!」

「「はい!」」

 

 メルド団長はベヒモスの前に出ると簡易の魔法を放ちベヒモスを挑発する。ベヒモスは攻撃してきた団長を見据え唸り声をあげる。

 そして、再び赤熱化を果たしたカブトを掲げ、跳躍する。団長はギリギリまで引きつけるつもりらしい。

 

 そして、詠唱。

 

「吹き散らせ──"風壁"」

 

 詠唱と共にバックステップ。衝撃や熱を風壁でそらす。

 そして地面に顔をめり込ませたベヒモスにハジメと共に飛びつく。赤熱化の影響で肌を焼くが気にしない。

 

「──"錬成"!」

 

 錬成師のハジメが唯一持つ魔法で地面を操りベヒモスを地面に縫い止める。

 

「るおぉぉああ!」

 

 ダメ押しとばかりに俺がベヒモスの真上から魔剣を叩きつけ離脱する。

 

「よし! ハジメぇ! 時間稼ぎ頼む!」

「任された!」

 

 ハジメに叫び地面に降り立つ。第一段階は成功、だがここからが問題だ。

 

「俺に……できるか?」

 

 今から始めるのは奥の手……訓練では一度も出来ずに終わった現状打てる最強の一手。

 

「頼む……今だけでいい! 力を貸してくれ!」

 

 ふっと魔剣が明滅し炎が溢れ出てくる。力が湧き出る、今ならなんでもできる気がする。

 

「ありがとう……行くぞ! ブロードソード!」

 

 魔剣に魔力を流し構える。こんな芸当普通はできない。これは、魔剣魔法の技能のおかけだ。

 

 炎が逆巻き、魔剣に収束する。イケる。これなら発動させることができる。

 

「ハジメ! 離脱しろ!」

 

 離脱を促し、ベヒモスに向かって走り出す、体中から悲鳴が上がるがその一切を無視。

 

 そして、

 

「いっっけぇぇえええ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ブレイズドライブ

 バトルスラッシュ

 

 

 轟音、閃光、火炎。

 

 辺り一帯に衝撃が駆け抜ける。

 

 だが、

 

「これでも無理か!」

 

 ベヒモスは今だ健在。その体は焼け焦げ、角は半ばから折れているにも関わらず動き続ける。

 

 しかし、それも想定内。ここから撤退をする。ベヒモスを倒す必要はないのだ。

 

 崩れ折れそうになりそうな体に鞭を打ち走る。ハジメも既に走り出しており、階段近くからの魔法による援護も始まった。

 

 もうすぐで階段に着く、そう思った途端凍りつく。

 

 無数に飛び交う魔法が突然として軌道を曲げた。

 

 ……走っているハジメに向かって。

 

「ハジメぇ! 逃げろぉ!」

 

 咄嗟に踏ん張り火球を避けようとするハジメの前に火球が突き刺さった。衝撃で吹き飛ばされるハジメ。フラフラと立ち上がり前に進もうとする。

 

 だが、運が悪かった。

 

 ……遂に橋が崩落する。

 それはそうだ。2度のベヒモスによる橋への攻撃、魔剣による衝撃で既にギリギリだったのだ。そして、今の火球がトドメになったのだろう。

 

 悲鳴をあげながら奈落に落ちたのはベヒモス。ついでハジメが落ちそうになる。

 

「させねぇ!」

「ッ! 優樹、何で!」

「決まってんだろ!」

 

 ハジメのいる場所に駆け寄り今にも落ちそうな所をガッチリと掴む。

 

「友達だから、なぁぁああ!!」

 

 唸り声をあげ魔剣により強化されたステータスで階段前にハジメを投げ飛ばす。

 次いで自分も脱出しようと足に力を込めようとして、力が抜けその場に倒れ込む。

 

 ああ、こりゃダメだな……。

 

 崩落に巻き込まれながらそう思う。

 

 意識を失う直前に見えたのは、光輝に羽交い締めにされ泣き叫んでいる雫と、愕然とした表情でこちらを見るハジメだった。

 




ちょこっと解説
ブレイズドライブ
これはゲーム内での魔剣少女達の必殺技に当たるものです。これは敵を攻撃したりすると出てくるサファイアを魔力として発動しますがもちろんこの小説にはないのでオリ主は魔力を込めまくって発動しました。消費は少ないからまだダイジョブダイジョブ。
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