世界の総人口の約八割が何らかの“特異体質”となった超人社会。超常である“個性”を犯罪に悪用する
―――某県・慈恵田病院
「失礼します」
一人の看護師がカートを押しながら個室の病室に入った。本来ならノックもせずに入るのはマナー上で良くないが、この病室の患者にはその様な気遣いは不要だと彼女は思っていた。
「おはようございます。今日は良い天気ですよ」
ベッドの上で眠る患者に声をかけるが、患者が起きる気配は無い。その患者には点滴などの様々な管が体に取り付けられており、モニターは患者の心拍数が正常値である事を示していたが、脳波には全く反応が無い事を示していた。
「今日も反応なし、っと………」
看護師はいつもと変わらない様子の患者に溜息をついた。
彼がこの病院に運ばれてから、どのくらい経っただろうか? 意識の無い植物人間としてどのくらい経っただろうか?
季節の移り変わりを感じる事もなく、ただ眠り続ける患者に憐憫を浮かべながらも看護師は日課となった仕事に取り掛かろうとする。
「それじゃあ、今日も体を綺麗に拭きましょうね」
カートに載せていたアルコール綿などを取り出しながら、患者の身体を洗浄しようとする。
その時に、奇跡が起きた。
「………?」
最初は看護師も見間違いだと思った。だが、目を凝らして見れば、患者の目がぼんやりと開いて自分を見返していた。
「岸波、さん………? 岸波白野さん、聞こえますか?」
看護師は手にしていたアルコール綿を取り落としながらも、眠り続けていた患者―――岸波白野に声をかけながら、肩を叩く。
「………っ、………」
岸波白野は弱々しいながらも、どうにか声を出そうとしていた。
もう疑いようが無い。入院以来、今まで眠り続けていた岸波白野が、目を覚ました―――!
***
―――同県・グラントリノヒーロー事務所
一見して廃ビルと見間違いそうな建物の中に、一人の老人が住んでいた。老人―――酉野空彦ことグラントリノは部屋の中で一番綺麗に整えられた仏壇で線香をあげていた。
「お前さん達が死んで、もう二年になるのか………」
グラントリノは仏壇に飾られた二つの写真に向かって、寂しそうに呟いた。その内の一人―――30代くらいの女性はグラントリノと目元がよく似ていた。
「この事務所もずいぶんと広くなったもんだ。まあ、もともと俺は引退した様な物だったからな。
まるで二人に話しかける様にグラントリノは独り言ちる。
その時、事務所の電話が鳴った。グランドトリノは溜息を一つ吐きながら電話を取る。
「はい、こちらグラン―――ああ、いや。酉野です」
グラントリノは少し考えてヒーロー名ではなく、本名を名乗った。積極的に切り盛りしていた二人が亡くなり、開店休業となったヒーロー事務所など名乗っても仕方ないだろう。
「ああ、慈恵田病院さんですか。いつもお世話になっておりま―――はい? ちょ、ちょっと待って!」
興奮気味に話す相手にグラントリノの顔色が変わる。思わずため口になってしまう程に衝撃的な内容だった。
グラントリノは自分に落ち着く様に言い聞かせながら、受話器に大声を出す。
「白野が………ウチの孫が、目を覚ましたというのは本当か!?」
くえすちょん。なんでグラントリノの孫にしたの?
あんさー。なんとなく。
このssはそんな感じのノリといい加減さで書いています。