Provable Fantasy   作:沖黍州

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C97にて「かきまぜぼう」様より発刊される野﨑まど合同誌に寄稿したものです。

こちらでは1~4章まで公開します。

ご興味があれば、是非かきまぜぼうの新作をお買い求めください。


第0章~第2章

 東京に、雪が積もる。

 雪景色は、人をわくわくさせる。どこか落ち着きのない雑踏を潜り抜けて、理桜・ややや・柊子の三人は戦場へ向かう。

 三人にとって過去最大級の掃除合戦が始まろうとしていた。

 

     1

 

 エレベーターの「20」のボタンを押すと、あっという間に吉祥寺の高層マンションの最上階に着く。

 目的地から眺める景色は本当に綺麗なのだ。きっと、雪化粧した階下の景色は最高だと思う。

「マンションの中、あったかいね」

 そう呟いた柊子の頬で、小さな雪が溶けている。理桜は、観戦者はいいなぁ、と思う。ここに来るまで、元気なやややが投げてくる雪玉を交わしたり、反撃したり、理桜は汗びっしょりになっていた。

「二人とも風邪引かないでね……」

「ややや、風邪引いたことないからだいじょーぶ!」

 この元気の源はなんなのだろう。

 理桜は、もしその源泉が分かれば、いつもまぶたが閉じそうな黒髪の女の子に分けてあげられるからいいのにな、と思う。

 二〇階。エレベーターを降り、真っすぐ部屋の扉の下へ向かう。

 今日の三人の目的地は、最原家だった。

 

     2

 

「ふぁあい」

 呼び鈴を鳴らすと、いつもより二〇〇%増しくらいで眠そうなさなかが出てきた。

「おとうさんおかあさんはいません宅急便ならまた後日お願いします郵便はポストか宅急ボックスに」

「理桜よ」

「やややも!」

「わ、わたしも」

 自動音声のような手続きで閉じられようとした扉に足をがっとぶつけて止めて、三人はさなか家に押し入った。

「ふぁあ……あれ、皆さんどうしたんですか」

「いつにも増して眠そうね、あんたらしくもない面構えよ。どうしたの?」

「昨晩まで論文書いてたんですよー。あぁー、皆さん寛いでいただいて構いませんので、私はこれで失礼します……」

 リビングに三人を通して自室に戻ろうとするさなか。

 その肩をぐいっと掴んで、理桜が呼び戻す。

「なんです、ついに私襲われるんですか、きゃぁーー」

「違うわよ。わざとらしい。あんた、どうせ自分の部屋ろくに片づけてないでしょ」

「どの本がどこにあるかくらいは分かりますよぉ」

 まぶたを閉じそうなさなかの表情に、理桜はやるせない気持ちを少し覚える。

「あのね、さなかちゃん。私たち、片付けのお手伝いに来たの」

「宝探しだぁっ! ひゃっはー」

 妙にテンションの高いやややをごついて、理桜はさなかに向き合う。

「ありがとうございます……」

「?」

 さなかの反応に理桜は戸惑った。あまりに素直で彼女らしくないと感じたからだ。

 とろんとしたまぶたが閉じかける。

「あんた、もしかして徹夜?」

「そうですよー。久々に三徹やっちゃいました、ふわあ」

「ああもう、シャキっとしなさい、聡明な頭が……」

 さなかに対する賛辞を言いかけて、理桜ははっと言い淀む。

「……賢いあんたの頭が台無しじゃない」

 しかし、相応しい単語を見つけることができず、理桜はそのまま続けた。

「ううん……」

 理桜の言葉にもさなかの反応は鈍い。

「お母さんはどうしたの」

「母はクリスマスなので、父と一緒に」

 理桜は最原家の事情を察した。

「ということは、あんたの不摂生を邪魔する人が誰もいなかったわけね……」

「ふわぁ、追い込みでしたからねぇ」

 とろんとした瞳が理桜を面食らわせる。

「ああもう、あんたは仮眠取ってなさい! 私たちで勝手に掃除するわよ」

「はぁい」

「後で本がどこ行ったとか言わないでね!」

 さなかをリビングのソファに横たわらせて、理桜が言う。こくりとさなかが頷いた。今日はどこからどこまでいつもと調子が違う。柊子がどこから持ってきたのか、さなかに小さい毛布のようなものをかけてあげていた。

「というわけで、私たちで掃除やるわよ」

「理桜ちゃん、いいのかなぁ。さなかちゃんの部屋に勝手に入って」

「いいのいいの、今、本人の同意も取ったし」

「ややや、頑張る!」

 理桜はやややの掃除戦力に疑問を持っていたが、そのことには言及しない。

「じゃあ、行くわよ」

 理桜の掛け声とともに、三人はさなかの部屋へと足を踏み入れた。

 

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