夜天宿した太陽の娘   作:吉良/飛鳥

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霧が濃いな……では、『霧』をお題に一句頼むByアインス     霧の中 一人彷徨う 断骨剣Byエステル      愛する人のクラフトを入れるあたりは加点ポイントなのかしらね?Byシェラザード


軌跡108『霧と鈴の音と、その先にあったモノ』

Side:アインス

 

 

意識不明になってしまったロレントの住民だが、デバイン教区長の見立てでは、『眠っているのと同じであり、直ぐに容体が悪化する事はない』との事だった……眠っているだけならば問題はなかろうな。

とは言っても、この状態を長引かせる事が出来ないのもまた事実だな。

 

 

 

《如何して?》

 

《眠っているだけだから今の所は命に別状はないが、此のまま眠り続けていては、体内の栄養が枯渇してしまって、そう遠くないうちに衰弱状態になってしい、其れが長引けば死に至るからだよ。》

 

《其れは、確かにこの状況を長引かせる事は出来ないわね!!》

 

 

 

デバイン教区長も同じ考えだったようで、『昏睡の原因を突き止めて、早急に対策を考えなければなりませんね。』と言っているからね……だが、現状では原因が何であるのかは全くの不明だ。

最も怪しいのは、此の霧なのだが、恐らく霧其の物には大した効果はなく、本当に只の霧である可能性がある訳だが、此の霧に紛れて何かをしている奴が居ると、そう考えた方が良いだろう。

そして、その可能性として最も高いのは《結社》の人間な訳だが……

 

 

 

「クラウス市長、リタさんが倒れる前後で何か変わった事はありませんでしたか?

 例えば……見知らぬ誰かが訪ねて来たとか、変な物音を聞いたとか。」

 

「そう言えば……倒れているリタさんを見つける前に、かすかに鈴の音が聞こえたのよ。」

 

「鈴の音……」

 

「えぇ、とてもキレイな音色だったわ。誰が鳴らしていたのかは分からないのだけれど……」

 

 

 

シェラザードがクラウス市長に話を聞くと、市長ではなくミレーヌがリタを見付ける前に鈴の音が聞こえたと言う事を教えてくれたのだが、鈴の音か……此の霧のロレントに降り立った時にもかすかに聞こえたが、何か関係が有ったりするのだろうか?

シェラザードは少しばかり驚いた表情だったので何か思い当たる事があったのかも知れないが、まぁ其れは後で聞く事にするか。若しかしたら、あまり聞かれたくない事であるかもしれないからね。

 

 

 

「ルシフェリオンで、思い切りぶっ叩いたら目を覚ますのではないでしょうか?」

 

「シュテル、其れは更に深い眠りに就く可能性があるから絶対ダメ。」

 

「そうですか。其れは残念です。」

 

「と言うか、如何してお前はそう思考が物騒な方向に向いてしまうんだ?理のマテリアルらしく、もっと理論的で理性的な意見を述べてくれないか?」

 

「……高町なのはをベースにしているせいで、如何にも考えるよりも力尽くで如何にかしようとしてしまう癖がついてしまっている様です。」

 

「お前、彼女をベースにしていると言えば、大抵の物騒な思考を誤魔化せると思ってるだろ?」

 

「……そんな事はありませんよ?」

 

 

 

なら顔を背けるな、こっちを向け。

ナハトヴァールに侵食されたせいで夜天の魔導書の構成素体であった彼女達にも少なからず影響が出ていたのかも知れないな……もしも適うのであれば私にナハトヴァールを植え付けた奴を過去に遡ってブチ殺してやりたいと思っても、罰は当たらないだろうな。

尤も、其れをやったら私は此の世界に存在する事はなくなってしまうのだけれどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜天宿した太陽の娘 軌跡108

『霧と鈴の音と、その先にあったモノ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エステルとパットは眠っているルックを心配していたが、其処はマギーが『教区長様も言ってただろ、只眠ってるだけだって。』と言って不安を吹き飛ばすように言ってくれた。

まぁ、その後でパットに『大体どうしてこんな霧の中外に出たりするんだい。だからこんな事になるんだろ!』と軽いお小言を言っていたが、其処でエステルが何かに気付き、『もしかして、ルック達が眠っちゃったのって、此の霧のせいなの?』とマギーに尋ねたが、マギーは『さぁ如何だろう?そう言う事はアタシ達よりも、エステルちゃん達、遊撃士協会の方が詳しいんじゃないかい?』と言われた途端、エステルは弾かれたように家を飛び出してしまった。

マッタク持って忙しないな……一体如何したと言うんだ?

 

 

 

《アインス……アタシ馬鹿だ!

 ロレントで霧なんて、絶対変だって分かってるのに……昨日の内にちゃんと調べてたら、皆は倒れずに済んだもかもしれない……!》

 

《ふむ……確かにそうかも知れないが、仮に昨日の内に調べたとして、果たしてロレントを包む霧の真相が何であるかを掴む事が果たして出来たのだろうか?

 其れとも、お前は昨日の内に調べておけば、真相を明らかに出来るとそう思っていたのか?》

 

《え?……そう言う訳じゃないけど、でも昨日の内にちゃんと調べておけば、もっと何か出来たかも!》

 

《確かにその可能性はあったかも知れないが、恐らく昨日の内にちゃんと調べていたとしても何も変わらなかっただろう……何せ、手掛かりは何も無いのだからな。

 此の霧が何処で発生しているのか、せめてそれが分かれは何か出来たかも知れないが、其れすら分かっていないのでは到底何か出来るモノではない……故に、此の結果は誰のせいでもない。

 全ては、此の霧に隠れて何かをしている奴の仕業だ。》

 

《其れは誰よ!誰がこんな事をしてるのよ!!》

 

《知らん。だが、良からん事を企んで居るのは間違いないだろうよ。故に、『私のせいだ』と言って思考を停止させている暇は何処にも無い。この事態を打開したいのであれば、後悔するよりも先に動く事が重要だ。

 後悔は、其れでもどうしようもなかった時にしても遅くは無いからな。》

 

《……確かにその通りね。》

 

 

 

《結社》が関わっているかも知れないと言う事は、まだ言わない方が良いだろうね……割り切ったように見えて、エステルはヨシュアと関係のある《結社》の事となったら、周りが見えなくなってしまう可能性があるからな。

表面上は何時も通りだが、ドロシーの写真を見てからのエステルの精神状態は、可なり危ういギリギリのバランスで平静を保っている状態だから、何が切っ掛けでそのバランスが崩れてしまうか分からないからね。

 

 

その後、一足先に事件の調査に戻ったシェラザードと合流したのだが、その場にはエリッサも居て、エステルが『おばさんの具合は如何?』と聞くと、エリッサは、少し苦笑しながら『う、う~ん……でもお母さん気持ちよさそうに眠ってるだけだし、きっと大丈夫だよ。ありがとね、エステル。』言って来た。

エステルを心配させまいとして言った事なのだろうな。

 

「シェラザード、この事件は霧が原因だと思うか?」

 

「無関係とは言えないでしょうね。被害は外に出ていた人に集中しているし……」

 

「ね、ねぇエステル、ティオは大丈夫かな?昨日、あの子言ってたよ、パーゼル農場にも少し霧が出てるって……」

 

「あ、あんですってー!?」

 

 

 

だがしかし、パーゼル農場でも霧が出てると言う事を聞いたエステルは、速攻でパーゼル農場に向かってギアマックス!今のエステルならば、ウサイン・ボルトにも勝てるかもしれんな。

其れに引っ張られている私はとっても不思議な気分だけれどね。

 

 

 

「待ちなさい!未だロレントでの聞き込みが!」

 

「あばよ、とっつぁーん。」

 

「誰がとっつぁんよ!あぁ、もう!オリビエ!ティータちゃん!協会に戻ってアイナに報告を頼むわ!!」

 

 

 

いや、其処でボケるなシュテル。と言うか、お前も付いて来るのか……まぁ、構わないけれどな。――パーゼル農場に、向かう際にかすかに聞こえたのは、鈴の音だったか?矢張り無関係ではないかも知れないな。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

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・・・

 

 

 

最早人類の限界を突破してるんじゃないかと思う位のスピードでパーゼル農場に到着した訳だが、結果は手遅れだった……フランツもハンナも、チェルもウィルも、そしてティオも、パーゼル農場の全員が昏睡状態に陥ってしまっていた。

こんな光景を見てしまったら、普通は心が折れてしまいそうなものだが、先程少しばかり激を飛ばしてやった事でそうならずに済んだらしい。

少し遅れてシェラザードも到着し、この光景には息を呑み、そしてエステルがショックを受けてるんじゃないかと思ったみたいだが……

 

 

 

「シェラ姉……アタシに一発ビンタして!手加減なしで!!」

 

「……は?」

 

 

 

エステルがまさかの斜め上の事を言ってくれ事に驚いていた。いや、私だって驚いているけどな?一体イキナリ何を言っているんだエステルは?

当然シェラザードも『アンタ、イキナリ何言ってんの?』と言ったのだが、エステルは『何でも良いから、兎に角一発お願い!今のアタシには必要な事だから!』と言い切り、エステルの迫力に押されたのか、『分かったわ……行くわよ!』と言うが否や、シェラザードのキレの良いビンタが炸裂!

うん、感覚を共有してるから普通に痛い。

エステルがダメージを受けたら私にも、半実体化した私がダメージを受けたらエステルにもダメージがフィードバックするのに、半実体化した私がエステルを攻撃した場合と半実体化した私にエステルが攻撃した時には互いにダメージがフィードバックしないのか謎だがな。

 

 

 

「効いたぁ……ありがとうシェラ姉、おかげで気合が入ったわ。

 アインスも言ってた事だけど、この事態を打開するには後悔するよりも先に行動する事だって……でも、この光景は流石にショックだった。だから、シェラ姉に一発気合を入れて貰ったのよ!

 だからもう大丈夫!アタシは、ティオ達を、ロレントの人達と、シェラ姉やレン、ヨシュアも……アタシは皆を助けたい!」

 

「気合を入れるって、だからって普通アタシに自分を殴れとか言う?」

 

「アインスが元居た世界には、気合注入のビンタをするオジサンに行列が出来るって聞いたから、気合を入れるには此れが一番かなぁって。」

 

「アインス!アンタ何を教えてんのよ!?」

 

「成程、アントニオなあの人ですね。」

 

 

 

……如何やら私のせいだったみたいだな。暇な時の雑談だったんだが、まさか覚えていたとは……だが、此れでエステルの気合は充実したのだから結果オーライと言う事にしておこう。

取り敢えず、エステルに気合が入った事を理解したシェラザードは『今回の事件は霧のせいではなく、その霧に紛れて犯行に及んでいる真犯人が居る筈だから、その犯人を見付けたい。手伝ってくれる?』と聞いて来たので、私もエステルも、そしてシュテルも迷う事無く了解の意を示した。

だが、その前にティオ達をベッドに運ばないとなのだが……

 

 

 

「その必要はないで。」

 

「け、ケビンさん!?何でイキナリ現れるの!?」

 

 

 

突然登場、七耀協会の不良神父ケビン・グラハム。

なんでもデバイン教区長から、王都の大聖堂に事件の報告があったらしく、『力になれるかと思って急いで来てみたんや』との事だった……にしても、タイミングが良すぎると思うのは私だけか?

いや、今回だけではない……ヨシュアが居なくなった後、ル=ロックルでの合宿を終えて王都に戻ってからルーアンに向かう時、そしてこの間の王都の一件……思えばケビンはタイミングが良過ぎるほどに私達の前に現れていたな?

此処だけを見ると、《結社》の一員かと穿った見方をしてしまうが……少なくとも、ケビンからは悪意や敵意は微塵も感じないから大丈夫だろう。レンと言う前例はあるが、アレはレンが純粋な子供だから私もエステルも見抜けなかった部分もあるからな……大人のケビンが、悪意を隠して私達に接触して来たと言うのであれば、少なくとも私は絶対に気付ける自信がある!!

 

 

 

「神父は医療のプロフェッショナルやからな。此処は俺に任せとき!」

 

「お言葉に甘えさせて貰うわ。行くわよエステル!アインス!」

 

「うん!」

 

「シュテル、お前はケビンを手伝ってやってくれ。流石に一人で五人もベッドに運ぶのは骨が折れるだろうからな。」

 

「了解しました。御武運を。」

 

 

 

農場を出ると……また聞こえて来たな、鈴の音が。

其れはシェラザードにも聞こえたらしく、エステルを誘導して行く…………そうして着いた先はミストヴァルトだった。一年中霧に覆われているこの森ならば、霧の発生源としては申し分ないか。

奥に進むにつれて鈴の音も大きくなり、エステルにも聞こえるようになっているみたいだな。

そろそろ、最深部に近いと思うのだが……

 

 

 

『グガァ!!』

 

「魔獣!!」

 

「アインス!!」

 

「オ~……オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!」

 

その直前で魔獣が出て来たので、両手のパンチラッシュ、『オラオラの連打』でぶちのめしてやった。半ば、近接型のスタンドと化している私的に、この技は外せないな。

そして辿り着いた最深部、其処にある一際大きな木からは極めて濃い霧が発生していた――となると、此れが霧の発生源となる訳だが、なんと其の木にはゴスペルが嵌め込まれていた。

私の予想は、如何やら当たってしまったみたいだな……!

 

 

 

「こんな所でゴスペルを使ってたなんて……其れじゃ、今回の昏睡事件の犯人も、《結社》の執行者?……兎に角、結社の奴等が現れる前に……」

 

「待って!居るんでしょ!?姉さん!!」

 

 

 

エステルが、結社の人間が来る前にゴスペルを回収しようとしたのだが、シェラザードは其れを止めると、『姉さん』とやらに声を張り上げた……私達以外の誰かの気配を感じていたが、私の気のせいではなかったみたいだな。

 

 

 

「やっと呼んでくれたわね。

 久しいわねシェラザード……八年ぶりになるかしら?」

 

「えぇ、そうよ。姉さんが私の前から消えたあの日からね。」

 

 

 

シェラザードの声に呼応するように現れたのは、東方風の、やたらと露出度の高い衣装を身に纏い、右手に大きな扇を持ち、長い髪を頭頂部より少し後ろで一つに纏めた妙齢の女性だった。

まさか、シェラザードが所属していた旅芸人一座で幻術士として活躍していたお前とこんな形で再会するとは夢にも思っていなかったよ……マッタク持って、神様って奴はブッ飛ばしたくなるほどのサディストなのかも知れないな?

少なくともシェラザードにとって、この再会は決して望む形のモノでは無かっただろうからね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continuity 

 

 

 

 

 

新作は何が良い?

  • IS:楯無逆行モノ
  • IS:ハーレム無しヴィシュヌヒロインモノ
  • ガンダムSEEDとISのクロス
  • 作者初の小説である遊戯王小説の再構成モノ
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