夜天宿した太陽の娘   作:吉良/飛鳥

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女王宮に入る為の切り札を切るか……Byアインス      そうね、切りましょうByエステル      ……何かとっても嫌な予感がするんだけど?Byヨシュア


軌跡75『女王陛下との謁見と王都の秘密』

Side:アインス

 

 

グランセル城の空中庭園でヒルダに見つかり、今は侍女の控室に来ている……此処ならば盗聴される危険もないから話をするには打って付けの場所と言えるだろうね。

その控室で面識のないヨシュアに改めてヒルダが自己紹介をし、その後で『この城で何をする心算か』と聞いて来た……ヨシュアは、先ずは誤魔化してから真意を探ろうとしたらしく、『城の見学を――』と言っていたが、其れを隔てる形でエステルが其れを制して、『女王様に会いに来ました』と直球をぶちかましたか。

 

 

 

「エステル!」

 

「リシャール大佐の計画を止める為には、ラッセル博士からの伝言を女王陛下に届けないといけないんです!

 ヒルダさん!アタシ達が女王様に会えるように協力して貰えませんか!?」

 

 

 

其れにヨシュアは驚くが、エステルは『どうしても女王様に会わなければならない』と言う事を必死に訴え、それを聞いたヒルダは『女王宮は情報部によって二十四時間監視されている状態で、中に入れるのは公爵閣下と大佐殿……そして、陛下の身の回りを仰せつかった私と侍女達だけ……』と前置きした後で、『……ですから、エステル殿ならば……貴女でしたら女王宮にお通しできるかもしれませんね。』と協力を承諾してくれた。

確かにエステルならば侍女の振りをして女王宮に入る事が出来るだろう。

ヨシュアは『僕も一緒に』と言っているが、其処はヒルダに『殿方のヨシュア殿には無理な話かと……』と言われてしまった……まぁ、確かに普通は無理な話なんだが、ヨシュアの場合は奥の手があるのだがな。

 

《エステル、ヨシュアもいた方が心強いよな?》

 

《え?そりゃ、まぁ。》

 

《ならば、奥の手を使おう。》

 

《奥の手?……成程、そう言う事ね……確かに此れはヨシュアにしか使えない奥の手だわ。》

 

 

 

精神世界のエステルはとっても悪い顔をしていたが、其れは私も同じだろうなぁ。

そして、現実世界のエステルの顔にも若干の影響が出ていたらしく、ヨシュアが『え、エステル、なんか顔が怖いよ』と若干引いてた……が、エステルはその言葉を無視してヨシュアの肩を掴むとそのまま強引にロッカールームにドナドナして行った。

その後、ロッカールームにはヨシュアの悲鳴が轟くのであった……いやぁ、ノリノリだったなエステル。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜天宿した太陽の娘 軌跡75

『女王陛下との謁見と王都の秘密』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロッカールームで身支度を済ませた私達は、ヒルダに連れられて女王宮に。

入り口で門番の情報部の兵士には、ヒルダが『本日入った新米侍女見習いです』と紹介したか……『公爵閣下の命令で急遽補充した』と言われてしまっては何も言えまい。

デュナンの命令=リシャールの命令と言う感じだろうからな。

とは言っても、一応の素性を知ろうと名を聞いていたかエステルは『レナ』と名乗り、もう一人の黒髪の美少女は『カリン』と名乗った……『カリン』と名乗った美少女に兵士達が見惚れたのは、まぁ仕方ないだろう。

そんな訳で、難なく女王宮に入り込む事が出来た訳だ。

 

 

 

「巧く行ったようですね……よもやこんな方法があったとは、お見事ですエステル殿。そしてアインス殿。」

 

「前に劇でお姫様役を演じた事があったのを思い出したんです。」

 

「僕としては是非とも思い出してほしくはなかったんだけどね……と言うか黒歴史がまた一つ増えた……」

 

「何処に監視の目が有るか分かりません。申し訳ありませんが、事が済むまでは我慢ください。……大丈夫、よくお似合いですよ。」

 

 

 

ヒルダ、其れは褒め言葉じゃなくてトドメの一撃だヨシュアにとっては。

そして、アリシア女王のいる部屋に向かう道中、ヒルダが言っていた『ある方』についてヨシュアが訪ねたが、如何やら其れはアリシア女王やクローゼからも厚い信頼を得ているらしい……名を明かす事は出来ないが、ソイツが私達なら必ずアリシア女王の力になってくれると言っていたか……ソイツの正体が、何となく分かった気がするな。

 

 

 

「どうぞ中へ。女王陛下がお待ちです。」

 

 

 

ヒルダに促され、一番奥にある部屋の中に。

十年前にもグランセル城には来たが、此処に入るのは初めてだな……部屋の中に居たのは当然ながらアリシア女王。十年前よりもお歳は召したものの、優しそうな雰囲気は変わらず、歳を重ねた美しさが備わっている。……『年齢に不相応に若い』よりも、『年相応に老いていても美しい』方が自然で綺麗だと思うのは私だけだろうか?

 

 

 

「ようこそいらっしゃいました。十年振りですね、エステルさん。」

 

「はい、御無沙汰してます女王様!」

 

 

 

先ずは挨拶だ。挨拶は大事だからなうん……ヨシュアは『申し訳ありません、こんな格好で』と恐縮していたが、アリシア女王は『此の状況下で、よく此処まで辿り着いて下さいました』と逆に労ってくれた。……こうして人を労う事の出来るアリシア女王の血族に、なんでデュナンの様なチャランポランタンな奴が居るのか不思議でならないな。

取り敢えず、先ずは博士からの伝言を伝えると共に、私達が知っている限りの事をアリシア女王に話すとするか。

 

 

 

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此れまでの事を話すと、如何やらアリシア女王は『黒のオーブメント』の事を知っていたらしく『博士から託されたあなた達になら話しても構わないでしょう』と前置きしてから、この王都の地下には巨大な導力反応を示す何かが存在し、其れを調査したラッセル博士は『此処には、未だに機能を失っていないアーティファクトが埋まっているかも知れない』と言っていたか。……アーティファクト、ダルモアが使っていた杖みたいなモノか。

それを聞いたエステルは『大佐のやりたい事って黒のオーブメントでアーティファクトの導力を停止させる事なのかな?』と言い、ヨシュアも『寧ろ其れ以外には考えられない』と同意してくれた。

だが、アリシア女王が言うには地下のアーティファクトは未だにどんなものなのかハッキリしていない上に非公式の存在であるらしい……だとするならば、其の非公式の存在をリシャールはどうやって知ったんだ?いかに情報部が優秀だとしても、王族が非公式にしている存在を知ると言うのは難しい筈だが……っと、今は其れは如何でも良いか。

何れにせよ、ラッセル博士が懸念する程の事態だ……此のままでは必ず国にとって良くない事態が起こるだろうな。

 

此れはヨシュアも思っていた事だったらしく、ヨシュアの口から其れを聞いたエステルは、『今すぐ大佐を止めに行きましょ!』と息巻いていて、私も同じ気持ちだったのだが、アリシアは『この事件には此れ以上関わってはいけない、大佐には私から真意を問いただしておきましょう』と、やんわりと『もう此の件から手を引け』と言われてしまった。

勿論エステルは『如何して!』と抗議したが、アリシア女王は十年前の百日戦役で起きた事を、カシウスが何故軍を辞めて遊撃士になったのかを話してくれた……己の立てた反攻作戦が、結果として妻を死なせてしまった自責の念から軍を辞めて遊撃士になった――残されたエステルの側に居る為に。

そして、だからこそ此れ以上危険な事をして欲しくないか……万が一の事があったら、また大切な家族を失う事になったら、か。

普通ならば、此処まで言われた折れる所だが、生憎と私とエステルは普通じゃない……寧ろ、こんな事を言われたら逆に燃えて来るんだ。

 

 

 

「そんな顔しないで……自分を責める必要なんてありません。だって女王様は、戻って来た平和をずっと守り続けて下さったじゃありませんか。

 父さんもそう……父さんが帝国から王国を守ってくれて、お母さんが命がけで私を守ってくれたから、今アタシはこうして平和なりベールで生きているんです。

 だからアタシも……守りたい!平和に暮らせる幸せな日々を!今まで知り合った大切な人達を!!アタシなりの方法で守りたいんです!!」

 

 

 

特にエステルはな。

エステルは、一度自分で決めた事は絶対に曲げん……その判断が茨の道であったとしても、自分でそれが正しいと判断したらドレだけ傷付いたとしてもグイグイ進んで最終的に正解を捥ぎ取ってしまうある種究極の馬鹿だ。だが、そんな馬鹿だからこそ己の意思を最後まで貫く事が出来る。

どれだけ言葉を並べようとも、もうエステルを、私達を止める事は出来ん。十年も一緒に居たせいで、私にもその馬鹿が確りと伝染しているみたいだからな。

 

 

 

「名君と誉れ高いアリシア陛下が、何故こうも容易くリシャール大佐の計画に巻き込まれてしまったのか……」

 

 

 

と、此処でヨシュアが口を開いたが……確かに言われてみれば其れは確かに謎だな?王国軍はあくまでも女王配下の組織であり、軍の実質的なトップでもアリシア女王が動けばリシャールのクーデターは簡単に阻止出来た筈だ。

だが、其れをアリシア女王はしなかった?……いや、出来なかったのか!!

 

 

 

「ヨシュア、アインスが『女王様はクーデターを阻止しなかったんじゃなく出来なかったんじゃないか』って。」

 

「流石はアインス、気付いたね。そう、しなかったんじゃなくて出来なかったんだ。」

 

「えっと、如何言う事?」

 

「覚えてるエステル?リシャール大佐が軍の実権を手に入れる為に使った方法を……アノモルガン将軍すら逆らえなかった、最も効果的で卑劣なやり方を。」

 

「人質……!まさか、女王様も!!」

 

 

 

其のまさかだろう……アリシア女王は孫のクローゼを人質に取られているんだ――リシャールめ、クローゼを人質に取るとは良い度胸だな?もしもクローゼに掠り傷の一つでもつけてみろ、永遠に覚めない夢の中で永遠の悪夢を見せてやる。何度も死を体験する『無限死刑』と言うのも有りかも知れんな。

 

 

 

《アインス、気持ちは分かるけど落ち着いて。》

 

《……ならばエステル、お前はヨシュアが人質になってると聞いて落ち着いていられるか?》

 

《落ち着く落ち着かない以前に、ヨシュアが人質になる事態を想定できないわ。ヨシュアが人質になるとか、父さんが空賊に捕らえられる位あり得なないんじゃない?》

 

《確かにそうだな。》

 

しかしまぁ、メイド服で女装しながらシリアスな顔でシリアスな事を言うヨシュアと言うのは何ともシュールなモノがあるな……笑ってはいけないんだが笑いそうで困る。

だが、クローゼが人質に取られているのは本当だったらしく、アリシア女王も『肉親の情の為に国を売り渡す事など出来ません』と言っていたが、『ですが、あの子は私のたった一人の孫娘……見殺しには出来なくて』と、クローゼの存在を楯にリシャールに屈した事を認めたか。

其れをアリシア女王は悔いている様だが……

 

 

「「そんなの、当たり前じゃない!」か!!」

 

「エステルさん、アインスさん?」

 

「「おばあちゃん(祖母)が、攫われた孫を心配して、何が悪いって言うんです(言うんだ)?

  でも(だが)、大丈夫。でも、大丈夫(だ)。そんな困ってる人達の為に私達遊撃士は存在してるんですから(してるのだからな)。

  出来ない事があるならアタシ達に(私達に)、言って下さい(言ってくれ)!!」」

 

 

ハモッたが、其れだけ私とエステルの思いは同じだったと言う事だ。

特に私は、クローゼが人質になっているといのであれば助けないと言う選択肢はないからな――いや、エステルとヨシュアもそうだろうが、彼女の恋人としては余計にな!!

 

 

 

「エステルさん、それにヨシュア殿……私、アリシア・フォン・アウスレーゼはあなた達を通じて遊撃士協会にご依頼します。

 依頼内容は、情報部によって囚われている人質全員の救出です。……クローディアを、助けて貰えますか?」

 

「モチのロンです!!」

 

「しかと承りました!」

 

「ありがとう……此れで私も、大佐の脅しに最後まで屈さずにいる事が出来そうです。」

 

 

 

安心しろアリシア女王、クローゼは必ず助け出して見せる――我が主には最後まで添い遂げる事が出来なかったが、だからこそ彼女には最後まで添い遂げたいからね。

何よりも、此の世界で私は彼女に騎士の誓いを立てた……ならば、危機的状況にある彼女を救わないと言う選択肢はないからな。

 

そして、女王宮を後にした訳だが……帰り際もヨシュア扮するカリンは兵士達に見惚れられていた――エステル以上に見惚れられるって言うのは少しばかりアレだな……女装した男子負けると言うのは癪だな。――まぁ、エステルはそれ程気にしてないみたいだけれどね。

取り敢えず着替えて、今は部屋に戻る途中だ。

 

 

 

《アインス……女王様、一人で大丈夫かな?》

 

《今のグランセル城は、彼女にとっては監獄同然で、命の保証すらない危うい場所だ。

 だが彼女は、其れでも逃げ出さずに一人で戦っている……ならば私達は、せめて情報部に囚われている人質を全員無事に解放して、少しでも彼女を安心させてやらねばならないだろう。》

 

《うん、そうよね!!》

 

 

「…………」

 

「って、どうしたのヨシュア?」

 

 

 

ふむ、確かに如何したヨシュア?何やら決意を固めたような顔をしているが……まさか、今回の一件で女装に目覚め、そっちの方向に積極的になる決意でもしたのか!?

 

 

 

「ヨシュア、アインスが『女装に積極的になる決意でもしたか。』だって。」

 

「しないよそんな決意!!マッタク僕を何だと思ってるのさ!!」

 

「え?アタシの家族でしょ?」

 

 

 

其処は凄く全うに返すんだなお前は……いや、此の場でボケても意味ないが。

 

 

 

「家族か……そうだね。

 ……エステル、僕は……僕は君と旅をしてきて少しは強くなれたと思うんだ。」

 

「え?」

 

「僕は今……こうして君と一緒に居られる事に感謝してる……出来るなら、これからもこうして君の側に居させて欲しいんだ。――だから、約束する。

 事件が全部片付いて、父さんが無事に帰って来たら……僕の過去を、君と出会う前の事を話すよ。」

 

 

 

っと、此れは予想外の展開だな?……『これからも君の側に居させて欲しい』って殆ど告白じゃないのかと思うのだが、此の言い回しではエステルには『家族として』としてとしか伝わって居ないだろうな。

尤も当のエステルは、ヨシュアが己の過去を話してくれると言う事の方が嬉しかったみたいだが――『ホントに?』と念を押すエステルに『此の星空に誓って約束する』とは少々気障だが、ヨシュアはそんな気障なセリフも似合うイケメンなので許す。オリビエが同じ事を言ったら殴る。

しかしまぁ、なんだ……精神世界にまでエステルの嬉しさが侵食して来て、私の周りではファンシーでカラフルな動物達がサッカーの応援状態になってるんだが……如何してこうなった。此れもエステルが純粋だからこその事かもしれんがな。

 

 

 

「あ、あのね!アタシもヨシュアに話したい事があるの!!

 アタシもきっと……この事件が終わる頃には、ちゃんとヨシュアに伝えられると思うから。」

 

 

 

更に予想外……何とエステルもヨシュアに伝えたい事があると来たか。……だが、此れは良い事だな。エステルはヨシュアへの想いを自覚したのだから其れは絶対に伝えなくてはだからな。

 

 

 

「いよーし!やるわよヨシュア!!」

 

「相手は強敵だ、頑張ろうねエステル。それとアインスも。」

 

「モチのロンよ!!乙女のパワーでブッ飛ばす!!」

 

 

 

恋する乙女は無敵だ――それと同時に、囚われの姫を助ける騎士もまた無敵だ。

今日は城でゆっくりと休み、明日の朝一でギルドに行ってエルナンにアリシア女王からの依頼を伝えて支持を仰ぐとしよう――女王陛下直伝の依頼ならば、恐らく規約も何もかもを超越して最優先にされる事だろうからな。

 

待っていろクローゼ、もうすぐ助けに行くぞ……王国の白き翼は、夜天の黒き翼が助け出す、必ずな!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued… 

 

 

 

 

 

新作は何が良い?

  • IS:楯無逆行モノ
  • IS:ハーレム無しヴィシュヌヒロインモノ
  • ガンダムSEEDとISのクロス
  • 作者初の小説である遊戯王小説の再構成モノ
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