Side:アインス
サメ型の大型魔獣をブッ飛ばして、民間人の安全を確保したと思ったら、その相手があのレイヴンだったとは驚きだ……よもや、こんな形でお前達と再会するとは思ってなかったけどな。
「知り合いですか、アインス?」
「まぁ、少しばかりな。――久しぶりだな、レイヴンの諸君」
「「「……誰?」」」
……まぁ、そう言う反応になるよな。この姿の私とは初対面な訳だしね。
私はアインス、倉庫でお前達に戦いを挑んだ栗毛の髪をツインテールにした遊撃士のもう一つの人格さ――色々あった結果、人格を交代すると容姿も変わるようになったのだけどな。
「栗毛の髪をツインテールにした……あん時の遊撃士だってのか!?」
「そう言う事だ……此処は私とシュテルに任せてお前達は安全な所に避難しろ!」
「ハッ、余計なお世話だぜ!!ディン!レイス!!」
「おうよ!」
「チョイサー!」
此の場は私とシュテルに任せて避難しろと言ったのだが、リーダー格であるロッコがそれを拒否し、そしてそこからディンとレイスとの見事なコンビネーションをで魔獣に大打撃を与え、魔獣は海へと逃げて行った……私達と比べればマダマダかも知れないけれど、あの時と比べれば格段に強くなって居るのは間違いないだろうな。
夜天宿した太陽の娘 軌跡88
『幽霊?You霊?Are You 霊dy?』
その後、ロッコに少しばかりキツイモノの言い方をされてしまったが、それを聞いたエステルが表に出て、前の倉庫での一件を謝っていたな……レイスとディンは『もう済んだ事』と余り気にしていなかったみたいだ。……それが済んだ後は、エステルはまた引っ込んでしまったが。……どれだけ幽霊が嫌いなのか。
「しかしアンタ、人格が変わると見た目だけじゃなく服も変わるのな?」
「ふ、その反応にももう慣れたよ。
それよりも、こう言う街道から外れた場所を歩くのは危険だから止めた方が良いぞ?今回は撃退出来たが、より凶暴な魔獣が現れる事もあるのだからね?」
「分かってるって。だからここに来てるんだって」
どうやらレイヴンの面々は、自己研鑽の為にここで魔獣と戦ってるらしい……『序に悪い魔獣がこの世から居なくなったらハッピーってね』と言うのも何と言うからしいな。
しかし、魔獣相手に自己研鑽とは、少し危険だが効果的ではあるかもな――アレだけの大型だと、遊撃士でも苦戦しそうだが……いっそ、遊撃士でも目指してみたらどうだお前達?結構良い線行くんじゃないか?
「俺達が?」
「あぁ、ヨシュアもお前達の潜在能力は認めていたし、お前達は覚えていないだろうが、操られて潜在能力を引き出されていた時にはアガットですら少してこずっていたからね。
やる気さえあれば、なれると思うぞ」
「俺等みたいな不良が遊撃士に?ありえねー!」
「俺達、喧嘩以外に出来る事なーんもないんだぜ?」
「ですが、遊撃士になれば、その喧嘩の腕を世の為、人の為に活かす事が出来るのではないでしょうか?それしか出来ないと言うのは、逆に言うと
その道のエキスパートと言えますし」
お、良い事を言うじゃないかシュテル。と言うかコイツ等は、元々レイヴンのリーダー張ってたアガットが遊撃士になった事を忘れた訳じゃないだろうな?……ま、本人達にその気がないのならば強制は出来んがな。
まぁ、それはそれとして――良かったら私の仕事に協力してくれないか?
最近ルーアン地方で目撃されている『白い影』について調べているんだが、それについて知ってる事があったらどんな些細な事でも構わないので教えてくれないか?
「それって……」
「だよな」
どうやら覚えがあったらしく、レイヴンのメンバーの一人であるベルフと言う青年がそれらしきモノを見たとの事。
そのベルフがどこに居るのかを聞いたのだが、ベルフはその日から倉庫には来ていないらしい……ので、自宅の場所を聞く事にした。とは言ってもレイスとディンの説明では少々分かり辛かった……奥に引っ込んでるエステルが頭の上に大量の『?』を浮かべていたからな。
だがここで、ロッコが『すっかりやる気が削げちまった。帰ろうぜ』と言い出した――が、どうやらベルフの家はレイヴンの倉庫の近くらしい。全くもって、素直じゃない奴だなロッコは。
レイヴンの倉庫まで到着した後は、ディンとレイスがベルフの家がドレかを教えてくれたので、早速訪ねたのだが、対応してくれたベルフの母親と思われる女性は『真面目に話が出来るかしら?』と言った――どう言う事かと思い、ベルフの部屋に案内して貰ったのだが……
「あの夜も、港の倉庫でレイヴンの仲間達と寝てたんだ。
夜中にふと外に出たらさ、真っ白な服を着た幽霊が空をグルグル飛び回ってたんだよ……幽霊は……そのまま北東の空に飛んでっちまったけど、外に出たらまたあの姿を見てしまいそうで……ああああ……思い出さないようにしてたのに!!」
「……完全にトラウマになって精神が崩壊し掛けていますね?このままでは埒が明かないので、幽霊以上の恐怖を与えて恐怖を上書きすると言うのはどうでしょうか?やれと言えば何時でも撃てますよ、真ルシフェリオン」
「それは下手すると死んでしまうから止めておこうな――見た目も性格も全く違うが、そのバイオレンスな思考は、お前が高町なのはを模して居ると言う事を実感させてくれるな」
「お褒めに預かり光栄です」
「褒めてないけどな」
しかし、これでは確かに話は出来ないな。
母親は母親で、息子のベルフがあの調子な上、夫のノーマンは今度の選挙で頭が一杯で、どうしたらいいのかと途方に暮れているし……この騒動は出来るだけ早く解決する必要があるな。
《…………》
《如何した、エステル?》
《アインス、このままじゃ駄目よね?この状況を打開する為に、アタシは何をしたら良いのかな?》
《さてな。逆にお前は何をすれば良いと思う?》
《それは……まだ分からない。》
《なら、もう少しそこで考えていると良い。そしてそれが分かったら表に出て来ればいい。この身体の主導権はお前にあるから、強制的に人格交代するのは簡単だろう?》
《と言いつつ、アインスも割と強制的にアタシと変わるわよね?》
《この身体の主導権のパーセンテージはお前が70%で私が30%なのだが、私の方がお前よりも強いから強引に変わる事が出来ると言う事だ》
《何だか理不尽な気がするわ》
うん、理不尽なのは否定しない。
だが正確に言うのならば、エステルが表に出ている時は身体の主導権は100%エステルで、私が表に出ている時は私が主導権100%だ――あくまで、今言ったパーセンテージはクーデター事件前の数値だからな。――まぁ、そうであってもエステルが表に出るのは、私が勝手に表に出るよりも容易い事なのだがな。
「……アインス、何やら橋の方が騒がしいようですが……」
「ん?……確かにそうみたいだな?何かあったのか?」
それで跳ね橋まで行くと、そこでは今度のルーアンの市長選挙の候補者であるノーマンとボルトン、各々の支持者が互いに相手を『幽霊騒動』の犯人だと因縁をつけ合って一触即発の状況――と言うか、遂に殴り合いが始まってしまったか!
喧嘩はダメだ、何とかして止めないと!!
「ブラストファイヤー叩き込みましょうか?」
「うん、それは危ないから止めておこう。下手したら橋がぶっ壊れるからな」
「そうですか、残念です」
《残念がる所、おかしくない?》
あぁ、おかしいな。
容姿も性格も高町なのはとは全然違うのに、どうして肉体言語上等でバイオレンスな部分だけは似ているのか……王は我が主、レヴィはフェイト・テスタロッサの容姿を模したのに対し、シュテルは高町なのはの思考形態を模したとでも言うのだろうか?……だとしたら恐ろしい事この上ない。
それにしても、どうやって止めたモノだろうかこれは?喧嘩をしている連中に、頭の上から水属性のアーツを落として頭を冷やさせる……いや、私の魔力でそれをやったら、下級アーツでもシャレにならないダメージになってしまうからダメだな。
「ふ、哀しい事だね。
争いは何も生み出さない。ただ心に虚しく亀裂が走るだけさ。さぁ、振り上げた拳を解いて、お互いに手を取り合おう」
と思っていたら、リュートを弾く音と、聞き覚えのある声が……橋の下を見てみれば、運河に船に乗ったオリビエの姿が。舟の漕ぎ手も付けずに何をやっているんだアイツは?
何時ぞやのハーケン門の時のように歌い始めたが、その間も船は運河に流されて……此のまま行くと、ヴァレリア湖に一直線だな。
「アインス、彼は知り合いですか?」
「まぁ、知り合いと言えば知り合いかな?」
《てか、何しにリベールに来たのよアイツは……》
さぁな、自由人の考えは分からんよ。
取り敢えず、シュテルと共に空を飛んで船まで行ってから、シュテルからルシフェリオンを借りて、それをオール代わりにして港まで戻って来た……港で聞いた所によると、オリビエは無断で船を拝借したらしい。よし、窃盗の現行犯で逮捕するか。
「そんな、酷いぞアインス君!そ、それが血気盛んな民衆の暴動を身を挺して鎮めようとした人間に対する言葉なのかい!?」
「冗談だ。だが、お前が登場してくれたおかげで彼等が治まったのは確かだからな。それについては感謝するよオリビエ」
「全くアインス君と来たら、そこはもっと激しく突っ込んでくれないと」
「……お望みでしたら、全力の直射砲で突っ込みを入れて差し上げますが?」
「アインス君、この可憐ながらもバイオレンスな美少女は誰かな?それからエステル君は如何したんだい?」
「この子はシュテル。レヴィの仲間だよ。この世界に試験的に来たらしい。
それとエステルはだな……遊撃士協会に『幽霊』と思しき存在の目撃情報と、それに関しての調査依頼が来ていてな。エステルは、幽霊やお化けが大の苦手だから、私が表に出て調査をしていると言う訳さ」
「幽霊?何だいそれは?」
最近ルーアン周辺で目撃情報が相次いでいるんだ。私が直々に裏を取った案件が二件、エア=レッテンの兵士の目撃情報も入れれば目撃情報は合計三件。
ポーリィの証言だけを考えると、若干オリビエを想起させるモノがあるのだが、オリビエは空を飛べないから除外だろうな。
「ほほう?僕を想起させる幽霊とは、さぞかし美しい幽霊なのだろうね。これは、是非お会いして確かめねば」
「何を言ってるんだお前は?」
《ううん、確かにそうかも知れないわ!》
《エステル?何か思いついたのか?》
《うん!!》
――シュン!!!
「おぉっと、エステル君に変わったのかい?」
「ありがとうオリビエ!アンタのおかげで、私のすべき事が見えてきたわ!」
表に出たか。さて、何を思い付いたのか。
人格交代したエステルは、その足でギルドに――シュテルも一緒だったので、ジャンにシュテルの事を説明する事になったが、ジャンに『白い影がルーアンの人達に良くない影響を与え出して居る』と言う事を伝えた上で、自分なりにどうやったら解決できるかを考えてみたかを言ったんだが……
「この、白い影に会う事は出来ないかしら!?」
まさかの『白い影に会う』と言う事だった。
だが、何の考えも無しに言った事ではなく、『白い影が何なのか分からないから、皆不安になっちゃうのよ!』と理屈は通っているな――その裏にはヨシュアの現状が何も分からないから不安になる、己の心情も重ねているのかもしれないが。
「成程、直接会ってその正体を確かめると、そう言う事ですね?」
「その通りよシュテル!幽霊もお化けも、正体が分かれば意外と怖くなかったりするかも知れないでしょう」
「はい。幽霊の正体が、実は窓の外で揺れていた取り込むのを忘れていたシーツだったと言う例は少なくありませんから」
妙に具体的だなシュテルよ。
そこからはジャンにも協力してもらって、出現場所を割り出す事に――出現場所を割り出せれば待ち伏せも出来るからな。
先ずは、ギルドに寄せられた新たな目撃証言を加えた、これまでに『白い影』が目撃された場所を地図上にバツ印を書き込む……最新の目撃情報であるルーアン北街区のホテルの屋上、エア=レッテンの関所、マーシア孤児院にレイヴンの倉庫か。
出現場所には一貫性がないが、『白い影』の行動を考えると、答えが見えてくるかもしれないな。
「白い影の行動か……現れるのは決まって夜間で、上空でくるくる飛び回った後で飛び去っちゃってるのよね?」
「そうだな。だが、飛び去った方向は全て一緒だったか?私の遊撃士手帳にメモしてあるから見てみると良い。」
「アインスの?……これは!!!飛び去った方向が全部バラバラ!!ジャンさん、この違いは手掛かりにならないかしら?
エア=レッテンから影が飛び去った方角は『北』、レイヴンの倉庫から『北東』に、マーシア孤児院からは『東』へ……!」
「成程、出現場所と去った方角から一つの答えが導き出されると言う訳ですね?……レヴィと同様に、考えるよりも先に身体が動くタイプかと思っていましたが、知恵も回るようですねエステル」
「……それはまぁ、これ位はね」
準遊撃士としてロレントを旅立った頃のお前では絶対に辿り着かなかった答えだがな。
だが、それによって導き出された『白い影』の拠点なのだが、まさかここになるとは思っても居なかった――三つの目撃証言と、陰が去った方角から導き出された『白い影』の拠点は、ジェニス王立学園だったのだからね。
学校と言うのは怪談話があって当然と言うのは、我が主から教えて頂いたモノだが、ジェニス王立学園にその手の話があると言うのだろうか?
何はともあれ行ってみるしかないなこれは――クローゼの事も心配だし、もしもこの『白い影』が学園の敷地内に住み着いた性質の悪い悪霊だったら、それを祓ってやらねばならないからね。
「悪霊を祓うって、どうやって?」
「幽霊みたいな半実体化した身体の特性を生かしてタコ殴りで強制的にあの世に逝ってらっしゃいだな」
「幽霊に物理攻撃ですか、斬新ですね」
まぁ、半実体化した私は近距離パワー型のスタンドみたいなモノだから、『白い影』が遠距離型だと相性が悪いのだが、私の場合は『相性って何?』と言う感じで性能がおかしいから、多分大丈夫だろう。時を止める事こそ出来ないが、それ以外は最強スタンドと名高い『スタープラチナ』と同性能だからね。
何にしても、行ってみるか!ジェニス王立学園に!!
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