Side:アインス
講堂を出た私とクローゼの前に現れたのは、件の白い影と思しきモノ……ふむ、取り敢えずコイツが物理的な存在でない事だけは確かだろう。物理的な存在であるのならば、身体が透けて見えると言う事はないからな。海に棲むクラゲでもない限りは。
と言う事は、コイツは半実体化状態の私に近い存在なのかも知れないな?
その白い影は、私とクローゼの前までやってくると、ニヤリと笑い、そしてそのまま校舎の裏に消えてしまった……うん、エステルが深層心理に引っ込んでいてくれて良かった。そうじゃなかったら、頭の中にエステルの悲鳴が鳴り響いていただろうからな。
「ア、アインスさん……今のが……」
「例の『白い影』だろうな。
そして、一つだけ分かった事がある……白い影は間違いなく変人だと言う事が」
「へ、変人ですか?」
「あぁ、変人だ。クローゼも見ただろう、奴の姿を。
白いマント付きの服だけならば兎も角、あの変な仮面はアウトだ。少なくとも真面目な感性を持っているならばあんな仮面は付けん。羽根飾り付きと言うのも地雷ポイントだ。生身の人間があの格好で街を歩いていたら、速攻で通報レベルだぞ?」
「……そう言われると、確かに変人かもしれませんね?」
変人だ。間違いなく変人だ。そして、何処となくオリビエと同じ匂いを感じたぞ私は。
それはまぁそれとして、まさか白い影の方から現れてくれるとは、探す手間が省けたと言うモノだ……なので、深層心理から出て来いエステル!ここからはお前の出番だ!!白い影の正体を掴んで来い、身体の所有者!!
――バシュン!!
「あ、エステルさん?」
「アインスに強制的に交代させられたわ。
交代してもアインスは半実体化してるけどさ……で、アインスから聞いたんだけど、白い影が現れたのよねクローゼ?」
「はい。校舎の裏に飛んで行きました!!」
校舎の裏……と言う事は旧校舎に行った可能性が高いか。
学園祭の準備の時にもクローゼと共に旧校舎で魔獣狩りをしたが、またあそこに行く事になるとは……どうやら、何かと縁が深い場所であるみたいだな?
『何時まで見回りを続ける気なの?』と、やって来たジルに『白い影が現れたので、それを追う』旨を伝えて、クローゼと共に旧校舎に直行だね。
夜天宿した太陽の娘 軌跡90
『白い影の正体、その名は怪盗紳士』
やって来た旧校舎の扉にはメッセージカードが挟まっており、そこには『我が仮初の宿にようこそ。千年の呪いを恐れぬならば、我が元に馳せ参じるが良い』と書かれていた。
それだけならば兎も角、エステルが文面を全て読み上げた瞬間にメッセージカードは燃え、次の瞬間には旧校舎の入り口が開いた……一体どんな手品を使っているかは分からないが、白い影とやらは凝った演出が好きらしいな。
「じ、上等じゃない……!」
旧校舎に入って探索開始だが、クローゼが持っている懐中電灯では光源として心許ないので、私が全身に炎を纏ってみた。これならば懐中電灯よりも明るいだろう?
「アインス、アンタそれ熱くないの?」
「大丈夫だ。お前の手に炎を宿すのと同じ原理で全身に炎を纏っているからな」
「アインスさんは、本当に何でもありなんですねぇ……」
クローゼ、私に常識は通じんよ。常識なんてモノは、宇宙の彼方のブラックホールを突き抜けて外宇宙に蹴り飛ばして、下手すれば界王星にゴールしてるかも知れないからな。
それから旧校舎を探索を続けると、ほどなくして明かりが灯っている扉を見付けた……中に入ってみると、そこには地下に続くと思われる階段か?
……私達を誘っていると言う事か。上等だ、その誘いに乗ってやろうじゃないか!
「それにしても何なのここ?」
「中世の遺跡でしょうか?学園の地下にこんな場所があったなんて……」
確かに、学園の地下にこんな場所があると言うのは驚きだが、それ以上にここの入り口にあったメッセージカードや、この火……本当にあの白い影の仕業なのか?
仮に白い影が幽霊だとして、実体のない霊ではこんな事が出来るとは思えんのだが……
「アタシ以外はアインスに触れる事は出来ないのに、アインスの方から触れる分には問題ない件について」
「エステル、それがスタンドと言うモノだ。序に言っておくと、スタンドがダメージを受けた場合は、それはそのまま本体にダイレクトに伝わるのでその心算で」
「それ、滅茶苦茶危なくない!?」
スタンド使い同士の戦いならばな。
だが、この世界で半実体化した私に触れる事が出来るのは今の所お前だけだから大丈夫さ……半実体化した私に、物理攻撃は一切効果がないからね。……何となく、ゴーストタイプのポケモンの気持ちが分かったかも知れない。
「ですが、確かにアインスさんの言うように、実体のない霊が出来る事とは思えません。
ジルが言っていましたよね?この事件は、誰かが何かをアピールする為に故意に起こしているのではないかって……もし『白い影』の正体が幽霊の類ではないとしたら、この先に居るのは……」
「フフフ……あわよくば私の存在に気付いてくれれば……と期待していたのだが、まさか貴女の方からお越しになって頂けるとは。
ようこそ、我が仮初の宿へ。歓迎させて貰おう」
『白い影』の本体と言う訳か。
私達の前に現れたのは、白い影と同じ姿をした人物だったからな……身体は透き通ってないから、コイツは実体ある人間なのだろう。……私の予想通り、白い影は変人だったか。……いや、変人を通り越した変態だなコイツは。リアル変態仮面だ、間違いない!!
「へ、変態仮面とは失敬な!!」
「黙れ変人。
その奇妙奇天烈な仮面で素顔を隠している時点で、貴様なんぞは変態仮面で充分だ。変態仮面が不満ならば、変人仮面の方が良いか?仮面ライダーHENTAIとでも名乗るか?」
「誰が名乗るか!!」
「では、変態仮面で決定ですね♪」
っと、クローゼがまさかの爆撃をかましてくれたな?
とっても良い笑顔で、ザックリと止めを刺すとは恐ろしい……だがしかし、満面の笑顔の裏に隠されたサディスティックな部分が堪らないクローゼの魅力と言えるかも知れないが、クローゼってこんな子だったか?
《完全にダークヒロインになりかけてるわね……アンタのせいよアインス》
《え、私のせいなのか?》
《アインスがダークヒーローっぽいから、クローゼもそっちに引っ張られたんだと思うわ……次期国王をダークサイドに引き入れたとか、責任重大なんじゃない!?》
《確かに責任重大、下手したら極刑だな》
「これはこれは、何とも手厳しいが……流石は王立学園のお嬢さん――いや、リベール王国次期国王クローディア姫!」
「「「!!!」」」
コイツ、何故クローゼの本名を、正体を知っているんだ?……どうやら只の変態仮面ではなさそうだな?お前、何者だ?
「では、改めて自己紹介をしよう!
私は、執行者№Ⅹ。《怪盗紳士》ブルブラン」
「怪盗紳士……」
「ブルブラン……」
「…………」
「左様。して、銀髪のお嬢さんはいかがなされた?私の名を聞いて思案しているようだが……何か気になる事でも?」
「……ブルブラン、怪盗紳士……市長邸の燭台を盗み出し、私達を散々振り回してくれた『怪盗B』とは、お前の事だな?旧校舎の入り口のメッセージカードの内容も、『怪盗B』が残したメッセージに通じるところがあるからね」
「……我が名からそこまで辿り着くとは見事!!
いかにも、私こそが世間を賑わせている『怪盗B』……そして、結社《身喰らう蛇》に連なる者なり。」
「み、身喰らう蛇ですって!?」
「その名を聞いたら、黙っている事は出来んな?……クローゼ、お前は下がっていろ。身喰らう蛇の人間だと言うのならば、奴はロランス程ではないにしろ、並の遊撃士よりは強いだろうからね」
「アインスさん……分かりました。」
「結社の人間が、こんな所で何をしているの!?」
「返答次第では、少しばかり手荒い方法を取らせて貰うが?」
ブルブランは結社の人間だったのか……執行者と言うのは、何となく結社の幹部と言う感じがするんだが、その幹部がこんな変人でも良いのかと思った私はきっと悪くない。この場にシュテルが居たら、間違いなく冷静に突っ込みを入れている筈だ。
エステルは棒術具を向け、私は天地上下の構えを取ったのだが、ブルブランは『今は争う心算はないのだから』と言ったかと思うと、『その証拠に、君の問いに答えよう。私はここでささやかな実験を行っていたのだよ』と続けて来た。
そしてすぐ横にあった装置を起動すると、イキナリ空間に例の『白い影』が……如何やらこれは、結社が生み出した空間投影装置の映像らしく、この装置では映し出す事しか出来ないとの事だったが、次にブルブランが取り出したものを見て、私もエステルも、そしてクローゼも驚いた。何故なら、其れは『黒のオーブメント』こと『ゴスペル』だったからだ。
だが、それ以上に驚いたのは、ブルブランが持っていたそれは『結社が実験用に開発した新型』だと言う事だ……ラッセル博士であっても、詳細を完全解明出来なかったモノを独自に開発するとは、結社の技術力は恐ろしいものがあるな?
で、その新型ゴスペルの力を加えると投影した映像を動かす事が出来ると……この二つを組み合わせてデュエルディスクを作りたい――ではなくてだ、つまり何か?今回の幽霊騒動は、結社の人間が新型のゴスペルを使って、自分の姿をルーアン各地で飛ばし回っていただけ……と言う事か?
「その通り。ルーアンの諸君には、さぞかし楽しんで頂けただろう?」
「し、真相を聞いて一気に脱力したわ……」
「エステルさん、同感です……」
「孤児院の子供達は楽しんだようだが、中にはこれがトラウマになって引き篭もりになった上に若干精神崩壊を起こし掛けている奴も要るから、アフターケアはしておけよブルブラン?
楽しませる筈が、逆に怖がらせてしまったのではエンターティナーとしては二流だからな。
まぁ、それはそれとして……貴様等は、身喰らう蛇は一体何を考えている?」
「それは私が話す事ではない。
これはあくまで《白面》の企てた計画――私はただ、自分の目的を果たす為に、その計画の一部を手伝っているだけなのだから。
……だが、よもやその目的を……こんなに早く果たせる機会が巡ってくるとは……」
コイツ……仮面で隠れてはいるが、今確実にクローゼを見ていたよな?……と言う事は何か?お前の目的はクローゼと言う事か?……フフフ、中々にふざけた事を抜かしてくれるじゃないかブルブラン?
貴様、一体誰の許可を得てクローゼに手を出そうとしている?彼女は既に、私のモノだと言う事を知っての狼藉か?
「笑止!麗しの姫君が、君のモノだとは片腹痛い!冗談も休み休み言うと良い!」
「冗談ではない!こう言っては何だがな、私は十年前に当時六歳だったクローゼに告白されてるんだ。そして、十年経ってもその想いは変わらずにいたから、私は彼女の想いに応えて晴れて両思いだ。
だから、私からクローゼを奪おうと言うのならば……貴様、その身をバラバラにされて異空間に葬り去られる覚悟は出来てるのだろうな?」
「アインス、理由がメッチャ個人的な事になってるから!
《怪盗紳士》ブルブラン!遊撃士協会規定に基き、貴方を拘束します!アンタには、聞きたい事が沢山あるんだから!!」
うん、個人的な事だと言うのは分かってはいるのだが、この変態の目的がクローゼだと言う事を知ったら黙って居られなかったんだ……変態仮面風情がクローゼに手を出すなど言語道断だからな?こう言っては何だが、コイツの目的を見抜いたその瞬間にゴッドハンド・クラッシャーを喰らわさなかった自分を褒めたい位なんだからね。
「ヤレヤレ、折角の好機に何と無粋な……だが、そこまで私と争いたいと言うのならば仕方あるまい」
ブルブランがそう言って指を鳴らすと、部屋の奥の扉が開いて何かが……
「しかし、態々選んだこの場所だ。此処は私ではなく、遺跡の守護者である『彼』に出てきていただこう」
そうして扉の向こうから現れたのは、途轍もなく巨大な機械仕掛けのケンタウロスだった……そして、そいつはいきなり斬りかかって来たので、私はクローゼを抱えて回避し、エステルも回避したのだが、剣が振り下ろされた場所はものの見事に床が砕けてしまったか……あんな攻撃を喰らったら、掠っただけでも大怪我、真面目に喰らったら一撃であの世に逝ってらっしゃいだ。
だが、これはル・ロックルでの訓練の成果を試すには丁度良い相手かも知れんな?結社の人間に、私達のデータを渡す事にもなってしまうが、逆に言えば私達の存在を意識させる事で、結社の動きに何らかの綻びが出来るかも知れないから、希望的観測はあるとは言えマイナス要素だけではない筈だ。
とは言え、この狭い場所では奴の攻撃はどこにいても届いてしまうから、今は一旦退くぞエステル。アイツを外に出した上で倒す。私達も、広い空間の方が戦い易いしね。
「了解!一旦退くわよクローゼ!」
「あ、はい!!」
ここは最終的に勝つ為の戦略的撤退だ。
退く私達を見て、ブルブランは口元に笑みを浮かべていたが、お前はその笑いを消す事になる……精々見て驚くと良いさ、太陽の娘と夜天の祝福が融合した力と言うモノにな――!!
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