「…………ふぅ」
遂に必殺技を完成させた夜。試合をを明日に控え、本来ならば寝ていないといけない時間だが、俺はグラウンドに来ていた。
別に今から練習するわけじゃない。ただどうしてもじっとしていられなかったんだ。
しかしこんな夜に誰かがいるはずもないか、早く帰って寝るとしよう。
「……何をしている?」
「あっ……」
千冬姉だ。やばい。こんな時間に彷徨いているなんて怒られるに決まっている。前日に説教なんて受けたくないぞ。
「……眠れないのか?」
「へ? あ、ああ……」
「そうか……まあ座れ、すこし話そう」
「? はい……」
あれ、怒られない。というか、何時もより少し態度が優しい。まるで家にいる時みたいに。
そのまま近くベンチに座り、しばし無言の時間が流れる。
「…………」
「…………」
気、気まずい……。何か話はなかったか、えーと……。
「今日お前が使った技だが」
ぽつり、と一言。言葉が発せられる。今日の技? あのシュートか。
「『零落白夜』か?」
「そうだ、その技は……昔私がプロの試合で使っていた物だった」
「『いた』って……今は」
「使えない。あれは以前の私の専用機、『
『暮桜』。かつて千冬姉が出場したISの世界大会、『モンド・グロッソ』でも乗っていた専用機だ。
たしか『零落白夜』は、もともと『暮桜』の単一使用能力だったらしい。
「私がいたチーム……かつての日本代表は、『イナズマイレブン』と呼ばれていてな。『零落白夜』を撃つとき、イナズマの様なエネルギーが出ただろう? あれは、特に強力な必殺技を使うときに発生するものでな、チーム全員の必殺技が発していたことからそう呼ばれるようになった」
「じゃあその、『イナズマイレブン』は今何を?」
「やめたよ。私が現役を引退したと同時に解散して……今は全員普通に生活している」
「そっか……」
ISサッカーに限らず、千冬姉が現役だった頃の話をするのは珍しい。普段ならいくら聞いたってはぐらかされてしまうことが多い。
それにしても『イナズマイレブン』か。初めて聞くがさぞかし強いチームだったのだろう。
「あの頃は本当に楽しかった。連戦連勝向かうところ敵無し、伝説とも呼ばれたよ」
「そんなに強かったのか……」
当時の話をする千冬姉は懐かしそうで、楽しそうな表情だった。
こんな顔の千冬姉を見るのは久しぶりだな。
「……明日の試合、不安か?」
「っ……。まあ、どういうわけかISサッカーのこと忘れてるし、必殺技もやっと一個できるようになったばっかりだしな」
「そうか……」
こちらからすれば急に皆がサッカーやり出して随分困惑したんだけどな。もう諦めてるけど。
「大丈夫だ」
「え?」
「お前ならきっとできるさ。私の弟だからな」
「千冬姉……!」
そういった千冬姉はとても優しい眼差しをしていた。俺に剣を教えてくれたあの日と同じ、眩しいものを見るような表情だった。
「さあもう戻れ、明日に響く」
「わかった……それと、ありがとう、千冬姉」
「……ああ」
そして夜が明け、試合の日が訪れた。
試合当日、俺達はグラウンドへ移動し、試合に向けてウォームアップをしていた。準備は大切だからな。
しかし……。
「そういえば、試合はどこでやるんだ?」
「向こうが用意するとか言ってたわよね? 何もないけど」
「待っていろ、直に
来るとは。まさかスタジアムでも飛んで来るのだろうか。いくら束さんでもそれはないか。お迎えが来るとかそんな感じだろう。
そう考えながら空を見上げていると、ゆっくりと巨大な影が現れる。
「おい……なんだあれ……」
「来たぞ、あれだ」
巨大な飛行船。
「おっまたせー! ここが試合会場、『ラビットスタジアム』だよー!!」
「やっぱりここなのか……」
当たりたくない予想が的中してしまった。マジで空中で試合? どこにこんなもの隠していたのだろうか。
「もう観客も入ってるからー! 準備できたら上がってきてー!」
「わかったからもう少し降りてこい!」
普通に話しているけど千冬姉はこの状況に驚いていないのか。それともこれが普通なのか?
「篠ノ之博士ほどになるとこんなに大きいスタジアム持ってるのね……」
「姉さん……」
空中に浮いてることには突っ込まないのか……。もう深く考えるのはよそう。
「ではアレに乗り込むが……準備はいいか?」
「「「はい!」」」
「は、はい!」
さっきよりほんの少し降りてきた飛行船に乗り込み(千冬姉は俺が抱えて入ったけど何故か皆に睨まれた)、案内看板に従って控え室へ移動。
試合直前のミーティングが始まる。
「改めてフォーメーションの確認だが、3‐2‐2‐1で行う」
3‐2‐2‐1。
「次はポジションの確認だ。GK、ラウラ・ボーデヴィッヒ」
「はい!」
「DF、シャルロット・デュノア、更識楯無」
「「はい!」」
「MF、セシリア・オルコット、更識簪」
「「はい!」」
「FW、凰鈴音、篠ノ之箒、織斑一夏」
「「「はい!」」」
「では補給の後移動して試合開始だ。質問のある者は……いないな。行くぞ」
そして移動。こうしていると普通のサッカーみたいだ。お遊びぐらいしか経験はないけれど。
懐かしいなぁ。小学生の時はよくやった。誰がキャプテンするか争って……あれ?
「そういえば、キャプテンは誰がやるんだ?」
昨日も今日も特に言われなかった。するとしたら楯無さんだろうか。一番上手いし。ラウラも行けそうだな。
「お前だ」
「誰が?」
「だから織斑。お前がキャプテンだ」
「!!??!?!?!??」
なんで? なんで俺? この間まで素人だったんだぞ。試合を投げたとか言い出さないよな。
「落ち着け、ちゃんと理由はある」
「?」
「確かに知識経験は他のメンバーの方が上だ。しかし他のメンバーは公式戦のデータがあり、当然研究されている可能性が高い」
「そうなのか? でも……」
でも、だからって俺には荷が重すぎる。ちゃんと指揮なんてできるのか?
「お前にはデータにはない伸びしろがある。相手の予想を超え、打ち破る才能が。私はそれに賭けてみたい」
「…………」
「安心しろ、何も完璧に指揮をする必要はない副キャプテンには更識姉を置き、サポートも入るさ」
「そういうことよ。ほら一夏くん自身持って!」
「……なら、まあ……わかった」
大丈夫……なんだろうか。少し不安だが、期待されているなら答えなくては。
「今度こそ質問はないな? 行くぞ、時間が迫っている」
「「「了解!」」」
『ついにこの日がやって参りました〜。IS学園対篠ノ之束&
「何やってんだのほほんさん……」
「……本音は、昔からISサッカーの実況するのが夢だったから……」
「思いっきり亡国機業って言ったが大丈夫なのか?」
10分後。『ラビットスタジアム』フィールドに並んだ俺達は、未だ現れない対戦相手を待っていた。
「呼びつけといていないってどうなのよ」
「わたくしに言われましても……」
てっきりもう揃っていると想ったから誰もいなかったのには驚いた。
それなのに観客は超満員だ。学園の生徒もいる。いつの間に?
『出ましたぁー! 亡国機業イレブンの入場でーす!!』
「おっ」
「来た!」
歓声と共に選手が入場。
先頭から織斑マドカ、スコール、オータム、アーリィさん、フォルテ先輩とダリル先輩、専用機限定タッグマッチとクラス対抗戦の時に来た無人機が一機ずつの8人。ほぼ全員修学直以来の再開となる。
「……逃げずに来たようだな」
「……そっちこそ」
「今日こそ私が勝利し、私こそが完成された織斑と証明してやる」
「何のことかわからねぇけど、受けて立つ」
目の前に並んだマドカと睨み合う。この前もこいつには辛酸を嘗めさせられた。絶対に勝つ。
「私としては織斑千冬と戦いたかったんだけどサ」
「アーリィさん……」
「やあ、シャイニィは元気?」
「ええ、なかなか図太いやつですよ」
アーリィさんも今日は敵だ。第二回モンド・グロッソ優勝者の彼女も相当の実力者と考えていいだろう。
「この日を待ってたぜぇ……。痛い目見せてやるよ……」
……うん。気をつけておこう。
他のメンバーも強敵ばかり。束さんが監督なのも忘れてはいけない。きっと凄い作戦を立てているに違いない。
形ばかりの礼、握手。万力みたいに力込めるな痛い。
そして運命のコイントス。前半キックオフは……こちらからだ。
それぞれがポジションに着き、開始準備を整える。あちらのフォーメーションは2‐2‐3‐1。
FWにマドカとスコール、MFにアーリィさんと細身の無人機。DFにダリル先輩とフォルテ先輩、大きい方の無人機。GKにはオータムだ。
……正直もっと攻撃的な感じだと思ってたから以外だな。だからといって温い攻撃ではないはずだ。警戒せねば。
「よし……行くぞ皆ぁっ!」
「「「おうっ!!!」」」
「エム、準備はいい?」
「当然だ」
ホイッスルが鳴る。先ずは落ち着いて鈴にパス。こちらはここから攻めていこう。
『さあIS学園イレブンボールでキックオフ! 一夏から受けたボールで鈴音が切り込んでいくぅ!』
「いっくわよーっ!」
早速鈴のドリブル敵陣へ。合わせて俺も上がっていく。
……実況の時はあの変なあだ名使わないんだな。こっちの方が違和感がある。
「…………………」
「こいつっ! あの時の!」
『おーっとぉ! ゴーレムが鈴音の前に立ちふさがったぁ!』
なんとか突破してもらわなければ。
「邪魔よっ! 『昇り龍』!」
「……『
『これは必殺技のぶつかり合いだーっ!! 勝つのはどっちだー!?』
必殺技のぶつかり合い、それすなわち超次元度の勝負。より超次元な方が勝利する……らしい。ルールブックに書いてあった。
最初から負けるわけにはいかない。頼むぞ鈴。
「はぁぁぁぁーーーっ!!」
『鈴音が競り勝ったー! 必殺ドリブルの炸裂ですっ!』
足下から出現した赤い龍に飛び乗り、的を吹き飛ばしながら突進。
『あっという間にゴール前、シュートチャンスだーっ! ここは決められるかぁーっ!?』
「当然っ! 『双天牙月』っ!」
『出たーっ! ドリブルに続きシュートでも必殺技、『双天牙月』!』
青竜刀のオーラを纏ったボールがゴールへ飛んでいく。待ち構えるは不適な笑みを浮かべたオータム。
「甘ぇんだよっ! 『ビッグスパイダー』!」
『アラクネ』の装甲脚が全て展開。巨大な蜘蛛のオーラを発しながらシュートに突き刺さる。
僅かに押し込まれながらも勢いはなくなり、完全に止められた。
こいつ、ちゃんとキーパーやってやがる……!
『キーパーオータム止めたぁー!』
「てっきりザルかと思ってたのに……!」
「ブッ飛ばすぞテメェッ!? ……まあいい。今度はこっちの番だ!」
そうだ、シュートを止められたってことは相手にボールが渡ったということ。一気に攻められては堪らない。防御を固めよう。
「皆下がれ! 守備に回るぞっ!」
「スコォォーール!!」
ISの腕力で投げられたボールは一気に自陣へ移動し。既に回り込んでいたスコールへ渡る。
「行かせないっ! 『スピニングカッ──」
「無駄よ、『ソリッド・フレア』!」
「うわあっ!」
『スコールの必殺技にシャルロット吹き飛ばされたぁー! ラウラと1対1ぃー!』
凝縮された超高熱の火球がアクア・ナノマシンのブロックを容易く貫く。こちらが必殺技を発動する前に突破されてしまった。
「お返しよ! 『ファイアトルネード』!」
「っ! 止めるっ! 『キラーブレード』!」
炎を纏い時計回りに回転しながら上空へ蹴り上げたボールを追う。一瞬鋭い眼差しでゴールを睨み付け、激しい火炎をシュートに乗せる。
対してラウラは右腕のプラズマブレードを展開。炎を纏ったシュ-トを両断…とはいかず、地面に叩きつける。よかった、止められたな。
『止めたぁー! キーパーラウラ、オータムにも劣らぬ必殺キャッチだぁ!』
「危なかっ……いや! この程度か?」
「あら、次はもっと強く蹴らなきゃ」
「や、やめろ!」
十分凄いシュートだったがまだまだ本気ではないらしい。
でもボールはこちらに渡った。今度こそ点を取るぞ。
「ラウラ! 私に!」
「了解!」
「……よし、セシリア!」
「はい!」
先ずは簪へパス、そのままセシリアへ繋ぐ。流れるようにボールを運べている。練習の成果だ。
「通さん!」
「いいえ、どいて頂きますわ……『フレキシブルロード』!」
「何っ!?」
「いいぞセシリア!」
「おほほほ……」
上空へ蹴り上げられたボールへ
もうこんなに偏向射撃を使いこなしていたのか。
「一夏さん!」
「おうっ! ……うおおおーーーっ!」
『おーっとフォワード一夏がダイレクトシュートだぁーっ!』
センタリングで上げられたボールを追い、そのままシュート体勢へ。
「『零落白夜』!!」
必殺の一撃を蒼い稲妻と共にボールへ叩き込む。手応え、いや足応えは完璧だ。
「いっけぇぇーーーっ!」
「させるかっ! 『ビッグスパイダー』! ……ぐあああっ!」
装甲脚が展開。巨大な蜘蛛のオーラを発しながらシュートに突き刺さる……が、一瞬にして零落白夜のエネルギー無効化能力によってかき消される。
止めきれなかったボールがゴールネットを揺らした。
『ゴォォォーーーーール!! 見事なシュートが決まったぁぁぁーーー!!! 一対〇! 先制したのはIS学園!!』
「やったぜ!」
これで先制点ゲットだ。俺の必殺技は通用した。一週間の努力は無駄じゃなかった!
「よし、この調子でいくぞ!」
「うんっ!」
「……レイン、フォルテ。
「オッケー叔母さん」
「は、はい!」
喜ぶのもほどほどにポジションへ戻る。試合はまだ前半が始まったばかりだ。
『さあ亡国機業のボールで試合再開! この失点を取り返せるか!?』
「はぁぁぁーーっ!」
「!!」
早速箒がボールを奪いにかかる。そうだどんどん攻めていこう。
「『
「ぐうっ!」
左手に構えた刀を振るい、刀身から放たれた帯状のエネルギーがスコールを襲う。態勢が整いきっていなかった彼女は防ぎきれずボールを零す。
「もらった! はぁぁっ!」
『箒がボールを奪って敵陣へ突撃ーっ!』
瞬時加速を利用したドリブルで相手を寄せつけず、深く敵陣へ切り込む。このまま追加点だ。
「これ以上はっ!」
「行かせないっス!」
「「『イージス』!!」」
「うわぁぁーーっ!!」
「箒ぃーっ!」
『二人の必殺ディフェンスが発動ーーっ!』
冷気と熱気による分子の相転移がエネルギーを奪い、動きが止まったところで氷塊と火炎が箒を襲う。
これが二人がIS学園に在籍していたときから有名だった必殺コンビネーション『イージス』。さすがの防御力だ。
「叔母さん!」
「よくやったわ……エム!」
「…………」
ロングパスが繋がり、ゴール前で待っていたマドカへ。ディフェンスは……間に合わない。
「……いくぞ」
「来いっ!」
「くらえっ! 『ディザスターブレイク』ッ!!」
一瞬にして上空へ移動。左足に黒いオーラを集め、回転と共にシュートを放つ。黒い
この威力は……『零落白夜』クラス、いやそれ以上か!?
「『AIC』っ! ……何っ!? ぐっ……ぐああっ!」
『ゴォォォーーーーール!!! 亡国機業マドカ、凄まじいシュートを放ちましたーっ! 一対一! 同点です!!』
あっという間に追いつかれてしまった。ラウラの必殺技も決して弱いものではないのに。
織斑マドカと『黒騎士』、予想以上に強力なフォワードだ。
「ドンマイドンマイ! 取り返すぞ!」
勢いで押されるわけにはいかない。まだ同点、ここは切り替えてもう一点取ろう。
しかし点を取るにはあの『イージス』を突破しなければならない。一体どうしたものかて……。
『IS学園ボールで試合再開! この状況を切り抜けられるかーっ!?』
「よし行k「待つのサ!」
「何っ!?」
「私を忘れてもらっちゃあ困るのサ! 『真空魔』!」
『アリーシャがボールを奪ったぁ! そのまま突き進んでいくぅ!』
開始直後から突っ込んで来たアーリィさん。空気を裂くような蹴りを繰り出す。それによってできた真空の裂け目にボールを捉え、逆に突風でこちらを吹き飛ばす。
「さあさあボーッとしてると置いてくのサッ!」
「楯無さんっ!」
「了解っ! 『
「無駄無駄っ! 『風神の舞』!!」
超高速の機動と突風により、辺りに撒かれたアクア・ナノマシンごと楯無さんを吹き飛ばす。クソッ、止められない。
「どんどんいくのサッ! 『
両腕を左右に広げ、風が集まり、アーリィさんと瓜二つの像を作り上げる。本体を含め三人となったアーリィさんが同時にボールを蹴り、風の像の二人ごと嵐となったボールが飛ぶ。
『出たぁーーーっ!! アリーシャの単一使用能力とそのシュート、『疾駆する嵐』だぁー!!』
「ううっ! ……ぐっ、ぐああぁぁーーー!!
『ゴォォーーーール!!! 亡国機業追加点! すさまじいシュートを放ちましたーっ! 一対二! IS学園リードを許してしまったぁーー!!』
マドカに続きとんでもないシュートだった。これが世界レベルのプレー。圧倒された。
でも、
「まだだっ! 取り返すぞっ!」
取られたなら取り返す。まだ負けてはいないんだっ!!
『再びIS学園ボールで試合再開! 点差が広がるのは避けたいところだぁ!』
「今更だけどのほほんさん全然味方してくれないんだな……」
『ごめんねおりむー。解説は公平じゃないとねー』
「急にいつもの調子に戻らないでくれ」
聞こえてたのかよ。
「……ねえ一夏。お願いがあるんだけど」
「どうしたシャル? いい案でもあるのか?」
「うん。僕
「たち……二人技か? そんなの練習してたっけ?」
記録を見ていくつか見つけたが、一応2人ないし3人で使う必殺技は存在する。しかしそれらはどれも難易度が高く、長い努力が必要となるものばかりだった。
「違うよ、でも、それに近いものならできる。ね、セシリア?」
「ええ。わたくしからもお願いします」
「……わかった! 一旦2人に任せる。頼むぞ!」
「うん!」「はい!」
何をする気かはわからないが自信はあるみたいだし。ここは二人のシュートに賭けよう。
「シャル!」
「はいっ!」
『おっとシャルロットへバックパス! 守りを固める気かぁー!?』
「いいや! 攻めるねっ!」
がちん。
軽く蹴り上げたボールに突き立てた左足から引き金を引いたような音が鳴る。
がちん。がちん。がちがちがちがちがちん。
リボルバー機構による連射。音が鳴る度に深々と悔いが突き刺さり、エネルギ-が蓄積されていく。
この杭の名は《
「『
限界に達したエネルギーはが解き放たれ、あらゆる防御を貫く一撃へと変わる。
しかしまだゴールまでかなり距離がある。いくら威力の高いシュートでも減衰してしまうはずだが……。
「セシリア! お願い!」
「了解ですわ!!」
その先で待ち構えていたセシリアが種-トを追う。合体技? いやそれではないはず。これは──
「シュートチェイン!?」
「『スターゲイザー』!! はぁぁぁーーー!!!」
4基のレーザービットと2基のミサイルビットを全開。偏向射撃によって自在に軌道を変えながらボールへ向かい、シュートを更に加速させる。
『シュートチェイン』──独立した二つのシュートを繋げ、威力とスピードを上げる高等技術。
一歩間違えれば逆に弱体化させるリスクを伴うため習得している選手は複数人の技よりもずっと高い。
「「いっけぇぇぇーーーーーー!!!」」
パイルバンカーとBTビット。2つの力を得たシュートは勢いを増し──
「させるかっ! 『ビッグスパっ……ぐあああぁーーー!!」
──キーパーの守りを物ともせずネットに突き刺さった。
『ゴォォォォーーーーール!!! これは見事なシュートチェイン! 学園の連携を見せつけたぁーーーっ! 同点二対二!!』
「すげえよ2人とも!」
「やったねセシリア!」
「ちょろいもんですわ!」
これで再び同点。前半終了まではあと少し。なんとかもう一点リードして終わらせたい。
「……スコール」
「何かしら?」
「
「……あら、熱くなっちゃって」
『亡国機業から試合再開! 』
さあボールを奪──『おぉーーっとぉ!?』何だ!?
スコールはボールを受けたそのままの位置からシュートの構え。逆にマドカは一直線にこちらへ突っ込んでくる。
これではまるで、そんなまさか!?
「『ヘルファイア』!!」
爆炎と共に蹴り出されるシュート。その先にはマドカ。まずい!!
「マドカを止めろ!!」
「もう遅い!!」
背後から飛んできたシュートに紫色のエネルギーが集まっていき、爆炎ごとボールが紫に覆われる。
今にも弾けそうな状態のそれに強力な蹴りを見舞い、鋭く燃える刃へと変容させる。
「『オーガブレード』!!」
「危ないっ! ぐっ……あああ!!」
「簪っ! くそっ、『AIC』!!」
シュートブロックに入るもあえなく吹き飛ばされる簪。シュートは勢いを落とさずにゴールへ。
ラウラは慣性停止結界で受け止めようとしたが……。
「ぐうっ! がっ……うわああああーーーっ!!」
チェインによって強化された一撃は止められず、追加点を許してしまった。
『亡国機業もお返しとばかりに見事なシュートチェイン! 二対三で亡国機業のリードだぁぁーーー!!』
「くそっ!!」
「落ち着け! まだ時間はある! ここで取り返すんだ!」
『さあISボールで再開! しかし前半終了まで時間がないが失点を取り返せるかー!?』
「箒っ!」
「よしっ……っ!?」
「ダメッスよ!」
「ボールよこしなぁ!」
「「『イージス』!!」」
「うわあああーーーっ!」
「箒っ!?」
パス先を読み切られ、二人の『イージス』によってボールを奪われる。
「叔母さん達に負けちゃいられねえ、今度はオレ達がいくぞ!!」
「待てっ!」
ドリブルで切り込んでくる二人。ディフェンダーのはずではなかったか、いやこの状況なら……合体技か!
「二人を止めろ! 合体技が来るぞ!」
「もう遅え! ここから行くぜ!」
「はいッス!」
「!?」
突然二人が口づけ、そして離れた瞬間、それぞれが炎と氷に包まれる。
「「『ファイアブリザード』!!」」
「ぐああああーーーーーっっ!!」
『イージス』の分子の相転移をそのまま攻撃に転用したような一撃。そのシュートは必殺技を使わせる間もなくラウラを吹き飛ばす。
『入ったぁー! ダリルとフォルテ二人の必殺技、『ファイアブリザード』炸裂!!! 二対四!!』
「まだだ! まだ……」
まだ巻き返せる。そう言いかけたとことで、
ピィィィーーーーッ………
「あ……」
『ここで前半終了のホイッスル! 亡国機業のリードで前半が終了しましたっ!』
無情にも時間は過ぎ、前半終了。俺達は暗い雰囲気に包まれながら千冬ね……監督の下へ戻るのだった。