もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜   作:白だし茶漬け

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ついにこの小説も100話を迎える事になりました!
ここまで長く書けたのは読んでくれる読者のおかげです!皆様本当にありがとうございます!

それを記念として、一旦本編は打ち切り、繋がりのない特別な幕間の物語として2.3話程展開します。

それでは、ごゆっくりお楽しみにくださいm(*_ _)m


特別幕間〜指揮官争奪戦……?〜
好きと好きが対立したら……?


 

 俺の名前は天城優海。アズールレーンの指揮官であり、元セイレーンのコネクターという個体だったけど、今はKAN-SEN達と俺の友人達のおかげでセイレーンから手を離れ、今は一緒に戦っており、重桜のKAN-SEN戦艦天城の息子だ。

 

 もちろん俺と天城母さんに血の繋がりも無ければ元セイレーンとKAN-SENという変な繋がりだけど、俺にとってはこれはかけがえのないものだ。天城母さんのおかげで俺は指揮官になれたし、俺はこうして生きている。

 

 そんな俺だが、今危機に瀕している。

 

 必死に体を丸めて姿を隠し、今は基地の倉庫の端でじっと息を潜めている。恐怖で体が震え、物音1つでも立てればたちまちあの人達が襲いかかったくる。思わず歯が勝手に動き、カタカタと小さく音を鳴らしてしまい、暑い夏の日なのに何故か寒さが感じる。

 

 寒さを凌ぐためか、それとも身を隠す為なのか分から分からないまままた体を丸めると、倉庫の扉が勢い良く開かれた。

 

 思わず体がびくりと反応し、そっと開けられた扉を除くと、そのにはやはり奴ら……KAN-SEN達が光悦したような表情で俺を探していた。

 

「さぁ指揮官出てきてくれ! なに怖がる事は無い。ただ私が作った料理を心ゆくまで食べて欲しいだけなんだ! そして、君の心を掴むのさ! 」

 

「指揮官ー! ちょっと私の作ったクッキーを食べて欲しいの。大丈夫、食べたら寝ちゃう事なんて無いからー! 」

 

 この声は……キングジョージ5世改めジョージとハウだろうか。どちらも姉妹艦という関係であるせいか金髪と赤を基調とした服装がとてもよく似ているが、雰囲気はガラリと違うので遠目から見ても判別できた。

 

 だが判別できたのはそれだけじゃない。

 

 ……怖いんだよ2人の目が。まるで獲物を探す獣のようであり、その顔は光悦しているように見えるのは気の所為だろうか。しかもハウが作ったと思うあのクッキー……なんかピンク色に光っているのは何で何だろう。

 

 いやイチゴ味とかその辺だったらピンク色になるのはまぁ分かる。だけど何でビスケットが光ってるの? もう食紅とか使っているとかの領域じゃ無いんですけど、もう光り方がライト見たいな役割を果たしているからこんな薄暗い倉庫の暗さを利用してやり過ごす何て不可能になり、ここは隙を着いてこの倉庫から出ていこうとしようとしたその時、空き缶が俺の足元に当たり、アルミ缶のカランとした音が静かな倉庫に響き渡った。

 

(誰だこんな所にポイ捨てした人〜〜!! )

 

 倉庫にポイ捨ては禁止でしょうが! 後で犯人を捕まえて叱らないとダメという考えはさて置き、今の音でジョージとハウは俺がいる方向に振り返り、俊敏な動きで倉庫にあるコンテナを足場にして急接近してきた。

 

「そんな所に居たのか指揮官。さぁ、私の手を取ってくれ。怖がらなくても良いんだぞ 」

 

「だったら私のクッキーを食べるといいわ。大丈夫、怖いものなんて無いから 」

 

 いや貴方の目が怖いんです。笑顔も怖いんです。そのクッキーも怖いんです。

 

 燦々と輝くイケメン騎士オーラが眩しくて目が痛くなりそだけど、今そのオーラが眩しくて怖いんです。だけど背後はコンテナ、前は目が怖いジョージとハウ。万事休す、ここでジ・エンドかと思ったその時、コンテナから2つの斬撃が俺の真横とハウ達の横を通り過ぎ、斬撃で斬られたコンテナの左右が倒れ、斬撃が飛んできた方から殺気がひとつ感じられた。

 

「あらあら、うちの優海君に何をしているよかしら? 」

 

 斬られた倉庫の壁の向こうから愛宕さんと鳥海さんがいた。

 

「優海君、大丈夫ですか!? 」

 

「あぁ、良かった。2人は大丈夫そうで本当に良かった……! 」

 

 倉庫の壁が斬られ、そのままジョージとハウから逃げるように愛宕さんと鳥海さんの元に走り、何とか難を逃れた。

 

「ふぅ……ありがとう……ございます 」

 

「良いんですよ、優海君。それよりもですね…… 」

 

 何故か2人はそれぞれ俺の両腕と腕組みをし、曇りなき笑顔には恐ろしさも感じられた。

 

「この後お姉さん達とで誰にも邪魔されない場所に行きましょ? 」

 

 愛宕さんの言葉で俺の中の安心感が死んでしまった。身の危険を感じた俺は逃げようにも2人に腕をがっちりと掴まれているから身動きが取れず、逃げたくても逃げられない状況になっていた。

 

「あらあら? どうして逃げるの優海君、昔みたいに遊ぼうとしているだけなのよー? 」

 

「いや愛宕さんの顔が遊ぶ表情じゃないんです! 一体何をする気なんですか!? 」

 

「ナニって……それは……ポッ 」

 

「え、なんで顔赤くしてるんですか? え、本当になんで? というか離して下さい! 離してぇぇぇ! 」

 

 もがこうにも力の差では負け、ズルズルと愛宕さんと鳥海さんにどこか分からない場所に俺は引きずられるように連れていかれ、足に力を入れても虚しく足と地面が擦り合う音しか出せず、もう詰みの状態で諦めていたその時、愛宕さん達に向かって黒い鷹のような物が突撃し、鷹は地面に激突したと同時に爆発し、俺は愛宕さん達と離れた。

 

「くっ、誰!? 私と優海君の邪魔をするのは! 」

 

「憎んでいる……我の前に立ち塞がるもの全てを 」

 

「そういう事です〜 」

 

 爆煙の向こうからグラーフ・ツェッペリンとローンが鋭い瞳で愛宕さん達を睨みつけており、さながらそれは敵を見る目であった。

 

 愛宕さんもグラーフに対してそんな目をしており、いや、なんで味方同士でそんな目をしているのとツッコミを入れたくなるけど、そんな事言えないぐらい空気は重苦しがった。

 

「あらあら、これは鉄血の空母さんと重巡さんじゃない。いきなり攻撃なんて酷いじゃない 」

 

「卿と我の前に立ち塞がるものは全て壊す。それだけだ 」

 

「そうですね〜邪魔するものは全て壊しますし。何より私の邪魔をするのは……許せないよねっ!! 」

 

 ローンがついにむき出しの殺意を味方であるはずの愛宕さん達に向け、遅れて愛宕さん達の奇襲を受けたジョージとハウもこの場に合流……というか追いついてきた。

 

「ふぅ、ようやく追いついた……って、どうやらお客さんが増えたようね 」

 

「なに、問題ないだろう。それに、貴公らとは是非手合わせしたかったんだ。重桜のサムライと鉄血の力、見せてくれ。そして私が勝って指揮官の心は私が掴めば完璧なんだがね 」

 

「どうやら話し合いの余地は無いみたいですね。優海君、ここは私と愛宕姉さんが何とかしますので後ろで下がって……って、そんな遠くに行かなくても良いんですよー!? 」

 

 修羅場になっている状況を利用してすぐ様俺はこの場から離脱した。鳥海さんが待ってとか言ってるけどあんな場所にいたら命がいくつあっても多分というか絶対足りない。

 

 振り返る事無く全速力で逃げていると、さっき居た場所が物凄い爆発が置き、いよいよ収集がつかない状態になってしまった。さっきの所だけじゃない、島のあちこちに戦闘を行っている場所が多々あり、もうこの島全体が戦場になり、そして俺はこの島にいる全てのKAN-SEN達に狙われていた。

 

「指揮官発見! 直ちに捕獲します! 」

 

「逃がさないわよ指揮官! 」

 

 森の茂みから、建物の窓ガラスから、果てや噴水の所から至る所までKAN-SEN達の奇襲を受け、かれこれ1時間ぐらい経っている。何とか全て避け切ってはいるけど俺の体力と集中力ももう限界に達し、そろそろ休みたいぐらいだ。

 

「もうー!! なんて事してくれたんだ明石とリフォルさんはー!!!!! 」

 

 何故こうなったのか、その原因は頭は良いけどアホな科学者2人によって引き起こされた。

 

 

 

 

 _数時間前

 

「KAN-SEN達の強化? 」

 

 大切な話があるからといきなり明石に執務室で待ってと言われ、作業を中断して明石の話を聞こうとしたが、その中にはジンさん、リアさん、リフォルさん、ネージュさんもいた。

 

「リフォルさんとかは分かりますけど……何でジンさんまで? 」

 

 リフォルさんは明石と同じ研究者だから、明石と一緒に何かの開発をしたとかだったら話はわかる。だけどジンさん辺りは明石とは全く関連がなく、中々話が見えない状況だ。

 

「ま、俺はお前に面白いものを渡そうかなってな。それが明石の話に繋がってるから、その後に渡すぜ 」

 

「それが……KAN-SEN達の強化に繋がるって事ですか? 」

 

 話を戻すと、明石が話し始めた内容はKAN-SEN達に関わる物だった。明石は報告書を纏めた書類を俺に渡し、さっき言ったKAN-SENの強化について説明した。

 

「強化と言っても、改造が適切にゃ。KAN-SEN達は、基本的には艤装や艦を強化すれば、それが形となって強くなるにゃ。装備をより強く、より高性能な物に変われば、もちろん強くなるにゃ 」

 

 確かに装備をいい物にすれば目に見えてKAN-SEN達の武装は強力になるし、その分戦果も上がる。

 

「いやー本当に装備を回してくれるジンさんはお世話になっていますよ 」

 

「ま、色んなルートを持ってるからな! 金装備でも虹装備でも何でも持ってくるぜ、確定でな 」

 

 金装備……? 虹装備……? あぁ、そういえば武器の性能によってそんな風にタグ付けされていたっけ。ジンさんが持ってくる武器は全部が全部高性能な装備であり、そのおかげで最近の成果も目立つた損傷もなく終えている。

 

「ぐぬぬ……これじゃあ明石の店が赤字だにゃ……手痛い商売敵にゃ…… 」

 

「へへ、こう見えて昔は商売しようと思っていたからな 」

 

「へぇー意外ですね 」

 

「ま、元々の家庭がそんな感じだったからな…… 」

 

「ジン…… 」

 

 家庭という言葉でリアさんが何か言いたそうにしていたけど、ジンさんのアイコンタクトで言葉を止めた。

 

「さて、話を戻そうぜ。ええとKAN-SENの強化だったけな 」

 

「そうにゃそうにゃ。だけどそれだけじゃないにゃ。KAN-SENの強化はKAN-SEN達の心理影響も繋がるにゃ 」

 

「心理影響? 」

 

「いわゆるアドレナリンって奴だよ。間近の研究結果によればKAN-SEN達の能力の向上には、とある人との関連があってね。詳しくは書類の16ページを見てみてくれたまえ〜 」

 

 リフォルさんに言われて資料の16ページを開くと、本文のタイトルに『KAN-SEN達の心理影響による能力向上』と書かれていた。

 

「KAN-SEN達はある人物に対する数値、まぁ好感度って言おうか。それが高ければ高い程能力が向上しているっていうデータが取れたんだよ 」

 

「その人物というのが、指揮官なのにゃ! 」

 

「え? 俺? 」

 

「証拠もあるよ〜ネージュ、よろしく〜 」

 

「はい。優海さん、こちらが直近のKAN-SEN達の戦績や、過去の戦績との比較した資料です。まず見ての通り、優海さんがこの艦隊に着任する以前の戦績と今の戦績を比べると、圧倒的に損害が少なく、なおかつセイレーンの撃破率も向上しています 」

 

「でも、それって俺の指揮もありますよね? その、好感度? って言うんでしたっけ。それとはあまり関係ないような…… 」

 

「所があるんだよね〜これが。次はこれ、KAN-SEN達の身体能力や艤装運用能力を纏めた資料だよ。これも優海がいなかった時のと比較しているから見てみて 」

 

 リフォルさんに渡された資料を見ると、ほぼ全てのKAN-SENの能力値が、俺がいなかった時と俺が着任した時と比べると実に数倍も変わっていた。

 

「へぇ……こんなに違っているんだ…… 」

 

「まぁ、これは多分優海に残っている【コネクター】の因子の影響もあると思うな〜だってあれ元々他のセイレーン個体の強化の為に造られんでしょ? それがKAN-SENにも影響受けるってなんだが皮肉だねー 」

 

「ちょっとリフォルさん……! それは優海さんに失礼ですよ……! 」

 

「あ……やばっ…… 」

 

「大丈夫ですよネージュさん、リフォルさん。俺はもうセイレーンのコネクターじゃない。元々俺がセイレーンであったとしても、今の俺は戦艦天城の息子の【天城優海】なんですから 」

 

 そう、元々俺はセイレーンのコネクター。他のセイレーンの個体を強化する為に生まれた端末個体であり、KAN-SEN達……人類の敵だった。

 

 オロチ計画を更に完璧な計画にさせる為に俺とマーレさんは造られ、俺は人類の善意のデータを無意識に集めた。その際に記憶を無くされ、1人の人間として生きてきた。それが俺、【天城優海】の正体だ。

 

 自分がセイレーンだと思い出した時は俺の意思は消え、KAN-SEN達に牙を向けたが、KAN-SEN達と目の前にいるジンさん達によって俺は自分を取り戻し、今ここにいる。本当に感謝してもしきれないぐらいだ。

 

「まぁ、でも今のところKAN-SEN達に異常は無いし、とりあえずセイレーンとの関連性は薄いかな。さて、KAN-SENと優海の間の好感度がKAN-SEN達の能力の向上に繋がると分かった上で……実はある物を渡しに来たんだよ〜 」

 

「それがこれだな 」

 

 ジンさんが何か黒い箱を俺に渡してきた。サイズは手のひらぐらいであり、何やら高級感溢れる箱だ。どうやら箱は上下に開けられるようになっており、試しに箱を開けてみると、そこには白い台座に綺麗にはめられた銀色のリングの上に小さいが吸い込まれるような美しいダイヤモンドが乗せられていた。

 

「こ、これって…… 」

 

「結婚指輪だろ? 」

 

「け……けけっ!? 結婚指輪!? 」

 

 思わず結婚指輪の入った箱を勢いよく手放し、何故ここで結婚指輪が出るのかわけも分からずに顔を赤く染め、俺の顔は猛暑日よりも熱くなった。

 

「なな……なんで結婚指輪!? だだ、誰と!? 」

 

「いやお前とKAN-SEN達の中の誰かだろ。まぁとりあえず落ち着けや 」

 

「いやいやいやいや落ち着ける訳無いでしょ!? え、なんですかこれ。俺は誰かと結婚しろとかそんな感じですか!? 」

 

「まぁそんな感じかな〜 」

 

 いつも通りマイペースのリフォルさんはいつも通り気だるげな口調で話を続けた。

 

「これもKAN-SEN達の装備の1つで【誓いの指輪】って付けてるよ。まぁ別に今すぐ結婚して〜って訳じゃないから。結婚は大事だからね〜 」

 

「でも、それがKAN-SEN達の能力の向上とどう繋がるのですか? 」

 

「さっき言ったけど、KAN-SENの優海に対する好感度=能力の上昇に繋がるんだよ。そして、今渡した指輪はちょっと特殊でね、KAN-SENのメンタルキューブに反応して、好感度に応じてまた能力が高くなる機能を付けたんだ〜 」

 

「でもなんで指輪なんだよ 」

 

「結婚という事実を認識させることで好感度が上がるからね〜視覚的な認識が必要なんだよ 」

 

「つまり……どういう事だ? 」

 

「まずKAN-SEN達に優海と深い繋がりを持ってるって認識させる為に指輪を用いることと結婚という概念での心理的な認識もさせることでKAN-SEN達のメンタルキューブの変化を促そうとする為にケッコンというシステムを導入させ……」

 

「あぁ! 分かった! とにかくあれだな!? ケッコンすればKAN-SEN達は強くなるわけだな!」

 

 リフォルさんの早口解説をぶった斬るようにジンさんは自己解決したが、大まかにいえばジンさんの言う通りになる。でもケッコンしたら強くなるって原理はよく分かんないままだけど……

 

 俺は机に置いた誓いの指輪をもう一度見つめた。

 

 最初にこれを見て思い浮かべたKAN-SENと言えば……ベルファストだった。

 

 家事は勿論身の回りの事や執務作業も完璧に手伝ってくれており、完璧メイドは伊達じゃなかった。だけどもしベルファストとケッコンしたらしたらでなんだが変わらないような気がするな〜。まぁ、ベルファストが俺に対してどう思ってるか分からないし、こっちもまだ誰ともケッコンする気は無いのもあり、あまり想像はできなかった。

 

「とにかく、これは今は受け取れませんよ 」

 

「まぁまぁ、とにかく持ってけよ。今後結婚したいなって思った時出せば良いからよ 」

 

「うーん…… 」

 

 まぁ、使う時に出せばそれでいいか……何時になるか分からないけど。とにかく俺は指輪の箱をポケットに入れた。

 

 だが、これが後の大変な事になるなんて、この時は思ってなかった……

 

「それで、話はこれで終わりですか? 」

 

「ん、まだまだあるよ〜今度はちょっと開発物を見て欲しくて…… 」

 

 リフォルさんが何かの資料渡そうとしたその瞬間、向う側の建物から大爆発が置き、爆音と衝撃がここまでも伝わり、急いで俺達は爆発が起きた場所を窓から覗いた。

 

「な、何だ!? 」

 

「ぎにゃぁぁ! あれ明石の研究室にゃぁぁ! 」

 

 明石が耳と尻尾を逆立てながら涙目で執務室から出ていき、恐らく爆発した所に行ったのだろう。

 

「ちょっとリフォル! 貴方出ていく前に何か危険な物放置したんでしょ!? 」

 

「あれ〜? ちゃんと出ていく前に機械の電源とか薬品全部処理したけどな〜 」

 

「貴方のずぼらな態度じゃ信用出来るわけ無いでしょ! 」

 

 リアさんがリフォルさんの白衣の襟を掴んでは前後にリフォルさんを振り、まるで娘を叱る母親のようにリフォルさんに説教をし、そのままお仕置と言わんばかりに関節技をリフォルさんにお見舞していた。

 

「あわわ……どどどどうしましょう!? 」

 

 この中で1番焦っているネージュさんは挙動不審になり、あわあわと執務室をうろついてはソファーに足をぶつけては転けたり、このままでは関係無いのにここの二次災害が出そうになっていた。

 

「落ち着けや。とにかく、状況確認と消化活動だろ? 俺は饅頭達集めて消化活動を要請するわ 」

 

 意外にも1番冷静だったのはジンさんで、ジンさんはすかさず携帯端末で饅頭達に消化活動を要請し、間もなくしてサイレンが聞こえてきた。

 

「じゃあ、俺は現場を見に行って状況確認をしてきます。そうだ、ヴェスタルにも連絡して貰えませんか? 怪我人とかいたら直ぐに治療とか出来ますし 」

 

「オッケー! んじゃあ行ってこい! 」

 

「はい! 」

 

 俺は窓から思い切り飛び出した。

 

「はっ!? おい、ここ4階で結構高い…… 」

 

「大丈夫です! 」

 

 窓から飛び降りた俺は風を受けながら落下し、落下への衝撃を減らす為に壁を蹴り、空中で半回転しながら地上へと着地した。

 

「じゃあ行ってきます! 」

 

 4階の窓から覗いているジンさん達に手を振り、俺は急いで明石の研究室がある所へと走っていく。

 

「……たくっ、アイツ 」

 

「笑っているところ辺り、あんまり気にして無さそうだけど? 」

 

「まぁな。あとリア、そろそろリフォルを離してやれ、そいつ泡吹いてるぞ 」

 

「リ、リアさん! 早く十字固め止めてくださいー!!」

 

「あぼぼぼぼ……リア……離しで……あど本当にわだじちゃんと危険物は放置しでないがら…… 」

 

「じゃあイタズラ者の誰かが貴方の研究室に入って危険な物に触れたって事なのかしら? 」

 

「多分…… 」

 

「そんな、イタズラ者のKAN-SENなんてここには………… 」

 

「「あっ、居た 」わね 」

 

「居ますね……しかも複数…… 」

 

 

 _そして30分後……

 

 ジンさんの迅速な対応で饅頭達の消化活動が開始され、爆発で燃えていた建物はあっという間に鎮火され、事なきを得た……が、中にある物は当然爆散されており、明石は大損を食らって涙を滝のように流していた。

 

「うにゃ〜明石の商品が〜!! 」

 

 喉が潰れる程の叫びが悲痛すぎて何も言えない……さて、どうしてこんな事になったと言うと、4人のKAN-SENのイタズラが原因だ。そのいたずらっ子とは、アバークロンビー、アルバコア、サラトガ、シムスだった。

 

 4人は爆発に巻き込まれたのか顔が煤まみれになっており、服も少しだけ焦げていたけど、怪我は無いようだ。

 そんな4人はエセックス、フッド、レキシントンによって正座させられていた。

 

「全く……何事も無かったから良い物のもし1歩間違ったら大変な事になっていたんですよ! 」

 

「うぅ……ごめんなさい…… 」

 

「確かにこれは度が過ぎてますね。当分は反省室ですね 」

 

「そ、それだけは止めて〜! 指揮官〜助けてよ〜! 」

 

 4人は俺に泣き縋り、何とかして反省室入りを免れようとしていた。

 

 ここで言う反省室とは、その名の通り反省するまで禁錮する部屋だけで何も無い部屋だ。そんな退屈な部屋にこの4人は結構な頻度で入らせているんだけど……これがまぁ懲りないのか反省室から出ていって間もなくして直ぐにイタズラするのがなぁ……本当に反省してるのかどうか……

 

 そんな4人が泣きながら俺の腰や足にしがみつき、それをエセックスとフッドがひっぺかそうとするけど全く4人は俺から離れず、このままでは俺の服すらも破けそうな勢いだった。

 

「いい加減離れなさい〜! 指揮官を困らせてはいけませんよ! 」

 

「いーやーだー! 」

 

「ちょちょちょ!! 服破れる! 破れるから一旦止めろ! 」

 

 とにかく服をどうにかする俺は一旦エセックスとフッドを止め、少し伸びた服を直し、改めて4人の処遇を考えた。

 

 ただ反省室に入れるだけじゃ繰り返しになっちゃうし、かと言ってそれ以上酷い事はあまりしたくない。何か無いかと周りを見ると、泣きすぎて地面と溶けるように体がへばっている明石の姿が映った。

 

「……そうだ、じゃあこうしよう。今から俺が言う事をしっかりやれば、反省室には行かせないし、許してあげるよ 」

 

「ホントに!? 」

 

「お〜、指揮官優しいね〜! それでそれで? 何をすれば良いの? 」

 

 4人は涙を引っ込めて急かすように俺の言う言葉を待っており、俺はそれに言葉ではなく、落ち込んでいる明石に指を指して答えた。

 

 これには4人も首を傾げ、頭に『?』の記号が埋め尽くされていた。

 

「1つは明石にちゃんと謝る事。もう1つは明石に許してもらう事だ。この両方が出来たら反省室には行かせないであげるよ 」

 

「なーんだ簡単じゃん! 謝って許してもらえばOKじゃん! ねぇねぇあか…… 」

 

「ちょーっと待った! 」

 

 先に行こうとするシムスの腕を掴み、邪魔されて怒ったのかシムスはムッと頬を膨らませた。

 

「なーに指揮官、私謝ろうとしたんだけど〜? 」

 

「俺は【ちゃんと】謝るって言ったぞ。ちゃんと頭を下げて、ヘラヘラしない事。じゃないと反省室に連れていくよ? 」

 

「うぅ〜 」

 

 反省室に入れる事がよっぽど嫌なのか、4人は素直に明石の元に横に並び、きちんとした態度で明石に頭を下げた。

 

「「「「大事な研究室に勝手に入ってごめんなさい! 」」」」

 

 この4人が素直に謝る所を見たのは初めてなのか、エセックス達3人は目を丸くして驚いていた。

 

「指揮官……凄いですね。サラトガちゃん達をあんな風に謝らせるなんて 」

 

「あはは……俺も小さい頃結構やんちゃしてたから、いつも母さんに叱れてね、その時こう言われたからやってみただけだよ 」

 

 その甲斐あってなのか効果はてきめんであり、4人の評判を知っている明石もたじたじとしていた。だが、自分の研究室を壊された怒りはまだ収まりきれていないようだった。

 

「謝るのは偉いにゃ。だけど誤って済むのなら警察はいらないのにゃ! 謝っても明石の大切な商品はもう戻ってこないのにゃ! 」

 

「じゃ、じゃあ……許してくれないの? 」

 

「当たり前にゃ! 食べ物と商品の恨みは恐ろしいにゃ! 」

 

「そんなー! 」

 

 そう、問題はここからだ。明石の研究室にはかなり大事な物がばかり入っていており、それが木っ端微塵に破壊されたとなれば流石に謝罪ひとつでは許してくれないだろう。だけど明石は鬼では無い、ちゃんと誠意を見せれば……

 

「まぁ、明石の店の手伝いをしてくれれば話は別だけどにゃ。だから覚悟するにゃ! 」

 

 この通り、なんやかんやで許してくれる。というか多分、代わりの商品やらは別の所にある筈だ。この手に関しての明石は結構手が回り、恐らく予備の商品を置いている筈だ。

 

「ほら早く動くにゃ! 許して欲しければ働くにゃ〜! 」

 

「はーい! 」

 

 4人は明石についていき、これで一先ずは大丈夫……かな? 

 

「あの子達、本当にちゃんと反省するのでしょうか? 」

 

「心配だったら見に行く? 」

 

「そう……ですね、指揮官も良ければ一緒にどうですか? 」

 

「あーどうしようかな…… 」

 

「優海──ー!!!!! 」

 

「ごはぁぁぁ!!? 」

 

 電光石火の如く茶色の狐耳と尻尾を持ったKAN-SENが真正面から俺に飛びつき、勢い余って俺はそのKAN-SENと一緒に吹き飛ばされ、そのまま森の奥深くまで吹き飛び、その後背中から地面に倒れた。

 

「優海! 爆発があったけど大丈夫!? 怪我は無い!? 」

 

「いてて……赤城姉さん、大丈夫だから 」

 

 やはりというか、家族の中で随一の過保護な赤城姉さんが血相を変えて俺にのしかかり、大丈夫だと言っても赤城姉さんは俺の体に怪我が無いかじっくりと確認し、挙句の果てには服を脱がそうとして確認しようとしていた。

 

「ちょちょ! そこまでは良いから! 」

 

「良くないわよ! 万一貴方に怪我があれば直ぐに治療しなきゃだし、それに貴方に害を負わせた奴を始末しなきゃ…… 」

 

「怪我とか無いし誰も怪我とかしてないよ。だから降りてくれないかな? 」

 

 赤城姉さんは素直に退いてくれ、服に付いた砂埃を払い、ぐっと腕を伸ばした。

 

「全く、相変わらずだね……赤城姉さんは 」

 

「弟を心配するのは姉として当然よ。こうしてくっ付いて離れないようにしたいし、ずっと貴方の傍にいたいぐらいだわ 」

 

 赤城姉さんは力強く俺の右腕を抱き、そのまま腕を組むような体勢になった。かなりの力でくっ付いているから腕すらも動かせず、しばらくの間はこのままになるだろう。

 

 まぁ、いつも通りと言えばいつも通りの光景だから慣れた。俺が子供の時は俺を抱きしめてそのまま腕の中で息苦しくなる事もあれば、寝る時はずっと抱きしめて寝ていたしなぁ……今は流石に俺は本館(執務室)がある所と、重桜の寮で別れて寝ているから、昔みたいに一緒の部屋で寝る事はない。

 

 だけどこの人結構な頻度で俺の部屋に侵入するし、赤城姉さんの他に大鳳などの一部KAN-SENも俺の部屋に何故かいつの間にか侵入していたりもしてる。

 

 だけも今は俺の部屋に侵入しているKAN-SEN同士が睨み合っている事が多くなっているからそれも少なくはなった。お互いがお互いに監視している状態で俺の部屋が安全になったのは何だか落ち着かないが、まぁ良いとしよう……

 

(さて、これからどうしようかな…… )

 

 爆発後の処理は饅頭がやってくれてるし、報告書も上がるのはまだまだ先になるだろうし、今日の執務も終わってから明石の話を聞いたし、残りはどうするか考えていなかった。

 

「そうだ……ねぇ、ちょっと聞いてもいい? 」

 

「ん? どうしたの? 」

 

 明石の話と聞いてある事を思い出した俺は、ふと好奇心で赤城姉さんにある事を聞いた。

 

「もしも俺が結婚するってなったらどう…… 」

 

「なにそれ? 」

 

 そよ風が赤城姉さんの圧を恐れるように急に止まり、木々の葉っぱはざわめくように音をたて、赤城姉さんのドス黒い声を聞いた俺の体から汗が止まらず、その汗は下がらずに上がるように感じた。

 

 赤城姉さんは燃えたぎる目で俺を見つめながら俺をその辺の木に押し付け、質問責めした。

 

「ねぇどういう事? 誰と? 優海が? 何で? 」

 

「あ……赤城姉さん……ちょっと落ち着いて……」

 

「ダメよ、ダメよそんな事。優海がどこの馬の骨かも分からない奴と結ばれるなんて絶対ダメ、許さない。そんな事になれば私……うふふ……うふふふふふふふ、どうするか分からないわぁ……! あははは! 」

 

 やばい、めっちや怖い。数秒前の自分を叱りたい。赤城姉さんの目も尋常ではない程見開き、血走った目で狂ったように笑っていた。

 

 今すぐにでも離れたいし、赤城姉さんの顔を見たくない、でも赤城姉さんは俺の頬を右手で掴み、無理やりにでも顔を見せるようにした。

 

「そうだわ、誰かの物になるならいっその事……ここで 」

 

 赤城姉さんの左手が妖しく俺の体を舐めまわすように触れ、体全体に弱い電流が走るかのようにビクってなり、むず痒い感覚が走り出す。

 

「あ……かぎ姉さ……ん? 」

 

「大丈夫よ……ふふ、愛してるわ、優海 」

 

 徐々に近づく赤城姉さんの口元で、この後の展開が予想出来た俺は必死に振りほどこうとしたが、赤城姉さんの力の前では為す術なく俺は顔を正面に向かれ、思うように体が動かない。お互いの息がかかるほど距離が近くなり、あと数秒で唇が重なってしまう。思わず現実から背くように目をつむり、この後の展開を見ないようにした。

 

 するとどうだろう、数秒の時が経ち、何も変化がない口元を不思議と思い、ゆっくりと目を開けると、急に赤城姉さんの力が無くなり、赤城姉さんはそのまま俺に倒れ込んだ。

 

 完全に力が抜いているから全体重が俺にのしかかり、思わず片膝を着いてしまったが、何とか支えられた。

 

 何かあったのかと周りを見ると、俺の目の前には加賀姉さんと土佐姉さんが立っていた。

 

「全く、姉様の暴走もここまで来るとは…… 」

 

「いつまで経っても誰かの腰巾着には変わりないな、こいつは…… 」

 

「加賀姉さん! 土佐姉さんまで! どうしてここに? 」

 

「たまたま散歩に来ていたらお前と姉様が居てな、そしたらこんな所でお前が襲われていたから思わず姉様の首筋を失礼した 」

 

 加賀姉さんは目にも止まらず手刀を見せ、どうやら赤城姉さんを背後から1発やったのだろう。恐ろしく早い手刀……完全に見逃した。

 

「とにかく助かったよ。ありがとう 」

 

「しかし腰巾着はどうして急に襲いかかったんだ 」

 

「えーと……それは…… 」

 

「何をもったいぶっているんだ、さっさと言え 」

 

「お、怒らない? 」

 

 2人は頷き、俺は赤城姉さんに言ったことと、同時に明石から聞いた話も伝えた。話を聞き終えた2人は驚きこそしたが、赤城姉さんのような事にはならず、最後まで冷静だった。

 

「そ、そうか……お前が、結婚か……。そう……か 」

 

「う……ううむ…… 」

 

 冷静と言ったけど、どこか歯切れが悪い。目も少し泳いでいるし、無意識なのか妙に2人の尻尾が小さくゆっくり揺れ、耳も少しへなっていた。

 

「お、お前はあるのか? 誰かと結婚する気が 」

 

 土佐姉さんからそう言われると、俺は腕を組んで大いに悩んだ。

 

「ううん、別にないというか、いきなりの話でついていけないのが正しいかな 」

 

「そ、そうか! 何心配ない、ゆっくりと考えれば良いし、もし居なくてもお前には私達家族がいるから問題は無い! そうだろ、姉上!? 」

 

「あ、あぁ……そ、そうだな 」

 

(……? なんか土佐姉さんの様子が変なような )

 

 何だろう……何故か赤城姉さんの様な雰囲気を感じられる。多分、まだあの赤城姉さんの行動を引きずっているのが原因だと思うけど……まぁ、大した事では無いし、いきなり結婚とか言われて流石の土佐姉さんも少しは動揺しているんだろう。

 

「ところで、お前はこれからどうするんだ? 」

 

「ん? そうだなぁ……とりあえず晩御飯まではその辺をぶらぶらしようかなって思うけど…… 」

 

「しーきかーん! 」

 

 急に背後から両手で目を塞がれ、俺の視界は真っ暗になった。

 

「だーれだ? 」

 

 陽気な声に、こんな風な事をするのは限られている。まるで当ててくださいと言ってるようなものだ。

 

「簡単だよ、ブレマートンでしょ? 」

 

「正解〜!」

 

 桃色のツインテールに前髪の一部が黒のメッシュに、白を基調としたテニスウェアを来ていたらブレマートンが汗だくで来た。

 

「わっ! 汗だくじゃないか、大丈夫? 」

 

「ううん全然平気! 」

 

「そう? 何か用かな? 」

 

「今ボルチモアやユニオンの皆と一緒にテニススポーツしてるから、指揮官がいたから一緒にどうかな〜ってた思ってたけど、お姉さん達と一緒だから都合悪いよね? 」

 

「いや、私達の事は気にするな、今そこで伸びている姉様を土佐と一緒に部屋まで運ぶから、お前はそっちに行ってもいいぞ 」

 

 加賀姉さんと土佐姉さんは赤城姉さんを抱えた。

 

「こっちは大丈夫だ。誘いを無下にするなよ 」

 

「ん……ありがとう! じゃあ行ってくるね! 」

 

「ありがとう2人とも! じゃあ指揮官、着いてきて 」

 

 何も無かった予定だが、俺はブレマートンに誘われて後をついていった。

 

「いや〜それにしても暑いね〜 」

 

「うん……もう汗が止まらないね 」

 

 詳しい気温や湿度が聞きたくないぐらい暑く、周りの木に引っ付いているセミも暑い暑いと文句を言ってるようにミンミン叫んでいた。

 

 さっきまで運動していたブレマートンが熱中症にならないか心配で少しチラリと見ると、ブレマートンが胸付近の服を少し伸ばしてその中に手うちわで風を送り、涼んでいた光景を見てしまい、思わずブレマートンの下着を見てしまった。思わず目を逸らし、それが気になったブレマートンは不思議と思い、俺に声をかけた。

 

「あれ? 指揮官どうしたの? 」

 

「いや……その……何でもない 」

 

「なんでもって……あ、もしかして私のブラ見ちゃったとか? 」

 

 図星をつかれて肩をビクッとあげてしまい、ブレマートンはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

 

「エッチ〜 」

 

「いやこれは不可抗力というか……うぅ、ごめんなさい 」

 

「いや良いの良いの! 寧ろ指揮官慣れてると思ってたし 」

 

「いやいや慣れてる訳無いだろ…… 」

 

「そう? ここにいる女の子みーんな結構イケてるし、指揮官も好きな子の1人ぐらいいるでしょ〜? 」

 

「好きな人ね…… 」

 

 ジンさん達が数十分前に話した話題もあり、俺は無意識に右ポケットにある結婚指輪をチラリと見つめ、服の上から箱の形を型どるように触った。

 

 それを見たブレマートンは気になるように見つめ、声をかけてきた。

 

「ん? 指揮官、ポケットになんかあるの? 」

 

「え!? い、いや! 何でも無い! 」

 

「へぇ〜あ、指揮官、あれ何? 」

 

 ブレマートンは俺の後ろに指を指し、俺は後ろに振り返ったその時、ブレマートンはすかさず俺の右ポケットに手を入れ、結婚指輪の箱に手を入れてそのまま取り出した。

 

「よっと! ごめんね指揮官。ちょっと気になっちゃって ……って、これはもしや……? 」

 

「あっ! ちょっと! 返してよ! 」

 

「ねぇ、これってもしかして指輪? 」

 

 流石にそんな箱を見たら誰でも分かるか……言い訳を考えても無駄だも悟った俺は何も言わずに頷き、ブレマートンはからかいもせず、優しく笑った。

 

「なーんだ、やっぱりいるじゃん。良かったら相談に乗るよ? こう見えて色んな子の相談に乗ってるから 」

 

「知ってる。お悩み相談室だっけ? 」

 

 俺は携帯を取り出して操作し、ブレマートンにある画面を見せた。見せた画面は艦船通信というSNS見たいなツールでタグ付けされているお悩み相談室というタグだ。

 

「これで皆に相談を受けてるんでしょ? 」

 

「ありゃりゃ〜認知されてたか〜 」

 

「知ったのはつい最近だけどね 」

 

「そうなんだ。じゃあ、早速相談……してみる? と言っても、是が非でもして貰うけどね! 指揮官みたいなタイプは結構溜め込んで後々押しつぶされるタイプだからね! 」

 

 うぐっ……結構図星をつかれてるから何とも言えないな……。図星をつかれた俺はブレマートンに手を掴まれ、そのままなされるがままに近くにあったベンチまで歩かされ、ベンチにポンと座らされるとブレマートンは近くにある自販機にお金を入れ、自販機の飲み物を2本買い、1つを俺に渡してくれた。

 

「はい、どうぞ指揮官 」

 

「あ、ありがとう 」

 

「にしても指輪か〜指揮官、結婚するの? 」

 

「いやだからしないって。俺にはまだ早いと思うし…… それにそうしたいと思える相手もいないし 」

 

 今の所俺には俗に言う結婚願望というものは無い。と言うより、いきなり指輪やらを渡されて頭や心の整理が追いついていないというのが正しいと思う。

 

「まぁ、それならそれで焦らないで良いかもね。でも仮に好きな人がいたら、アタックすれば絶対上手くいくって! あ、なんならこっそり教えてくれれば、その子と仲良くするアドバイスとか教えられるかもよ? 」

 

「好きな人……ねぇ 」

 

 その言葉を聞いてパッと思い浮かべる人物はいない。だがブレマートンは期待の眼差しを輝かせながら体を密着させ、ブレマートンの柔らかい所が当たるに当たって思わず顔を背けてしまう。

 

「どうなの〜? 」

 

「い、いないから! 」

 

「えー本当に? 」

 

「本当に! 」

 

「ふーん〜じゃあさ、今1番良い感じの子がいるんだけどどう〜? 」

 

 何だその悪質なキャッチ見たいな言い方……必要無いと断ろうとしてもグイグイと更にブレマートンは密着し、火照った顔と体の熱が服越しからでも伝わってきた。

 

「ぶ、ブレマートン……? 」

 

「料理も出来て〜結構尽くすタイプがいるんだけど……どう? 」

 

 焦げ付くような暑さと、セミの鳴き声なんか気にできないぐらいにブレマートンの顔が目から離れず、むせ返るはずの汗の匂いは俺の頭を少しくらつかせた。

 

 急に胸の鼓動が止まらず、激しく動くせいで少し息が苦しい。顔も暑く、いつの間にか俺の手はブレマートンに掴まれてしまい、ちょっと力を入れれば解ける筈なのに何故か手が動かなかった。

 

「ねぇ指揮官……もし良かったら…… 」

 

 ブレマートンの言葉を繋ごうとしたその時、俺のポケットから鳴り響く着信音によってそれは遮られた。

 

「はっ……! ごめんブレマートン、ちょっと失礼するね 」

 

 着信音で朦朧としていた意識を取り戻し、ブレマートンの手が置かれた手をそのまま振りほどき、急いで携帯をポケットから取り出した。

 

 取り出した携帯の画面には、ジンさんの名前があった。

 

「もしもし? 」

 

『おお優海か、電話に出れるようなら無事だったか 』

 

 電話に出てみるとそこにはやけに焦っているジンさんが耳に入り、心做しかジンさん意外の声や音が聞こえてきた。

 

「どうしたんですか? 」

 

『その前に今のお前にとって悪い知らせと悪い知らせがあるんだがどっちがいい? 』

 

「いやそこは片方良い知らせじゃ無いんですか!? ……じゃあ、後者の悪い方から 」

 

『すまん、指輪の件がKAN-SEN達にバレた 』

 

「は? 」

 

 悪びれの無い謝罪に困惑した俺に対し、ジンさんは話を続けた。

 

『いや〜どうやら俺らの話を盗み聞きしてた奴がいてな? そんでそいつが明石に話したらあの猫娘気前よく言いやがった。そんでアイツの回りにはアバークロンビーやらアルバコアとかいたから、そいつらが言いふらして…… 』

 

「島全体に情報が流れた……と 」

 

 イタズラ娘達もそうだけど明石も明石で何でそんなにポンポン指輪の事を話すんだ……後で怒っておこう。

 

「それで、俺にとって悪い知らせはなんですか? 」

 

『実は明石とリフォルの研究室が爆発した原因が分かってな、1つの機械がアルバコア達のイタズラで暴走したのが原因らしい。その機械っていうのが、一時的にお前に対してのKAN-SEN達の好感度をあげるものらしいんだよ 』

 

「なんですかその催眠紛いな機械は!? というかそれ作っていい許可なんてしてませんけど!? 」

 

『アイツらお前の事ガン無視でやってたらしいぜ 』

 

 あの2人は何やってんの? 俺指揮官だよ? 多分この島で1番地位が高い筈なのになんだか蚊帳の外の扱いで納得行かない。

 

 あの2人に関しては怒るじゃ済まない。何かしらの処罰が必要そうだな……

 

「まぁ……2人の事は良いとして、好感度が一時的なら問題ないんじゃ…… 」

 

『その好感度がオーバーフローしてるとしたら? 』

 

「え? どういう事ですか? 」

 

『どうやらその機械が暴走して爆発した際、誤作動を起こした結果……お前に対する好感度はエグい数値になってるとリフォルが言ってたぜ 』

 

「えーと……それが悪い知らせですか? 」

 

 悪い知らせって言うには何だか問題無いような気がするけど……

 

『とにかく、リフォルがその機械を直してるから2、3時間ぐらいKAN-SEN達には近づくなよ? 出ないとお前…… 』

 

『もしかして貴方は指揮官と話しているのか? 』

 

『げっ!? お前エンタープr……ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 』

 

「ジンさん? ジンさん!? もしもーし!? 」

 

 突然ジンさんからの連絡が途絶えてしまい、携帯からなる音は通話終了の音だけとなった。

 

 そして通話が切られた直前……エンタープライズの声も聞こえたし、ジンさんもエンタープライズと言おうと下からそれは間違いない筈だ。

 

 だがそうだとしたらおかしい、通話越しからの判断だけどエンタープライズがジンさんに対して何か手をかけた様な感じがした。エンタープライズが何故……? それに、ジンさんが言っていたKAN-SENから離れろってどういう事だろうか……? 

 

「指揮官〜? 女の子をほっとくなんてダメだよー? 」

 

「あぁごめんブレマート…… 」

 

 後ろに振り返った瞬間いきなり頭を抱えられ、そのままブレマートンの腕の中に包まれ、ブレマートンの胸まで抱き寄せられた。

 

「!?!?!?!?!? 」

 

 顔に柔らかくもハリのある弾力に包まれた俺は何が何だか分からず、胸の中でもがいた。もがいても手をばたつかせてもブレマートンの腕は物凄い力で押さえつけられてしまい、逃げようにも逃げられず、柔らかい胸の中で窒息しそうだ。

 

 むせ返る汗の匂いと男には無い柔らかさで頭がくらつく……それにブレマートンも俺の頭を優しく撫でていた。この感じがどこか懐かしい気がする。

 

 夏の暑さも、セミの鳴き声も、人肌も温もりも……どこか、遠く……

 

「どう? 良いでしょ? 」

 

「うぇ……あ…… 」

 

「ねぇ指揮官、指輪さ……私にしない? 私も一応料理出来るし、それに私指揮官の事…… 」

 

 その先の言葉は、木陰から放たれた1つの銃声によって遮られ、放たれた銃弾はブレマートンのツインテールの片方をすり抜け、木へと打ち込まれた。

 

「誰っ!? 」

 

「この銃声って……まさか 」

 

「失礼、虫がいたのでソウジをしようと思いましたが…… 」

 

 やはり出てきたのはシェフィールドだった。彼女のいうソウジとは別の意味だから余計に怖い……

 

「おや、こんな真昼間からそのような事をされてるとは、ご主人様は害虫では無く、欲望に忠実な猿にでも生まれ変わったのですか? 」

 

「誰かと思えばメイド隊の人じゃん。今明らかに私の事狙ってたの……わざと? 」

 

 ブレマートンは明らかに狙われたのを察知し、俺を離し、シェフィールドに対して明確な警戒を見せた。

 

「とんでもございません。……失礼ながら、そこにいる猿をこちらに渡してはくれませんか? そのように他の方に盛ってしまわないように調教するので 」

 

「え、猿って俺の事……? 」

 

「指揮官の事なら大丈夫。私が面倒見るし 」

 

「おーい……ちょっと俺の話を聞いてくれるかな〜? 」

 

「残念ながら猿の話を聞く耳は持ち合わせておりません。こうなれば鎖にでも繋いで無理やり連れていきます 」

 

「運動は苦手だけど……そうは行かないっての! 」

 

 ブレマートンは艤装を展開させ、躊躇いなく主砲をシェフィールドに向けた。

 

「お、おいちょっと待っ…… 」

 

 俺の静止を聞かずにブレマートンはシェフィールド目掛けて砲弾を放ち、シェフィールドは軽快な動きでそれを交わし、変わりに目の前にある木々が吹っ飛んでいった。

 

 砲弾の衝撃で辺りのベンチやらさっき使ってた自販機すはも吹っ飛び、風圧で思わず吹き飛ばされてしまいそうだ。

 

 にも関わらずシェフィールドとブレマートンの2人は戦闘を初めてしまい、シェフィールドは2丁の銃を使ってブレマートンに攻撃を始めた。

 

 2丁の銃弾がブレマートンに襲いかかるものの、重巡の装甲には傷一つ付けられず、ブレマートンは回避せずそのままシェフィールドに向けて攻撃した。

 

「ちょっと2人とも! ここ島で味方同士だぞ!? 」

 

「だってあっちから仕掛けて来たんだもん! 」

 

「そちらが応じないからです 」

 

「ど、どうしたんだよ……2人とも 」

 

 やはり明らかに様子がおかしい……ここは止めるべきだけど……止められる術が無い。こっちもこっちで艤装を出して動きを止められば良いけど、俺の艤装に相手の動きを制限させる武装は無く、全て威力の高いミサイルやレールガンしか無い。

 

 一応艤装を展開すれば手元に出てくる俺の武器の中には、1番威力の小さい2丁拳銃もあるけど……それでは威力が不足している。

 

 ……いや、四の五の言ってる場合じゃない。これ以上味方同士で戦わせるのは良くない。急いで艤装を展開し、2人を止めに入ろうとした時、上空から黒い蛇のような物が2人の体に巻き付き、彼女達の動きをとめた。

 

「あーらあら、何だか凄く面白い事になってるじゃない〜 」

 

 太陽を背に白い髪をなびかせ、KAN-SENのでもセイレーンの艤装でも無い不思議な艤装を展開した人がいた。

 俺と同じセイレーンによって生み出され、かつてはKAN-SEN達を苦しめた敵……オロチさんがここに現れた。

 

「オロチさん! 」

 

「やっほー優海、爆発があったから何事かなーって思ったら貴方もいたのね 」

 

「その爆発は2人が起こした物で……とにかく助かりました! 」

 

「良いのよ、話はあのツンデレポニーテールちゃんに聞いてるから早く逃げなさい 」

 

 ツンデレポニーテール……? って誰だ? KAN-SEN以外でポニーテールって言うとリアさんの事だとは思うけど、とにかくここは一旦任せた方が良さそうだ。

 

 俺はこの場から離れ、ジンさんの言う通りKAN-SEN達とは合わない場所を探しながら走っていった。

 

「あ、指揮官! 待ってよ! このー離せー! 」

 

「ちっ……蛇は大人しくしていればいい物を…… 」

 

「まぁまぁ、そう言わずに仲良くしましょうよ〜って言っても、貴方達の目にはもうあの子しか映って無いと思うけど……ね! 」

 

 こうして、島全体の味方同士による激しい戦いが幕を開けた……

どのテネリタスが好き?

  • ロリママ創造者の2代目 ラハム
  • 人類最強の天然3代目 アトラト
  • 食いしん坊な絶対守護者4代目 シーア
  • 武士道と極める騎士5代目 ロドン
  • 風のように自由なガンマン6代目 セイド
  • 完璧で究極のアイドル7代目 マリン
  • おっとり包容力で全知全能の8代目 ミーア
  • 元人間のセイレーン 10代目マーレ
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