もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜 作:白だし茶漬け
新年明けて初めてだす小説はやはり最初に出したこの小説です。
なんやかんやありましてこの小説も3年描き続けている事になりました。
……本当にここまで続くとは。アズールレーン本編も5周年となり、まだまだ勢いは続きそうですね〜
それでは、今年もよろしくお願いいたします。(。・ω・)ノ゙
……というか数ヶ月この小説の主人公の優海君が出てないのマジ?
隼と
隼は鋭い目でじっと物陰から獲物を見つけるまで動かず、獲物が隙を見せた一瞬、風を超えるような速度で獲物を喰らう。
狙撃手も同じだ。標的をスコープで覗き、一撃で狙えるタイミングを見計らって引き金を引く。
打ち出された弾丸は空を斬り、音速で進んでいく。まさに隼だ。
そんな隼……いや、隼を象った機械の鳥がKAN-SEN達やセイドの前に現れ、猛威を奮っていた。
『クォォォォォォォォォ!! 』
「何だ……あれ? 」
塔の中のモニターから見た俺は、これが何なのか分からない。が、直前までこのモニターにIKAROSという文字が浮かんだ事から、あの鳥の名前はIKAROS……つまり、イカロスという事で間違い無い。
イカロスは最初の攻撃でセイドを撃ち落とし、そのセイドはと言うとどこにも姿が見たらない。
「まさか、やられたのか……!? 」
「んな訳ねぇだろ 」
この部屋の扉からセイドの声が聞こえ、振り返りとセイドは少し焼けこげた様な煤にまみれ、無事だった。
「ぶへぇ〜!死ぬかと思った 」
「無事なようだな。……それにしても、あの鳥はなんだ? 」
「こっちが知りてぇよ。まぁ、見た感じこの街の防衛システム……その最終兵器って言った所だな。ここになんか無かったのか? 」
「分かんねぇよ。名前がイカロスって事ぐらいしか 」
「イカロスぅ?鳥ごときに随分大層な名前付けるな〜。
ま、そんな事よりさっさと倒す方法調べますかねー 」
セイドは直ぐに戦場には戻らず、この部屋の中からイカロスのデータを探すため多数の端末に触れ始めた。
「お、おい!直ぐ戻らねぇとKAN-SEN達が…… 」
「まぁ大丈夫だろ。それに俺、さっきの攻撃で艤装の一部破損したし、修復にはちと時間かかるしな。それまでの辛抱だよ 」
「お前……!その間にKAN-SEN達にもしもの事があったらどうすんだ! 」
「その時はそん時だ。今はあのイカロスっていう鳥野郎の事を知るのが最優先だ。流石の俺も何もわかんねぇ敵と勝てる程強くはねぇよ 」
セイドの言っている事は正しいし理にかなっている。だどは納得は出来なかった。力があるのにも関わらず、それを守る為に使わずにいる事や、自分の無力さが入り交じり、ついセイドに掴みかかろうとした。だが、それは無意味な事だと理性がギリギリ抑え、俺もイカロスの弱点を探す為に部屋中を漁った。
「それに、あの謎っぽいKAN-SENがいるから何とかなるさ。アイツは強えからな 」
「そういえば、アイツは何なんだ?やけにあんたの事を敵視してるような気がするが……それに、なんかエンタープライズと似ているような気がするんだが 」
「奴の名前はコードG。まぁ、謎の多いKAN-SENって認識で良いぞ。エンタープライズと似てるのは……まぁ、他人の空似ということで 」
「とぼけんなよ 」
「……なぁ、お前どこまで知ったんだよ 」
「はぁ?何を? 」
「この部屋に居るんだ、ちっとばかしセイレーンについて何かわかったんじゃねえのか? 」
「……まぁ、ちょっとはな。アンタらテネリタスの事についても分かったよ。遺伝子にメンタルキューブの因子があるんだって?知ってたのかよ 」
「いや、生きてる内には知らなかったな。その事実を知ったのは俺らがこの世に蘇った時さ 」
「どう思ったんだよ、自分の中にメンタルキューブがあるって知った時は 」
「なーんにも?普通に納得したし、あぁそうなんかって思っただけさ 」
いやノリ軽すぎだろ……俺だったらまぁまぁショックは受けると思うな。遠回しに人間じゃ無いって言われてる様な物だ。
人間離れした力でロイヤルの英雄となり続けた家系、テネリタス。その正体はメンタルキューブの因子を持った半分KAN-SENのような存在。そしてそれは、本人達は望んでいない力でもあった。
望んでいない力を持って、英雄を強いられたテネリタスは、どんな気持ちを抱いて生きてきたんだろうか……
「……お、これか? 」
考え事をしている間にイカロスの設計図を見つけ、セイドは興味津々にこっちに来た。
「おー!ナイス!これさえあれば俺一人でやっつけてや…… 」
嬉々としてイカロスの設計図を見たセイドは徐々に苦い顔になり、頭を悩ませて俺に設計図を返した。
「どうした? 」
「いやぁ〜これ、思ったよりもきっっっっいわ。どうすっかなーこれ 」
もう一度改めてイカロスの設計図を注視すると、確かにこれはセイドだけでは難しい。
技術やエネルギーは現代では設定つかない物ばかりだが、構造自体は単純だ。イカロスの中心にあるエネルギーコアが動力源となっており、そこを破壊すればイカロスは機能停止する。……が、そこにリソースをかけすぎて膨大なエネルギー量が中心部に集中している。
下手に攻撃すれば膨大なエネルギーが拡散、または暴走してこの辺り一帯が爆発する危険性もある。弱点でもあり危険な所でもある。
「……これ、どうすんだ? 」
「動きを止めて、このコアの中心部を狙い撃つしか無いだろうな 」
セイドはエネルギーコアの中心にある小さな部分に指を合わせた。この小さな中心部分を精確に狙い打てばエネルギー暴走を無く機能停止する事が可能だと言うが……イカロス全体の全長が30mであると書いてるから、そこからこの中心の大きさは……恐ろしい事に僅か1mm弱という小ささだ。こんだけ大きいなら弱点もでかくしろっての……
「出来るのか? 」
「普通に無理。止まっているならまだしもあんなびゅんびゅん動いては話にならねぇし、そもそも動きを止める為には俺や親父の力が必要だろうな 」
「じゃあトドメはKAN-SEN達って言うわけか 」
「ま、そういう事だ。うし、それじゃあ行ってくるわりお前はここで大人しくしとけよ 」
「…… 」
結局俺は何も出来ずじまいかよ……だが、どうする事も出来ずに手を握りしめると、モニターの方からシステムの起動音が耳に入る。機会の方を振り返りと、死んでいたシステムに電源が入り、通信類も息を吹き返した。
「どうやらイカロス起動の際の衝撃でシステムが復活したようだな。やっぱ機械って叩いたら直るもんだな! 」
「んだよ〜だったら普通に殴れば良かったぜ 」
「これなら指揮官らしく、指揮できるな。頼むぜ 」
「あぁ、任せとけ! 」
これなら俺も戦える。優海みたいに上手くは出来ないと思うが、やれるだけやってやるさ……!
「そんにしても、親父何してんだ? 」
「ここまで当方の刀が通らぬとはな……その装甲、敵ながら見事だ 」
「アナタもその目……強くてスキよ! 」
「すまぬが当方が心を許す妻は後にも先にも1人のみだ 」
刀を振るも堅牢な装甲は刃を通さずに抑え、虚しく火花が散るのみだ。闇雲に切っては対して痛手をおう事も、あの艤装を斬ることさえ叶わない。
対して向こうは火力と装甲を全面的に押し出す力任せの戦い方だ。突撃しながら四方八方に戦艦クラスの砲撃を撃ち続け、当方の逃げ道を失わせながら攻撃を当ようとする。
純粋かつ単純な攻撃方法だが、それが出来る程の性能という事か……セイレーンの中層端末、アビータシリーズ……少しばかり骨がある。
「アナタの刀、ちっとも痛くない。いつまで経ってもアナタは勝てない! 」
「そう、貴方の攻撃はチャリオットには届かない。貴方とは相性最悪の相手って訳 」
「面白い。ではその矛盾、斬り伏せてみせよう 」
当方は刀を鞘に戻し、ゆっくりと呼吸を整える。
(心頭滅却……心を殺せ )
瞳を閉じ、心眼にて相手の位置を探る。刀の塚を添え、居合の体勢に入る。
「……何をしてるのかしら? 」
雑音が耳に入る。心を殺しきれてない証拠だ。何も入れるな、何も感じるな。海のせせらぎも、風の音も、自分の心臓の鼓動も全て入れず、当方が感じるのは刀のみ。
「また私を楽しませてクレル!じゃあこれで…… 」
その刹那、当方は刀を鞘から抜き、またその刹那で刀を鞘に収めた。目にも止まらぬ刀の振りは何人たりとも認識出来ず、当方が攻撃した事さえ気づかない。
「何?ただ刀を手に添えただけで何もしてないじゃない 」
「そう見えた時点で貴殿らはもう斬られている。貴殿らの体は斬られたことにすら気づいてない 」
「何言って…… 」
瞬間、コンパライラーとチャリオットの右腕は血を流さず海に落ち、斬られた腕は斬られた事にようやく気づくように黄色い血飛沫を溢れださせた。
「なっ……!?っっ……あ……! 」
「ナニを……した!? 」
「ただ刀を振っただけだ 」
「ぐぁっ……コノ、程度! 」
コンパライラーとチャリオットは直ぐに腕を再生させたが、次は左腕と艤装の一部が破損した。
「言った筈だ。斬られた事にすら気づいてないと。最もその艤装の装甲は少しばかり硬かったが…… 」
この時、当方の中に少しばかりの慢心が生まれた。勝ったと思い込んでしまった。海がかきわけられる音が耳に入るとチャリオットが斬られていたにも関わらず突撃をかけてきた。
「何っ!? 」
鞘ごと刀を前に出して防御を取り、チャリオットの攻撃を防御したが、チャリオットは至近距離にも関わらず砲塔を構え、そのまま躊躇いなく砲撃した。
至近距離の砲撃は掠めたが、爆風で当方とチャリオットは互いに距離を置くように吹き飛ばされ、当方は戦闘に置いて初めての痛手を負った。
「この程度じゃワタシは止まらない!もっとモット楽しもうよ! 」
「……どうやら、生半可な攻撃は通らないようだな。面白い、受けて立とう 」
「……ついていけないわ。チャリオット、後は頼んだから 」
コンパライラーはこの場から離脱したか。まぁいい、当方はあの戦車をどうにかするしかない。
街の方角から巨大な鳥のような物が見えたが、あそこにはセイドとKAN-SENがいる。問題は無いだろう。
(……役目を果たすのは任せたぞ、セイド )
当方はしばらくの間、心に従って戦いを嗜む。
「だァァァァ!!親父はどこ行ったんだこんな時にッ!」
「仕方ないだろ。とにかく動きを止めないと始まらねぇぞ。エセックス、バンカーヒルは右から攻めろ。ヨークタウンとホーネットはそのままの距離を維持、ヴェスタルは損傷したKAN-SENの修理に集中しろ。動けるだけでいい 」
通信機が使えるようになって何とかKAN-SEN達とセイドの指揮ができるようになったが、不利な状況は変わらない。
イカロスの高機動は他のどの艦載機よりも早く、鳥のように予測不可な動きをする為、KAN-SENはおろかセイドもキツイ様子だった。
イカロスは羽を広げると無数の自立兵装を起動させ、その自立兵装も有機的な動きを見せた。まるで獲物を見つけた鳥のようにKAN-SEN達にビームを放ち、狙いを定めまいと止まらずに仕掛けてくる。
「きゃあ! 」
「イントレピッド!? 」
艦載機と自立兵装とのドッグファイトはこっちが不利だ。かと言って対抗手段がある訳では無い。このまま損傷が増えれば流石のヴェスタルの修理も追いつけず、全滅は免れない。
そして、全滅をする要因はもう1つ。それは謎のKAN-SENコードGがセイドばかり狙う事だ。
コードGはセイドを酷く敵視しており、イカロスの攻撃の中でしつこくセイドに攻撃を集中させており、セイドはこの状況で最もキツイ中にいた。
「おいおい……!いい加減勘弁しても良いと思うけどな!? 」
「黙れ!貴様はここで倒すっ! 」
コードGの声は荒れ続け、殺意を込めた黒い矢がセイドを追尾し続けた。
黒い光の軌跡を描きながら襲いかかる複数の矢をセイドは2丁の拳銃で撃ち落としつつもイカロスの攻撃を避け続けていた。
「ちっ……これきついな。……やるしかないな 」
するとセイドは指をくいっと上げると、KAN-SEN達の背後から何やら珊瑚の様な艤装が海中から姿を表した。
「な、何だあれ!? 」
「俺の艤装さ!と言っても、武器庫見たいなものだけどな 」
セイドは新たに出現した艤装に飛び込み、その中から巨大なミサイルランチャーを構えた。
「これでもくらいやがれ!おまけにもう一丁くらいやがれ! 」
派手にぶちかましたミサイルの弾道はコードG目掛けて飛んでいき、セイドは更に新たなミサイルランチャーを艤装の中から取り出してもう一波放った。
煙の糸が空に新たな雲を描く程の大量のミサイルは中に浮くコードGに襲いかかり、圧倒的な物量を前にコードGは為す術なくミサイルに当たり、そのまま連鎖反応によってミサイルは爆発し続けた。
「うっしゃあ!ざまぁみやがれ! 」
「な、なんて火力なんだ…… 」
これにはエンタープライズにも引き気味となっていた。だが、これでコードGが倒せれば御の字……だと思ったが、爆風の中から人影が移り、その中心から爆風を吹き飛ばす衝撃波が爆風を消し去った。
消し去られた爆風からコードGがピンピンしており、特に目立った損傷もなかった。
「な、なんでやろうだ…… 」
「まぁあの程度ではやられねぇわな 」
「うおっ!? 」
またもやセイドが塔の中に入っており、しかもセイドの背中には一際デカイスナイパーライフル見たいな物が背負っていた。
「今度は何だ!? 」
「あぁ悪ぃ、結論から言えばお前にあの鳥野郎のトドメを任せたいんだわ 」
「はぁ!? 」
セイドは有無を言わさず俺にスナイパーライフルを持たせると、そのスナイパーライフルの特性について説明した。
「こいつは俺が持っている中で1番射程距離が長いかつ威力もあるライフルだ。使用用途は普通のライフルと変わらない。使い方は分かるか? 」
「あ、あぁ…… 」
「正直、親父がいない今コードGとイカロスを同時に相手にするのはキツイ。どうしてもトドメまでに持っていけねぇ。そこでだ、お前にトドメを任せたい 」
セイドの目は本気であり、同時に申し訳なさそうな目でもあった。
「危険な事をやらせる自覚はある。だけど、あの鳥野郎を倒せるのはお前だけなんだ。KAN-SEN達もイカロスの動きを止めるのに精一杯の状態だ。だから……頼む 」
「セイド…… 」
「最悪、お前だけは守ってやる。狙うポジションは任せた 」
セイドは別れ際に親指を立てて部屋から立ち去った。
「……ホーネット、聞こえるか?少し俺を乗せて欲しい 」
強くならなければ何も守れない。
強くならなければ敵すら倒せない。
当方は強くなる宿命を背負った。だからこそ全てを斬り伏せられる力をいつも渇望していた。そうして出会ったのが武士道というものだった。
ロイヤルとは違い、己の義を貫き通すこの道に当方は不思議と惹かれ、刀の戦技を磨いた。
最初に斬ったのは竹だった。しかし斬った竹の断面は見るに堪えない程ボロボロであり、斬ったというより叩き切ったというのが正しかった。
ロイヤルで作られた剣と違い、刀は片方しか刃が無いため、どうしても慣れるまでには時間がかかった。
そんな当方を見るに耐えなかったのか、それとも上手く出来ず悩む子供と見たのか、当方の師匠は柔らかな物腰でこう言った。
_刀は自分を映し出す心であり、物を斬る物では無いよ。刀はその本質を斬るものなの
最初に言われた時は頭が混乱したものだ。物の本質と言われてもピンと来ず、当方は頭を悩ませた。それを見た師はクスリと笑い、当方が斬った竹と同じ竹の前に立って刀を構えた。
_物にはね、必ず本質というものがあるの。その形を保つ為に無くてはならない物。刀はその本質を辿る道を斬り、物を断つ物。見てて
すると師は柔らかな表情は消え、抜き身の刀のような目となった。
そして刹那に刀を振ると、竹は斬られた事さえ気づかない様に後から倒れ、切れ目も美しくしなやかであった。
_だからもしどうしても斬れないものがあれば、心を落ち着かせて、心眼で本質を見極めて。それが出来れば、きっと貴方は誰よりも強くなれると思うわ
そうすれば婚約を認めてくれるかと、俺は尋ねた。
_……!ふふ、ええ。貴方が私よりも強くなれば、貴方と一緒にいてあげるわ。だから早く迎えに来てね?未来の夫さん
「……サクラ 」
師でもあり、妻である彼女の言葉を思い出し、当方はもう一度目を閉じた。
瞼を閉じた暗闇の中には桜と過ごしてきた日々が蘇ってきた。良い思い出だが今はこれはただの雑念だ。
心を殺せ。本質を見極めろ。さすればこの刀に斬れぬものは無い。
「また目をトジタ……!だったらワタシも本気でツブス! 」
目を閉じても分かる程の膨大なエネルギーが集中する音が耳に入る。恐らく今までで一番の砲撃を放ってくるのだろう。
触れれば肉は焼かれ、命は灰と化すだろう。そんな攻撃を躱す事は不可能だろう。ならばやる事は1つ、その砲撃事あの者の装甲を斬り伏せる事だ。
好機は1度のみ……もう一度心を殺せ。
「オワリ……!! 」
目を開けた光景は熱と稲妻を帯びた紫色の光だった。触れれば存在事灰となり、良ければ後ろにいる者が危うい。
当方がやる事は1つ、この光を斬る事だ。どんなものでも本質がある。だからこの光さえ斬れると当方は確信した。
刀の柄を掴み、心を殺した当方の刀に斬れぬものは無い。刹那の間に一振、二振、無限とも思える刀を振り、光を斬った。
当方に向けられた光に無数の斬撃の亀裂が走り続け、光は粉々に斬り伏せられ、それを追うように海が、空が……いや、当方の目の前にある空間が一瞬だが真っ二つになった。
真っ二つになった空間は修復され、当方が斬ろうと思ったものだけが真っ二つとなった。
「あ……レ?ワタシの……から……だ……キレ 」
「刃こぼれ無し。当方の刀に斬れぬ物なし 」
残心し、刀を鞘に納めた時、光は消え去りチャリオットの体と装甲も真っ二つにズレた。黄色い血が静かに流れ、艤装も爆発すること無く役目を終えたかのように機能を停止させた。勝負は、一瞬で決着となったのだ。
「あーア、マケた。もうオワルの、ツマンナイ 」
「貴殿は中層端末だろう。代わりはいるのであろう 」
「ワタシ、プロトタイプダカらスペアはない。カンセイされたとしても、それはワタシじゃないし、セイカクもちがう 」
あの者、未完成だったのか……この時点で少し苦しめられたとなれば、完成したあの戦車はどれ程の物となるのだろうか……
「でもタノシカッタ。ツギワタシとあったときは、よ……ロ……シク…… 」
チャリオットの体は徐々に海へと沈み、二度と浮上する事は無かった。この鏡面海域の水底で数十年の時をかけて海へと還えるのか、それとも残骸はそのままに残るのか……当方には知る由もなかった。
「さて、セイド達の助太刀と参るか 」
「たくっ……親父もすっとろいな!後で覚えとけよぉ! 」
ここまで姿を中々表さない親父に対して恨み言を言いながらコードGと対面し、なるべくKAN-SEN達の邪魔をしないように立ち回っている。
まぁ、と言ってもコードGは俺しか狙わない都合上その心配な無い。1対1ならあちらの望む所、こっちとしてはさっさと帰って欲しい所だが……目の前の奴が許してくれる訳無かった。
「ここで貴様を倒す。そうなればあの人は救われるんだ! 」
「へぇ、でもあんたの指揮官では無いんだろ?俺らを殺った後どうするんだよ 」
「決まっている。今度こそ私がずっと守ってみせる 」
「馬鹿だなぁ。アイツにとってのお前はお前じゃねぇんだよ 」
するとコードGは図星をつかれたガキの様に目を開いた。
「お前がやっているのは自分を慰めてるだけなんだよ。現実から目を背けて、やりたい事をやるガキ……いや、行き場の無い亡霊なんだよ 」
「黙れっ!! 」
コードGは怒りを推進力に変えるように接近戦を仕掛け、自前の弓の攻撃に俺は二丁の銃の重心で防いだ。
「お前達がいなければ指揮官は幸せに暮らせたんだ!それをお前達が壊したんだ!だから今度こそ守ってみせる! 」
「へっ、お前らの世界の俺らがどんな奴か知らないけどよ。少なくとも戦場では生きるか死ぬかのどっちかさかねぇんだよ! 」
弓と銃の鍔迫り合いは止まり、お互いの射程距離内での撃ち合いに戻ったが、怒りで我を忘れつつあったコードGの攻撃に若干のブレがあった。
その隙をつかない訳には行かない。速攻でそのブレを掻い潜る様に弾丸を撃ち込み、1発の弾丸はコードGの艤装に直撃した。
「ぐっ…… 」
1発と言っても直撃だ。ダメージは馬鹿にならず、コードGはその場でよろめき体勢を崩した。急いで体勢を整えるコードGだがもう遅い。
コードGの周りにビットを囲むように設置し、最早逃げ場は無かった。
「チェックメイトって奴だ。あんまし俺らを舐めんなよ 」
「くっ…… 」
「最後に言い残す事は……ってこれじゃ俺が悪役みたいじゃねぇか。あ、でも今は悪役か 」
コミックで見る悪役が何で敵にトドメを刺すのにこんな言葉を言うのか分からなかったが、こうして当事者になると何となく気持ちは分かる気がする。
勝者の余裕とか、勝利の優越感を長く浸りたいとかあるかもしれないが、1番は同情だろう。悪役も一応人だ、人生の最後に何かさせたい。という気持ちがあり、出た言葉がそれなのだろう。
「んで?何か無いのかよ 」
「……い 」
「んぁ?よく聞こえねぇぞ 」
「私は、こんな所では終わらないっ! 」
上空から艦載機の音が耳に入り、咄嗟に上を見上げるとコードGの艦載機がそのままこっちに突撃をかけていた。
「おいおいマジか!? 」
このまま撃ち落とせば落下の衝撃と爆発で流石に俺もヤバい。だったら答えは1つ。急いでこの場から逃げることだ。
ビットを回収してその場から離れ、その瞬間艦載機は海に激突してそのまま爆散した。
爆炎や衝撃がこっからでも届き、あと数秒気づくのが遅かったら間違いなくやられていた……
「でも、アイツ逃がしちまったぁぁ!俺ってなんて詰めが甘い奴 」
爆炎の中には何も無く、コードGは恐らくだがこの海域から離脱したのだろう。しかもイカロスとの距離が離れ、このままじゃ援護に行くのに時間がかかりそうだ。
「まぁ、アイツらなら大丈夫だろう。人間って、意外と強いからな 」
指揮と戦闘を両立させるのは難しい。というより無理だ。それが出来るのは間違いなく人間じゃない。
人は同時に2つの物をやるのが難しく出来ている。ものを書きながら物を食ったり、めちゃくちゃ小さい獲物を狙いながら全体の指揮をするのは、余程頭が出来てる奴しかできないだろう。
だがそれをできる奴を俺は知っている。そいつは俺よりも年下で、艤装を背負って戦いながら指揮をしている男……優海だ。
「たく、あいつは本当にすげぇよな 」
俺は今、指揮官としてあるまじき行為をしている。それは指揮を放棄して狙いを定めるのに全神経を使っている。
外せば間違いなく死は確実。その考えが頭に過ぎると指が震えてしまう。それだけじゃない。俺だけじゃなくここにいるKAN-SEN達も或いは……その恐怖が震えに変わり、ライフルの重心もブレ続けていた。
落ち着け、落ち着け、落ち着け……呼吸を整えろ。
_冷酷になれ。そうすれば自ずと望む結果は手に入れられる。
「っ!何でこんな時にあの野郎の言葉を思い出すんだよ……! 」
冷酷になれ。親父に言われ続けた言葉であり、嫌いな言葉でもある。
他者を利用し、欺き、操り、己の利のみとして扱え。それが上に立つ物が絶対に必要な物。そして、その為には冷酷にならなければならない。
他者を思うな、考えるな、それはただの足枷となるのだから。
「うるせぇよ……! 」
その言葉をこの状況に例えるなら、KAN-SEN達を犠牲にしてでもあの鳥野郎を倒せという事になる。そんなこと絶対にしねぇ。そうなったら一生俺は俺を恨み続ける。
『指揮官! 』
通信越しのエンタープライズの声が耳に入り、ライフルのスコープ越しからイカロスの胴体を覗く。イカロスが俺の狙撃ポイントの射線上に入り、胴体部分が狙える位置となった。
だがまだ完全に動きが止められておらず、このままでは狙えない。
「ダメだ、まだ狙えねぇ……何とか動きを止めてくれ!
」
『止めろって言っても……! 』
飛び立つ艦載機もイカロスの羽により撃ち落とされ、巨大な鉤爪で近づく事さえままならない。
「くっ……こうなったら一か八か」
『ダメです指揮官!その場から離れてっ!』
スコープ越しにイカロスがこっちに気づいたのか、鋭いクチバシからエネルギーを溜めてこっちに大出力のビームを放とうとしていた。
だが動きが止まった。今しかない。スコープを覗き、引き金に置いた指を引くと同時に銃口から青い光がイカロスに向かっていく。
光はイカロスの胴体に向かい、このまま弱点を貫けば良かった。
だが、現実は上手く行かなかった。青い光が貫いたのはイカロスの右側の翼であり、イカロスは攻撃を見てから回避したのだ。
「嘘だろ……? 」
攻撃を受けたイカロスは怒りを込めてこちらに向かって口の砲塔のビームをお返しと言わんばかりに放った。まずい、避けられない。というか避けれるスペースが無い。
ここは廃ビルの屋上。海上からは30メートル以上ある。飛び降りるなんて不可能だ。それよりも、俺の足が震えて動けなかった。
怖いんだ。死ぬのが。どうする事も出来ない死神が俺を消そうとしている事実が俺の体を縛っているようだった。
(……終わるのか )
全てを諦めるかのように顔を俯かせ、向こうから来る黒い光を受け入れようとしたその時、2つの艦載機が俺を守るように壁となり、その艦載機には2人のKAN-SENが乗っていた。
「伏せてぇぇ!! 」
「っ……!ヨークタウン!?ホーネット!? 」
「指揮官!早く逃げ…… 」
ビームと艦載機がぶつかると同時に大爆発を起こし、爆発の衝撃で俺は吹き飛ばされる。廃ビルの崩れた表面に肌が擦られ、所々小さな傷を生み出しながらも俺は小石のように吹っ飛び、ビルの柵に背中をぶつかりながらも動きを止めた。
背中どころか全身が痛ぇし熱い……それでも生きていると実感するように体を動かして顔をあげると、そこにはボロボロになった艦載機が2つが炎を上げている光景だった。
「ヨークタウン……ホーネット…… 」
意識が霞む……視界もぼやけて何も見えなくなってくる。
そして、いつしか指さえも動かなくなってしまった。
「……指揮官?ヨークタウン姉さん……!ホーネット……!あ……あぁ……ああああああぁあああ!!!!! 」
薄れゆく意識の中、エンタープライズの絶叫が聞こえた。
どのテネリタスが好き?
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ロリママ創造者の2代目 ラハム
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人類最強の天然3代目 アトラト
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食いしん坊な絶対守護者4代目 シーア
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武士道と極める騎士5代目 ロドン
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風のように自由なガンマン6代目 セイド
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完璧で究極のアイドル7代目 マリン
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おっとり包容力で全知全能の8代目 ミーア
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元人間のセイレーン 10代目マーレ