もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜   作:白だし茶漬け

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次回でバミューダ海域後編が終わります。

今回の章はジン兄貴と敵側セイドが中心的な物語でしたが、如何だったでしょうか。

味方側の描写不足を改善する為に作ったこの章ですが、勿論、物語を進める為の大事な章。書いていて充実感があり、ところどころあるガン〇ム作品のオマージュもあり、今回もあります。

果たしてどのシーンなのか分かりますかな?

それでは、どうぞ


弱くても抗う

 

 人って奴は弱く、情けなく出来ている。

 

 一人では生きて行けねぇし、少し頭になにか物を当てられたり、爆発の衝撃で体にどこから致命傷を起こしたりする。

 

 そんな弱いのに、人は人同士で争い続ける。食料を求める為に始まった争いは、やがて自分が支配者になる為、いるかも分からない神様の為の戦争に成り代わり、もう一体何を目指しているのか分からなくなってきた。

 

 そんな中、セイレーンという共通の敵が現れた時、ようやく人類は1つとなって協力した……と思いきや、水面下では潰し合いが続いていた。

 

 互いの利益の為に策略が交差し、そんな中勝ち続けたのが俺の親父であり、そんな大嫌いな親父の言葉が離れられなかった。

 

 

 _冷酷になれ。そうすれば自ずと望む結果は手に入れられる。

 

 ……うるせぇ

 

 _他者を利用し、欺き、操り、己の利のみとして扱え。それが上に立つ物が絶対に必要な物。そして、その為には冷酷にならなければならない。

 

「うるせぇってんだろうがっ!! 」

 

「きゃっ!」

 

 朦朧する暗闇の中で意識が覚醒し、嫌いな親父の幻覚を消すかのように腕を伸ばして起き上がる。その先には治療道具を持ったヴェスタルが怯えつつも安心しきった顔を浮かべており、俺がいる場所は誰もいない瓦礫が散っている部屋の中だった。

 

「ジンさん!良かった……目が覚めたのですね 」

 

「ヴぇ……ヴェスタルか……いつつ…… 」

 

「まだ動いてはなりません。爆発の衝撃で火傷や強い打撲がありますから…… 」

 

 確かに身体中が痛てぇし熱い……。腕も思ったように動けないし、足も満足に動けない。

 

 俺……何したんだ?イカロスに攻撃を仕掛けて……それから攻撃を受けたあと……ヨークタウンとホーネットが庇って……

 

「そうだ……!おい、ヨークタウンとホーネットは!? それに状況は!?」

 

「状況は……テネリタスのセイドとロドンが戦闘に参加し、何とか体制を整えて全員この廃ビルにいる状況です。ですが、イカロスが私達を探していますので時間の問題かと…… 」

 

「ヨークタウンとホーネットは!? 」

 

「無事ではあります。……ですが 」

 

 ヴェスタルが向けた先には、壊れかけのベットで横たわっているヨークタウンとホーネットがいて安心したが、その安心は壊された。

 

 服と体がボロボロになっているし、何より目が覚めていなかった。

 

「偽装は全壊に近い状態で、身体的なダメージも大きいです。2人共、早く治療しないと手遅れになってしまいます 」

 

「だったら早くしねぇと! 」

 

「無理です!ここの設備は殆ど壊れていて使い物にならず、応急処置程度じゃもう…… 」

 

「嘘……だろ…… 」

 

 2人は俺を守る為に自ら盾になった。だとすれば、この原因を作ったの……俺だ。

 

 自分の弱さを呪った。自分の行動を恥じた。優海が出来るなら俺も出来ると舞い上がっていた俺を殴りてぇ……!

 

 体に重りがあるかのように俺はその場でうずくまってしまった。

 

「俺は……なんて事を……! 」

 

「ジンさん、ジンさんのせいでは…… 」

 

「俺が外したりしなければ今頃……!くそっ……! 」

 

 みっともなく後悔し、みっともなく泣いてしまう。いつからなのか、俺は強いと錯覚してたんだ。本当は何も出来ないのに……クソッ!

 

「ヴェスタル、姉さん達の様子は……はっ、指揮官!目が覚めたのか! 」

 

「エンタープライズ……」

 

 思わずエンタープライズから目を合わせず、気まずい嫌な気持ちが溢れ出た。

 

 当然だ、俺のせいでエンタープライズの姉妹艦であるホーネットとヨークタウンは今やばい状態になっている。その引け目があり、エンタープライズとは目を合わせる気にもならなかった。

 

「……指揮官、命令をくれ。私はあのイカロスを倒す。私がどうなろうとも 」

 

「エンタープライズちゃん!それはダメよ! 」

 

「だが早くしないと姉さんとホーネットがっ!早くしないと……私は……また失ってしまう! 」

 

「エンタープライズちゃん…… 」

 

 エンタープライズの悲痛な叫びが胸に突き刺さり、重さとなって俺の体にのしかかってきた。

 

 やめろ……そんな目で俺を見るな。俺にもう期待するな……しないでくれ。

 

「お、目が覚めたか。いや〜良かった良かった。俺のライフルも無事で何よりだ 」

 

 俺の気持ちを無視してズケズケと入ってきたのはセイドだった。セイドは手に持っていたライフルを俺に渡すように転がし、ライフルが俺の前に戻ってきた。

 

「……んだよ 」

 

「イカロスはまだ健在だ。ちゃっちゃっとトドメを刺してくれ 」

 

「……なんで俺なんだよ。テネリタス2人いるなら何とかなるだよ 」

 

「多分な 」

 

 朝笑うかのようにセイドがそう言うと、いきなり俺の俺の首を掴んではそのまま持ち上げた。空気の軌道が確保出来ず、頭に血が上る感覚で頭が締め付けられそうだ……!

 

「がっ……!がはっ! 」

 

「ジンさんっ! 」

 

「指揮官っ!」

 

「ちょっとじっとしてろ 」

 

 助けようとしたエンタープライズとヴェスタルに向かって銃を乱射させ、2人の進行を防いだ。

 

「お前……勘違いしてるだろ。俺は敵だ。味方じゃねぇんだよ 」

 

「んな事……わぁってる……よ! 」

 

 抵抗しようと俺はセイドの手首をつかみ、気道を確保した。

 

「だったらさっさと指揮に戻れよ!今ここで!お前が指揮しねぇとKAN-SEN達はうごけねぇんだよっ 」

 

 首根っこを掴んでたセイドは突然俺を壁まで投げつけた。背中から痛てぇ衝撃が体全体に走り、首の気道を確保したばかりで咳が止まらない。

 

「あのやられた2人を助けたければ、早くあの鳥野郎を倒してこの鏡面海域から出ないと行けねぇんだよ。もう時間が無いことはお前もわかってるはずだろ 」

 

 咳が収まり、俺は立ち上がることもせずただ壁にへばりつくようにもたれかけた。

 

「お前じゃ盾にも囮にもならない。かといって動ける奴らが少なくなった今、人数を割くのもキツイ。だからトドメをさせることができるのはお前だけなんだよ 」

 

「……無理だ 」

 

「あ? 」

 

「無理なんだよ!俺には!! 」

 

 やり場のない怒りと情けなさをぶつけるように壁を殴りつけた。

 

「俺はお前らみたいに戦えねぇよ!俺が出しゃばったからヨークタウンとホーネットは死ぬ間際で……俺はっ……結局弱い人間のままなんだよ 」

 

 結局俺は強くなんて無かった。アズールレーン後方支援の指揮官?馬鹿馬鹿しい、結局は後ろでコソコソとやってるだけじゃねぇかよ。思わず笑っちまう。

 

 俺はそれ以上何も言わず、情けなく顔を俯かせた。

 

「確かに、人間は弱えよ。弾丸一発脳天にぶち込めば死ぬし、腹が減っても死ぬ。呆気なく死ぬ時は死ぬ生き物さ 」

 

 そう言うとセイドは銃を下ろし、突然俺の隣に座るとタバコを手に取り、火をつけてタバコを吸い始めた。

 

「こうしてタバコを吸うだけでも肺ガンやらなんなやらで死ぬリスクが高くなるって?ほーんと、好きなもん吸ってるのに死ぬって訳わかんねぇよな 」

 

「はっ、それは……まぁな 」

 

「だけどやめらんねぇ。タバコを吸うのも、生きるのもな 」

 

 セイドが息を吐くと、タバコの臭いを纏った煙が廃ビルの割れた窓から煙が出ていき、臭いはそのままこの部屋に留まった。

 

 俺が吸っているタバコよりも少し匂いがキツく、少し強めのタバコだった。見かけよりもえぐいタバコを吸っているギャップが凄まじく、心の中で苦笑いした。

 

「人ってのは弱えのに生きる事を止められねぇ生き物だ。どっから来たのかも分かんねぇ海の化け物に襲われても生きて抗い、KAN-SENという物が生まれ、今は形成は逆転しつつある。ほんと、すげぇよ人類 」

 

 セイドはタバコを吸うのを止め、タバコを地面に押し付けて火を消した。

 

「だから抗えよ。がむしゃらに、情けなくよ 」

 

「……その力がねぇんだよ 」

 

「あるさ。お前、俺に殺されかけても生きようと抵抗しただろ 」

 

「……! 」

 

「お前のここが、生きたいって叫んだんだよ。それは人が絶対持っているすげぇ力だ。だからよ……抗えよ、死ぬまで 」

 

 セイドは俺の胸にドンと拳を突きつけ、帽子の奥でニカッと笑った。

 

「……はは、お前どっちの味方なんだよ 」

 

「勿論、人類の味方さ。なんてったって英雄だからな。そんじゃ、俺は待機してるから、指揮する気になったら通信してくれ 」

 

 セイドは笑いながらこの場から立ち去り、俺はセイドが残したライフルを手に持った。

 

 ……重い、ライフルもそうだが、この作戦のトドメを任されたとなるとこのライフルがそれ以上の重みが体全体にのしかかってきそうだ。

 

 正直、テネリタス2人いてもイカロスをリスク無しで倒すのはほぼ不可能……というより無理かもしれない。

 

 _冷酷になれ

 

 また親父の言葉を思い出した。確かに、冷酷な奴ならアイツを倒せる方法がある。だがそれはKAN-SEN達を囮に使うという事だ。

 

 _他者を利用し、欺き、操り、己の利のみとして扱え。それが上に立つ物が絶対に必要な物だ。

 

「利用して欺く……か 」

 

 ライフルを額に置き、俺なりの最善の作戦を考える。

 

(……やっぱあれぐらいしか思いつかねぇ )

 

 嫌な事に、嫌いな親父の言葉で俺は覚悟を決めた。

 

「俺は、俺なりに冷酷になってやるさ 」

 

 覚悟を持って俺は通信機を手に取り、KAN-SEN達にある事を言った。

 

「皆、急に悪い。……お前達の命、俺にくれねぇか? 」

 

 

「……敵に塩を送るとは 」

 

「ああでも言わねぇと吹っ切れねぇからよ。というか俺達2人でもあの鳥野郎を倒すのキツイだろうがよ 」

 

「貴様が足を引っ張らなければやれる 」

 

「あぁ!?この場合親父が足引っ張ってんだろうが!あんたの斬撃当たればダメージ入るけどほとんど当たってねぇだろ! 」

 

「貴様こそ装甲に痛手を負わせていないぞ 」

 

「んだとー? 」

 

「……やる気か? 」

 

「……ふっ、良いさ。それにしても懐かしいな。こういう風に口喧嘩するの 」

 

「あぁ、何十年ぶりだろうな 」

 

「……うし!んじゃあ少しやる気だすか!こういうの重桜ではなんて言うんだっけ?ええと……肌を剥がす? 」

 

「剥がしてどうする。『一肌脱ぐ』だ 」

 

「肌ってどうやって脱がすんだ? 」

 

「……知らん 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『指揮官、各員所定の位置に着きました 』

 

 エセックスからの通信を聞き、そのまま待機を命じた。

 

 潮風が傷と火傷の跡に染み入る、全身がこそばゆい痛みに襲われる。だが、それ以上に痛いのはエンタープライズの奴だ。世界に二つとない姉妹を危うく無くしてしまうところだったんだ。

 

 そしてその原因を作ったのは俺だ。だからそのケジメはきっちりと付けるつもりだ。

 

 俺が次に指定した狙撃ポイントはさっき居た廃ビルの屋上だ。ここからイカロスの翼が見え隠れし、イカロスは徐々にこちらを向かって来てる。

 

 まさに餌を探す獣のようだ。だが餌も餌でただ食べられる訳じゃ無い。ライオンから逃げるウサギだって、食べられないように逃げ方を工夫するもんだ。餌は餌なりに抗ってやるさ。

 

 通信機を手に取り、所定の位置にいるKAN-SEN達に通信を向けた。

 

「聞こえるか?もうすぐで作戦を開始する。今回はテネリタス2人も俺の指揮に入る 」

 

『よろしくな 』

 

『……ふん 』

 

「まぁテネリタスだから信用はしずらいと思うが……裏切りはしない 」

 

 こう言っているが、KAN-SEN達は信用しきれないだろう。念の為互いに攻撃が仕掛けにくい位置に配置しているから、誤射とかは無い。だが仕方ない。これはテネリタスさえも【利用】しなければ戦えないんだ。

 

「それに心配するな。この作戦は必ず成功させる。任せろ 」

 

 嘘だ。これが絶対成功する何て確証は無い。俺はKAN-SENたちを【欺く】。

 

 こう言わねぇとKAN-SEN達の心は不安で曇る。だから嘘でも、見栄を張ってでも出来るって言わねぇとKAN-SEN達はついて来ない。

 

 アイツが、優海もそうして来たかのように。

 

「最後に、 これだけは伝える。……生きてこい。それだけだ 」

 

『あの、指揮官も絶対に生きて下さい! 』

 

『この場にいる全員で帰りましょう! 』

 

 エセックスとイントレピッドに続き、全てのKAN-SEN達が生きろと願ってくれた。

 

 これで皆の士気が高まる様に心情を【操った】。だが、全員生きて帰るっていう事は心からの本心であり、俺にとっての【利】た。

 

「やってやるさ……! 」

 

 廃ビルの屋上でライフルを構え、先陣を切るのはロドンだ。ロドンの攻撃力を全面に押し出し、こちらのペースに引き込む。相手が機械なら、人間の翻弄さについていけない筈だ。それに賭ける……!

 

「行くぞ!作戦開始! 」

 

『承知! 』

 

 合図の瞬間にロドンはイカロスの右翼に鋭い斬撃を放ち、斬撃は見事右翼に直撃した。

 

 斬撃の傷が残った右翼に煙が立ち上り、イカロスは機械音声の甲高い男で叫んだ。

 

「エセックス!! 」

 

『了解! 』

 

 ロドンとは反対方向にエセックスが艦載機を飛び立たせ、全ての艦載機をイカロスに向けて減速無しで突っ込み、それを検知したイカロスは羽からビームを乱射させ、艦載機を全て撃ち落とした。

 

「よし、こっちに来なさい! 」

 

 エセックスは廃墟の街並みを駆け抜け、イカロスはそのエセックスを追いかけ続けた。よし、ここまでは作戦通りだ。

 

 崩れかけた瓦礫を上手く使ってエセックスはイカロスの攻撃を掻い潜り、続いて第二波を始める場所まで追い込んだ。

 

「バンカーヒル、シャングリラ!! 」

 

 合図と共にバンカーヒルとシャングリラはイカロスの左翼に特製の爆撃を仕込んだ爆撃機を放ち、エセックスに集中したイカロスは2人の爆撃を受け、機械の両翼を燃え上がらせた。

 

「予定通りですね 」

 

「狙い通りだ 」

 

 流石だな、この中で1番攻撃精度が高い2人の狙いは完璧だ。そして決め手は今放った燃焼弾だ。燃焼弾はイカロスの両翼を激しく燃え上がらせた。

 

「流石明石特製の燃焼弾だ。良い仕事するぜアイツ 」

 

 イカロスは炎を消そうと機械の翼を激しく動かしたが、炎は消えるどころかどんどん燃え上がらせた。まさに伝説のイカロスの様に太陽に近づきすぎて羽が燃えた末路と同じだ。

 

 これで機動力が落ちると良いが……イカロスは止まらなかった。イカロスは両足にある爪を分離させ、無数のナイフの様な形状となってバンカーヒルとシャングリラに襲いかかった。

 

 2人はイカロスの攻撃を避け続けたが、降り注ぐナイフの雨にシャングリラは避け切られず肩や背中、そして足を貫かれた。

 

「くぅ……! 」

 

「シャングリラ!! 」

 

 怪我をしたシャングリラをバンカーヒルは庇うように抱き、バンカーヒルの背中には無数のナイフが突き刺さったが飛び込んだ勢いで崩れ掛けのビルに退避した。

 

「がはッ……! 」

 

「バンカーヒル!?しっかりして……! 」

 

 イカロスは2人がビルごと壊そうと口の中からビームを溜め、トドメを刺そうとした。

 

「イントレピッドぉぉ!! 」

 

『Getting on! 』

 

 所定の位置からイントレピッドがものすごい加速でイカロスの胸元に飛びついた。

 

「2人から離れろ!! 」

 

 イントレピッドの右手から球状のエネルギー弾をイカロスの胸元……つまり弱点部分にぶつけ、そのままイントレピッドはシャングリラ達の方に合流し、2人を抱えてその場を離脱した。

 

 よし、いい判断だ。これでイカロスは弱点を露出した形となり、弱点を狙いやすくなった。だがこれだけじゃまだパズルのピースが1つ足りないだけだ。

 

「クォォォォォォォォォォ!!!!! 」

 

 羽を燃やされ、自分の心臓と言うべき部分を攻撃されたイカロスは激しく叫び散らかし、まるで壊れた電子音のような叫び声を上げながら空高く飛び、羽を広げて全てを焼き尽くそうと凄まじいエネルギーの一点に集中させた。

 

「ヘレナ!今アイツの状態はどうなっている? 」

 

『体内のエネルギーが急上昇しています。このまま攻撃されれば……っ、この辺り一帯全て危険に! 』

 

「させる訳には行かねえよな。エンタープライズ!エセックス! 」

 

 合図と共にエンタープライズと最初イカロスの囮になっていたエセックスが飛び出し、エネルギーを溜めているイカロスに艦載機に乗って突撃をかけていた。

 

「行くぞ、エセックス 」

 

「はい!エンタープライズ先輩! 」

 

 2人は艦載機の上で弓を目一杯引き、狙いは一点。イカロスがエネルギーを溜めている所だ。イカロスは接近した敵に気づいて溜めたエネルギーを中途半端の状態で放った。

 

「「終わりだ! 」」

 

 エンタープライズとエセックスは同時に矢を放ち、2本の青い弓が1つの巨大な槍の様に鋭く形を変え、イカロスの放ったビームを貫き、イカロスの喉元を貫いた。

 

 喉元を貫かれたイカロスは激情に駆られる様に2人を翼で撃ち落とし、エンタープライズとエセックスは瓦礫の壁へと吹き飛ばされた。

 

「エンタープライズ!?エセックス! 」

 

『構うな……!私とエセックスは大丈夫だ…… 』

 

『それよりも早く……次に……! 』

 

「くっ……セイドォォ!! 」

 

『任せとけ! 』

 

 イカロスの真下にいたセイドが1つのビームライフルを上空に向け、その周りには六基の黒いレーザービットが一定の間隔をあけ、中心に青く輝くサークルが発生していた。

 

「取っておきだ!落ちろよ! 」

 

 セイドがライフルの引き金を引くと銃口から青色のビームが青いサークルに触れると、ビームの幅が太くなり、まるでバズーカを撃ったかのような大火力ビームが海上から空高く突き上げ、イカロスの装甲を溶解させた。

 

 超大出力のビームを受けたイカロスはバランスを崩して別の廃ビルの屋上へと落下し、落下の衝撃で凄まじい砂埃を舞わせた。

 

『お膳立てはしたぜ。後はお前次第だ。カッコよく決めろよ? 』

 

「分かってるよ。ヘレナ、落下した位置の座標と揺動計算を頼む 」

 

『了解!指揮官の目は、私がなります! 』

 

 ここからが正念場だ。全長がでかいイカロスの砂埃のせいでイカロス本体も見えず、ヘレナのレーダーと計算が頼りだ。

 

 もうこんな作戦を取る力は残っていない。さっきの作戦でバンカーヒルとシャングリラ、エンタープライズとエセックスはダメージを受けてもう戦闘には参加出来そうにない。

 

 外せば終わり。その事実で引き金をかける指がへし折れそうな程重くなる。心臓も飛び出る程早くなり、吐き気もしそうだ。

 

「まだか!? 」

 

『もう少し……っ!指揮官!そのままの位置で3mm右に修正!そこで弱点を狙えます! 』

 

「よし!ありがとな 」

 

 後は俺次第だ。3mm右にライフルをずらし、勝負は砂埃が晴れる一瞬だ。

 

 いつだ……どのタイミングだ?分からないそのいつかに命が掴まれ、掴まれた先には死神が笑顔でいるような気がした。

 

 本音を言えば逃げ出したい。だけどそれは俺自身が許されない。もしここで逃げたら絶対に俺は俺を許せないし、生きていける自信が無い。

 

 決意を抱き、指にかかっていた重みが消え、ライフルのスコープ越しでイカロスの姿が徐々に顕になる。

 

 決着は、残り数秒にさしかかろうとしていて。

 

『『『『指揮官っ! 』』』』

 

『決めろカービス!! 』

 

 皆の声が耳に入ると、イカロスは砂埃を吹き飛ばして立ち上がったと同時にスコープにはイカロスの弱点であるエネルギー回廊の中心部分が見えた。

 

「俺は……弱い。だが、弱くても、情けなくても、俺はどこまでも抗ってやるっ!! 」

 

 決意を言葉にしながら引き金を引き、ライフルの銃口から青白い光がイカロスに向かった。

 

 目にも止まらない光は瓦礫の街並みを越え、機械の鳥の心臓を貫き、この街を包んでいる霧さえも貫いた。

 やがて光は徐々に消え始め、イカロスの弱点は粉々になった。

 

「クォァァァァァァァァァアァァ!!!!! 」

 

 機械の断末魔が瓦礫の街へと空虚に響き、役目を終えたかのように体が崩れ始めた。

 

「……やった……のか? 」

 

『やった……やりましたよ!指揮官! 』

 

 ヘレナが通信で終わったと安心しきっていたがどうしてもその気にはなれなかった。

 

 崩壊していくイカロスの翼がバラバラになっていくその時だった。イカロスの2つの眼が赤く光りだし、そのまま口を空けて赤い光を収束させていた。

 

『これは……どうしてっ!?イカロスからエネルギー反応検出!そんな……逃げ下さい指揮官!ジンさんっ! 』

 

「くそっ……! 」

 

 急いで逃げようとしても突然廃ビルが揺れ、屋上から繋がる出口が崩れ去ってしまった。これでは下に降りられず、飛び降りれる高さでもない。

 

 さっきの揺れでヘレナとの道も途絶えてしまい、万事休す。

 

「くっそ、機械の癖に一矢報いる気か……? 」

 

 イカロスがエネルギーを収束し続け、俺も諦めずにライフルで狙いを定める。ここまで……なのかっ!?

 

 本当に全てを諦めた時、1発の発砲音が鳴り響いた。

 

 発砲音が鳴ったと共に1つの弾丸が空気を貫く様に飛び、イカロスの頭部へと入るとそのまま貫き、イカロスが集めていた光は消え、イカロスは間もなく全身が粉々に崩壊した。

 

「言っただろ、お前は俺が守るって。けどその代わり、美味しい所は持ってくぜ 」

 

 ライフルのスコープ越しにセイドがカッコをつけるように銃口から出た煙をふっと息を吹きかけて消し、銃口で帽子の唾を上げて陽気な笑顔を向けた。

 

「へっ……あの野郎……アンタには敵わねぇかもな 」

 

 イカロスが崩壊するとこの街を覆っていた霧が晴れ、曇りだった空も消えて随分と久しぶりに見るような青空と太陽が俺達の上で祝福するように出てきた。

 

『鏡面海域……消失。通常海域に戻って来ました! 』

 

「えっ、どういう事だ? 」

 

「つまり、あの鳥野郎が鏡面海域を作り上げてたって訳さ 」

 

 セイドが凄まじいジャンプでこの廃ビルの屋上へと辿り着き、バミューダ海域の秘密を教えた。

 

「あのイカロスは侵略者を倒す物でもあり、鏡面海域を作り出す装置でもある。それが倒された今、もとの海域、つまりはお前らがいた海域に戻ったのさ 」

 

「鏡面海域って……セイレーンが作り出す物だろ?という事はあのイカロスって、セイレーンが作った物なのか 」

 

「正確にはセイレーンを作った奴らが作ったって言った方が良いかもな 」

 

「セイレーンを作った奴らが……? 」

 

「まぁ、詳しくはこれにな 」

 

 セイドは1つのタブレットを俺に投げ渡し、タブレットを操作すると、俺が塔の中で見てきた物全てのデータが入っていた。

 

「お前……いつの間に 」

 

「頑張ったお前の戦利品だ。有難く受け取れよ 」

 

「……良いのかよ 」

 

「俺らはそれ知ってるからな。それに、俺らの戦利品はもう貰ってある 」

 

 セイドの右手には黒いキューブが握られており、それを見せつけるかのように小刻みに投げてはキャッチを繰り返していた。

 

「それは……お前らが集めてるブラックキューブか……!?それをどこで……」

 

「お前がいた塔の中だよ。俺がイカロスの弱点を知る為に塔の中に入ったろ?あの時、塔の隠し扉を見つけて手に入れてたんだよ 」

 

「全然気づかなった…… 」

 

「まぁ無理も無いさ。ドンマイドンマイ 」

 

「セイド、共通の敵が居なくなった今、その者達と馴れ合う義理は無い。戻るぞ 」

 

「……っと、そうだな。そういう訳で俺達は敵同士に戻るという事だ。あ、ライフルは返して貰うからな 」

 

 セイドは俺からライフルを取り返し、数十メートルある廃ビルから飛び降りようとしたが、何かを思い出したかのような俺に近づき、口元を俺の耳元に近づけた。

 

「────── 」

 

「えっ……?どういう…… 」

 

「そういうこった。じゃあな。出来ればもう会いたく無いけどな 」

 

 そういってセイドは数十メートルあるこの廃ビルから飛び降り、綺麗に海に着地するとロドンと共にこの廃墟の街から姿を消し、セイドはどういう訳か俺に言葉で傷跡を残して言った。

 

「……あの言葉の意味、どういう事だ 」

 

 とにかく、これは優海に報告だな。しかしそれよりも……

 

「だぁぁ……疲れた 」

 

 トドメを任されたプレッシャーの重みがようやく抜け落ち、俺はその場で崩れ落ちる様に倒れた。

 

 空は青く、太陽の陽射しも強くいせいか、体が動かないのにどこか清々しい気分になる。

 

『指揮官、寝るのはまだ早いですよ。あと一つ、命令を忘れてませんか? 』

 

「あ、やっべ。忘れてた 」

 

 エセックスが通信で言われたのに気づき、俺は慌てて最後の命令を告げた。

 

「全艦帰投しろ。……よく生きてくれたな 」

 

『『『了解!! 』』』

 

 全てのKAN-SEN達は意気揚々と返事を返し、この廃ビルにエンタープライズの艦載機が迎えに来てくれたおかげで廃ビルから離れ、近くの海岸へと皆を集合させた。

 

 比較的軽傷のエセックスに艦を出させ、怪我はありつつも何とか任務は成功した。……だが、心なしか皆の顔色が悪い。やはりあの2人が心残りなのだろう。

 

「……ヨークタウン、ホーネット 」

 

 俺は2人が心配で艦の中へと入り、空き部屋の1つを医務室へと改装させた部屋に足を運んだ。

 

 医務室の扉を空けると、目に映ったのは横たわるヨークタウンとホーネットを必死に看病するエンタープライズと、2人の傷を治療し続けるヴェスタルの姿だった。

 

「2人はどうだ? 」

 

「あ、ジンさん。はい、2人の命は何とか取り留めました 」

 

「本当かっ!?良かった…… 」

 

「ですが、危険な状況には変わりません。直ぐにでも近くのドックで少しでも艤装の修理をしなければ…… 」

 

「分かった。もう進路を近くの島に向けさせてるから、そこは問題無いはずだ 」

 

「ありがとうございます。ほら、エンタープライズちゃんも休んで休んで。貴方もイカロスの攻撃でダメージを受けてるんだから 」

 

「いや、大丈夫だ。それより……ホーネット達の事を見させてくれ 」

 

「エンタープライズちゃん…… 」

 

「ヴェスタル、ここはエンタープライズの意見を汲み取ろう。それよりも、2人が無事な事を皆に知らせようぜ 」

 

「……はい、分かりました 」

 

 俺とヴェスタルは医務室から出ていき、ヴェスタルは皆の元に2人の一命を取り留めたと伝えに言った。

 

「さて俺は…… 」

 

「っ……つぁ……姉さん……ホーネットっ……!すまない!私は……私はっ……! 」

 

 医務室の扉越しからエンタープライズの鳴き声が盛れ出していた。初めて聞くエンタープライズの鳴き声には驚かれず、寧ろ心が痛み始めた。

 

「指揮官……私はどうすればいいんだ……教えてくれ……早く貴方に会いたい…… 」

 

 泣きじゃくりながら、エンタープライズは本当の指揮官、優海に会いたがっていた。

 

 勝った筈なのに……目的を果たした筈なのに、1人のKAN-SENの心には、大きな傷を負わせてしまった。

どのテネリタスが好き?

  • ロリママ創造者の2代目 ラハム
  • 人類最強の天然3代目 アトラト
  • 食いしん坊な絶対守護者4代目 シーア
  • 武士道と極める騎士5代目 ロドン
  • 風のように自由なガンマン6代目 セイド
  • 完璧で究極のアイドル7代目 マリン
  • おっとり包容力で全知全能の8代目 ミーア
  • 元人間のセイレーン 10代目マーレ
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