もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜 作:白だし茶漬け
一体何ヶ月ぶりの主人公なんでしょうね。
さて、今回でいよいよバミューダ海域編のラスト。次からは物語を繋ぐ幕間の物語となります。
ここでひとつ、最近ではヨークタウンⅡやホーネットⅡの存在が出てきますが、ここではあくまでも独自設定ということなので、ご了承くださいm(_ _)m
「……以上が、バミューダ海域で起こった出来事のようね 」
「ありがとうございます。リアさん 」
リアさんが読み上げてくれた大まかな出来事は、アズールレーンにとっても有益な情報ばかりだった。
まず、ジンさんが届けてくれた。あの端末には、セイレーンの技術がふんだんに記載されており、ビスマルクや明石、リフォルさんが解析を急いでいてくれた。
次に気になるのは、やはりイカロスだ。報告書を見た限りでは、俺が北方でマーレさんと一緒に戦った【アビス】に酷似していた。
勿論、形や能力に大きな違いはあるけど、開発意図や使われている技術が似ている事から、これを作ったのは同一人物、或いはそれを関与しているのが同一人物だと考えていいだろう。
「本当にジンさんは良くやってくれました。皆も無事だし、ジンさんだって目立つた外傷も無くて本当に…… 」
良かったという言葉は継げられず、俺は黙り込んでしまった。
そう、皆無事……とはいえなかった。2人を除いては……
「俺、ヨークタウンとホーネットの様子見てきます。すみませんが…… 」
「報告書を纏めるのは任せて 」
「私もお手伝いいたします。リア様 」
「ありがとうベルファスト 」
「すみません、お願いします 」
報告書を纏めるのを2人に任せ、俺は急いでドックへと向かった。ヨークタウンとホーネットがいるのは医務室だけど、様態を知れるのは2人の艦を直しているドックの方だ。
報告書を見る限り2人の損傷はかなり深刻であり、無事だった事が奇跡と思えるぐらいらしい。ヨークタウンとホーネットが大破したという情報を受けた際に急いで緊急修理を行っており、基地もその話題で持ちきりだ。
「ヨークタウンさん大丈夫かな…… 」
「ホーネット……無事でいてくれ 」
やはりユニオンのKAN-SEN達が不安の目を大きくさせており、それ以外の陣営のKAN-SEN達も不安がっていた。こうしてみると、2人がどれだけ基地の皆と一緒に過ごしたがよく分かる。
走り続けて息切れ間近という所でドックに辿り着き、息を整えながらドック工房の奥にある部屋を開け、そこにいる明石とリフォルさんに声をかけた。
「すみません2人とも。あの、ヨークタウンとホーネットの状態は? 」
「順調だよ〜このまま行けば3日ぐらいで艦の修理は終わるかな。意識は明日ぐらいで回復するはず 」
「あれだけの損害で持ち堪えさせるにゃんて、流石ヴェスタルだにゃ 」
「そうですか!良かった…… 」
息切れしていた息をほっと吐き出し、俺は安堵で思わず座り込み、ボロボロになったヨークタウンとホーネットの艦を見つめた。
饅頭達が削り取られた部分を修復したり、へこんでいた所を直したりと、工房にいるほとんどの人員をフル活用している様子だった。
ボロボロになった艦を見ると、どれだけ激しい戦闘だったのか一目瞭然だ。ヨークタウンとホーネットだけではなく、他の艦も少なからずボロボロだ。バミューダ海域に行ったKAN-SEN達は、しばらく出撃は無理そうだな……
「そうだ優海、ちょっと良いかな 」
「ん?どうしたんですかリフォルさん 」
リフォルさんが急に声をかけると俺は立ち上がり、リフォルさんの話を聞いた。
「ちょっと前々から計画していた事があるんだ。だけど、その為にはエンタープライズの許可も必要だから……悪いけど、エンタープライズを連れて開発室まで来てくれない? 」
「エンタープライズと?しかも開発室にって……何をするつもりなんですか? 」
「いやいやそんな嫌な顔しないでよ、本当に真面目な話何だから 」
嫌な顔をするのも当然た。リフォルさんはかなり優秀でこの基地に居てからは強力な装備やKAN-SENの改修もしてくれていて、更には綾波達の様な一部KAN-SEN達には【改造】という物を仕上げ、飛躍的な戦力増強に尽力している。
……だけど、所々変な開発をして基地を壊したり騒ぎを起こしたりするからあんまり信用は出来ない。
この前だってKAN-SEN達の好感度が限界突破して俺が酷い目にあったから尚更だ。
だけどリフォルさんの目は真剣だ。……ここは信用しようかな。
「はぁ、分かりました。エンタープライズを開発室に連れて行けば良いんですね? 」
「うん、じゃあ待ってるから。明石、修理は任せたよ 」
「どんと任せるにゃ! 」
リフォルさんは一足先に開発室へと行ってしまった。
さて、エンタープライズを探すとなれば……いるのは恐らくあそこだろう。明石と饅頭に一声かけて俺はドックを抜け、向かった先は……ヨークタウンとホーネットがいる医務室だ。
医務室がある館へと辿り着き、ほんの急ぎ足で医務室のドアノブを触れようとした時、扉から何か殴られた様な音が聞こえた。
「お前の……お前のせいで!! 」
この声……ハムマンか?声を荒らげていて、少し息遣いも荒い。泣いているのか?とにかくドアノブを回して扉を開けると、エンタープライズとハムマン、そしてヴェスタルの他には……座り込んでハムマンに殴られているジンさんがいた。
「お前が!お前の指揮が下手くそだからヨークタウン姉さんがこんな目にあったんだ! 」
「やめなさいハムマンちゃん! 」
「止めろハムマン! 」
エンタープライズとヴェスタルの静止を無視しているハムマンは、目元を赤く晴れさせ、涙を零しながらジンさんの顔を殴り続けており、ジンさんは抵抗する事もなくその場でじっとしていた。
「ハムマンがいればヨークタウン姉さんを守れたのに!どうしてハムマンを入れなかったのだ!? 」
「ちょ、おいハムマン!?何やってるんだ! 」
あまりの光景で少し動きが止まってしまったが、直ぐにハムマンを抱き上げてジンさんを殴るのを止めさせた。
だがハムマンは俺の拘束から抜け出そうと手足をバタつかせ、離したらまたジンさんを殴り続けようとしていた。
「離すのだっ!!離して!バカ!ヘンタイ!!離して……離すのだ…… 」
やり場の無い怒りがハムマンに襲い、ついにはハムマンは泣き始めた。抵抗する意思が無くなり、そっと俺はハムマンを下ろし、ハムマンはその場にへたりこんで思い切り泣いた。
「ひっく……ハムマンだっで、ヨークタウン姉さんと一緒の作戦に行くって志願したのに、こいつが……ひくっ、それを無視して連れていかなった!ハムマンがいれば……ハムマンがいれば…… 」
「……何とかなったのかよ 」
「え……? 」
「お前が居て何とかなったんなら編成にいれてたさ。でもな、お前が居てもただの足でまといなだけなんだよ 」
「ジンさん、流石にそれは言い過ぎ…… 」
するとジンさんは鋭い目で俺に目線を配った。
ジンさんの目は鋭くても何か考えある様な目であり、何もするな。と強く訴えていた。ジンさんの目を信じ、俺は何も言わなかった。
ジンさんの言い分にハムマンは体を震えさせ、溢れ出した涙がまた更に多くなり、大粒の涙が地面へと落ちていった。
「お前の1人のせいで部隊の損害が増えたらどうするんだよ。お前のような足でまといがいるせいで部隊が壊滅する恐れだってあるんだぞ!それをヨークタウン姉さんを守るって……笑わせるな! 」
「う……うるさい!うるさいのだ! 」
ハムマンはまた殴りかかり、拳がジンの顔面に触れようとしたその時、近くにいたエンタープライズがハムマンの拳を防いだ。
「え、エンタープライズ…… 」
「もうやめてくれ……これ以上、姉さんとホーネット達の前で騒がないでくれ 」
帽子の奥の瞳のエンタープライズの目は悲しげに満ちており、それを見たハムマンは拳を下げ、ジンさんを睨んで直ぐに医務室から出ていった。
「お前なんて……大嫌いなのだっ!! 」
「……はは、ありゃあ思い切り嫌われたな。いつつ……これ口ん中切ったか? 」
「ジンさん、直ぐに治療しますからこちらへ 」
「おう、すまねぇ 」
ジンさんの口元には赤黒い血がびっしりと付いており、どれだけハムマンが強い力で殴りつけたのかよく分かった。
「あーあ、KAN-SENのマジパンチ食らったの初めてだわ 」
「ジンさん……ハムマンにどうしてあんな事を 」
「んぁ?あぁ……まぁ、俺への怒りで気が済むなら良いと思ってよ、自虐気味に言っちまった 」
「自虐……? 」
「……ヨークタウンとホーネットがこんな目にあったのは、俺がでしゃばったからだ。笑えよるな、俺でも何か出来ると思った矢先、このザマだからよ 」
「でも、ジンさんのおかげで窮地を…… 」
「ほぼテネリタスのおかげだよ。それに、アイツらの目的も達成させちまったし、してやられって感じだよ 」
ジンさんは笑っていたが、その目は決して情けなく無く、むしろ誇り高く輝かいていた。
「でもな、俺はもう折れない。弱くても、情けなくても、地べた踏ん張っても俺は抗ってみせるさ、最後まで 」
「抗う……か。やっぱりジンさん、もっとカッコよくなりましたね 」
「なっ、馬鹿!照れるからやめろよ〜 」
「まぁでも、ハムマンには後でちゃんと謝って下さいよ。あの子、繊細なんですから 」
「だろうな。ああいうタイプは強がりだって相場が決まってるからな 」
「ふふ、はーいジンさんは治療に集中して下さーい。そして指揮官は……エンタープライズちゃんを 」
「うん、任せて 」
ジンさんの治療をヴェスタルに任せ、俺はエンタープライズの隣に椅子を置き、エンタープライズの隣に座った。
「指揮官……来て早々ハムマンが済まないな 」
「良いよ。エンタープライズは怪我とか大丈夫? 」
「私は問題ない。それよりも姉さん達の方が…… 」
「それについては、リフォルさんが3日前後で艦の修理が終わるからもう少しで目が覚めるって 」
「本当か!?良かった…… 」
エンタープライズはホッとしたのか少し目頭に涙を浮かべた。
「そういえば指揮官はどうしてここに……? 」
「あぁ、リフォルさんがエンタープライズと一緒に開発室に来てって言われたから……どうする? 」
俺はチラリとベットで寝ているヨークタウンとホーネットを見て、エンタープライズの方を見た。
まだ目が覚めない姉妹をこのままというのはあまりにも酷だ。エンタープライズが来れないのなら仕方ないし、誰にも責められる筋は無い。
エンタープライズも2人の方を見ると、帽子を被り直した。
「分かった。直ぐに行こう 」
「……良いの? 」
「2人は無事なんだ。それに……指揮官の命令を聞くのは当然だ 」
「命令って……そんなのした覚えは無いよ 」
「そう……か 」
この時、エンタープライズが何だか昔に戻ってしまったかのように感じた。そんな心配をしながら俺たちは開発室へと向かっていった。
向かっている最中、エンタープライズは俺の服の裾を掴んでは離さなかったり、俺の腕にくっ付いたり、とにかく密着する時間が多かった。
「え、エンタープライズ?なんかいつもより距離が近いけど……どうしたの? 」
「……嫌なのか? 」
「嫌というより驚いただけだよ 」
普段のエンタープライズだったら、ちょっと離れて歩いてるだけだったのに対し、今ではまるで赤城姉さんのようにくっ付いて歩いているのが新鮮というか……らしくないと言うか。とにかく変な気分だ。
「嫌なら問題は無い。早く行こう 」
こうしてエンタープライズに密着されながら開発室まで行き、この体制は開発室の中でも続いた。
「おーアツアツだね〜。え?まさか2人ともそういう関係だったり? 」
「あぁそういうのは良いんで。それで?エンタープライズと一緒に話って何ですか? 」
「ノリが悪いね〜まぁ良いや。話したい事と言えばこれのこと 」
リフォルさんが横長の端末を渡すと、画面には何か艤装の設計図がびっしりと書かれていた。
「Ⅱ型改造計画……? 」
そこには従来の艤装よりも性能が高く、セイレーンと同じ様な武装や性能が示唆されており、これが実現すれば1人だけで量産型セイレーンの相手をするのが容易な程だ。
「優海とジンが手に入れたセイレーンの技術を元にして私の独自改良を元に、新しい艤装を計画してるんだよ。それがこの【Ⅱ型改造計画】てやつ 」
「改造って……綾波やジャベリンの様な物と違うんですか? 」
「全然違うよ。普通の改造は艤装に改良と加え、性能を高めるという物だけど、これは違う。これは艤装とKAN-SENのメンタルキューブ、両方を改良する代物だ 」
「メンタルキューブの……改良? 」
「そ、セイレーンのデータにはメンタルキューブの情報があってね、何と新しいリュウコツの情報追加が可能らしい 」
「リュウ……コツ? 」
「簡単に言えば、KAN-SENの元になった艦の記憶だね。その記憶読み解き、人型に生まれたものがKAN-SENだ。……と、これ以上難しい話はやめようか 」
「面目無いです…… 」
リュウコツとかKAN-SENの記憶とか急に言われてこんがらがってしまうけど、ようは艤装だけじゃなくてメンタルキューブにも手を加えるということか。
そもそもメンタルキューブに手を加えるってどう言う事だ?という感情が顔に出たのか、リフォルさんは端末を操作し、その事についてのページを表示してくれた。
「Ⅱ型改造計画の中心はメンタルキューブの改造にある。他のKAN-SENのリュウコツの情報を掛け合わせ、メンタルキューブの相乗効果を発生させてKAN-SENと艤装の強化を極限にまで目指す。どう?優海にはこれを見てこれをやらせる許可をして欲しいんだけど 」
「それはいいですけど……これ、対象は誰なんですか?まさか、エンタープライズを呼んだ理由って 」
「エンタープライズが対象……という訳じゃないよ。対象は……この2人だ 」
リフォルさんが次のページに行かせると……Ⅱ型改造計画の対象になっているのは……ヨークタウンとホーネットだった。
今昏睡状態の2人を指定したリフォルさんに俺とエンタープライズは驚き、思わずその場から立ち上がった。
「タイミング的に丁度いいのがその2人だからね、他のKAN-SENだと、一から作るのと変わりないから結構しんどいから 」
「なっ!?ちょっと待って下さい!2人は今目が覚めてないんですよ?そんな勝手は許されません! 」
「まぁまぁ落ち着いてよ。私だって眠っている子をいきなり改造なんかしないよ。それに、まだこの改造計画のリスクを説明してないからね 」
「リスク……? 」
「この改造計画……もしかしたらKAN-SENの記憶とか人格に大きな影響を与えるかもしれないって事 」
「っ……! 」
これに驚愕の意を示したのは俺よりもエンタープライズの方であり、エンタープライズは無意識に拳を握り、目の焦点が震えていた。
「ど、どういう事だ……?姉さんやホーネットの記憶に影響って…… 」
「さっき言った通り、これはメンタルキューブに別の艦のリュウコツの情報を組み込ませる方法だ。それにより、古いリュウコツの情報が上書きされてしまうかもしれないという訳だ 」
「じゃあ……ヨークタウンとホーネットは俺の事を忘れてしまうって訳ですか? 」
「それは多分無いかな。優海の中にあるコネクターの因子がKAN-SEN達に良い影響与えているから、優海との繋がりは保てるはずだよ 」
「じゃぁエンタープライズの事も覚え…… 」
「それは難しいかな 」
闇の中で見えた光が飲み込まれたかのようなショックが体全体にのしかかった。
「この改造計画でヨークタウンとホーネットに最も適合しているリュウコツ情報はエセックス級だ。もしこの計画を実行したら、彼女達はエセックス級になる。そうすれば、もうヨークタウン級じゃなくなり、もしかしたらヨークタウン級の時の記憶は……無くなるかもしれない 」
「それって…… 」
「だからこそエンタープライズ。姉妹艦である君に話を聞いて欲しかったんだ 」
リフォルさんはエンタープライズと目を合わせ、ある選択を迫った。
「これはヨークタウンとホーネットにも話をするつもりだ。そして……君達にはある事を選んでもらう。1つ『この計画を受けない』か、1つ『リスクを呑み込んでこの計画を受けるか』の2択だよ 」
「……それは、私が判断する事じゃない。ヨークタウン姉さん達が決めることだ 」
「ううん、これはヨークタウン級の3人全員が
つまり、ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネットの3人が全員この改造を受けることに賛成したらヨークタウン達の改造は決まり、1人でも反対したらこの話は無かった事になるという事だ。
言わば、力か記憶……どちらを取るかだ。
「一応言っておくけど、改造しても記憶はそのまま保持される可能性はあるよ。でもあくまでも可能性。それを忘れないで 」
リフォルさんはその場にあったコーヒーを飲み、エンタープライズにまた声をかけた。
「直ぐに決めろとは言わない。だけど3日猶予を与える。それまでに答えを出して。出さなかった場合、このの改造計画は乗らないって判断するから 」
「……指揮官、どうする? 」
エンタープライズが帽子を深く被り、顔を見せないまま震えた声で俺に判断を委ねてきた。
もちろん、俺の答えは1つだ。
「いや、これはエンタープライズが決めるべきだと思う。俺が介入する余地は無いよ 」
これはヨークタウン、エンタープライズ、ホーネット達3人の問題だ。誰かの助言も、言い分も必要なく、3人で決めるべきだと俺は判断した。
「やはり……そうか」
やはりかと言う苦笑いでエンタープライズは立ち上がり、少し危うい歩きで開発室から出ていった。エンタープライズが部屋から出ていくと、リフォルさんは机の上のコーヒーを飲み、キーボードを操作して作業に戻った。
「指揮官的には、どうしたいの?私から言わせて貰えば、テネリタスやセイレーンに対抗する為、この改造計画は是非ともして欲しい限りだけど…… 」
「……指揮官という立場からならもしかしたらそれは正解かもしれません。だけど……家族との繋がりが忘れるなんて事は、嫌ですね 」
「やっぱり、そうだよね……でも、私も最善は尽くすよ。リスク無しで出来ないかやってみるよ 」
「ありがとうございます。じゃあ俺、執務に戻ります 」
「はーい、頑張って〜 」
リフォルさんに端末を返し、俺は司令室へと戻った。
「……ふぅ、こんなものかな 」
バミューダ海域での報告書をまとめあげ、何とか上層部に提出出来る形には出来た。今日の執務は終わったし、時間も遅いしそろそろ寝ようとした時、携帯から着信音が鳴った。
何だろうと携帯を手に取ると、そこにはジンさんからのメッセージがあった。
﹁今時間あるか? ﹂
俺はメッセージにありますと書くと、今度は場所を指定して会いたいと言ってきた。
場所はこの基地の海沿いの砂浜と指定しており、まぁまぁ遠い距離だ。しかも海沿いだから夏と言っても夜が冷える場所だ。
ちゃんと指揮官の勲章である白いコートを着込み、急いでジンさんがいる場所へと向かった。
夜がふけると流石にこの時間帯に出入りしているKAN-SENもおらず、薄暗い道の中1人は怖いな〜とか言いながら海沿いの砂浜に辿り着き、そこにあるテトラポットの上にジンさんがいた。
「いたいた。おーい、ジンさーん! 」
「よっ、遅くに悪いな 」
「いえ、ちょうど執務が終わったので 」
俺はジンさんの横にある空いてるテトラポットに座り、ジンさんと一緒に静かな夜の海に浮かぶ星空を眺めた。
「ほへ〜こんなくっきりと星が見えるの久しぶりだな 」
「ユニオンでは見れないんですか? 」
「ユニオンはめちゃくちゃビルとか多いからそれが邪魔で光が届かねぇんだよ。技術を手に入れた変わりに、自然を失ったもんだからよ 」
「もったいないと思うんですけどね。あの、俺を呼んだ理由って、何ですか……? 」
「お、グイグイ来るな。まぁ、こればっかりはマジな話だ。ちょっと真剣にやるぞ 」
先程の笑みが消え、ジンさんの目付きが変わった。どうやら、本当に重要な事のようだ。メッセージでも電話でも無く、直接俺に話すぐらい大事な事を気になり続け、ジンさんの言葉を待った。
「お前、エックスって知ってるか? 」
「なっ……!どうしてジンさんがそれを!? 」
「バミューダ海域にあった廃墟の所にな、報告書には乗せなかったし、お前には伝えて置いた方がいいやつもあるしな 」
エックス……俺達、アズールレーンやテネリタス、そしてセイレーンが最終的に倒すべき敵だとマーレさんが言っていた。
報告書にはエックスという存在が無かったからてっきりジンさんは知らないと思っていたのに……
「それで、俺に伝えておくべき事って……?」
「それはな…… 」
波が引き、一際大きな波が打ち上がったのと同時に、ジンさんは衝撃的な事を言った。
「エックスはアズールレーンの内部にいる 」
「…………はっ? 」
「それに既に俺達と接触しているらしい 」
「なっ……それじゃあ…… 」
リアさんやリフォルさん、それにネージュさんやオセアンさんの誰かがエックスという事になるのか……?
「嘘だ!じゃあジンさんはリアさん達がエックスと思っているんですか!? 」
「落ち着け。第一これはセイドが言ってきたんだ。どこまで信用出来るのか分からないし、そもそも俺達はエックスがどういう物なのかも分からないんだぞ 」
「それは…… 」
「だからこうしてお前にだけ話してんだよ。俺もリアとかがエックスだなんて疑ってねぇし、したくねぇよ 」
ジンさんは俺を落ち着かせ、静かに肩を叩いてくれた。
「だが、俺はセイドが言っていることが嘘だとは思えない。それに、そう考えればセイド達が上層部の奴らを皆殺しにした行動に納得できるしな 」
「あの時の事件か…… 」
俺が記憶喪失の時……正確には、俺とコネクターの人格が入れ替わっていた時に遡る。
俺が重桜に帰っていた時、テネリタスは全ての陣営の上層部を抹殺した。これにより、上層部の機能はほとんど機能しなくなり、KAN-SEN達の運用の全権を俺が握る事となった。
抹殺と言っても一部は生きているらしく、オセアンも無事だ。
この時、テネリタスが何を目的としてこれをしたか分からなかったけど、仮にエックスを倒す為、もしくはあぶりだす為だとしたら筋は通ってるけど……
「でも、その何か分からないエックスを倒す為に大勢の人が犠牲にするなんて……許されないですよ 」
「ま、そうだよな……だが正直、本当にアズールレーンにそのエックスがあるのか、それとも居るのか分からない。とにかく、聞き逃すにしろ、心に留めとくにしろ好きにしろ。俺の話は終わりだ 」
謎の存在エックス……俺達が最終的に倒す目標であり、セイレーンが作られた理由でもある物。
俺達全員の……本当の敵。
「……ちょっと知ってる人に話をしてみます 」
「当てがあるのか? 」
「2人ほど、知ってます。でももう遅いから……明日聞いてみます 」
テトラポットから飛び降り、早く聞きたいこの気持ちを抑えるように胸を掴み、今日はもう寝る事に決めた。
「じゃあ、俺はもう寝ます。ジンさんも早く寝てくださいよ 」
「あいよ、じゃあな 」
「はい、おやすみなさい! 」
来た道を戻り、自室へと戻って行った。……寝ると言っても、今日はもしかしたら寝付けないと思うけど。
「……行ったか。ふぅ、これ話すべきだったかな 」
正直、これは俺一人で背負おうかと思ったが……俺一人ではどうしようもなかった。結局俺よりも年下のアイツにも重荷を背負わせた事の罪の意識がのしかかり、テトラポットから降り、そのまま砂浜に背中を預けて寝転んだ。
(……アズールレーンの中に倒すべき敵か )
恐らくテネリタスは上層部にエックスが入り込んでいると想定し、上層部を抹殺した。だが、セイドの言葉からしてエックスはまだ現存している。
そして、俺達に接触した事があるという事はつまり、俺と関わりがある物全てが容疑者という事だ。
KAN-SENはありえない。何故ならセイレーンと同じようにエックスを倒す為の存在らしいからな。
「……やめだ。何も分かんねぇ存在を怪しむのはバカバカしいな 」
分からない事だらけで考えつかないっていた方が良いかもしれない。全てを投げ捨てるように倒れ、考え疲れて無心で星空を眺める。
やっぱり綺麗だなぁ……ユニオンで見たぼやけた星空とは違い、六等星の星までくっきりと見える。
そのおかげか星々の集まりで暗い空の一部が銀色に輝いており、寝る事も惜しむ程だ。
「こんな所にいると風邪ひくわよ、バカ 」
星空を背景に幼なじみの見知った顔が俺を見下ろし、驚きもせずに俺は笑って返事をした。
「そういうお前こそなんの用だよ、リア 」
「貴方が夜遅く出歩いてるのが見えたから気になっただけよ。優海と話してたらしいけど何話してたの? 」
「…… 」
リアには話出来ねぇな。リアが誰かを怪しみながらこの先アズールレーンにいるのは酷だ。こいつには、無意味な重みを背負わせたくねぇな……
「……KAN-SENの中で誰が一番美乳か話してた。そしたら優海が顔赤くして 」
「嘘つき 」
「なっ……! 」
リアに見透かされたような目で胸が飛び出る様な衝撃を受け、言葉を失い、ヘラヘラした態度が吹き飛んでしまった。
「貴方とどれだけ一緒にいると思ってるのよ。貴方、嘘や隠し事する時いつも下手な笑顔してるから分かるわよ 」
「……そうかよ。でも俺は」
「いいわよ。言いたくないのなら、それで。きっと、私の事を心配させない為でしょ 」
リアはいつも通りの表情で俺の隣に座り、俺と同じように星空を眺めた。
「貴方はいつもそう。ヘラヘラしてるけど変に私を不安させないでいるし、いっっつも無茶する。ホント、馬鹿みたい 」
するとリアは小さく俺の腕を小突いた。
「夜遅く仕事はするし、無茶ばっかするし、危ないことに首を突っ込んだり、誰かを守る為に平気で笑う。私がどれだけ心配してるのかわかんない癖に 」
小突いた力が強くなり、最終的には頭で俺の肩を小突いていると、いつしか動きをとめ、リアの頭は俺の肩に止まった。
「……おかえりなさい 」
「ん、ただいま 」
いつしかリアの小言は収まり、俺はリアの肩を抱いて2人で夜空に輝く星を眺めた。
降り注ぐ星は軌跡を描き、いつまでもずっと一緒に見ていたいと、心の底から願った。
どのテネリタスが好き?
-
ロリママ創造者の2代目 ラハム
-
人類最強の天然3代目 アトラト
-
食いしん坊な絶対守護者4代目 シーア
-
武士道と極める騎士5代目 ロドン
-
風のように自由なガンマン6代目 セイド
-
完璧で究極のアイドル7代目 マリン
-
おっとり包容力で全知全能の8代目 ミーア
-
元人間のセイレーン 10代目マーレ