もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜   作:白だし茶漬け

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蜂は二度刺す

 

「えっ!?ヨークタウンとホーネットが目を覚ました!?」

 

「はい、お2人ともご無事です」

 

朝一からベルファストの良い知らせを受けた俺は、安心感で胸がいっぱいになった。

 

2人はこの前のバミューダ海域での作戦においてかなり酷いダメージを受けてしまい、深い昏睡状態に陥ってしまい、目が覚めない状態が続いてしまったけど、目が覚めたと聞いたら早く2人に会いたい気持ちを抑えきれずにいた。

 

それが顔に表れたのか、ベルファストは落ち着いてくださいと言うように1つ咳をした。

 

「そんなに慌てないで下さい。その前に朝食から頂きましょう」

 

「よーし、早く食べて会いに行こう!」

 

急いで食堂に言って朝ご飯を食べ、この時は嬉しさからかより美味しく感じられた。指揮官とは到底呼べない程朝食を食べ、わずか10分足らずで朝食をすませると急いでヨークタウンとホーネットがいる医務室へと直行した。

 

「ヨークタウン!ホーネット!」

 

医務室のドアを勢い良く開けると、そこには目を覚ましていたヨークタウンとホーネット、そしてヴェスタルとエンタープライズがいた。

 

「おはようございます。指揮官」

 

「やっほー指揮官、久しぶり〜」

 

「2人とも……あぁ良かった〜無事で!」

 

無事な2人を見て腰が抜けるような地面に座り、一際大きな安心感の息を吐いた。

 

「もう大丈夫なの?ヴェスタル」

 

「まだ艦は修理しきれてませんので戦闘は無理ですが、生活自体は問題ありません」

 

「だが無理はしないでくれ姉さん」

 

「大丈夫よエンタープライズ。動ける分には問題ないから」

 

「でも体は動かしたいな〜。ずっと寝たきりだったからもう体動かしたい気分!」

 

ホーネットが腕を伸ばしてぐるぐると回し、早く動きたいと叫んでいた。そんな談笑を交わしていると医務室のドアからノックの音が響き、開けられたドアから1人の女性がいた。

 

「やっほ〜。目を覚ましたって聞いてやっけきたよ」

 

「リフォルさん。珍しいですね、こんな朝早くから起きてるなんて」

 

「ん〜?そりゃあそうだよ。寝てないからね」

 

「え"?だ、大丈夫なんですか……?」

 

「大丈夫大丈夫、エナドリとコーヒーがぶ飲みしたから」

 

よく見るとリフォルさんの目の下には何十のクマがあった。どれだけ寝てないんだこの人……

 

「まぁそんなことはどうでも良いよ。朝早くから悪いけど、2人にはちょっと重い話するけど……良い?」

 

ヨークタウンとホーネットは顔を見合せた後頷き、リフォルさんは俺とエンタープライスに話した事、【Ⅱ型改造計画】の事を話した。

 

メンタルキューブと艤装に手を加え、通常の改造よりも数倍以上の性能強化が見込めるが、その代わり……ヨークタウンとホーネットはエセックス級となってしまい、エンタープライスとの記憶が無くなる恐れがあるリスクがある。

 

それをリフォルさんは淡々と包み隠さずに話すと、ヨークタウンとホーネットはやはりそこに戸惑いや驚きを隠せずにいた。

 

「……以上が【Ⅱ型改造計画】だよ。無理強いはしないし、私は君達KAN-SENの意志を尊重する。やるかやらないかは自分達が決めてよ。ただし、全員がやると言わないと、私はこれをやるつもりはないから」

 

「つまり、私達3人が改造を受け入れると言わない限り、その改造計画は無しという事になるのですね?」

 

「そういう事、まぁゆっくり考えててよ」

 

リフォルさんはそのまま部屋から出ていき、ヨークタウン達は改造計画について大きく悩んでいる様子になった。それはそうだ、もしかしたら自分達姉妹との記憶が無くなるかもしれないんだ。俺だったら多分断ってしまう。

 

「あの、指揮官はどう考えていますか?」

 

恐る恐るヨークタウンが尋ねてきた。ホーネットも同じ様な顔をしており、ヨークタウンが言い出さなければホーネットが同じ事を言っていただろう。俺は少し悩み、自分自身の考えを言った。

 

「正直、この件に関しては俺が関わるような問題じゃ無いと思う。リフォルさんもそれを分かってて3人に判断を委ねたんだと思うから」

 

「そうだよね……でもやっぱり姉ちゃん達の記憶が無くなるのは……」

 

「いや、2人はこの改造計画を受けるべきだ」

 

悩んでいた2人の道をこじ開けるかのように、エンタープライズはそう言った。

 

「今の私達ではテネリタスに対抗出来ない。だから少しでも戦力を増強して、指揮官の為に……」

 

「何それ。それって、私達との思い出はどうでもいいって訳?」

 

ホーネットは立ち上がってエンタープライズのネクタイを掴み、激しい怒りと悲しみに満ちた目をエンタープライズに向けていた。

 

「何でそんな簡単に言うの!?改造を受けたら強くはなれるけど、エンプラ姉やヨークタウン姉との思い出は無くなるかもしれないのに……それを簡単に手放す様に言うの!?」

 

ホーネットの激しい問にエンタープライズは目を見せずにただ黙っているだけだった。

 

「っ……そんなに弱い私が嫌いなわけ?だったら強くなれば良いんでしょっ!」

 

そんなエンタープライズの態度にホーネットはまた更に怒り、壁に突き放してはカウボーイハットの形をした黒い帽子を被り、そのまま部屋から出ていった。

 

まるで嵐が通り過ぎたかのような静けさになり、何も言わず俯いているエンタープライズに声をかけようともかけずらい状況になってしまった。

 

「……すまない、私もここで失礼する」

 

するとエンタープライズが医務室から出ていこうとする直前、俺の耳元で小さく声を発した。

 

「夜に私の部屋に来てくれ。2人きりで話がしたい」

 

「えっ……?」

 

振り向くエンタープライズの悲しげの顔が一瞬見え、心臓が締め付けられる痛みに襲われ、結局エンタープライズを止め事は出来ず、ここにはヨークタウンとヴェスタルしか残らなかった。

 

「すみません指揮官、エンタープライズとホーネットが……」

 

「ううん、大丈夫だよ。それよりもヨークタウン、ヨークタウンはこの改造計画の事、どうするつもり?」

 

「……私としては否定的ですね。私にとって、エンタープライズとホーネット、姉妹の繋がりは光そのものですから」

 

エンタープライズとホーネットの意見とは逆に、ヨークタウンはこの改造計画に否定的だった。まぁ確かに、ヨークタウンの気持ちも分かる。

 

現状だとヨークタウンが改造を受けない形になっているので、Ⅱ型改造計画の話は無かった事になるけど、まだ時間は3日ある。まだどうなるかは分からない。

 

そんな中、ヨークタウンがある事を言い出してきた。

 

「指揮官、ホーネットとエンタープライズをお願い出来ますか?」

 

「え?」

 

ヨークタウンからそんな事をお願いされたが、正直これは姉妹艦であるヨークタウンの方が適任なのではと思った。

 

「それはヨークタウンの方が良いんじゃ……」

 

「いいえ、今は指揮官では無いと解決出来ません。お願い、聞いてくれませんか?」

 

しかし当の本人はこう言っていた。ヨークタウンが何を考えてるいるのかは分からないけど、ヨークタウンが向ける目には強い意志や確信めいた物を感じた。その意志を無下には出来ず、俺はヨークタウンの願いに頷いた。

 

「ありがとうございます」

 

「じゃあ行ってくるよ」

 

俺は医務室から出ていこうとすると、出口付近に何か気配を感じ、耳に何か声が聞こえてきた。

 

「ヨークタウン姉さんの記憶が無くなる……?そんなの、絶対ダメなのだ……!」

 

この声と口調は……ハムマンか?小走りで医務室から出て直ぐに周りを見ると、窓の外にどこかに急いでいるハムマンを目にした。

かなり切羽詰まった顔をしていたけど、どこに向かうつもり何だ……?

 

「指揮官?どうされたんですか?」

 

ヴェスタルが首を傾げてそう訪ねてきた。

 

「いや、近くにハムマンの声がしたから声をかけようとしたら、いつの間にかハムマンが外に行ったからどうしたのかなって」

 

「ハムマンちゃんが?まさか、改造計画の事を聞かれちゃったんでしょうか?」

 

「……だとしたら、リフォルさんの所に行ったのかもしれませんね。指揮官、ハムマンちゃんの事は私に任せて、指揮官はエンタープライズとホーネットの事を頼みます」

 

「分かった。でも、無理しないでね」

 

「はい、そのつもりですよ」

 

ヨークタウンは立ち上がり、そのままハムマンを探しに行き、俺もホーネットとエンタープライズを探しに行く。

 

基地の周りを歩き、他のKAN-SENから2人の居場所を聞くと、ホーネットが今何処にいるのかは分かったが、エンタープライズがどこにいるのかは掴めなかった。

 

とりあえずホーネットがいるという映画館へと足を運ぶ。映画館はユニオン寮の近くに設営されており、毎月映画の内容は変わり、今流行りの映画とかも上映されるとか。

 

そういえば、映画館は初めて利用する。重桜には映画という物はあれどそこまで普及していなかったから、何気に人生初の映画館である。

 

そんな事を考えていると、建物の上に大きなカメラが乗っかった所にたどり着き、自動ドアが開くと赤い絨毯に少し広いロビーに、受付の上には今上映されている映画や次に上映される映画の時間帯等が映し出されていた。

 

(ホーネットは何の映画を見てるんだろう……)

 

モニターを見ると今上映されている映画は4つ。

 

1つ目は今人気の重桜の侍と鬼がモチーフのアニメ映画であり、テレビでもよく見かける奴だ。KAN-SEN達の間でも話題が尽きない物であり、駆逐艦で主人公の真似をしたりする子も少なくない。

 

2つ目は特撮ヒーロー物だ。バイクに乗って変身するヒーロー物で、何と50周年記念作品らしい。そういえばリノ達が絶対見た方がいいってKAN-SEN達に言っていた。俺も後で見ようかな。

 

3つ目は恋愛物で、KAN-SENの中でも随分と話題になっていた。そう言えば何人かにこの映画を一緒に見ようと誘われた様な気がする……後で返信しないと。

 

4つ目は西部劇であり、3人のガンマンが主役の映画だ。しかしこれといって話題になっているという訳では無く、上映時間も今日のこの時間だけだった。

 

「この中でホーネットが見そうなのは……これかな」

 

俺は受付の饅頭に今すぐ映画を見たいと言い、映画のチケットとポップコーンとジュースを買った。

映画館のポップコーンは美味しいらしいから買ってしまったが、かなり量が大きい……ホーネットと一緒に食べよう。

 

チケット番号が書かれた部屋に入ると、もう映画は始まっている為に部屋は暗く、つまずかないようにゆっくりと歩くと、スクリーンの光でようやくまともに部屋が見え始めた。

 

ここの部屋の席はガランとしており、見渡す限りの空席が目立っていたが、ただ1つ埋まっている席があった。

その席には金髪のツインテールに服らしい服を着ずに黒いビキニを羽織る様な暗いマントの様な物を羽織ったKAN-SEN、ホーネットがじっと映画を見ていた。

 

声をかけようとしたその時、映画館のルールを思い出した。

 

(そういえば映画館では静かにしないとダメだったんだっけ……)

 

これじゃあホーネットに声をかけたくてもかけられず、こうなったらさりげなくホーネットの近くの席に座ろうとすると、ホーネットはこっちの方に顔を振り向いた。

 

「あれ?指揮官じゃん。何でこんな所にいるの?」

 

「え、えーと……ホーネットを探して……というか、映画館では静かにしないとダメだったんじゃ……」

 

「ここ、私と指揮官しか居ないから平気だよ。隣座って座って〜」

 

ホーネットが隣の空席を叩き、俺はその席に座り、ホーネットとの間にポップコーンを置いた。

 

「お〜ポップコーンじゃん。食べていい?」

 

俺はコクリと頷き、ホーネットはポップコーンを食べながら映画を見た。

 

…………

 

……………………

 

(ううーん、何か物足りないような気がするかも……)

 

一時間映画を見た感想としてはこれだった。

 

ストーリーは簡単に言えば、3人のガンマンは兄弟であり、その中の長男が住む街を守る為に迫り来る敵を倒すストーリーだったけど……所々展開が飛びすぎてあまり感情移入が出来ずにいた。

 

だけど、見せ場である銃を撃ち合うシーンや、一騎打ちでの戦いは見応えがあった。カメラワークやスローモーションの使い方、アクション等は手に汗握るものだった。

 

「おぉ、すごいね」

 

「まぁでも、ストーリーはアレだけどね。演出も最近のと比べるとちょっと味気ないでしょ?いわゆる古臭いって奴」

 

「そうかな……?でも、ホーネットはこういうガンマンが出てくるのが好きでしょ?前に話してくれた」

 

「よく覚えてるね指揮官、うん。ロマンって言うのかな、こういう生き様見るのが好きなんだ。でも、皆にはちょっとウケが悪いけどね」

 

確かに、このがらんとした空席の目立ちを見ればよく分かる。

 

「特に私、あの三男が気になるんだ。なんだか私みたいでさ」

 

ホーネットはスクリーンに指を指し、その三男を見た。映画に登場する三男はこれといった目立った活躍は無

く、逆に長男や次男は迫り来る敵を次々と倒していた。

 

それを見たホーネットはカウボーイハット型の黒い帽子を深く被った。

 

「凄い兄達がいるせいで自身は見向きもされない。それって私の事じゃん。だから気になっちゃって」

 

「そんなこと……」

 

「だって私、オロチが敵の時には何も出来なったんだよ。それに指揮官が暴走した時だって足を引っ張って……最近ではバミューダ海域の時に何も出来なかった……にゃはは、私って弱いね」

 

ホーネットは弱々しく笑い、今まで手につけていたキャラメル味のポップコーンを手に取らなくなった。

 

「こんな弱い私だから、きっとエンプラ姉にも改造しろって言われるんだろうね。私との記憶なんてどうでも良いって思ってる」

 

「そんなこと無い!」

 

映画館の中だけど俺は叫び出し、ホーネットの肩を掴んで目を見た。

あまりの行動にホーネットは思わず俺に目を合わせると、その目には涙が流れていた。

 

「エンタープライズは誰よりもホーネットの事を想ってる筈だ。ホーネットが昔翔鶴と戦っていた時、真っ先に駆けつけたのはエンタープライズだ。だからどうでも良いだなんて絶対に思ってない」

 

「じゃあなんで私との記憶を簡単に捨てるような事言ったの!?」

 

ホーネットは俺の事を押し返し、その弾みで買ってきたポップコーンの残りが床に落ち、ばら撒かれた。

キャラメルの甘い匂いと、微かに暖かいホーネットの涙が俺の頬へと落ち、スクリーンの淡い光でようやくホーネットの泣いている姿が目に映った。

 

「私は姉ちゃん達みたいに強くなくて……何も出来なくて、エンプラ姉には何も言われなくて……そんな弱い私が居なくても良いじゃんっ!」

 

「違う」

 

押さえつけるホーネットの手を取り押し倒された体を起こし、ホーネットの涙を拭った。

 

「ホーネットはホーネットだ。ヨークタウンでも、エンタープライズとも違う。ホーネットにはホーネットだけにしか無い強みや良さがある」

 

「……例えば?」

 

「ホーネットは皆を守ってくれただろ?エンタープライズはすぐに無茶して前に出るけど、ホーネットは違う。ホーネットはいつも皆の側にいて守ってくれるし、先陣を切るために得意な早撃ちで制空権を取るのに役立ってくれてるし……それから……」

 

「あーあ!分かった!分かったからちょっとストップ〜!」

 

思いつく限りのホーネットの良いところを上げ続け、何十、何百もの頭の上で思いついた端から口に出すと、ホーネットは顔を赤くして俺の口を両手で押さえつけた。

 

ホーネットが運動した後のように大きく息を吸って吐くと繰り返した後、口を塞いでいた手を離し、深く被っていた帽子を脱いで少し涙を浮かべた笑顔を見せた。

 

「……えへへ、ちゃんと見てくれたんだ」

 

「うん、俺は全員の事をちゃんと見てるよ」

 

「そっか……」

 

この時、ホーネットの顔は少し残念そうな顔をしていた。

 

「私は私。姉ちゃん達とは違う……いつも言ってたんだけど、心の中では気にしてたんだね……」

 

ホーネットは帽子を被って立ち上がって体を伸ばすと、ホーネットの心情を表すかのように映画は朝日が昇るシーンが映し出された。

 

「んん〜!何だか少しスッキリしたような気がする!けどやっぱり……」

 

「エンタープライズの事が気になる?」

 

ホーネットはコクリと頷いた。

 

「……だったらさ、エンタープライズと話をしてくれないか?いや、エンタープライズだけじゃなくて、ヨークタウンと3人で」

 

「うーん、その前にエンプラ姉は指揮官と話すべきかも」

 

「え?ヨークタウンもそう言ってたな……」

 

「きっとエンプラ姉は指揮官の言葉を待っていると思う。だからさ、声掛けて上げてよ。エンプラ姉とは明日話そうと思ってるから」

 

「うん、エンタープライズとは夜話すつもりだよ。それまでにホーネットを探そうと思っていたけど……」

 

「へー?じゃあ、私とデートしてよ」

 

「で、デートっ!?」

 

「だって指揮官と話してたらいつの間にか映画終わってるし〜」

 

ホーネットがスクリーンに指を指すと、映画はもうエンドロールまで行ってしまっていた。

 

「あ……ごめん」

 

「だからね?良いでしょ〜?」

 

「う、うーん……まぁホーネットを探す予定だったし、良いよ」

 

「やりー!じゃ、早速行こ〜」

 

ホーネットは意気揚々と俺の手を掴み、そのまま映画館から出ては外へと連れ回した。

 

ホーネットが向かった場所はユニオン陣営が経営しているピザ屋であった。ホーネットが勢いよく店の扉を開き、空いている窓際のテーブルに座ると店員だろうか、意外なKAN-SENが注文を聞き付けた。

 

「いらっしゃいませー……。あれ……?せんせーだ」

 

「アンカレッジ。ここでバイトしてるの?」

 

「うん。みんなの、おてつだい、してるの」

 

アンカレッジ。ユニオンの重巡のKAN-SENであり、ユニオンのKAN-SENらしい抜群のプロモーションを持ってはいるが、リュウコツの影響なのかその精神年齢はかなり低い。

 

恐らく睦月よりも下であり、この基地にいるKAN-SENの中では1番低い。だから言動や行動がかなり幼く、見た目とのギャップが激しいKAN-SENでもある。

 

アンカレッジがここに来た頃には俺がこの基地の事を説明したり、色々と教えたりした事から、俺のことは指揮官では無く、先生と言われている。

 

そんなアンカレッジがこうして今はピザ屋でバイトもとい、お手伝いをしている……何だかほっこりしてしまう。

 

「へぇ〜アンカレッジがバイトか〜大丈夫なの?」

 

「ボルチモアやブレマートンも……いっしょ。だから……だいじょーぶ」

 

「なら安心だな。じゃあアンカレッジ。早速注文するけど、良いかな?」

 

「うん。えーと、ごちゅーもんは、なににしますか?」

 

袖を全て通してない手の上でアンカレッジはハンディーを手に持ち、俺達の注文を聞き漏らすこと無く聞いた。

 

「ごちゅーもんは、いじょうで……いい?」

 

「うん、ありがとうアンカレッジ。良く頑張ったね」

 

「アンカレッジ……えらい?あたま、なでてくれる?」

 

アンカレッジは褒められて頭を差し出すように前に出た。思わず手を伸ばしてアンカレッジの柔らかな髪を撫でようとしたが、グッと堪えてアンカレッジにはもうひと頑張りさせようと考えた。

 

「うーん、アンカレッジが料理を頑張って持って来てくれたらやろうかな?頑張れる?」

 

「うん……!アンカレッジ、もっと……がんばる!じゃあ、せんせー、ホーネット、まっててね!」

 

アンカレッジは目を輝かやかせ、急いで厨房の方に足を運び、早く配膳したいと小さくジャンプしながらピザができるのを待っていた。

 

「いい子だね〜アンカレッジ。……いつも頭撫でてるんだ?」

 

「いつもでは無いかな。今みたいにお手伝いがちゃんと出来たり、任務が無事に完了した後にやってるだけだよ。まぁ、アンカレッジだけじゃなくて他のKAN-SEN……特に駆逐艦の子達にもやってるけどね」

 

「あぁ〜そういえば見た事ある!指揮官って本当に好かれてるよね。私も頭撫でて貰おうかにゃ〜?」

 

ホーネットは帽子を脱ぎ、机に手を置いて乗り出して金色ツインテールの頭を差し出した。

 

「うん。良いよ」

 

俺はホーネットの頭を触れ、意外にも凄く手入れされているサラサラの髪に触れ、ゆっくりと丁寧に頭を撫でた。

 

「凄い、髪サラサラだね」

 

「ふふーん、女の子だからその辺は気を使うし、指揮官が見てくれるから少しはね……?」

 

ホーネットは少し意味深に言うとチラリと上目遣いで俺の目を見た。どういう意図を伝えたいのか分からず、俺は首を傾げると、ホーネットはそれを分かっていたかのように笑い、俺の手から離れた。

 

「あはは、やっぱ指揮官って朴念仁〜!そういう所も良いけどね!」

 

「????」

 

「困ってる困ってる。後でこの意味伝えるから気にしないでそれよりもそろそろ来そうだよ」

 

ホーネットが奥の方で指を指すと、大きなピザとコーラを持ったアンカレッジが料理を落とさまいとゆっくりと慎重に歩いていた。

 

両手でプルプルと体が震えているので見ているこっちもハラハラする。手伝いたい気持ちを抑えてアンカレッジの頑張っている姿を見守り、見事アンカレッジは俺達のいるテーブルに辿り着いた。

 

「せんせー……ホーネット……おまたせ……しました。ゆにおんの、おいしいピザとこーら、だよ」

 

「ありがとうアンカレッジ。よく頑張ったね」

 

「えへへ、せんせー。アンカレッジ、がんばったから……あたま、なでなでして?」

 

アンカレッジはテーブルのソファー席に乗り出し、俺にぐいっと頭を差し出した。いつも見たくアンカレッジの頭に触れ、髪の繊維に沿うように頭を撫でると、アンカレッジはまるで喉を鳴らす猫のように甘い声を漏らした。

 

「んん……やっぱり、せんせーのあたまなでなで、きもちいい。あったかくて、やさしくて、ふわふわする」

 

アンカレッジは撫でている俺の右手を両手で押さえつけ、とろんとしている目の瞼を閉じかけようとしていた。

 

「あ、こらアンカレッジ。お手伝いの途中だろ。寝たらダメだよ」

 

「すー……むにゃ……」

 

「ありゃりゃ……」

 

怒っている最中なのにアンカレッジは俺の膝の上に頭を乗せて寝てしまった。

 

「参ったな……起こすべきかな……」

 

「いや、起こさなくていい。アンカレッジはもう上がりだったしな」

 

奥の方からボルチモアとブレマートンが現れた。

 

「ボルチモア、ブレマートン。上がりって事は……お手伝いは終わりって事?」

 

「そういうこと。アンカレッジ、よく頑張ってたよ!注文はしっかり聞いているし、配膳も料理を落とさなかったし」

 

「そっか、なら安心した」

 

「でもホーネットまでいるとはね……まさかデート中だったり?」

 

「そんな感じ〜!もし良かったら2人も食べる?」

 

「いや、遠慮しておこう。二人の邪魔をしたくは無いからな。アンカレッジは私達が部屋まで送るから、安心してくつろいでいてくれ」

 

ボルチモアは寝ているアンカレッジを起こさないようにそっと横抱きし、ボルチモア達はそのまま去っていった。

 

「それじゃ、早速食べようか!ん〜チーズたっぷりで美味しそう!」

 

「じゃ、いただきます」

 

早速ピザを一切れ持つと、熱々のチーズが伸びに伸びてチーズの橋が出来、切るのも困難だ。ようやく伸びきったチーズが切れてピザを食べると、溢れんばかりの濃厚のチーズの旨味やトマトソース、肉の旨味が洪水の様に口の中に広がり、ユニオンらしいパンチの効いた味付けだ。

 

「んー!美味しい!サディア風ピザも美味しいけど、やっぱりこっちも美味しい〜!指揮官はどう?」

 

「うん、凄く美味しいよ。何だか、ホーネットと初めて会った時のことを思い出すよ」

 

「初めて?」

 

「覚えてる?俺の中にマーレさんがいた頃、俺とホーネットが初めて会った時の事」

 

「あ〜指揮官が指揮をすると豹変する頃の事!確かその時、姉ちゃん達とサンドイッチ食べてたっけ」

 

「そうそう、懐かしいな〜もう1年前……かな?」

 

1年前、俺がこの基地に来て間もない頃だ。マーレさんが俺の中にいた影響で、指揮や戦闘の最中のみマーレさんに乗っ取られる様に人格が入れ替わり、KAN-SEN達を少し怖がらせた時があった。

 

そんな中、ホーネットは気さくに俺の事を接してくれたりしたから、その時は本当に嬉しかった。

 

「……ありがとうホーネット。あの時、一緒に食べてくれて」

 

「え?そんなにかしこまらなくて良いのに〜」

 

「本当に嬉しかったんだ。豹変する指揮官を皆怖がったり、少し避けていたりしていたからね。でもホーネットは真っ直ぐ俺に接してくれた。本当にありがとう」

 

「も、もう〜照れるよ指揮官。それよりもさ、早くしないとピザ、私が全部食べちゃうよ?」

 

「あ!まだ一切れしか食べてないのに!」

 

ホーネットによってもう半分ぐらいしかピザが残っておらず、負けずとピザを一切れ取っては食べ進めた。あの時のサンドイッチとこんな風に最後の1個を取り合ったんだっけ……懐かしみながらホーネットと楽しく食事を終え、その後も色んな場所へと足を運んだ。

 

バスケをしたり、店に行って何か無いか探したり、ちょっとの演習も付き合ったりして……あっという間に日が暮れた。散歩している海岸沿いの向こうの夕日が半分地平線に隠れており、そろそろエンタープライズの部屋に行かなければならなそうだ。

 

「んー!楽しかった〜!今日はありがとうね。指揮官、おかげで吹っ切れそう!」

 

「それは良かったよ。……それで、改造の件、今ホーネットはどう考えてるの?」

 

「うーん……受けようかなって思ってる。このままじゃダメって、身をもって知ってるから」

 

「……そっか」

 

「でも、姉ちゃん達のことを忘れる気なんて無いから。強くなるかつ、これからもヨークタウン級のホーネットとしてやってくから!」

 

夕日を背にホーネットは右手でブイサインを作り、ホーネットらしい笑顔を浮かべた。

 

「だから明日はその事をもう思い切り伝えるし、カッとなったことも謝ろうと思ってる。でもその前に指揮官、エンプラ姉の事……」

 

「うん、任せて」

 

「えへへ、なら安心だ。じゃあ別れる前に……ちょっとごめんね、指揮官」

 

ホーネットが両足で小さくジャンプして俺との距離を縮め、ホーネットの顔が目と鼻の先になった瞬間、ホーネットは目を閉じた。

 

そしてその瞬間、ホーネットは俺の頬に唇を重ねた。

 

「!?!?」

 

まるでその名の通り鉢に刺されたかのような衝撃を受け、驚きながらキスされた右頬に自分の右手を添えた。

 

添えられた手から俺の頬がかなり熱くなっているのが伝わり、今頃俺の顔はトマトのように真っ赤になっているに違いない。

 

「指揮官、ホーネット()の事ちゃんとみてくれてありがとう。大好き!……それじゃ、またね!」

 

「えっ……あ……」

 

ホーネットは満面の笑みで俺と一旦別れた。

 

……今、もしかしなくても告白された?しかしあまりの衝撃の連続で俺は何も言えず、何も考えられないままエンタープライズとの約束の時間となり、とにかく急いでエンタープライズの部屋があるユニオン寮へと足を運んだ。

 

 

 

太陽が沈んで月が空に浮かぶ時、薄暗いユニオン寮の廊下を歩いてエンタープライズの部屋の前に立ち、ドアをノックする。

 

「入ってくれ」

 

部屋からエンタープライズの声が聞こえ、ドアを開けると、電気もついてない暗い部屋が目に映った。それどころか、部屋にいるはずのエンタープライズの姿がどこにも無かった。

 

「エンタープライズ……?」

 

とにかく部屋に入ると、部屋の暗さもあってエンタープライズも見当たらず、薄暗い部屋の中に見えるものは机の上に乱雑に置かれたエネルギーバーだけだ。

 

「……エンタープライズ?どこにいるの?」

 

恐る恐る部屋の奥にあるベットまで移動しながら部屋を見渡してもエンタープライズが見当たらず、ドアの方に体を向けると、窓の月明かりに照らされたエンタープライズが扉を背にして立っていた。

 

「えっ、エンタープライズ!何だ〜居たならいってよー」

 

笑いながらそう言ったが、エンタープライズは笑う事も何も言う事も無く、ただ悲しげでありながらどこか何かを求めているようは虚ろな目で俺を見ていた。

 

するとエンタープライズは扉の鍵を閉め、黒いコートを脱ぎ捨てて袖のないシャツを顕にさせ、ゆっくりと俺の元に近づいていく。

 

「え、エンタープライズ……?」

 

様子が変だと声をあげる前に俺はエンタープライズにベットの上に押し倒され、エンタープライズは一粒の涙を流した。俺に縋るように言葉を紡いだ。

 

「指揮官、私を……抱いてくれ」

 

どのテネリタスが好き?

  • ロリママ創造者の2代目 ラハム
  • 人類最強の天然3代目 アトラト
  • 食いしん坊な絶対守護者4代目 シーア
  • 武士道と極める騎士5代目 ロドン
  • 風のように自由なガンマン6代目 セイド
  • 完璧で究極のアイドル7代目 マリン
  • おっとり包容力で全知全能の8代目 ミーア
  • 元人間のセイレーン 10代目マーレ
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