もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜   作:白だし茶漬け

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兎達と共に

 

連合演習。それは全ての陣営の代表者同士で行う大規模演習であり、互いの親睦や、KAN-SEN達の力を世界に見せることで人々に安心を届けるお祭りみたいな物だ。

 

その為、俺の周りにはこの島を護衛するKAN-SEN達の他に、沢山の人間が集まっていた。

 

この連合演習をする島にはアズールレーンの上層部やその他各陣営の権力者の人間もいる為、俺は参加しない形になった。

 

元々は上層部の意向で俺も参加しないとダメだったんだけど……そこは上層部であるオセアンさんが何とかしてくれたのだ。

 

それに、俺の正体を知っているのは極わずかであり、このタイミングでバレたりしたら世界は混乱するだろう。

 

考えてもみて欲しい。例えば、友達の正体が人間では無くて、名前すらも偽って今まで接していたとしたらどうする?

 

今の状況は、それと同じような事と思ってもいい。だから、世界には俺の事を知られてはならないのだ。

 

「それにしても指揮官が艤装を使うとは思いもよりませんでした!情報では聞いていましたが間近で見ると本当に凄……」

 

「島風!それは極秘情報なのよっ!」

 

俺のそばに居た島風という新しく配属されたKAN-SENの口が、同じく配属された駿河というKAN-SENによって口を塞がれた。

 

周りの人達は島風の言う事を気になったのかこちらを向き、俺は笑って誤魔化した。

 

「あ……あはは!本当にあの子の艤装はカッコイイよね!そうだ、あっちにいるから行ってみようか」

 

「むー!むむむ!!」

 

俺はそそくさと物陰に逃げ、駿河も島風の口を覆い、引きずりながら俺について行った。

 

「島風!本っ当に貴方は……良い?指揮官の関する情報は、上層部や私達KAN-SENと、限られた人しか知っては行けない超極秘情報なのよ!?それを人前で口を滑らせて……あぁもう!」

 

「うぅ……誠に申し訳ございません」

 

怒る駿河が島風の頭を何度もチョップし続け、島風は反省して兎の耳をしゅんとしならせ、口を×の字にさせて正座させられていた。

 

「も、もう良いんじゃ無いかな駿河」

 

「は、はい!分かりました……すみません、みっともない所をお見せしてしまい……」

 

「いやなんで謝るの?それにそんなに畏まらなくて大丈夫だよ?」

 

「いえ。私達はKAN-SEN。指揮官を支え、セイレーンを倒す事を目的とて産み出されたのですから、指揮官の名声を傷つける事など言語道断です」

 

「そ……そう?」

 

なんか近づき難い子だな……まるで昔のエンタープライズの様だ。まぁでも、エンタープライズよりかはマシかな。何だって昔は話すらまともにしなかった訳だし。

 

そんな昔と今のエンタープライズを思い返しては随分変わったなとついつい頬が緩み、クスリと笑った。

 

_指揮官、私を……

 

「んぐっほ!?!?」

 

思い返した瞬間あの時の夜のことまでもがフラッシュバックしてきて思わず変な声を上げて頭を抱えた。

 

「指揮官!?」

 

そんな狂人的な行動をしたのだから流石の駿河もこれには困惑していた。

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

「うん、大丈夫大丈夫……ちょっと恥ずかしい事思い出したから。それよりもさ、そろそろ演習会場に行かない?そっちも本来の仕事とかあるだろうし」

 

あの時の夜の出来事を頭の片隅のその隅に置き、思い出さないようにする。

 

「は、はい……わかりました。ほら行くぞ、島風」

 

「あぁ、ごめんちょっと待って。言い忘れてた。俺達が見たあの謎の敵については、誰にも言わないようにしてくれないか?」

 

「な、何故でしょうか?これは共有した方が良いと思うんですが……例えば、ビスマルクとか」

 

確かにビスマルクとかに話せば何か分かるかもしれないが、多分それでは連合演習に集中出来ないかも知れないし、皆に不安の芽が生まれてしまう。

 

「折角みんながこの日の為に頑張ってきたんだ。それを潰すような真似はしたくない」

 

俺は駿河にそう答え、駿河は何とか納得してくれた。

 

「指揮官殿は優しいですね!皆から慕われる理由が分かったような気がします!」

 

「ありがとう。じゃあ、2人ともお勤め頑張ってね」

 

「では指揮官殿〜また何処で〜!」

 

駿河に引きずられながら島風は持ち場に戻り、島風達とは一旦別れて俺はまた1人となった。

 

「……さて、これからどうしようかな」

 

やっぱり1番どうにかしたいのは、島風達と出会った海域であったあの謎の敵の存在だろうか。

 

状況的にセイレーンの新しい兵器と考えるのが自然だが、俺が感じたあの無機的な感じはセイレーンのそれとは違った。

 

セイレーンとは形も、行動も、何もかも違い、俺はどうしてもセイレーンとは思えず、頭を悩ませていた。

 

こうなってしまったら1人で答えを決めるのは無理なので、ある人に相談する事にした。幸い、この事に詳しそうで暇な人が1人いる。

 

その人は丁度、人気の無い芝生の広場の中でのんびり日向ぼっこでもしていた。

 

「オロチさん、そんな所で寝てたらダメですよ」

 

「ん〜?別に良いじゃない。だーれも気にも止めてないんだし」

 

誰もいない広場でオロチさんは猫のようにゴロゴロしながら大きく欠伸をした。

 

「それでなんの用〜?」

 

「ちょっと聞きたい事……というか、相談したい事がありまして」

 

真面目な声色で言ったせいか、オロチさんの態度が変わり、寝転がった体制を起こし、真剣な目で逸らそうともせず、じっと俺の目を見た。

 

「ついさっき、近くの海域でセイレーンとは違う別の物と対峙しました。オロチさんなら何か知っているのかなと思って」

 

「ふーん。って言われてもどんなものか分からないけどね」

 

「ええと、馬に乗った騎士の様な感じで、全身が機械で出来ていました。それと、凄まじい戦闘能力でした。セイレーンとは比べ物にならないぐらいに」

 

レールガンを使ってはいないとは言え、簡単に俺の攻撃をかわしてはまだ余力すら残したあの敵には恐怖を覚えた。

 

今でも鮮明に思い出してしまい、1対1の戦いになれば勝てるがどうかと見込みすら危ういぐらいだ。そんな敵をまだ断片すらも分からないのは危険だからオロチさんに相談してみたが……

 

「ちょっと該当するものが無いわね。私の知らない新兵器ってぐらいしか答えは出ないわよ」

 

「ですよね……」

 

「だけど、セイレーンじゃないのなら1つ心当たりはあるわよ。多分、薄々は勘づいてはいるでしょ?」

 

「……まぁ」

 

セイレーンが作ったものでは無いとすると、あれを作ったのはあの人達しか居ない。

 

「マーレさん。テネリタス陣営ですかね」

 

「まぁそう考えるのが妥当ね。多分私から奪った力を使って作ったんだわ。全く、ムカつくわね」

 

「オロチさんの……?」

 

「私、実は船を作れる能力があったんだけど。それも取られちゃったのよね〜。今になってその力を作ったって事は、結構綿密に作られた可能性がある。最悪、そういう奴が次々と出てくる可能性だってあるわよ」

 

嘘だろ……?あれが量産型だとしたら、いくらなんでも対処なんて出来るわけが無い。

 

恐らく戦艦のKAN-SEN10人分ぐらいの力は下らないだろうし、あれで一気に攻められたりでもすれば……いや、マーレさんに限ってそんな事は無いかと思うが……だが、嫌な考えが頭を過り、考えられずにはいられなかった。

 

「このタイミングで各陣営が襲われたりでもしたら、大きな被害が出る。何とかしないと」

 

「でも貴方一人じゃどうにか出来るレベルじゃないわよ?どうするつもり?」

 

「…………」

 

方法はあるにある。……が、いまいち信用しきれない相手でもあり、そいつらとコンタクトを取る術は無い。

 

それに、今ここでいざこざが起きれば連合演習が中止になるどころか、ここに居る人間達がどうなるか分からない。

 

「黙ってるしか無いって事か……」

 

「そうなるわね」

 

オロチさんの言う通り、今更どう動いても状況は良くならない。

 

少し苛立ちを抑えるように頭を掻きむしり、芝生の上で寝転がり、深呼吸して心を落ち着かせる。

 

「だけど、この連合演習だけは必ず最後までやり遂げないと行けません。これには、人類の希望が詰まっているんですから」

 

「希望?」

 

「はい。人の拠り所、平和の象徴のKAN-SEN達が親睦を深める為に競い合い、その強さを見せて人々を安心させるのがこの演習の目的です。何としても、最後までやり遂げたいんです」

 

「希望ね……でも、それが折れたらどうするのかしら?」

 

「どういう事ですか?」

 

「人って案外裏切ったり、脆かったりするって事よ。じゃ、私は特に仕事無いしブラブラしてるわよ〜っと」

 

意味深な事を言い放ちながらオロチさんはのらりくらりとどこかに行ってしまった。

 

相変わらずマイペースな人で、何を考えてるか分かんない人だ。オロチさんの事は一旦忘れ、会場の方がどうなっているのか気になりだし、俺は急いで会場の方へも戻っていった。

 

 

 

「で?何で島風と駿河が綾波と戦ってるんだ?」

 

なんか見ないうちに開会式が終わってこんな事になっているんだけど……

 

「綾波ちゃんが、『初日から遅刻だなんてだらけてるです。ここは先輩としてお灸を据えるです』って言って演習してますよ」

 

ジャベリンが綾波のモノマネをして状況を伝えてくれた。

 

だが、この様子も世界に放映されているらしく、いわゆるこれは演習の前哨戦という事にされているらしい。

 

因みにこれは、明石と提案らしく、がめつい明石の事だから何か企んでそうだと気になってしまう。

 

「綾波殿は強いですな!ですが、速さなら負けませんよー!」

 

経験の違いから綾波の独壇場かと思われたが、島風がまるで兎のように海を飛び跳ねて移動し、凄まじい加速の連続で綾波との距離を縮めていた。

 

しかも一直線の加速では無く、不規則な軌道での加速な為、動きを止めようにも流石の綾波もこれは止められない。

 

一瞬で島風は近接戦闘の間合いに持ち込み、刀を綾波に振り下ろそうとしたその時、綾波の目が赤く光り、綾波の攻撃を僅かに体を傾けるだけで避け、同時に艤装に搭載されている主砲を島風に撃ち込んだ。

 

「甘いです」

 

島風の攻撃と同時に撃たれたから島風はまともに防御する暇は無く、島風はそのまま目を回しながら水面を浮かんだ。

 

至近距離での攻撃で島風が轟沈されたと、人々はザワついていたが問題は無い。

 

今回、KAN-SEN達が演習で使う砲弾は全て連合演習用に作られた模擬弾であり、見た目こそは派手だがKAN-SEN達に対して轟沈するほどのダメージは無い。

 

これも明石が作った特性の弾なのだ。……こういうのをもっと作って欲しいんだけどなぁ。 

 

「ふむ、素晴らしい技術力だ……投資する価値があるのかもしれない」

 

これを見た人類の1人がそう呟くと、他の人類もこの技術には興味を示していた。

 

「……なるほど、明石の奴、自分の技術を見せては商品を売るつもりだな?」

 

相変わらずがめついやつだと思いつつも、島風達の演習は、決着がつきそうになった。

 

「や、やられました〜!」

 

「次は駿河なのです。覚悟するです」

 

「ひぃぃ!」

 

駿河は涙目になりながも斉射で綾波の接近を拒もうとするが、綾波には榴弾ひとつもかすらず、一気に間合いを積まれ、喉元に綾波の剣先が迫った。

 

「ま……参りました」

 

降参の意を見せるように駿河は両手を上げ、綾波は剣を下げた。

 

「勝ったです」

 

最後に綾波は無表情のドヤ顔でカメラに向かってダブルピースをし、勝利を収めた。

 

観客達は拍手を上げ、俺も綾波に対して拍手し、今まで以上に強くなった事に驚いた。元々綾波は強かったけど、更に強くなっていた。

 

これが改造した力なのだろうか?だとしたら、すぐそばに居るジャベリン達も、強くなっている筈だ。

 

「うぅ〜負けました!流石ですね!綾波殿」

 

「2人ともも中々やるです。特に島風は、良い動きでした」

 

「えへへ……それ程でも〜ありますよ!」

 

綾波に褒められた島風はどんと胸を張っており、とても負けた様子とは思えない。それに対して駿河は綾波の鬼神の如き迫力に圧倒されたせいなのか、顔を少し青くしてはいたが、戦いが終わった事にほっとしていた。

 

「あー……終わった終わった!まさか私達が最初に戦うなんて聞いてないわよ……」

 

「ですが、2人共もしこの演習に参加出来ればきっと良い線行くかもです」

 

「そう言ってくれて嬉しいのですが、生憎私と駿河殿はメンバーは入っていませんので……」

 

「その話、採用にゃー!!」

 

突然明石がマイクを持って遠くの海域にいる島風達に指を指し、目を輝かかせた。

 

「丁度参加チームが15で奇数だったから、丁度いいにゃ!」

 

「だけど明石。島風と駿河だけじゃ参加メンバーが……」

 

「そこで提案にゃ!島風のチームには、特別に混成メンバーの編成を可能にするにゃ!」

 

「混成メンバー?」

 

「そうにゃ。参加メンバーは全員同じ陣営のメンバーだけど、島風達のチームはその垣根を越えてこの連合演習に参加してもらうにゃ!指揮官、どうかにゃ?」

 

確かに面白そうではあるんだけど、俺はこの連合演習においての決定権は無い。 

 

これを決める事が出来るのは、ジンさんかオセアンさんの上層部だけだと思う。俺はジンさんとオセアンさんに顔を向けた。

 

「俺は良いと思うぜ。他陣営同士手を取り合う……面白そうじゃねぇか」

 

「私も同様の意見で賛成です。いいでしょう。島風・駿河チームを特例として認めます」

 

オセアンさんの承認を得た事により、島風と駿河のチームの参戦が確定し、観客やKAN-SEN達は大いに盛り上がった。

 

「じゃ、じゃあ!参加出来なかった私達にも参加出来るチャンスがあるとか!?」

 

「そうなるにゃ!そして〜他陣営の指揮をすることで、暇を持て余した指揮官には、その編成と指揮をやってもらうにゃ!」

 

「え……ええ〜!?」

 

いきなりそんな事言われても……確かに暇だったから丁度いいな〜って思ってはいたけど。

 

 

「という事は、指揮官とは敵同士という事になるな」

 

「そうなるわね。相手にとって不足無し……って、重桜では言うのかしら」

 

「エンタープライズ、ビスマルクまでそんな……」

 

鉄血とエンタープライズの代表者が軽口を叩いては笑いかけてはいたが、その闘志は燃えており、本気で勝とうとしていた。

 

そしてその中でも特に怖かったのが……栗色の髪と大きな尻尾をなびかせたKAN-SENが、静かで巨大な圧を発していた。

 

「なるほど、確かに面白そうな試みです。優海の成長を新たな視点で確かめられる良い機会です」

 

「そうだな。お前がどれほど成長したか、見せて貰うぞ」

 

「天城母さん、加賀姉さんまで……」

 

母さんだけではなく姉さん達までやる気を出しており、これはこっちも気合いを入れて望まなければ、俺が指揮をするチームにも、あっちにも失礼だろう。

 

顔を叩いて気合いを注入し、真っ直ぐこれから戦うであろうKAN-SENたちに目を向けた。

 

「よーし、じゃあ頑張るぞ!」

 

 

そして時は流れ……

 

「と、言ったんだけどなぁ〜。うーん、どうしようか」

 

「私に言われても困ります」

 

駿河に何か意見を聞こうと尋ねても駿河は困った顔をしてしまった。

 

まぁでも確かに、いきなり編成をどうしようと言われても困るだろう。現に俺も困ってるし。

 

しかも、初戦の相手も相手で中々に手癖が強い北方連合のチームであり、ロシアが旗艦のチームだ。

 

「そう言えば、指揮官殿は北方連合達との指揮をされた事があるんですよね?どんな感じでしたか?」

 

「そうだなぁ、全体的に高耐久高火力って感じかな。それに、鉄血と同じセイレーンの技術を取り入れてるから、結構手強いね」

 

「ほほう〜つまり、猪突猛進!って感じですな!」

 

確かに北方連合は守りよりも攻めの姿勢が強く、初めからフルスロットルでこちらのチームを艦隊を全滅させるぐらいの勢いで行くだろう。

 

となれば、編成の方向は受け身中心の方向性に決まってくる。

 

「これは多分、前線はこの2人が使えそうかな。そして主力には……この人とこの子だ」

 

「あの……差し出がましいのですが、本当に大丈夫なのでしょうか?」

 

「あ、やっぱり不安?もう少し練ってみる?」

 

初めての任務でここに来たのにいきなり俺の指揮下で演習を始める自体になったせいなのか、駿河は緊張のせいなのか不安そうな顔を浮かべており、もう少し練ってみようとしたが、駿河自身がそれをとめた。

 

「い、いえいえ!指揮官が良ければそれでいいのですが……うぅ、不安……」

 

何やら自信が揺れ動いている感じが駿河から伝わり、恐らくだがまだ出会っても無いKAN-SENとの連携等に不安があるのだろう。

 

「駿河殿、そんなに不安でしたら、いっその事会ってみてはどうでしょう?きっと、話せばいけると思いますよ

!さ、思い立ったが吉日!行きましょう!」

 

島風は駿河の手を取って俺が選んだKAN-SEN達と会おうとしているんだけど……

 

「おーい、その子達の場所分かるのー?」

 

「…………あ」

 

「バカ……」

 

「た、たはは。指揮官殿、案内お願い出来ますか?」

 

「うん。任せて」

 

とりあえず事前に連絡を入れては見るが、大抵の予想はつく。

 

まず手始めにこの近くにあるフードコーナーの所に行けば、目当てのKAN-SENは居るはずだ。

 

早速俺達はここ、フードコーナーに足を運んだ。

 

ここは全陣営の料理を提供する場所であり、昼過ぎでも関わらずKAN-SENや人間問わずに入り交じり、かなりの人混みが出来ていた。

 

ここから一人を探すのは一苦労だと思いながら探していくと、両手に沢山の料理を抱え込んでいる白髪のKAN-SENがいた。

 

間違いない、探してたKAN-SENだ。

 

「おーい!シグニットー!!」

 

俺は彼女の名前を呼び、名前を呼ばれた彼女が振り返った。

 

「あ、指揮官ー!助けて〜!」

 

シグニットは足を止めたせいで人混みに飲まれてしまい、急いでシグニットを助け出そうとしても中々前に進めずにいた所を、島風はすいすいと人と人の間を通り抜け、シグニットの所へと簡単に辿り着いた。

 

「はい、捕まえました。さぁ、こちらへ!」

 

「ふぇ?う、うさぎさん?」

 

「はい!私、重桜の島風と申します。是非貴方に聞いてもらいたい話がありますので、少し失礼しますね!」

 

島風はシグニットを神輿を担ぐかのように両手で持ち上げ、直ぐに開けた場所へと人の間を縫うようにして移動した。

 

俺達も急いで向こう側に行こうとしたが、島風の様に上手くは行かず、結局島風達を待たせる事になってしまいそうだ。

 

「駿河、ちょっとごめんね」

 

「は、はい!?」

 

駿河と離れないように彼女と手を繋ぎ、島風と違って人混みをかき分けるようにして進んでいく。

 

「あ、あの……指揮官!ここ、これはどういう……」

 

「ん?離れないようにしてるだけだよ。何か、ダメ所あったかな?」

 

「い、いえ……問題ありません」

 

「そう?強ばってるし、ちょっと手の力も強いけど」

 

「そ、それは、この人混みにのまれない為です。さぁ、早く行きましょう」

 

「そうだね。じゃ、行こっか」

 

駿河と離れないよう様にしっかりと手を握り、人混みをかき分け、何とか島風達の方に辿り着いた。

 

「ふぅ〜やっと辿り着いた〜」

 

「し、指揮官?えーと、ウチに何か用?」

 

そう言ってフランクフルトを食べている彼女の名前はシグニット。

 

ロイヤルのCクラスの駆逐艦であり、最近改造を施したKAN-SENの一人だ。

 

彼女はとにかく食べる事が大好きであり、最近はアイドル活動にも力を入れてる……らしい。

 

そんなシグニットは、俺に声をかけられる理由が皆目検討つかないためか、頭に疑問を浮かべながらも手に持っている料理を食べ続けた。

 

「早速なんだけど、今度の北方連合の演習、特別チームに入って欲しいんだ」

 

するとシグニットはイカ焼きをポロリと手を離し、島風が見事に落下中にキャッチした瞬間、アワアワとしながらシグニットは叫んだ。

 

「え、えー!?ウウウ、ウチがとと、特別チームに!?むむむむ無理だよ!だってウチ、鈍臭いし、あんまり強くないし……」

 

「そんな事無いよ。それにこれはシグニットにしか出来ない事なんだ」

 

「ウチにしか……?え、えへへ……」

 

「……指揮官って、たまに朴念仁や垂らしって言われてませんか?」

 

「え?」

 

シグニットは何故か顔を赤くし、駿河は少し引き気味に俺にそう話した。

 

「ま、まぁ。とにかくこれで一人は見つけましたね。指揮官、残りの3人はどういう方なのですか?」

 

「1人はユニオンの重巡で、後の2人はロイヤルと重桜の空母だ」

 

「空母と重巡ですか?随分と火力に拘るのですね」

 

「あぁ。しかも、今回の作戦に必須なのは一点突破だ。多分、これが一番確実な作戦のはず」

 

高耐久と高火力を備わっているのだとしたら、間違いなく長期戦は不利になる。

 

こっちが勝つ為には、こちらも負けないぐらいの火力では無く、突破力が必要だ。となれば、必ずあの人の力が必要になる。

 

「それじゃあ次の人も探しに行きましょう!……と、言われましても、まだ名前を聞いていませんでした。どなたなのでしょうか?」

 

「いや、一人は直ぐにこっちに来るよ。ちょっと離れてて」

 

俺は皆を、特にシグニットは駿河と島風の近くにいるようにと声をかけ、シグニットを守るように島風達の間に入らせながらも離れさせ、俺は1枚の写真を落とした。

 

「あー!いっけなーい!うっかり駆逐艦達のマル秘水着写真を落としちゃったー」

 

ありもしない事を棒読み気味で叫んだその時、どこからともなく稲妻よりも早く、鋭い眼光を帯びながら俺が落とした写真にしがみつくように飛びつくと、すかさずその人影を押さえつけた。

 

その間僅か3秒。

 

何処かに潜んでいたのか、それとも単に地獄耳なのか分からないけど、駆逐艦の事になるとどこからともなく現れるロイヤルのKAN-SEN、アーク・ロイヤルが俺達の前に現れた……というか、飛び出してきた。

 

「ぐっ、は、離せ!駆逐艦!妹達の秘蔵写真!」

 

「そんなもの無いよ。俺が落としたのはジャベリン達の集合写真だよ」

 

「そ、それでも妹達の写真には変わりない!ふ、フヘヘ……閣下、その写真を渡してくれないか……?」

 

アーク・ロイヤルの口から滝のように流れ出る涎と血眼になっている顔はいつ見ても強烈な物だ。思わず押さえつける力を緩めてしまいそうだが、そうなれば恐らくアーク・ロイヤルは駆逐艦である島風とシグニットの方に全速力で向かってくるに違いない。

 

「あ……アーク・ロイヤルさん?」

 

「おぉ!そこにいるのはシグニット!はっ!?そしてそのうさ耳とその可憐であり無垢なその出で立ちは……新たな重桜の駆逐艦の島風かっ!!な、なんという幸運だ!ぜひ!是非私とお茶でもしないかっ!?」

 

「お、おぉ……随分と不思議な方ですね」

 

「不思議を越えて異常だと思うんだけど……」

 

これには駿河もドン引きであった。

 

「まぁそれよりも、いいタイミングで来たね。アーク・ロイヤル。ちょっと聞いて欲しい事があるんだけど」

 

「ほぅ?閣下の頼みとは珍しいな。言ってみてくれ」

 

俺はアーク・ロイヤルに、島風の特別チームに一時加入してくれないかと話すと、アーク・ロイヤルは快く受け入れ……てはくれなかった。

 

アーク・ロイヤルは悩みに悩んでおり、苦渋の決断をしたかのように目を細め、眉間のシワを寄せていた。

 

「ううん……済まないが、その対戦相手の北方連合にも駆逐艦がいるのだろう?他陣営とは言え、駆逐艦と武器を交えるのは……」

 

意外と紳士的な答えだけど、アーク・ロイヤルの紳士性はさっきの行動で消し飛んでいる。

 

まぁでも、アーク・ロイヤルにはアーク・ロイヤルなりの騎士道という物がある。それがちょっと特殊なだけで、別に悪いことでは無い。だけどこのままじゃこっちも少々都合が悪いので、俺はシグニットを読んでこそこそと耳打ちした。

 

するとシグニットは本当にやるのと言うように困ったように目を向け、多分大丈夫だと言って親指を立てた。

 

何とか了承してくれたシグニットは呼吸を整え、アーク・ロイヤルの名前を言った。

 

「あ、アーク・ロイヤルさん!お願いします!ウチ達と一緒に戦ってくれませんか?」

 

両手を握り、上目遣いで目を潤おせた彼女の目はまるで真珠の様な輝きであり、懇願する表情は誰しもが心打たれるだろう。

 

誰しもが心揺らぐ表情を前に、相手は駆逐艦だ。

 

駆逐艦が大好きなアーク・ロイヤルには榴弾どころか爆撃が全弾直撃したかのような衝撃を受け、鼻血を出しながらシグニットに片膝をつき、ゆっくりと手を添えた。

 

「任せてくれたまえシグニット!!このチームの駆逐艦は、必ず私が守るっっ!!」

 

「ふ、ふぇぇ!?アーク・ロイヤルさん、鼻血鼻血!」

 

「おっと、失礼。ふふ、昂ってきた……ふふふふ」

 

シグニットの手を頬擦りしていたアーク・ロイヤルは白いハンカチで血を拭き、白いハンカチはあっという間に赤く染った。

 

「さーて、あと2人だ。1人は行きそうな所は知ってるけど、あと1人が分かんないんだよなぁ」

 

しかもその子はユニオンのKAN-SENだ。ユニオンのKAN-SENは全体的に自由奔放な子が多いから、行きそうな場所の検討がつかない。特にあの子に至っては精神年齢が幼すぎる故、探すのも一手間かかる為、先にとある重桜のKAN-SENに会うことにした。

 

向かった先はここ、重桜宿泊施設だ。ここは重桜の景観や住まいを元にして作られた宿泊施設であり、重桜だけじゃなく、別の陣営の宿泊も可能になっている。

 

重桜の暮らしを体験するのにはもってこいの場所だ。

 

「わぁ……やっぱり重桜って、他の陣営とは違う雰囲気があるね」

 

「いわゆる【和】って感じかな。俺も好きだよ、こういう雰囲気」

 

細かな小石の灰色の庭園に、それを彩る盆栽。

 

そして竹のししおどしが水を受止め、水の重みで丈が傾き、岩と竹がぶつかる音が心を休まる。

 

そうしてまた水が溜まるこの音も、実に落ち着く。ゆっくりと目を閉じて少しだけ堪能しようとしたその時、向こう側から怒鳴り声が聞こえてきた。

 

「ちょっと!それ触っちゃダメだから!」

 

「この声……皆、行ってみよう」

 

怒鳴り声がした所まで少し早歩きで向かうと、そこは修練場と書かれていた。

扉の向こうには誰かいる気配があり、急いで扉を開けた。

 

扉を開けた先には広い道場の様な空間が広がり、空間の半分は広々とした庭園が広がっていた。

 

そして、その修練場には2人のKAN-SENがおり、1人は瑞鶴、もう1人は意外な事にアンカレッジがいた。

 

だが、アンカレッジの方の様子がおかしかった。アンカレッジは座り込んで泣いており、思わず2人に声をかけた。

 

「アンカレッジ、瑞鶴!」

 

「あ、指揮官!」

 

「せ、せんせー!」

 

泣きながらアンカレッジは俺に飛び込み、俺の胸の中で更にまた大泣きしてしまった。

 

「ひぐっ、えぐっ……うぅ、せんせー……」

 

「どうしたんだアンカレッジ。泣いてちゃ分かんないよ」

 

彼女の名前はアンカレッジ。ユニオンの重巡であり、ロイヤルや、他のユニオンのKAN-SENと負けないぐらい抜群の体のプロモーションだが、言動や行動がかなり幼く、KAN-SENの中で最も幼いKAN-SENと言っていいだろう。

 

そんなアンカレッジが何故か重桜の宿泊施設の修練場に居て、瑞鶴と居た。それにさっきの怒鳴り声は瑞鶴の物で間違いないんだけど、状況が掴めない。

 

アンカレッジは泣き続けて話す所じゃ無いし、俺は瑞鶴に話を聞く事にした。

 

「なぁ、瑞鶴。どうしたんだ?」

 

「ええとね、その子が私がそこに置いていた刀を取ろうとして、思わず声荒らげちゃったんだ。ほら、その子って見た目と違ってまだ幼いし、刀の持ち方も危なかったから……」

 

「そっか、注意してくれたんだ。それでびっくりしてアンカレッジは泣いちゃったんだ」

 

「な、泣かせるつもりは無かったんだけど」

 

「分かってるよ。アンカレッジだってそれは分かってる筈だから。そうだよね?」

 

アンカレッジの頭を撫で、ゆっくりと顔を上げたアンカレッジはゆっくり頷いてくれた。どうやら、分かってくれたみたいだ。

 

「そういえば、アンカレッジはどうしてこんな所にいるんだ?」

 

「アンカレッジ、きれいなおと、ここできいたから」

 

「音?」

 

「うん。きいたことない、きれいなおと!」

 

「多分だけど、翔鶴姉の笛の音色じゃないかな。さっき翔鶴姉が人類の皆さんに演奏を聞かせてたし」

 

なるほど、それが原因か……確かに、翔鶴がいつも演奏している横笛は重桜独特の物であり、重桜以外の人達に取っては聞き覚えの無い珍しい音の筈だ。

 

アンカレッジはそれにつられてここに迷い込み、うっかり瑞鶴の刀を持とうとした訳だ。多分、刀から音が出ると誤解したのだろう。

 

「ところで、指揮官と島風達はどうしてここに?それに、ユニオンとロイヤルのKAN-SENも揃い踏みときた」

 

「おぉ!私と駿河殿の事をご存知なのですか?」

 

「綾波とやり合ったんでしょ?もうちょっとの有名人だよ」

 

「はは……こ、光栄です……うぅ、やっぱりあれのせいで変に目立ってる……」

 

「ん?駿河、何か言った?」

 

「な、なんでもないです」

 

今さっき小声で駿河が聞こえたような気がするけど……まぁ、とにかくここに来たのは幸運だ。おかげで探してたKAN-SENに会えたんだから。

 

「俺がここに来たのは瑞鶴に会うためだけど……アンカレッジも探してたんだ」

 

「んー?わたしと、ずいかくに?」

 

「私?翔鶴姉じゃ無くて?」

 

「あぁ。瑞鶴、アンカレッジ。明日の北方連合戦の試合島風の特別チームに入ってくれ。確か2人とも、代表者じゃないよね?」

 

「せんせーの、チーム?うん!アンカレッジ、入りたい!」

 

「そうだね。指揮官が折角私に誘ってくれたんだし、そのチームに入るよ」

 

瑞鶴とアンカレッジは共に了承し、これで北方連合戦のメンバーが揃った。

 

島風、アンカレッジ、シグニットの前衛メンバーに、駿河、瑞鶴、アーク・ロイヤルの主力編成の混成艦隊だ。

 

「にしてもまたバラバラのメンバーだね。指揮官、このメンバーでどうするの?」

 

「それはね……」

 

俺は全員に作戦を伝えると、全員は納得しつつも驚きを隠せずにいた。

 

だが、こうでもしないと北方連合には勝てない。極寒の地で戦い続けた彼女達の技量や技術は、他の陣営と一線を超えた何かがある。

 

それを打ち破る為には、氷山を壊す程の槍がどうしても必要だ。

 

その氷山を打ち破る為に早速連携を取るための訓練を行い、時間は圧倒間に過ぎていったのだった。

 





連合演習追加ルールのお知らせ

上層部の決定により、島風と駿河固定の特別艦隊が認められました。
特別艦隊は指揮官が代表者では無いKAN-SENかつ連合演習のルールに乗っ取っての編成が可能となります。

連合演習をご覧になっている皆様方には、急な決定でご迷惑をかけますが、ご理解とご協力をお願いしますにゃ

ーーーーーーー

余談ですが、この編成のアンカレッジとシグニットのスキル【煙幕散布】はかなり相性が悪いですが、今回それを度外視しています。

というか戦術とかかなり空想的なので、何卒ご了承くださいm(_ _)m

どのテネリタスが好き?

  • ロリママ創造者の2代目 ラハム
  • 人類最強の天然3代目 アトラト
  • 食いしん坊な絶対守護者4代目 シーア
  • 武士道と極める騎士5代目 ロドン
  • 風のように自由なガンマン6代目 セイド
  • 完璧で究極のアイドル7代目 マリン
  • おっとり包容力で全知全能の8代目 ミーア
  • 元人間のセイレーン 10代目マーレ
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