もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜   作:白だし茶漬け

117 / 159
氷の砦

 

 連合演習2日目から、本格的に演習が始まり、数日かけて全ての試合を開始する。

 

 俺達のチーム含めてチーム数は16チームあるから……ええと、それぞれのチームが他の15チームとやって、半分は重複するから……計算すると計120試合やる事になる。

 

 今試合数を1試合ずつやるのはかなりの時間がかかる。

 

 その為一つずつやるのでは無く同時に演習が展開される方式を取っている。記念すべき初日の試合は注目だらけの演習ばかりだ。何故なら四大陣営の代表が、初っ端から全員出場しているのだから。

 

「連合演習初日から目が離せない展開続きにゃ! ユニオンのエンタープライズ、ロイヤルのクイーン・エリザベス、鉄血のビスマルクに重桜の長門様を同時に見れるなんて、もうこの日ぐらいだにゃ!」

 

 明石の言う通り、確かに4大陣営の代表的な存在が一同に見れるのはこの日ぐらいだろう。

 

 それぞれのチームが初日から圧倒している演習を繰り広げており、見事、エンタープライズ、エリザベス、長門、ビスマルクがいるチームは勝利を収めた。

 

 やはりあの辺りのチームは連携も個々の能力も強い。当たる時はそれ相応の対策が必要になってきそうだ。

 

 そのチームの圧倒的な力を目の当たりにした人類達は歓声を上げ、KAN-SEN達の力を見て安心しているような態度をとっていた。

 

「おお、これなら近々セイレーンを絶滅させる日も近いかもしれない!」

 

 セイレーンを倒し、平和になることに希望を持っている人は確かに多かった。だけど、それ故にこの状況を良くないと思っている人もいた。

 

「KAN-SEN達には、さっさとあの怪物を駆逐して貰いたいですわ。こんな所でのらりくらりと遊んで無いでね」

 

「確かに、ならもっとKAN-SENを量産しなければいけませんな。道具は、道具らしく使わなければ」

 

 少し高圧的な高齢な女性が、試合に出てないKAN-SENを睨みつけていた。こんな所で油を売るなと言っているかのように。

 

 人混みの中だからKAN-SEN達はその事に気づいておらず、人類達の対応に手一杯だった。

 

 言い過ぎだと、KAN-SENは道具じゃないとその女性に言おうと近づいた時、いきなり右肩を掴まれ、振り返るとジンさんが首を横に振った。

 

「やめとけ、ああいう風に思ってやる奴はゴロゴロいるからな」

 

「ジンさん……でも、KAN-SENは道具なんかじゃ」

 

「分かってる。だが、それは少数派だ。あー、ここは何だから、落ち着いた所で話そうぜ」

 

 俺は静かに頷き、ジンさんとフードコーナーに立ち寄った。まだ昼前で皆最初の演習に釘付けになっているせいで差程人は居なかった。

 

 そこで適当な店に立ち寄り、メニューの看板を眺めた。

 

「何か飲むか?」

 

「こういう時、やけ酒ってのを飲みたいです」

 

「はは、おめぇが20歳になってからな。コーラにしとけ。酒も炭酸みたいなものだからな」

 

「じゃあそれで」

 

 カウンターに居た饅頭に注文をし、適当なカウンター席に座ると間もなく注文した飲み物が出てきた。

 

 俺はコーラで、ジンさんは昼間からビールとおつまみのジャーキーを注文していた。

 

「こんな昼間から大丈夫なんですか? リアさんに怒られますよ」

 

「良いんだよ別に。今日は休みみたいなもんだからよ」

 

 そう言ってジンさんはビールのグラスの半分を一気飲みし、ジャーキーの味を噛み締めるように味わった。

 俺も真似をするようにコーラを飲むと、噯気が出そうで思わず口を塞ぎ、小さくそれを音を出さずに出した。

 

「ん? ゲップか? 堂々とやれよ」

 

「そういう訳には行きませんよ。俺、指揮官なんですから」

 

 人の目がある中で流石にそんな汚い事は出来ないし、そもそもしたくない。

 

「はは、大変だな」

 

「そっちこそ、支援隊のトップの癖に」

 

「ま、お互い様って訳だ。……さっきの年増の奴の言う事は聞き流しておけ。いちいち気にしてたらキリがないぞ」

 

 さっきの話……KAN-SENを道具扱いしている人達の事だろう。

 

 勿論あの人達の言い分は分かる。

 

 KAN-SENはそもそも人類の手によって作り出されたのだから、そう言われるのは分かってはいるけど、どうしても許せなかった。

 

 俺の家族を、俺の大切な仲間達を酷く言われるのは、自分の事を悪く言われる以上に腹が立つ物だ。

 道具なんかじゃない、生きている命そのものだと、言い返せない今が、無性にやるせない。

 

「ジンさんは、KAN-SEN達の事をどう思ってますか?」

 

「ん? まぁ良い奴らばっかさ。命を助けられ事だしな。ただなぁ……」

 

 ジンさんは俺の事を気にかけるようにしてチラリと見た。どうやら、俺に対して言い難い事だと思う。

 

 俺は何も言わずに頷き、気にしないでと目で言った。それを見たジンさんは一息間を置き、話を続けてくれた。

 

「兵器としては、なんか違和感あるんだよな」

 

「違和感ですか?」

 

「なんて言うかさ、セイレーンをぶっ倒す為に作るのなら、なんでわざわざ人間と同じように作ったんだろうなって」

 

 確かにジンさんの言うことは最もだった。

 もし敵を倒す為に兵器を作るのだとしたら、それこそ武器のようなものを作った方が何かと便利だ。

 

 整備性、生産性、利便性……どれをとっても武器の方が良いが、KAN-SENはそれとは別に人間とほぼ変わらないようになっていた。

 

 お腹も空いたらご飯を食べ、眠たくなったら寝て、好きな事を好きな時にやる。これだけ見たら人間と変わらず兵器とは思えない程だ。

 

 そう考えれば、KAN-SENは兵器としては不完全……と言うより、欠陥品だ。飲み食いする兵器なんて、必要ない。恐らくジンさんはそう考えているんだろう。

 

「あぁ……なんか悪ぃな。お前にとってKAN-SENは、大事な奴らなのによ」

 

「いえいえ、誰でも思う疑問ですよ。でも、俺はKAN-SENは人と同じだからこそ強いんだと思いますよ」

 

「どういう事だ?」

 

「人には感情や覚悟があります。感情は時として大きな力を持ちますし、KAN-SENにもそれがあります。それに、人の心があれば、他人を気遣う事も出来るでしょ?」

 

 俺は目線でジンさんの視線を誘導し、その先にはジャベリンとユニコーンが、ここに来た人類の道案内をしていた。

 

 2人は丁寧に道を案内したり、荷物を半分持ったりと人の為に行動しており、親切にされた人類は笑顔で2人に感謝していた。

 

 もし心を持たない兵器ならこうはならないし、あんな風に人類を助けたりはしない。人の形……いや、人だからこそ、KAN-SENは意味があるのだと俺は思う。

 ジンさんもそれが伝わったのか、笑顔でビールを飲み干した。

 

「そうだな。まぁ確かに良いこともあるもんだ。助け合ったり、綺麗だったり胸がでかかったり……」

 

「あの邪な事言うのやめません?」

 

「なーに言ってんだ。男はこういう事言い合ってなんぼだろうが。お前もそういう年頃だし、やりどきだろうが」

 

「下世話すぎませんか? ……まさか、ジンさん酔ってますね!?」

 

「んな訳ねぇだろ〜ヒック……あ、無くなっちまった。おーい! おかわりくれぇ!」

 

 顔を少し赤くしてるし、少し酔っているのは間違いなかった。だがもう遅く、饅頭がグラス一杯のビールを注ぎ、ジンさんはおかわりのビールをぐびぐびと飲んだ。

 もうダメだこの人、俺は諦めてジンさんを止めることはせず、コーラを飲むことにする。

 

(……そろそろ島風達の演習が始まる時間かな)

 

 携帯の時間を見るともう島風達の演習が始まる時間だ。饅頭達にお願いして演習の様子を見れる端末を注文し、間もなくして饅頭からタブレット型の端末をよこしてくれた。

 

 タブレットの液晶にはドローンで撮影している様子が映し出され、島風達が映っていた。

 

『さぁ次はいよいよ指揮官が編成したチームと、北方連合の試合にゃ! 北方連合はこれまで表沙汰に出なかったけど、本格的にアズールレーンに協力して今に至るにゃ! どれ程の力があるのか見物だにゃ〜』

 

 ドローンには主力編成であるロシア、ベラルーシア、ガングートに、前線部隊のタリン、チャパエフ、タシュケントが映っている事から、どうやらこのような編成みたいだ。

 

 概ね予想通りの編成だが、それでも強敵なのは変わりない。俺の作戦が通用するかどうかは、島風達次第だ。

 

『続いて指揮官が編成した特別チームにゃ! 主力には駿河、瑞鶴、アーク・ロイヤルに前線には島風とシグニットとアンカレッジとこれまた混成部隊にゃ! どんな戦い方をするのか、これもまた見物にゃ!』

 

『よーし、島風、頑張りますぞ!』

 

「張り切ってるな……島風」

 

「ん〜? おお、お前のチームがもう始まってんのか? あれ? お前、行かなくて良いのか?」

 

「一応、KAN-SEN同士の演習ですからね。俺が関与出来るのは編成だけで、演習中の指揮は禁止されてます」

 

 それに俺はほぼ全てのKAN-SENの能力を把握している。この情報のアドバンテージは相当な物であり、公平性を保つ為に俺の指揮は無い。

 

 一応演習前の作戦は練れたのだが、それを簡単に許すロシアでは無い。何度も言うが、俺の作戦が通用するのは島風達の頑張り次第だ。

 

『それじゃ、演習のルール確認にゃ! 制限時間は30分で勝利条件は2つ、敵チームの全KAN-SENの大破と、時間内で損傷率が少ないチームの勝利にゃ!』

 

 そして大破となったKAN-SENはそれ以上戦闘には参加出来ず、その場で動いては行けない。その他細かいルールはあるけど、だいたいこれさえ把握すれば問題ない。

 

『それじゃあカウントダウン行くにゃ! 3! 2! 1! 演習開始にゃ!』

 

 カウントダウンが終わりと同時にまず仕掛けたのは島風だった。この中で最も速いのは島風であり、それが俺の第一の矢でもある。

 

「そういえば、お前アイツらにどんな作戦を伝えんだよ?」

 

「北方連合はとにかく高耐久、高火力のKAN-SENが多い傾向にあります。長期戦になればジリ貧は目に見えてますので、短期決戦を挑むようにしています」

 

 特にあの中で1番要注意したいのはタシュケントだろう。高耐久高火力という特徴を保ちつつも、駆逐艦らしく速力もありながら、タシュケントの特殊凍結兵装:スネジーンカという妖精のような形をした兵装まである。

 

 最優先で倒しておきたい子ではあるけど、果たして上手く行くのか……食い入るようにタブレットを見つめ、今俺が出来るのは祈るぐらいだ。

 

「よーし、勝負ですぞ! タシュケント殿!」

 

「ふん、逆にボコってやるわよ!」

 

 先に対峙したのはやはり島風とタシュケントだ。ここまでは想定通りの展開であり、島風に続いて今度は瑞鶴も刀を抜き、タシュケントに斬りかかった。

 

 背後から近づいてきた瑞鶴を察知したタシュケントは早速スネジーンカを使って瑞鶴の進行を止め、不利と感じたタシュケントは島風と距離を取った。

 

「やっぱりタシュケントを狙ってきたな。どうだロシア。私の考え通りだろ」

 

「それは私も考えついていた。分かっていたんだろう? だから賭けをしなかった。違うか?」

 

「さぁな。チャパエフ、頼んだぞ」

 

 俺の狙いに気づいたであろうベラルーシアがチャパエフを指揮し、チャパエフがタシュケントの援護射撃を行った。援護に気づいた島風はチャパエフの牽制の射撃を刀で全て防ぎ、タシュケントと距離を置いた。

 

「うぬぬ、これでは各個撃破に持ち込めません!」

 

「やっぱり各個撃破重視だったのね、私達の性能だったら長期戦じゃ勝機は無い……ならば、貴方達の勝ち筋は短期決戦しかない。それさえ分かれば、対策方は分かるわよ」

 

 するとチャパエフの後に続き、主力艦隊のロシア達とタリンも合流し、逆に島風と瑞鶴が囲まれた。

 

「まずは2人、退場して貰うぞ」

 

『おおっと2人が囲まれたにゃ!』

 

「おいおい、お前の作戦読まれてんじゃねぇか。へへ、あっちもお前の事分かってるみたいだな」

 

 ジンさんはからかうように笑ってそう言った。

 

 だがあのチームの司令艦的存在のロシアは、俺の作戦の意図を予測し、この状況になるのは分かっていた。

 ロシアだったらこうするだろうという前提の作戦で褒められた物では無いが、使えるものは使う主義だ。悪く思わないでくれよ……ロシア。

 

 近くに潜伏していたシグニットとアンカレッジがロシア達の前に現れたが攻撃はせずに艤装から煙幕を散布し、ロシア達の視界が白く染まる。

 

 煙幕によってロシア達はその場から身動きが取れなくなった。ロシア達の傍には島風と瑞鶴がいた。島風達も煙幕に包まれて身動きは取れないとこれを見ている皆はそう思っているが、それは違う。

 

 そもそもこの煙幕自体が作戦の一環だ。島風と瑞鶴は煙幕が散布される前には直ぐにその場から離れており、それはドローンが捉えていた。

 

 つまり、今煙幕の中にいるのは北方連合のKAN-SENだけだ。

 

「駿河殿、アーク・ロイヤル殿今です!」

 

「分かってるわよ!」

 

「了解した!」

 

 煙幕の中に向けて駿河とアーク・ロイヤルはありったけの火力をぶつけ、煙幕の中にいる北方連合のKAN-SENに向けて狙い撃った。

 

 正確な位置こそは分からないが、煙幕の中に居ることは確実だから他の皆も煙幕に向かって弾や魚雷を放ち、さらに煙幕の粉塵も相まって大きな爆発を起こした。

 

 見た目は派手だが、威力は演習用に調整されているから問題は無い筈と思うけど、思わず心配で固唾を飲み込み、爆炎が消え、ロシア達の状態を確認すると……ロシア達は、多少の傷を負ったが、損傷には至らなかった。

 

『あ、あの攻撃を凌ぎきった!? 何て装甲と耐久にゃ!』

 

 実況の明石や、北方連合をよく知らなかった人達もこれには騒然とした。

 

 北方連合はその認知の少なさにより、全ての陣営の中で最も力がない陣営と思われてきたが、今その常識は氷の様に砕かれ、同時に彼女達の強さに背筋が凍っている事だろう。

 

「なるほど、素晴らしい作戦だ。流石は同志指揮官だ。だが、力が足りなかったな」

 

 爆炎を氷でかき消し、ロシア達北方連合のKAN-SENがいる所だけ絶海の氷海の様になり、島風達はたじろいでいた。

 

「ふぇぇ!? ピンピンしてる〜!!」

 

「なんか、すごくかたい、シールド、みたいなのあった」

 

「当然よ、私の盾がそんな簡単に壊れる訳ないじゃない」

 

 なるほど、タリンのシールドが。そういえばタリンは北方連合だが、アドミラル・ヒッパー級だ。ヒッパーやオイゲンは強力なシールドを持っているのが特徴だから、その特徴も反映されている筈だ。

 

 それが北方連合の高耐久を合わさっているのだから、硬いのは当然だ。

 

「まずい、さっきので決められなかっから島風達の戦意が折れかけている……」

 

「形成逆転だな。どうすんだ?」

 

「どうするも、信じる事しかできませんよ。それに、これは俺の本命では無いですから」

 

「なに?」

 

「母さんが言ってました。完璧な作戦なんて無い。だからこそ、俺の作戦は終わってない」

 

 そう、これはほんの序の口の作戦だ。ロシア達の装甲や耐久ではこの攻撃を受け切る事は想定通りだ。

 だからこそ、第1、第2、第3と作戦をこの前伝え続けていた。

 だが、俺の指揮がない以上、ここから島風達次第というのは言うまでもない。ここを乗り切らないと勝ち目は無い。

 

「さて、次はこちらの反撃だ。受けてもらうぞ」

 

 北方連合のKAN-SEN達が主砲を前線の島風、アンカレッジ、シグニットに向いた。

 

「ふっ飛べ!」

 

 ロシアが叫ぶと同時に北方連合の一斉射撃が行われ、シグニットとアンカレッジはたまらず煙幕を散布する。

 だが、煙幕を散布しても北方連合の弾幕は少し特殊だ。

 

 北方連合のKAN-SENは通常の砲弾に加え、氷の砲弾のような物も発射される。

 

 原理は分からないが、アレを受けると艤装が一部凍りつき、移動速度を低下させてしまうという特殊兵装だ。

 もしそれに当たればたとえ煙幕の中で正確な狙いが出来なくても、数打てば当たる理論で間違いなく大破に追い込まれる。

 

 ここが勝負所なのは間違いない、煙幕の中で氷が混じる弾幕の中、轟音と砲弾の爆発、そしてそびえる水柱が経つ中、白い煙幕が全て晴れつつあった。

 

 白い煙幕が消え、そこにあった物はボロボロの島風達では無く、シールドで身を包み、島風達を守ったせいで少し損害を受けた駿河だった。

 

「……防げたわよね?」

 

「駿河殿! ナイスアシストでした!」

 

『こ、これは凄いにゃ! 北方連合の超火力を軽微の損害で耐えたにゃ!』

 

「よし……!」

 

 俺は自分の事の様に小さくガッツポーズをし、駿河の防御力にロシアは驚いていた。

 

「煙幕で全火力の半分以下の火力しか出なかったとは言え、この砲撃を耐えるとは……侮れないな」

 

「い、いや、島風達が殆ど回避しましたし、私も最低限の被弾にするようにしたので。それに、演習用の模擬弾じゃ無かったら……」

 

「それを言うなら最初の攻撃でも同じ事だ。だが、特殊弾幕で貴方の艤装の1部は凍結した。次を受け切れる自信はあるかな?」

 

「そうはさせません! 行きますよ瑞鶴殿!」

 

「任せて!」

 

 次攻撃を許せば間違いなく駿河は大破し、この後の勝機が薄くなる。それを止める為に島風と瑞鶴が先陣をきり、後からシグニットとアンカレッジもついていく。

 

 後方にいるアーク・ロイヤルも援護の艦載機を呼び出し、密集している北方連合達に向かって攻撃を仕掛ける。

 

 今のロシア達の編成上、この艦載機を止める手立ては無いはずだ。上空からの航空攻撃に耐えながらも、ロシア達は島風達から目を離さず、砲塔を向けて弾を打ち続けた。

 

「ロシア! このままでは集中砲火を受けるぞ!」

 

「仕方ない。一度別れよう。タシュケントとチャパエフは私と来てくれ、残りはベラルーシア姉さんの方に!」

 

「確かに、ここで共倒れになるのは不味いな!」

 

 どうやらロシア達は二手に別れて損害を軽くする作戦らしい。まずい、今その手を取られたら間違いなく各個撃破されて負けてしまう。

 何としてもここで分断を阻止しなければ、勝機は無い。

 

「させない! 島風、私の刀に乗って!」

 

「ほい! わかりました!」

 

 瑞鶴が刀を両手に持ち、刀を振り上げる体制に入ると、島風が瑞鶴の刀の側面に乗り、その瞬間瑞鶴は思い切り刀を振り、島風をまるでボールの様に鋭く打ち出した。

 

「いっっけぇぇ!!」

 

 瑞鶴のパワーで吹き飛ばされた島風は猛スピードでロシア達の方に向かい、あまりとスピードにロシア達は一瞬反応が遅れた。

 それが勝負の分かれ目となり、島風が近くにいたのはタシュケントだった。

 近くにいた島風と皆を守るためにタシュケントが大ダメージを受け、島風とタシュケントは吹き飛ばされ、大きなブザー音が鳴り響いた。

 

『島風、タシュケント、大破認定にゃ!!』

 

「む、無茶苦茶よ……」

 

「きゅ〜……み、皆さん〜後は任せました〜」

 

 無茶な行動をした島風は目を渦見たいに回しながら倒れてしまったが、おかげで瑞鶴達は分断前に追いつき、勝負を仕掛けた。

 

「北方連合! 覚悟!」

 

 瑞鶴が艦載機を呼び出し、艦載機は炎となって瑞鶴の刀に纏うと炎の大剣へと姿を変え、大きく刀を振り下ろした。

 

 振り下ろされた大剣は炎の斬撃を飛ばし、ロシア達に襲いかかり、足を止め、その隙をつくようにシグニットとアンカレッジは魚雷を放つ。

 

「せめてこれでも味あわせてあげるわ!」

 

 足を止められた北方連合のKAN-SEN達はこれを避ける術は無い。……が、それでも活路を見出すためにチャパエフとガングートはそれぞれシグニットとアンカレッジに向けて攻撃し、その攻撃を直撃させたと同時に魚雷は爆発し、双方共に攻撃を受けてしまった。

 

 だが、その僅かな攻撃の瞬間を見逃さなかったKAN-SENがいた。

 後方に居たのにも関わらずに駆逐艦の危険を察知し、我が身を顧みずに盾となったアーク・ロイヤルが、アンカレッジとシグニットの前で両手を広げて守っていたのだ。

 

「あ、アーク・ロイヤルさん!?」

 

「ふ、2人とも……だ……大丈夫か?」

 

「う、うん」

 

「そうか。ふふ、駆逐艦を守れたのなら本……望」

 

 そうして満足そうな笑みを浮かべながらアーク・ロイヤルは倒れた。

 何だか死んでしまった雰囲気はしているが、彼女はまだ生きている。現にアーク・ロイヤルは体を痙攣させ、駆逐艦を守れた喜びなのか涎と鼻血を出している。うん、いつも通りで良かった。

 

『チャパエフ、ガングート、アーク・ロイヤル大破にゃ!』

 

 まさかの空母が駆逐艦を守った事にギャラリーは大騒ぎとなっていたが、俺は別の事を心配していた。

 

 これで残っているチームは駿河、瑞鶴、アンカレッジ、シグニットであり、向こうはロシア、ベラルーシア、タリンが残った。

 

「おいおい、火力の要のアーク・ロイヤルがやられちまったぞ。どうやってあの装甲突破するんだよ」

 

 確かにこれはキツイ。人数ではこっちが勝ってるが、残っている人数であの装甲とタリアのシールドを突破するのは厳しそうだ。

 しかもシグニットとアンカレッジはアーク・ロイヤルに庇われたが、それでも中破辺りの損害だ。逆にダメージを受けて大破してしまったら、それこそ勝ち目が無くなる。

 

 だが、考えうる中での最悪では無い。アーク・ロイヤルが居ない状況でも戦える様に、俺はいくつもの作戦をKAN-SEN達に伝えたのだから。

 

 俺は思わず小さく笑い、残っているコーラを飲み干した。

 

「いいや、まだまだこれからです」

 

 ジンさんはアーク・ロイヤルが火力の要と言ったが、それは間違いだ。確かにアーク・ロイヤルの瞬間的な火力はトップクラスだ。だが、この戦闘ではそれはさして重要じゃない。

 

 この演習で最も重要な所は、火力では無く突破力だ。

 

 どんな状況でも諦めず、冷静に対処してこの危機をどう乗り越えるかという突破力。そういった意味では、この演習の要はアーク・ロイヤルでは無い。

 

「その盾、破らせて貰う!」

 

 瑞鶴は再度艦載機を炎に変えて刀に宿すと、これ以上無く刀は燃え上がり、下手すれば自分さえも焼いてしまう程だった。

 

「……2人とも、私があの攻撃に耐えてる間、弱ってるあの駆逐艦と重巡をやって。そうすれば、残りは痛手の戦艦と空母だけよ。アンタ達なら造作もない奴らでしょ?」

 

「だが……」

 

「良いから、それとも私が信用ならない? なら、賭けても良いわよ。もしここで直ぐにでもやられたらアンタの言う事聞いてあげるわよ」

 

「ほぅ? タリンがそんな事言うのは意外だな。分かった、ロシア、ここはタリンの心意義を尊重しよう」

 

「心意義? ……なるほど、分かった。頼むぞ、タリン」

 

 どうやらあっちも何かを決めたらしく、タリンが前に出て氷のシールドを展開した。

 燃える炎の刀と絶対零度の盾、果たしてどちらが矛盾となるのか……

 

「勝負だ!!」

 

「望む所!!」

 

 瑞鶴が海の足場を蹴り、凄まじい速度で真っ直ぐタリンに向かってくる。

 

 普通の戦闘で今のように真っ直ぐ敵に向かうのは愚の骨頂だが、瑞鶴は試したくなったんだ。自分の力を、自分の刀がどこまで通用するのかを。

 

 そして、それはロシア達も分かっていた。だから真っ直ぐ行く瑞鶴を狙うのでは無く、アンカレッジとシグニットに向かっているのだ。お互いの意地と意地のぶつかり合いは、まさに行われた。

 

 炎と剣と氷の盾がぶつかり合い、火花を派手に散らされながらも、2人は踏ん張り続け、1歩も引かなかった。

 歯を食いしばり、瑞鶴は盾を貫こうとし、タリンはその刀を折ろうとするようにする。

 

 炎と氷の結末は、一瞬だった。

 

 瑞鶴の刀に僅かな亀裂が走り、やがて亀裂は刀を覆うように走り、刀が折れた。

 

 勝った。と、タリンはそう確信した。……だが、その油断が命取りとなった。タリンはその確信で力を緩めたが、瑞鶴は折れて半分以下の長さになった刀を離すことはせず、むしろ折れた剣でタリンに襲いかかった。

 

「しまっ……」

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

 

 渾身の一撃をタリンに喰らわせ、タリンの艤装は貫かれた。だが、半部以下の長さが仇となってそこまでのダメージには至らず、タリンは反撃を仕掛けた。

 

「くぅぅ……!」

 

 ほぼ密着された状態で回避は無理だ。瑞鶴はタリンの反撃をまともに受けてしまい、2人は海面に倒れた。

 

『タリン、瑞鶴、共に大破にゃ!!』

 

 一瞬だったが、あの二人にとっては途方も無く長い一瞬だったのだろう。海面に倒れ、大破認定をされた2人はもう動く事も出来ず、仰向けになって浮かんでいた。

 

「あぁー負けちゃったかー! 私もまだまだだな〜」

 

「それはこっちのセリフ。完全に慢心したわ……はぁ……」

 

「でもそれが無ければ私の負け。……うん、もっと強くならないとね」

 

「だったら付き合ってあげるわよ。ビール一杯で」

 

 何やらいい感じに打ち解けた様子だ。

 だが、演習そのものは終わってない。タリンが瑞鶴を引き付けたおかげでロシアとベラルーシアがアンカレッジとシグニットを狙っていた。

 

 煙幕を使って2人は踏ん張っているが、そろそろ限界に近い。もし2人がやられたらこっちの残りは駿河だけになってしまう。

 そうなってしまえば、もうどうすることもできない。ここはもう、駿河にかかっている。

 

(頑張れ駿河、君が要なんだからな)

 

「ああもう! どうすればいいのよー!!」

 

 追われてるアンカレッジ達を追う駿河がロシア達に狙いを定めようとはしているが、シグニット達の煙幕によって逆に狙いが定められずにいた。

 

「いやいや落ち着け、落ち着くのよ駿河……何か、何か方法が……」

 

 すると、駿河は遠くを見渡し、何かを思いついたのか、アンカレッジとシグニットに通信をいれた。

 

「2人とも! 島風がいた所に移動して!」

 

「ふぇぇ!? よ、よく分からないけど、やってみるね」

 

「わかった、アンカレッジ、あそこ、いくね」

 

 アンカレッジとシグニットはルートを変え、駿河に言われた通りの航路を辿った。それに合わせ、駿河は追撃するロシアとベラルーシアに砲撃するが、ロシア達は砲撃をする抜けるように避けて行った。

 

「この程度、造作もない……が、妙な砲撃だな。まるで当てる気がないようだ」

 

「だが、距離が遠くなりつつある。これであの援護砲撃も出来ない。あの二隻を倒し、最後に決めるぞ!」

 

「おいおい、アンカレッジとシグニットの奴ら、どんどん駿河から離れていくぞ? 大丈夫なのか?」

 

「えぇ。大丈夫な筈です」

 

 上手いこといくかは、ロシアとベラルーシア次第だ。俺の予想が正しければ、2人は間違いなくこの作戦に気づく。そこが勝負どころだ。

 

「……? 待て、ロシア。一旦ここから離れよう」

 

「どうしたんだ? 姉さん」

 

「まんまとあちらの罠にかかる所だっというわけだ」

 

 ベラルーシアがロシアを止め、シグニットや駿河達に狙わないように適度な距離を保ちながら、シグニットとアンカレッジを追いかけるのをやめた。どうやら、気づいたらしい。

 

「見ろ、あそこにはあの白髪の駆逐艦が残した不発した魚雷がある。もしあのまま追いかけていれば……」

 

「あの戦艦の砲撃で魚雷が爆破し、大破したと。同志指揮官の作戦か?」

 

「だろうな。とにかく、あそこに近づくのはやめよう」

 

「……って、思った瞬間、そっちの負けだよ」

 

 この時点で勝利は確定した。確かに島風が残してた不発弾を駿河の砲撃で当て、魚雷を作動させてダメージを与えようとしたが、それは単なる囮だ。

 

 これは、ベラルーシア達ならきっと気づいてくれると信じての作戦だ。あんまり褒められた指揮じゃないと思うけどね。

 

 その作戦とは……最初行った煙幕の中での一斉攻撃、アンカレッジに言ってこっそり時限式の魚雷をその場で浮かばせていたのだ。

 

 そして、その場所に今2人は立っており、時間も丁度そのタイミングだ。2人はこの場所の異変に気づいたが、その瞬間魚雷のタイマーが作動し、爆破した。

 

 直前になって気づいたから防御のしようが無い。魚雷の爆破で2人はボロボロになり、その瞬間大きなブザーがなった。

 

『ロシア、ベラルーシア共に大破にゃ! これで北方連合は全滅、勝者は特別編成チームにゃ!!』

 

「や、やった……! ウチ、やったよ!」

 

「アンカレッジ、がんばった」

 

「ふぅ、良かった……あの魚雷に当てなくて」

 

 初日から接戦に出逢った駿河はその場で倒れ込み、肩の荷がおりたかの様な顔をしていた。

 

「おおー勝ったのか! やるなぁあいつら!」

 

「はい。皆、よく頑張ったな」

 

 今日限りの特別チームだけど、勝てて良かった。演習が終わり、タブレットを机の上に置き、俺は皆の所に行こうとした。

 

「あ、そうそう。これジンさんの奢りですよね? お会計頼みますね」

 

「おー行ってこい行ってこい。俺はここで飲んでるから」

 

 ジンさんがまーたビールを飲もうとしており、そろそろ止めた方が良いのではと言おうとしたその時、俺はジンさんの背後にいる人を見つけ、そそくさと逃げ出した。

 

「へぇ〜? 仕事が残っているのに昼間からビールだなんて、我らがトップは偉いですね〜?」

 

「げっ……リ、リア……」

 

「貴方が離れたら仕事が進まないでしょう!」

 

「い、いやいや、俺が居なくても仕事なんて」

 

「貴方の承認が無ければダメな書類が沢山あるのよっっ! おかげで私が対応しなきゃいけなくなったのに貴方の来たら昼間からビール……! 私だって美味しいもの食べたいの我慢してるんだからぁぁ!!」

 

「ぐわぁぁぁぁぁ!!」

 

 この時、ジンさんの悲痛な叫びが聞こえたが、何も聞こえないと言い聞かせた。あれは……聞いちゃダメな叫びだ。

 

どのテネリタスが好き?

  • ロリママ創造者の2代目 ラハム
  • 人類最強の天然3代目 アトラト
  • 食いしん坊な絶対守護者4代目 シーア
  • 武士道と極める騎士5代目 ロドン
  • 風のように自由なガンマン6代目 セイド
  • 完璧で究極のアイドル7代目 マリン
  • おっとり包容力で全知全能の8代目 ミーア
  • 元人間のセイレーン 10代目マーレ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。