もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜   作:白だし茶漬け

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更新が遅れすぎてどんどん新キャラが出てきてどうしようかお悩み中の白だし茶漬けでございます。

最近割と忙しくなり、アズレンの方もプレイなおざなりになってやばいと感じ初めてます。

それはともかくして、次回から初期の方で書いていた後書きの日誌を復活させようかと考えています。
後書きの日誌を書いていた理由としては、元々アニメの方で活躍が無かったKAN-SENを登場させたかったり、KAN-SENと指揮官の関係に説得力を持たせたかった等ありました。

ですが、新キャラも増え、そのKAN-SENの関係性を深めていくために、復活しようと考えています。そのせいで後書き含めた文字数が多くなってしまいますが、ご愛読してくれたら嬉しい限りです。


ブラックドラゴン

 

『さぁ、連合演習も盛り上がり続ける中、いよいよこの対戦カードが来たニャ!』

 

 今日も今日とて実況の明石は会場を盛り上がらせる為にテンション高めでお送りしている。

 対する俺は戦術が上手くいくかビクビクしており、まともに朝食が喉に通らなかった。実際戦うのは俺じゃないのにと思われるかも知れないが、こういう性格だから多めに見て欲しい。

 

 前と同じく、ドローンで試合を撮っているタブレットで演習の様子を見て、島風達の勝利を願っている。

 そんな中、前に空いている席に誰かが座り、顔を上げるとそこにはリフォルさんがブラックコーヒーを手に相席した。

 

「相も変わらず、こんな所で見てるのね。貴方の部屋にも、大型モニターがあるって言うのに」

 

「ここなら直ぐに皆のところに行って労えますから」

 

 専用部屋だと演習場所までは数十分はかかる為、疲弊しているKAN-SEN達に待たせるのが申し訳ない。だから、近いかつ座れる場所があるこのオープンカフェが最適という訳だ。

 

「あれ? そういえばジンさんと一緒じゃないんですか?」

 

「私はあいつの付属品じゃないわ。あいつなら今頃地獄の接待を受けられているかもしれないわね」

 

「地獄の接待?」

 

「ジンはあれでもアズールレーンの後方支援隊のトップよ。一応、諸々の権力はあるから、そのおこぼれを貰う為に今ジンの周りには頭を下げてる人がいるはずよ」

 

「そういう事か……」

 

 一応、アズールレーン後方支援には様々な役割を持った部署みたいなものがある。

 まず、リフォルさんが所属する開発部は、主にKAN-SEN達の新武装等を開発する部署。

 

 次にネージュさんのように世界情勢の管理する部署だ。全ての陣営の流通、情勢等、どこか1つの陣営が力を持たないようにする為の部署だ。

 

 他にも色々あるが、一つ一つにそれなりの権力を持っており、それを統括するのがジンさんだ。上層部程では無いにしろ、一般からすれば政治家かそれ以上の権利をジンさんは持っている。

 

 そのお零れを貰うのも、分からなくは無い。

 

「貴方は大丈夫なの? 指揮官だって、それなりの権力はあるでしょう」

 

「まぁ大丈夫ですよ。どっちかと言えば……避けられてますし」

 

 すると近くに一般人である男2人組がここに足を運び、カウンターにある饅頭に飲み物の注文をしようとしていた。

 

「俺にこの飲み物を頼むよ」

 

「おい、あそこ見ろよ……」

 

 ひそひそと男性達の少し震えた声色が聞こえる。最近耳が良くなったせいか、こういう些細な声色とか聞き取れるようになったのは、良いことなのか悪い事なのか。

 もっとも、この状況だったら耳が良くても悪くても男性達の態度を見れば一目瞭然なんだけど。

 

「行こうぜ……」

 

「あぁ。もし機嫌とか損なわせたら何されるか分かんないしな」

 

 男性達は聞こえないと思っているのか、最後までそう言いながら俺の事を恐れるようにして見ながら立ち去った。

 

 リアさんは男性達の態度に怒りを感じたが、直ぐに理由が分かったのかその怒りは憤った。

 

「軍事権の事ね?」

 

 俺は何も言わずに頷いた。

 

 みんなが俺を恐れているのは、指揮官が全ての軍事権を有しているからだ。全ての作戦指揮や、武器の使用や使用用途、挙句の果てには軍事基地の存続は全て指揮官の指先一つで変えられる力がある。

 

 言わば、この世の全ての武力を手にしていると言っても過言では無い権力は、人々にとっては恐怖の対象でもあった。

 

 それはそうだ。赤の他人が全ての武力を有するんだ。人類にとって、俺は世界を巻き込む核爆弾となんの変わりも無い。その気持ちはよく分かる。

 だからこそ攻める理由も無いし、咎める理由も無い。虚しくグラスに浮いている氷が溶け、カランとガラスと氷がぶつかる音が響き、リアさんは忙しなく人差し指でテーブルを叩き、苛立ちを抑えていた。

 

「あの……リアさん?」

 

「あぁ、ごめんなさい。ああいう上辺だけを見て全部を知った気になって、本当の事を見ようともしない連中を見ると腹が立つのよ。昔の私を見ているようで」

 

「昔のリアさん?」

 

「ええそうよ。約束一つすっぽかされたぐらいで馬鹿な男1人嫌いになった昔の私よ。だから、ああいう奴らは気にしなくて良いのよ。そうね、そこら辺にいる羽虫……いや、雑草の葉音とでも思ってなさい」

 

「リアさんって怒る時、言葉の棘が凄いですね」

 

「そう? ストレスが溜まっているのかしら。どこかの馬鹿のせいでね」

 

 その馬鹿とはジンさんの事だと一瞬で理解した。

 

「ところで、もうすぐ貴方のチームとニュージャージーのチームとの演習でしょう? 勝算はあるの?」

 

「あるにはありますけど……実はある事を言いました」

 

「ある事って?」

 

「……勝てないと判断したら、戦闘せずに逃げろって言いました」

 

 

 _演習開始数時間前

 

「まさか指揮官からそんな事言われてるは思わなかったな」

 

 落胆こそしてないが、意外そうな顔と声色を浮かべ、配属されたばかりの島風と駿河以外は驚きを隠せなかった。

 

「今回は相手が相手だからね。だけど、勝てないとは言ってない。皆……頑張って!」

 

「当然、ご主人様に恥をかかせないよう、尽力致します」

 

 ベルファストが前に出てカーテシをすると、皆の士気も高くなった。それに、こちらとしてもニュージャージーの力をこの目で見れる良い機会だ。

 

 ユニオンを超え、KAN-SENの中でも最強と言われる実力……見せてもらうよ。

 

 

 

 

「なるほどね、確かに……あのニュージャージーは生半可な戦法では勝ち目は無いわね。何か作戦はあるの?」

 

「空中戦を捨てる代わりに、今回は機動力でかき乱す作戦にしました」

 

 今回の相手は前線にハムマン、エルドリッチ、ラフィーと、主力にニュージャージー、エセックス、イントレピッドがいる。

 

 しかもハムマンは二型改造を施され、ラフィーも改造してかなり強くなっているからこちらもかなり手強い。

 正直純粋な機動力だけでは分が悪いが、その為の金剛と霧島だ。

 

 2人は戦艦と言うが、詳しくは高速戦艦だ。その名の通り戦艦としてはかなり機動力が良いように設計されており、随伴艦として機能はする筈だ。

 

 つまり、今回の作戦は遊撃を軸とした突破だ。2隻が空母という編成上、先に前線を何とか全滅させる事が出来れば、残りの空母は何とかなる筈だ。

 

 だが、その作戦は早速当てが外れることになった。

 

 試合数分後、ユニオン側にはイントレピッドとエセックスを随伴する様にラフィー達が付いており、ほぼ1箇所に固まっていた。

 

『おおっと!? ユニオンにしては珍しく守備重視の戦法にゃ! これは指揮官の作戦の裏を取っての作戦かにゃ?』

 

「その通り! この編成なら指揮官は必ず前線を壊滅する事に重視すると思いましたからね」

 

 ドヤ顔でエセックスがそう言い、心からやられたと呟いた。

 だけど指揮官は何も1つの作戦に固執しない。この時の為に、いくつもの作戦を張り巡らせているのだから。

 

 相手チームの立ち位置を見た島風達は遊撃の陣形を崩し、そのままバラバラになった陣形でユニオンのKAN-SEN達の所へと突撃をかけた。

 

 相手は勿論、これを観戦している人も驚いていた。単騎では火力に劣ってしまい、ジリ貧になってしまう事は誰の目にも明らかだ。だが、ベルファストがいるなら別だ。

 

 前の演習と同じパターンになってしまうが、これは分かっていても対処が遅れる戦法でもある。

 

 それぞれが散り散りになった後、ベルファストの艤装から煙幕弾を発射し、イントレピッドが反応してその煙幕弾を撃ち落とし、白い煙幕が空中で霧散し、空を舞った。

 

「煙幕で私達の事を混乱させようとしても無駄よ!」

 

 イントレピッドが空中の煙幕を無力化し、こっちの作戦を潰したと思い込んでいるが、それを潰してもまだこっちには作がある。

 

 イントレピッドだけではなく、ユニオン達全員が煙幕に気が逸れたその瞬間、白髪の兎は見逃さず、誰よりも早く敵陣に入り込んでいた。

 

「その隙を晒したのなら充分です!」

 

「も、もうこっちに!? なんて速さ……!」

 

「島風は速いので!」

 

 もう島風の刀が届く所まで近づき、あれだけの密着状態なら援護する事も難しい筈だ。

 空母のKAN-SENには飛行甲板があり、そこさえ潰せば空母の機能はかなり低下する。島風はそこを狙い、イントレピッドを無力化しようとしたその時、また1羽の白兎が赤い目で閃光を纏いながら島風の刀を二丁の砲塔で止めた。

 

「島風、確かに速い。だけど、ラフィーも速さには自信がある」

 

「ほわっ!? なんという速さ!」

 

「舐めている後輩を叩き直すのが、先輩の役目……だから、潰す」

 

「大人気ない!」

 

 ラフィーは島風の刀を受け止めて跳ね除けた後、まるで兎が素早く跳ねるかのように縦横無尽に海の上を走り、機動力に自信がある島風を翻弄し、その隙にイントレピッドは距離を置いた。

 

 作戦は失敗かと思われだが、速さに自信があるのは島風だけじゃない。イントレピッドが距離を置こうとしたその先には、水面から突然現れたかのように霧島が立っていた。

 

「なっ……! どこから来たの!?」

 

「ふふん、これぞ忍法って奴かな。まぁ、私は忍者じゃないけどね」

 

 って言っているが、霧島は刀を抜き、イントレピッドとの1対1の真剣勝負にもつれ込んだ。

 

 一方で先程の攻撃を防がれた島風はラフィーと対峙しており、こちらも1対1の状態だ。

 ラフィーは今自己リミッターを解除している状態になっており、その証拠に今日限界を超えている事を示すようにラフィーの艤装から青い稲妻が走っている。

 

 恐らくラフィーが狙っているのは短期決戦だ。島風を早めに倒し、そこから次の援護にと考えている筈だ。だが、それでも速さなら島風は負けていない。

 

「先輩としての威厳にかけて、島風……倒す」

 

「いくら後輩でも島風は負けません! 行きますよ!」

 

 ラフィーの連射を島風は刀で斬り伏せながら自慢の速さで掻い潜り、他の所も戦闘が開始された。

 

 ハムマンとは駿河を、エルドリッチには金剛を、シラにはエセックスを……そう、この状況では必ず1対1の状況をならざるを得ない。

 残っているのはそう、ベルファストとニュージャージーだった。

 

 ベルファストとニュージャージーの性能差はかなりの差があり、まずベルファストが勝つ可能性は低い。だが、これはベルファストが求めた物だ。

 

 本来ニュージャージーとここで対面するのは駿河のはずだった。駿河の粘り強さならニュージャージーの猛攻を凌げると考えたが、ベルファストの意向でベルファスト自身がニュージャージーと対決する事を願った。

 

 どうしてベルファストがニュージャージーと対決したいと言い出したのか分からなかったが、その時のベルファストからは絶対に負けたくないという意思が感じられた。

 

 指揮官として、こんな無茶な事は演習でもさせたく無い。だが俺は最後まで折れてしまい、ベルファストの意思を汲んだ。でも、今のベルファストだったら多分この状況で皆を説得し、今の状況にしたに違いない。

 

「へぇ〜まさか貴方と1on1をやるなんて思わなかったよ。でも良いの? 私、強いよ?」

 

「だからといって引く訳には行きません。ご主人様の勝利の為に、私はここに立っているのですから」

 

「でも、それだったら私と1on1をする必要無いよね? そこには自分のプライドもあるんじゃないの〜?」

 

「……否定はしません」

 

「ふーん……じゃっ、遠慮はしないよ!」

 

 ニュージャージーの艤装から青い炎と翼が広がり、戦艦とは思えない程の加速力でベルファストの前に突撃し、目の前の近距離砲撃をしようとしていた、だがベルファストはそれを読んでいたのか、持っていたダガーを発射寸前の砲塔に投げつけ、ダガーが主砲の1つに突き刺さった。

 

 ニュージャージは突き刺されて使い物にならなかった砲塔を右手でへし折り、そのまま千切るようにして外すと、そのまま鈍器として扱い、ベルファストに殴りかかった。

 

 ベルファストはへし折られた砲塔を右手の鉄の小手で受け止めたが、戦艦では力負けしてしまい、そのままベルファストは吹き飛ばされた。

 

「なんと言う戦い方……」

 

「ふふん、使える物はなんでも使う。こういうアウトローな戦い方って男の子は好きでしょ?」

 

「確かにご主人様が好む戦い方です。ですが、私はより優雅に貴方と戦い、勝利します」

 

「ふふ、こういうシチュエーションも……皆好きだよねっ!!」

 

 圧倒的な性能を活かしてニュージャージはベルファストを追い詰め、主砲と副砲の連打をベルファストにぶつけ、ベルファストは苦戦を強いられていた。

 

「やっぱりキツそうね……一体どこまで耐えれるのかしら……」

 

 これを見ていたリアさんも同情する様に言っていた。俺の見立てでは、1分持ち堪えれば良い方だ。

 今ここで、1対1の状況作り出せたのは良い。この演習で最も恐れていたのはニュージャージ、エセックス、イントレピッドの火力を合わせられる事だ。

 

 戦艦と空母の火力を全面的に受ければまず勝ち目は無い。その為に今回は機動力重視の戦法を取ったが、これにはリスクがある。それは、誰かがやられるとその場で負けに直結する事だ。今ここで危険なのはベルファスト……つまり、この1分で全てが決まるという事だ。

 

 この1分で突破口を作らなければ、この戦闘には勝てない。

 

 10秒が経ち、まだそれほど状況は変わっていない。

 

 20秒が経つと、ベルファストがニュージャージの火力に押され、艤装にダメージを負った。想定以上に負担がかかっており、そろそろキツそうだ。

 

 40秒が経ち、ベルファストの異変に気づいた島風達が援護に向かおうとするが中々踏み込めずにいた。

 

 50秒が経ち、ベルファストが体勢を崩し、ニュージャージが勝利の笑みを浮かべて主砲をベルファストに向けていた。

 

「これで終わり!」

 

「くっ……」

 

 51秒、52秒……1秒1秒が果てしなく長く感じられ、ベルファストの敗北が決まろうとした。その時だ、突然炎の突きの斬撃がニュージャージに襲いかかり、ニュージャージは咄嗟に加速し、その突きの斬撃を避けた。

 

 ニュージャージは炎が飛んできた方角に顔を向け、向けた先には炎を纏ったレイピアを構えた金剛がいた。

 

「ふぅ、間一髪ですわね」

 

 金剛のおかげでニュージャージーの動きが一瞬止まった。その一瞬のチャンスをベルファストは逃さず、太ももに備え付けられていたホルダーからナイフを取り出し、すかさずニュージャージーの艤装に投げつけた。

 

 鋭く投げつけられたナイフはニュージャージーの主砲近くの装甲に突き刺さった……だけだった。

 艤装にダメージらしいダメージは受けておらず、ニュージャージーはピンピンしている。

 

「ふぅ、ちょっとびっくりしたけど残念だったね。じゃあこれでおしまい!」

 

 万策尽きたベルファストに主砲を向けたニュージャージーだが、そんな状況でベルファストは不敵な笑みをこぼした。

 

 ベルファストが浮かべた笑みは、まるで思い通りに物事が進んだ時に初めて見せる嗜虐が滲み出る笑顔だった。一緒本当にベルファストなのか疑う程に、ちょっと悪っぽい顔をして、思わずギョッとした。

 

「撃っても構いませんが、そうなった場合貴方は無事ではすみませんよ」

 

「ん? そんな事言って私を動揺させようたってそうはいかないよ!」

 

 ベルファストの忠告を無視してニュージャージーが主砲を放ったその瞬間、四門ある内の二門の主砲の砲塔がいきなり爆発した。

 爆発自体はそこまで大した事は無かったが、主砲が破壊された事による動揺はさすがのニュージャージーでも隠せ無かった。

 

「うわっ!? なんで!? ……って、まさか!」

 

 何かに気づいたニュージャージーはさっき投げつけられたナイフの位置をもう一度確認すると、ナイフは何故か電気を帯びていた。

 

 電気なんていつの間に帯電させたと思ったが、あの編成なら行ける。何故なら、ニュージャージーの編成には、エルドリッジがいるからだ。

 

 エルドリッジは体から発せられる電気を操れる性能を持っており、それは今回の戦いでも活かしている。その性能を逆手に取り、ベルファストはいつの間にかエルドリッチから発せられる電気をナイフの金属を使って帯電したのだろう。

 

 その電流が主砲にも伝わり、ショートして爆発したという事だ。電流が弱かったせいで主砲2門しか機能停止させられなかったが、それでも充分すぎる成果でもある。

 

 それどころか、ベルファストの胆力と集中力を賞賛するべきだ。ニュージャージーが隙を見せたとは言え、正確にあの場所にナイフを投げつけ無ければナイフの投擲は無意味に終わっていた筈だ。それを狂いなく正確に投げられるのはそう簡単な事では無い。

 圧倒的な集中力と逆境を覆す精神力がどれだけ必要なのか……それは想像に絶する物だ。

 

「でもたかが主砲が2つやられただけだよ! 私にはまだまだ武装があるからね」

 

「申し訳ございませんが、ニュージャージー様はしばしここでお待ちください」

 

 次にベルファストは流れるようにして煙幕弾を放ち、ニュージャージーの周りには白い煙が立ち上った。いくらニュージャージーでもあの煙幕の前では迂闊に動く事は出来ず煙幕の中に閉じ込められた。

 

「皆様、これより援護に向かいます」

 

 直ぐにベルファストは皆の援護に向かった。まず最初に向かったのは霧島の方であり、霧島はエセックスを足止めしていた。

 ベルファストへイントレピッドの逃げ場を失う様に立ち回り、イントレピッドを徐々に追い詰めていた。

 

「っ……ベルファストさん、常に私の死角に……!」

 

「隙あり!」

 

 ベルファストに気を取られたエセックスの隙をついた霧島はエセックスとの距離を詰め、刀でエセックスの艤装を斬り伏せた。

 

「私の刀捌きも中々だろ?」

 

『イントレピッド、大破にゃ!』

 

 大破認定の為、イントレピッドはこれで戦闘には介入出来なくなった為、数的有利が生まれた。残りは5人。霧島とベルファストはそれぞれ別の場所に援護に向かった。

 霧島は金剛の方に、ベルファストは駿河の方へと向かっていった。

 

 こうなってしまえば後はもうどうにでもなる。空母1人を失い、残っているエセックスも2人相手では艦載機を出す暇も無い筈だ。

 

「……ベルファスト、良い動きしてるわね。相手の死角を付きながらも、味方が援護しやすい立ち位置にいる。まるで周りにいるKAN-SENの動きが分かっているようね」

 

 リアさんの言い分は正しい。ベルファストの立ち位置は実際にかなりよく、エセックスは苦戦を強いられていた。

 

「いや、事実分かっていると思いますよ」

 

「何ですって?」

 

 確信的な俺の答えにリアさんは戸惑いながらも問いかけた。

 

 ベルファストは完璧な奉仕を皆に提供するために、全てのKAN-SENの好みや嫌いな物を把握している。そしてそれは戦闘も例外じゃない。

 一人一人の得意戦術、苦手な敵のタイプ、動きの癖、連携時の動きを全て把握している。

 

 俺なんかよりも、よっぽどKAN-SENの事を理解しているのがベルファストだ。相変わらず完璧主義が過ぎるメイドさんだ。

 

 そしてその完璧は誰の目にも届かない努力で成り立っているのも知っている。いつかの深夜、ベルファストが落とした物を渡そうとベルファストの部屋に行ったその日、俺は見たんだ。

 扉の隙間からベルファストが新しく配属されたKAN-SEN達をまとめた資料を大量の付箋やメモをしており、ベルファストがどれだけ皆の事を調べているのが分かる。

 

 あの動きと、今までの奉仕はこの努力があってこそだが、それを知るのは少ない。

 

「よーし、このままどんどん行きますぞ!」

 

 ベルファストの活躍に激励された島風は、ラフィーにも負けない機動力を武器に距離を詰めて言っている。

 

「これ、ちょっとピンチ……かも」

 

 ラフィーもこれには本気で答えるように、アクロバットな動きと絡めながら二丁拳銃の形を島風に向けて放っていた。

 

 まるで重力を無視するかのような動きに島風は翻弄され、思うようにラフィーとの距離は縮まらず、しかもラフィーに対して攻撃は当てられて居ない。

 

 逆にラフィーからの攻撃には島風は少しづつだが当てられている。このままどんどん攻撃を受けてしまえば、いずれは大破認定されて島風は退場となる。

 

 それを察知した島風は動きを止めてしまい、刀でラフィーの銃弾を防ぐ体勢に入ったが……ラフィーはその時を待っていたかのように銃弾の連射を早めた。

 

「ま、まだ速くなるのですか!?」

 

「島風、さんざんラフィーを追いかけ回したから。そのお返し、たっぷりする」

 

「お、大人気なさすぎる!!」

 

 限界を知らないラフィーの連射に対抗するように島風は刀で銃弾を切り続けるが、それももう長くは持たない。そもそも刀で銃弾を切る行為は刀の打ち所を間違えれば直ぐに刀が折れる少し危険な行動だ。

 

 高雄さんや江風さん等、刀を持っているKAN-SENがたまに砲弾や銃弾を斬ってはいるが、あれは長い事鍛錬し続けた結果身につける至難の技だ。島風も何とか銃弾を切っている様には見えるが、あんな乱雑な斬り方じゃ刀がもう持たない。

 

 だがそれ以前に足を止めた時点でラフィーの思惑通りだ。ラフィーは足を止めた島風に向かって魚雷を向かわせ、向かってくる魚雷に気づいた島風は、もうどうする事もできなかった。

 

「ちょわぁぁぁ!! 魚雷が来ましたー! だけど動けませーん!」

 

「ゲームオーバー……」

 

 やがて魚雷は爆発し、巨大な水柱が立って島風の姿が見えなくなり、島風の大破認定は確定かと思われたが、明石がまだその判定を下してない。

 

 ラフィーは目を凝らして島風のいた位置をじっと見ると、島風の前には駿河が立っていた。

 

「全くもう……あんたのせいで少し目立ったじゃないの

 」

 

「しゅ、駿河殿〜!!」

 

 身を呈して守ってくれた駿河に島風は感激の涙を流して駿河に抱きついた。

 

「あぁもう! 離れて! 今はラフィー先輩をどうするか考えてよ全く……ベルファストさんに言われて貴方をサポートする羽目になったんだから、しっかりしなさい」

 

「はい! ではラフィー先輩、覚悟してください!」

 

「ん……潰す。けど、さっきので銃が焼き付いた」

 

 ラフィーの二丁拳銃の銃口が赤くなっており、やはりさっきの超連射はかなり武器に無理をさせた攻撃だった。

 それでもラフィーは自前の機動力で2人に対抗するが、武器の大半を失い、援護も見込めない状態では流石のラフィーもキツそうだ。

 

 島風が接近し、体勢を崩した所を駿河の砲撃でトドメを刺し、ラフィーは大破認定された。

 

「きゅぅ……」

 

『ラフィー、大破認定にゃ!』

 

 更にベルファストの活躍により、ニュージャージー除くユニオンKAN-SENは大破認定をされ、残りはニュージャージーだけだ。残り時間も少なく、後はこのまま逃げ切れば損傷の差でこっちの勝ちにはなるが……

 

「勝ち逃げはさせないよ!」

 

 ニュージャージーがようやく煙幕から逃れたその時、ニュージャージーが太陽を背にして副砲含む砲塔を全てベルファスト達に向けたその姿は、まさにドラゴンだった。

 

「ピンチからの大逆転は男の子だけじゃなくて……皆大好きだよねっ!!」

 

 さらにそのドラゴンに翼が生えるかの如く、ニュージャージーの艤装背後に青い光が伸び、明らかに全力攻撃の合図だった。

 

「全砲門解放! フルバーストッッ!!」

 

 後の事など考えてない損害度外視の一斉射撃は、例えるなら龍の怒りだった。

 ニュージャージーしか持ちえない特殊砲弾である赤黒い砲弾と青黒い砲弾が織り成す弾幕に逃げ場無く、受ける事を余儀なくされた。

 

 だが先程の戦闘で全員が疲弊しきっており、ニュージャージーの攻撃を受け入れる術は……無い。

 

 やがてニュージャージーの圧倒的な弾幕はベルファスト達のいる所を焼き付くし、模擬弾のはずなのにその威力はほぼ通常弾と変わらないようにも思えてきた。

 

 そんなニュージャージーの力の前に先程まで歓声をあげていた観客達が唖然としており、ベルファスト達まで心配する人まで出てきた。

 

『にゃ、にゃんてすごい能力にゃ……圧倒的すぎるにゃ』

 

 実況の明石さえもニュージャージーの力に恐れる様な声色で震えていた。これがユニオン最強の力か……

 

「まだ終わってません!」

 

 砲弾の爆煙から聞いた事ないような鋭い声を上げながら飛び出したのは、なんとベルファストだった。白いメイド服が汚れ、目に見える損傷もあり、満身創痍に近い物だった。

 

「へぇ、耐えたんだ。凄いね……」

 

「皆様のお心遣い故です」

 

「ふふ、後は頼みましたよ。メイド長」

 

「ま、任せます〜!」

 

 ベルファストの背後にはニュージャージーの攻撃をまともに食らった島風達が倒れており、全員が大破認定を受けていた。恐らくだがベルファストの事を全員で庇ったんだろう。これで残りはベルファストとニュージャージーだけとなった。

 

 残り時間は少ないが、ベルファストとニュージャージーの性能差は歴然だ。下手に逃げれば狙い撃たれてしまう。

 

 故にベルファストの取る行動は一つだけだ。

 

 ベルファストは籠手の砲塔をニュージャージーに向けて放ち、榴弾は直撃したがニュージャージーはビクともしなかった。

 

「ふふん、そんな攻撃効かないよ」

 

「ですが私はご主人様に勝利を捧げる為に戦います」

 

 どれほど性能に差があっても、ベルファストは奥せずニュージャージーに対して引かなかった。ニュージャージーに向けられる鋭い眼差しからは、いつものベルファストでは見られない『熱意』という物が感じられた。

 

 冷静で怜悧な性格のベルファストとは縁遠いと思わせ? 『熱意』はニュージャージーの戦意に火をつけ、ニュージャージーも妥協なくベルファストに挑む姿勢をとった。

 

「ふーん? じゃあ見せてよ! メイドの底力を!」

 

「言われなくともご提供いたします」

 

 まずベルファストが先手を取り、とにかく主砲と榴弾をニュージャージーに撃ち込んだ。だが、ニュージャージーの装甲を突破する手段は限られている。

 

 ニュージャージーはそれを注意すれば良いが、ベルファストは違う。恐らく1発でも受ければ大破認定される。

 つまり、ベルファストが勝つには1発も当たらずニュージャージーを大破しなければならない。

 

 一度のミスが命取りの状況で精神的疲弊が凄まじいが、ベルファストの表情からその心配は無さそうだ。

 だが、今はなくても制限時間が迫る度にどんどん疲弊していく筈だ。

 

「ほらほら! どんどん行くよ!」

 

 ニュージャージーも最後の力を振り絞るように主砲と副砲を織り交ぜ、ベルファストの逃げ道を塞ぐようにして砲撃を続けている。

 

 それでもベルファストも負けじと攻撃を続けるが、ニュージャージーの装甲を突破する事は出来なかった。

 

「……やるしかなさそうですね」

 

 ニュージャージーが主砲の補充を開始したその瞬間、ベルファストは艤装の出力を上げ、全速力でニュージャージーと距離を近づかせた。

 

『おおっとベルファストがここで仕掛けてきたにゃ!』

 

「無茶だベルファスト!」

 

 ベルファストに聞こえるはずが無い叫びを上げ、ベルファストは無謀にもニュージャージーの距離と縮めた。

 多分至近距離の砲撃なら攻撃が通ると考えただろうけど、それにしては無茶がすぎる。

 

「無謀な突撃……って訳じゃ無さそうね。好きよ! そういうの!」

 

 勿論ニュージャージーは火力を前面に集中させ、ベルファストに向けて隙のない弾幕を打ち出した。

 1発の被弾も許されない状況で雨のような砲撃に、ベルファストは僅かに残っている隙間を縫うように動き、ニュージャージーの弾幕を避け続けていた。

 

 雨の弾幕を避け、ついにニュージャージーとの距離が目と鼻の先にまで近づいたと同時に、ベルファストは個手の砲塔と主砲をニュージャージーに向けた。

 

「トドメです」

 

 ベルファストが主砲を打ち出し、砲撃の音が鳴り響き、誰もがニュージャージーの負けを悟った。だが、皆がその後ニュージャージーの強さを改めて思い知らされる事になるとは思わなかった。

 

 ベルファストは確かに榴弾を放った。だけどそれはニュージャージーに当たらなかった。

 ニュージャージーは打ち出した瞬間、咄嗟に右手でベルファストの腕を掴んで銃口を下に向け、同時にベルファストの主砲を避けた。しかも、最低限の動きだけで。

 

 流石のベルファストのこれには驚愕し、見開いた目でニュージャージーを見た。

 ニュージャージーは迎撃で一旦右手を離し、そのまま拳を作ってベルファストに殴り掛かり、ベルファストは腕をクロスさせてニュージャージーのパンチを防御したが、戦艦のパワーに押し負けてしまい、ベルファストは籠手の金具が壊され、そのまま吹き飛ばされてしまった。

 

 飛び石の様にベルファストは海の上を跳ねながら倒れ、海の上でそのまま倒れ続けてしまった。

 

「ふぅ……凄いわね貴方。軽巡洋艦なのにここまで追い詰めるなんてね」

 

『ベルファスト、大破にゃ! これで指揮官チームのKAN-SENは全艦大破したので、ユニオンチームの勝利にゃ!』

 

 観客達、特にユニオンの人たちはニュージャージーを称える賞賛を上げ、ニュージャージーはその喝采に応えるように大きく拳を突き上げ、手を振った。

 

「……負けてしまったわね」

 

 対面にいたリアさんが慰めようとしている顔をしていたが、心配はいらないと笑顔で返事をした。慰める必要は無い。皆はよく頑張ってくれたし、ユニオンの皆も強かった。ただそれだけのことだ。

 

 端末の電源を落とし、飲み物の代金をテーブルに置いて俺は席に立った。

 

「皆の所に労いに行くのね。大変ね、勝ったチームには褒めてあげて、負けたチームには慰め……板挟みね」

 

「あはは……まぁ、分け隔てなく接します」

 

「分け隔てなく……ね」

 

「ん? どうしましたか?」

 

「何でもないわよ。早く行ってきなさい」

 

「わ、分かりました」

 

 リアさんが一瞬何か言いたそうな顔をしていたけど

 特に気にせずみんなの所に向かった。

 

「……その平等に接する態度で修羅場を起こさなければいいんだけど」

 

 

 

 

 

 演習場にたどり着き、最初に出会ったのはユニオンのチームだった。皆を見つけて声をかけると、ニュージャージーが先に俺の事を見つけ、場所を知らせるように手を振った。

 

「指揮官ー! 私たち勝ったわよー!」

 

「うん。おめでとう。皆もお疲れ様」

 

「ですがニュージャージーさんありきの勝利なので素直には喜べませんね……」

 

 エセックスがそう言って落ち込んでいたけど、俺はそんな事ないと言いながら肩を叩いた。

 

「ううん。エセックスも、イントレピッドもラフィーもエルドリッジもハムマンも頑張ったからこその勝利だ。1人だけの勝利なんて無いんだから」

 

 実際、1人の力だけで勝てる戦いになんて無い。そんな事できるとしたら、神様ぐらいだ。

 

「指揮官。そろそろ自分のチームの所に行ったらどうですか?」

 

「そうそう。勝者のエールはもう良いから、早く慰めてに行ってきなって」

 

 エセックスとニュージャージーにそう言われて背中を押され、皆笑顔で送り出してくれた。その事に感謝し、急いで島風達の所に行く。

 

 島風達の姿が見えたと同時に、あっちも俺の姿を見ると返事をするように手を振ってくれた。

 

「あ、指揮官。すみません、島風達負けてしまいました……」

 

「ううん。いいんだよ。皆、お疲れ様……って、あれ。ベルファストは?」

 

 一人一人に労っていくと、俺はようやくベルファストが居ないことに気が付いた。周りを見ても居ないし、すれ違ってもいない。どこにいるんだと探していると、同じロイヤルメイドのシラが肩を叩いて教えてくれた。

 

「メイド長ならお召し物を取り替えた後直ぐにお客様方の奉仕に行きましたよ」

 

「えぇ!? あんな動きした直後なのに!?」

 

 どう考えてもさっきの演習で運動量が多かったベルファストの疲労は計り知れない。にも関わらずベルファストがいつも通り完璧主義の奉仕をやろうものなら、ベルファストと言えども絶対に倒れるに違いない。

 

 だけど、仮に見つけて止めようにもベルファストは言葉だけ聞いてそのまま仕事に戻るに違いない。どうした物か……

 

「ご主人様、もしメイド長を止めたいのでしたら、こう言えばよろしいかと」

 

 そしてシラは俺の耳にある言葉を囁いた。

 

「……本当にそれでベルファストの事休められるの?」

 

「はい。大丈夫ですよ、ご主人様ならね。メイド長は恐らく」

 

「えぇ……?」

 

 確信めいた笑みを浮かべたシラに少し疑いながらも、今日の演習はこれで終わりだ。ベルファストを休ませるためにも、ベルファストを探した。

 

 ベルファストを探すのは以外にも簡単だった。ロイヤルメイドの目撃情報が多く、最後に見たのはパーティー会場だった。

 

 パーティー会場には、演習の終わりを祝う為にKAN-SENや人が多く交流しており、その中には各陣営の代表者がいた。

 

 さて、ここからベルファストを探す訳だけど、如何せん人が多い。ここでベルファストを探すのは骨が折れるけど、人探しは得意だ。だって演習のメンバーを探してるんだから。

 

「とは言いつつも……大声とか出す訳には行かないし」

 

 人混みを避けながらベルファストを探し、ふと白髪のメイド服のKAN-SEN、間違いなくベルファストだった。

 ベルファストに足を運ぼうとした時、隣から背の高い男性とぶつかってしまった。

 

「あぁ! すみません!」

 

「指揮官ならもっと周りを見ろ」

 

 仰る通りの言葉を真に受け、謝りながらぶつかった人を見た。最高級品のスーツとネクタイ、ブーツと身にまとっている物が全て綺麗に着こなしており、そのせいか少しの圧迫感までもが感じられた。

 

 そして、その顔はどこかで見た顔だった。銀髪の髪に、氷のような冷たい目だけど、どこか優しさ見たいなのも感じられた目だった。

 

「えと……本当にすみません」

 

「上に立つものが頭を下げるな。みっともないぞ」

 

「いや、でも迷惑かけたのは俺ですし。あ、怪我とか無いですか?」

 

「いらん心配だ。次は気をつけろ」

 

 そう言って男の人は去っていってしまった。ちょっと威圧的で、どこかで見たような顔だった。

 うーん、結構顔合わせてしている様な気がするけど誰だろうか……。頭を捻って思い出そうとすると、後ろから肩を叩かれた。

 

 後ろに振り返ると、そこには探していたベルファストがいた。

 

「失礼しますご主人様。先程、ベリタス様と会話していたのを見て声をかけさせて貰いました」

 

「ベリタス?」

 

「ベリタス・カービス。最近になってユニオンの上層部に配属された方だと聞いております」

 

「カービス? ……って、まさか」

 

「はい。ジン様のお父上です」

 

「あれがジンさんのお父さん……」

 

 確かにジンさんと似ているところはあったけど、性格はまるっきり違った。冷たくて、何者も通さない態度はまるで鉄の様だった。

 詳しい事は聞いてないけど、ジンさんとベリタスさんは不仲らしい。もしジンさんにこの事を話したらどうなるのかと考えたら、安易に話す気はしない。

 

「ところでご主人様。こちらに何か御用でしょうか?」

 

「あぁそうだった。ベルファストが居なかったら探していたから……えっと、演習お疲れ様」

 

「労いの言葉ありがとうございます。ですが、ご主人様に勝利を捧げる事は適わず……」

 

「良いんだよ。それよりもベルファスト、演習で疲れんたんだから早く休……」

 

 早く休んで。という言葉を行ってしまったらベルファストはてこでも動かない事を考え、俺は咄嗟に口を閉じてシラが言ってくれた言葉を思い出した。

 

 本当に言っていいのか分からないけど、ベルファストを休ませる為に俺は声を上げた。

 

「……今日はさ、ベルファストと一緒に居たいな〜ってなんちゃって……あはは」

 

「…………」

 

「…………あ、あの……ベルファストさん?」

 

 まずい、ベルファストが固まった。やっぱり変な事言ったから? それとも言い方とか悪かった? どれが間違ったのか分からないからますます混乱し、思わず泣きそうになる。頼むからベルファストから何か反応をしてくれと願い、ベルファストを見つめると、ようやくベルファストが反応してくれた。

 

「分かりました。ではご主人様、お部屋でお待ちください」

 

「ふぇ? う、うん。分かった」

 

「絶対ですよ?」

 

 ベルファストは妖しげに笑った後、直ぐさま別の場所に行ってしまった。とにかく俺はベルファストに言われた通り部屋に戻り、そこでベルファストを待った。

 

 

 _数分後

 

 部屋で待っているとドアのノック音が聞こえ、どうぞと声をかけると、ベルファストがやって来た。いつも通りのメイド服のまま部屋に入り、俺の前に通り過ぎた。

 

 通り過ぎたベルファストからは花のいい匂いがして、少しドキッとしてしまった。そのままベルファストは部屋の奥のベッドの上に腰かけ、そのままメイド服の上をはだけさせて……ん? 

 

「待って待って待って!!?? なんでベルファスト服を脱ごうとしてるんだ!?」

 

 急いでベルファストの所に飛び込み、服を脱ごうとしている手を止めると、ベルファストはすました顔をしていた。

 

「ご主人様が私と過ごしたいと仰ったので」

 

「それがなんでその行動!?」

 

「あら、そういった意味では無いのですか?」

 

「そういった意味って……っ、違う違う! 俺はただベルファストの事休ませたい一心で……」

 

 ベルファストが言った意味を理解してしまった俺は顔から火が出るほどに赤くなり、訳も分からずそのままソファにダイブした。

 

 こうなる事を予想してシラはあの時笑っていたのだろうか。とにかく、ベルファストとはそういう官能的な事をするつもりは無い。誤解を招いたのなら謝らなければならない。

 

「ベルファスト、誤解を招いたのなら本当にごめん。だから……」

 

 振り返った瞬間、ベルファストが目の前に立っており、若干のホラー展開で肩が上がるほど驚く間もなく、ベルファストは膝の上に乗り、ベルファストの顔が目と鼻の先まで近づいた。

 

「へ、ベルファスト?」

 

「恐らく、シラの入れ知恵でしょう。ご主人様の仰った言葉に深い意味が無いのは理解しています。……ですが」

 

 ベルファストは俺の胸に寄りかかった。

 

「その気が無いにせよ、言葉を受け取り方は相手次第です。安易に意味深な言葉を出すものではありません」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

「悪いのはシラですから。ですが、言葉を発したのはご主人様です」

 

 ベルファストが顔をゆっくりと耳元に近づき、吐息混じりの囁きを浴びせた。

 

「……責任は取ってくださいね?」

 

「しぇ、責任!? ……って……」

 

「女性の口から言わせるのは、紳士のする事ではありませんよ」

 

 頭の中には、モヤがかかっているような映像が浮かびあがり、自分がベルファスト対してどんな期待をしているのが嫌でも分かり、いやらしい自分を恥ずかしがった。

 

「……どうしますか?」

 

 ベルファストの声がまるで理性の氷を溶かす火の様にも感じ、心臓が飛び出してしまう。逃げようにもベルファストが膝の上に乗って対面しているから逃げられない。

 

「えっと……」

 

 言葉が出ないどころか、声すらも出なかったその時、この空気を壊すように勢いよく扉が開かれた。

 

「ハーイ指揮官! やっぱり言葉だけじゃ足りないから態度で勝利を祝って欲しいから来ちゃっ……た」

 

 扉をこじ開けたのはニュージャージーで、この光景を見たのもニュージャージーだった。

 俺の膝の上に乗っているベルファストを見ると、目を丸くさせ、ユニオン最強のKAN-SENと謳われるのが嘘のような腑抜けた顔をしていた。

 そしてそんな顔のままニュージャージーは扉の鍵を閉め、俺の後ろを取るようにした。

 

「ふーん、やっぱりそんな関係だったのね。でもずるいわよ、私が勝ったのに」

 

「いや、これは違うくて……」

 

「ご主人様から一緒に過ごしたいと言ったのにですか?」

 

「それはシラに言われて……」

 

「ともかく、私も頑張ったんだからご褒美とか欲しいな〜」

 

 ニュージャージーが頬をツンと突っつき、ベルファストも負けじと俺の髪を撫ではじめた。

 

「ご主人様は言ったことを蔑ろにしませんよね?」

 

「指揮官……いや、ハニーは勝者にはちゃーんとご褒美くれるわよね?」

 

「う……う──ーん……」

 

 こうして、2人のKAN-SENの板挟みの時間が始まり、その頃はどのようにして過ごしたか、あまり覚えられなかった……。

 

 

 

 

どのテネリタスが好き?

  • ロリママ創造者の2代目 ラハム
  • 人類最強の天然3代目 アトラト
  • 食いしん坊な絶対守護者4代目 シーア
  • 武士道と極める騎士5代目 ロドン
  • 風のように自由なガンマン6代目 セイド
  • 完璧で究極のアイドル7代目 マリン
  • おっとり包容力で全知全能の8代目 ミーア
  • 元人間のセイレーン 10代目マーレ
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