もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜 作:白だし茶漬け
連合演習も中盤に差し掛かり、今日の演習に島風達の演習は無い。言うなればお休みだ。
島風と駿河はどうしているのだろうか。2人で休みを満喫しているのか、それともこの前のニュージャージーのチームに負けた事をきっかけに鍛錬を積んでいるのか……だけど、様子を見るのは後だ。
今日この日は見届けたい演習があった。
その演習とはアイリスとヴィシアとの演習だが、この演習には、リシュリューとジャン・バールが出てくる。
いわばアイリスとヴィシアの代表者同士の演習でもあり、姉妹艦同士の戦いという訳だ。
そんな演習は俺だけじゃなくて全員が注目していた。アイリスとヴィシアは元々は同じ陣営でありながらも内部分裂で2つの陣営に別れてしまった陣営だ。
しかも、俺はアイリスとヴィシア……詳しく言えばサディア辺りの交流はそれ程無い。だから、この演習が1番気になると言っても過言では無い。
だから見届けたい。演習とかの勝敗では無く、姉妹としてこれからどう向き合うのかを。
その為に俺は、リシュリューとジャン・バールの元に向かった。先に出会ったのは、ヴィシア。つまりジャン・バールの方だ。
ヴィシア陣営のホテルの外の日陰の木にハンモックをかけ、そこでジャン・バールが寝転がっていた。心地良さそうに目を閉じて寝息をたてているから、声をかけるのは後にしようと考えて離れようとした時、ジャン・バールは目を開けた。
「オレに何か用か?」
「あ、起こしちゃった?」
「別に寝ていない。目を閉じていただけだ」
ジャン・バールは俺と目を合わせずに話し、背を向けてしまった。
「ええと、演習頑張ってね」
「それだけを言う為にここに来たのか?」
「悪い?」
「物好きなヤツだ。俺との関わりは無いのにな」
「だから知りたいな」
「チッ、用が済んだのならさっさと消えろ」
「分かった」
休んでいる所を邪魔したのは俺だから強くいえず、この場から立ち去ろうした。
「……ん、っ! うわっ!?」
「ジャン・バール!?」
ジャン・バールの叫びを聞いて咄嗟に振り返ると、ジャン・バールがハンモックの上で何かに驚いたかの様に暴れ、ハンモックが激しく揺れてジャン・バールを振り落とそうとしていた。
急いでジャン・バールの元に走り出し、ハンモックから落ちたジャン・バールを受け止めた。
急いで受け止めた物だから綺麗に受け止めることは出来なかったけど、体全体を使って何とかジャン・バールに怪我は無かった。
「大丈夫?」
「気にするな……何かがオレの顔に付いて驚いただけだ。いい加減離せ」
ジャン・バールは俺を跳ね除け、ジャン・バールに付いた何かを探そうと周りを見た。
周りを見ると、黄色い羽の小さな蝶が飛ぶのが見えた。多分、あの蝶がジャン・バールの顔に付いたんだろう。
「虫か……ちっ、鬱陶しい。さっきもオフニャがまとわついて逃げてきたが、一体何なんだ」
「そのオフニャって、今ジャン・バールの足に擦り寄っているやつ?」
ジャン・バールの足元にはいつの間にか大量のオフニャが靴元に擦り寄っていた。
「にゃす〜」
「きゃっ!」
(きゃっ!?)
ジャン・バールの男勝りの見た目からは到底想像出来ない裏声を上げ、オフニャから離れた。そして、自分の裏声に気づいて口を閉じ、その声を聞いた俺を睨み続けながら近づき、俺を近くの木まで押し寄せた。
「……今のは忘れろ」
「えっ? いや、うーん……難しいかも」
「何がなんでも忘れろ!! そして誰にも言うな! 言ったらいくら指揮官だろうと殺す! 良いな!!」
言葉さえ押し返す圧力に負けてしまい、オレは静かに頷いた後に、ジャン・バールは力強い足音を立てながらこの場から去った。
ジャン・バールが居なくなって少し寂しげなオフニャの1匹を抱き抱え、慰めるように頭を撫でた。
撫でられたしま模様のオフニャのぶち丸は撫でられて気持ちが良いのか、喉を鳴らしていた。
「怖いな〜ジャン・バール。ねぇ?」
「にゃす? にゃーすにゃす」
オフニャは体を横に振った。それもそうだ。俺も本気でジャン・バールの事を怖がってはいない。
ジャン・バール……色々な事情から、未完成のまま出撃させられた記録を持つKAN-SENだ。そんなカンレキからか、周りの人類たちからの見る目は少し厳しい。
周りの圧に負けないために、強気な性格になったと考えれば、無理はないと思う。
「だからと言って、姉妹同士で敵対する事までになるのは違うだろうにね……」
誰かに言う事も無い独り言を言った途端、草むらが揺れ動いたガサッとした音が鳴り、その方向に警戒した。
「誰!?」
抱いているオフニャのぶち丸を下ろし、手持ちの銃を音のなった方向に向けると、隠れていた人は観念したのか姿を現した。
草むらから出てきたのは白を基調としたドレスに、腰から伸びる赤いドレスを着ていたKAN-SEN、アイリスの代表的存在のリシュリューだった。
「り、リシュリュー?」
「すみません、盗み聞きするつもりはありませんでしたが……」
知り合いと分かった瞬間銃をしまい、リシュリューと顔を合わせた。
「ジャン・バールの迎え?」
「演習前に話をしたかっただけです。アイリスの名に恥じない戦いをしようと思った所、指揮官が居たので」
「あー……ごめん」
「いえいえ、私が一足遅かっただけですから。……あの、ジャン・バールと何を話したのですか?」
「実はあんまり喋れなかったんだ」
「えぇ。見ていましたから」
「うへぇ、恥ずかしい所見られちゃった」
照れ隠しで笑いを浮かべ、リシュリューも釣られて笑ってくれた。こうして会話していると、リシュリューって結構固いイメージがあったけど、それ程でも無かった。
そんなリシュリューはさっきからそわそわしており、俺の周りで寝転がっているオフニャの事をチラチラと端目で見ていた。興味が無い振りをしているけど、こんなに近ければ流石に気づく。
適当なオフニャを持ち上げ、リシュリューに近づいて見せた。
するとリシュリューは驚きながらもオフニャのつぶらな瞳を見て目を輝かせた。
「……触る?」
「にゃす〜」
「はぅ! し、失礼します!」
まるで心を撃たれかの様な反応をしたリシュリューは辛抱たまらず抱いていたオフニャを手に取り、そのモフモフを堪能した。
「はぁ……心地良いです」
「オフニャ……というか、猫が好きなの?」
「はい。1度で良いので沢山の猫を飼いたいのですが……生憎立場上そのような事は出来ないので」
「じゃあ、演習が終わったらオフニャカフェでも行ったら?」
「オフニャカフェ……ですか?」
「うん。なんか明石が作った施設でさ、結構人気なんだ。なんと、あのビスマルクも行ったんだよ? 信じられる?」
「あのビスマルクさんがですか……?」
そう、あのビスマルクかだ。意外と可愛いもの好きなのか、それとも単に猫好きなのか真意は分からないけど、その事実は確かだ。オイゲンも一緒にいたから間違いない。
オフニャと戯れるビスマルク……想像もできなかった。
「では、後で足を運びましょう。その前に、ジャン・バールとの演習に集中します。そして、初めに貴方に言われた通り、自分の気待ちをジャン・バールにぶつけて見ようと思っています」
「うん。きっと、ジャン・バールも応えてくれる」
リシュリューは一礼した後、この場から去って演習場へと向かっていった。俺も後を追うようにここから離れ、演習場が見える所へと足を運んだ。
「そうだ」
あれから数十分後、いよいよアイリスとヴィシアの演習が始まろうとしていた。今回は代表者同士の戦いかつ姉妹艦の戦闘でもあるから例に漏れず注目の的になっていた。
「さて……どうなるんだろう」
「気になる所ですね」
いつの間にか隣にはネージュさんが立っており、俺は幽霊でも見たかのように驚いてしまった。
「おぉネージュさん! びっくりしたぁ……」
「あぁごめんなさい。近くに居たので、声をかけました」
「まぁそれはいいんですけど……」
「ところで、優海さんはこの演習の事をどう思っていますか?」
「うーん、正直分かんないんですよね……アイリスとヴィシアの指揮をした事無いし……どんな感じなんですか?」
「アイリスの方々はリシュリューさんを中心とした連携が得意で、ヴィシアは個人戦法が得意ですね。1対1の戦いになるのでしたら、ヴィシアの方が有利かと思いますね」
連携のアイリスか単騎のヴィシア……恐らく勝負を決めるのは初動だろう。
リシュリューを中心とした戦法が得意と言うのなら、まずヴィシアが狙うのはリシュリューだ。リシュリューを引き離す事さえ出来れば、ヴィシアの有利は必須だ。
だが、逆にリシュリューを引き離す事が出来なければヴィシアはキツイだろう。
『さぁ、これよりアイリス陣営対ヴィシア陣営の対決にゃ! 今回は代表者同士の戦いでもあるから見ものにゃ! それでは、演習開始にゃ!』
明石とアナウンスと同時に演習開始のブザーが鳴り、ヴィシア艦隊がいきなり突撃をかけてきた。
「やっぱり速攻で勝負を決めにきた! ……けど?」
おかしい、ジャン・バール以外のKAN-SENはリシュリューを狙っては居なかった。まるで最初からリシュリューに眼中に無い動きだ。
何かの作戦なのか……? だがここでまた不可解なことが起こった。何故かアイリスはリシュリューを守ろうとせず、逆にリシュリューを1人にさせるように立ち回った。
「……まさか」
いや、この行動はそれしか考えられなかった。アイリスのKAN-SENとヴィシアのKAN-SEN達は、リシュリューとジャン・バールの一騎打ちをさせたがっていた。
「リシュリュー様、貴方に光の加護があらんことを……」
「ええ。ありがとうサン・ルイ」
「ジャン・バール、しっかりと言いたい事を言えたら、ご褒美として美味しいお菓子をご馳走するわ」
「要らねぇよ。他の奴らを頼むぞ、ダンケルク」
これでリシュリューとジャン・バールの一騎打ちとなった。2人は先手の砲撃をせず、ただ無言で見つめるだけだった。
「こうして前に立ち合う事はいつぶりでしょうか」
「オレとアンタが敵対したあの日だ」
「……そうでしたね」
「さっさと始めるぞ。こんな所で話し合う為にここにいるわけじゃ無いだろ」
「ええ。この艤装の姿を現し、武器を手に取る事となれば指し示す道は1つ」
リシュリューはアイリスの紋章を描かれた旗を、ジャン・バールはヴィシアの紋章が描かれた旗を振りかざし、その旗を海の上に突き立てた。
「私の名はリシュリュー! 天の加護がある限り、恐れることはない!」
「オレの名はジャン・バール! ヴィシアの精強にして……聖なるアイリスの名を背負っているものだ! オレの行く道はオレが照らす!」
突き立てた旗が海風で激しくなびいたのが合図となり、リシュリューとジャン・バールは同時に砲撃を放った。
最早演習ではなく、決闘に近い形になったが、リシュリューとジャン・バール……いや、この演習に参加しているアイリスとヴィシアのKAN-SEN達が望んだ形になった。
2人の激しい攻防は続き、以外にもジャン・バールは攻めあぐねていた。それもその筈、リシュリューが剣を振ると、その剣先から炎が鞭の様に伸び、リシュリューの意志のままに動いており、その炎が邪魔でジャン・バールの攻撃が届いていなかった。
「私が後ろで立っているだけの存在だと思いましたか?」
「なめるな!」
ジャン・バールは斧を明後日の方に投げると、主砲をリシュリューに打ち出した。リシュリューは難なくその砲撃を躱し、迎撃の形を取ったリシュリューだが、リシュリューはジャン・バールがさっき投げた斧の接近に気づき、直ぐに斧の回避行動を取った。
だが、本来迎撃でジャン・バールの接近を止めようとした所を回避行動に取っていた為、ジャン・バールの接近を許してしまう。
ジャン・バールはリシュリューと似ているが色が黒の剣を取り出し、ジャン・バールはリシュリューに斬りかかった。
リシュリューも剣を構えて刀身同士の鍔迫り合いとなり、戦闘は拮抗状態になった。
「この程度か!? アイリスの枢機卿!」
「いいえ、ここからです!」
鍔迫り合いを制したのはリシュリューであり、リシュリューはジャン・バールを押し返した。
誰もがジャン・バールの方に分があると思われた分、驚きの声は多かった。
力負けしたジャン・バールはバランスを崩したにも関わらず主砲を放ち、リシュリューの艤装に損傷を負わした。
「っ……やりますね、ジャン・バール。ですが、こちらも負けません!」
負けじとリシュリューが聖炎を纏った榴弾をジャン・バールの艤装に当てると、被弾箇所に炎が乗り移ったかのように燃え盛った。
燃え移った炎は消えず、このままでは大破認定は必須だった。
そうなる前にジャン・バールはまた剣をリシュリューに投げつけ、リシュリューはそれを避けた。その隙にジャン・バールは前に投げた斧を拾い上げ、その前海を割るようにして斧を海に叩きつけた。
力強く海を叩きつけ、衝撃がここまで来るほど強い一撃は巨大な波を引き起こした。波はリシュリューとジャン・バールだけではなく、ジャン・バールが引き起こした大波は今向こうで戦っているアイリス、ヴィシアのKAN-SEN達全員さえも飲み込んだ。
「凄いなジャン・バール……あんな力があるなんて」
「ジャン・バールさんはヴィシア最強ですから。それに、何がなんでも負けたくないのもあるかも知れません」
「姉妹艦……だから?」
「そうかも知れません。ジャン・バールさんは負けず嫌いですから」
「ネージュさんはジャン・バールの事知ってるんですか?」
「家柄でリシュリュー様とジャン・バールさんとの交流自体はありましたから」
そういえば、結構大きな家柄だったっけ。
と、そんな事より、大波が止んでリシュリューの炎を無理やり消したジャン・バールの艤装は片方が使い物にならなくなり、対するリシュリューは大波に呑まれたがほぼ無傷だ。
「味方諸共巻き込むとは……」
「好き勝手やって良いと言われたからな。だから好きなようにやるだけだ」
「ヴィシアの方々に信頼されているのですね」
「当たり前だ。……アンタら以上にな」
「えぇ。貴方達の姿を見れば分かります」
リシュリューは一瞬俺の方に目を向けた。
「指揮官の功績もあり、アズールレーンは再び一つになりました。だからこそ、今こうして貴方の前に立っています。だからこそ伝えたい事があります」
「なんだ?」
「あの時、ロイヤルに亡命し、貴方達を裏切る行為をしてごめんなさい……」
「ロイヤルに……亡命?」
遠くにいる筈のリシュリューの声が耳に入り、そんな事実を気にする事は無くリシュリューの言葉に耳を傾けた。
「鉄血にアイリスを占拠され、アイリスの地を取り戻す為、貴方達ヴィシアを……」
「もう言うな。……アンタはアンタなりに、アイリスの事を思っていたのは知っている。例えオレの艤装が完成したとしても、あの状況を変えることは出来なかった。アンタの言う事は理解出来ている」
リシュリューの亡命と鉄血によるアイリスの占拠……恐らく、俺が指揮官に就任する前に起こった出来事であり、アイリスがヴィシアと2つの陣営に別れてしまった要因の事を指しているのだろう。
鉄血……つまりビスマルクがどんな思惑でアイリスを占拠したのか不明だが、ビスマルクがした事は事実だ。
そして、これが指揮官を必要とした引き金となった。KAN-SEN達の暴動を防ぐため、KAN-SEN達を指揮する者、つまり指揮官が必要なったという訳だ。
ジャン・バールは黒い剣を拾い上げ、リシュリューに剣先を向けた。
「オレはヴィシア聖座のジャン・バール。オレはオレなりにこの信念を……ヴィシアとしてアイリスを背負う者だ!」
「分かりました。では、その信念に真っ向から受けて立ちましょう」
己のプライドと誇りを掲げるように剣を構え、リシュリューもそれに応えるように、剣に祈りを捧げた。
するとどこからともなくリシュリューから光が溢れ、その全ては艤装に集約されリシュリューの艤装は黄金に淡く光り出した。
「この一撃を持って、我が信念を見せます。これが私の……アイリスに対する思いです!」
光を纏った艤装から光り輝く榴弾がジャン・バールに襲いかかった。それに対しジャン・バールはリシュリューと同じ様に黒い光を集め、それを艤装に集約させてリシュリューとは対になるような黒い艤装へと姿を変えた。
逃げずに真っ向から勝負するというジャン・バールの意志の表れた艤装からジャン・バールは黒い榴弾を放ちリシュリューの光の榴弾とぶつかり合った。
一発目は榴弾同士の衝突に終わったが、2人はそれでもなお弾を撃つのを止めなかった。光と影の奇跡が海上に描かれ、ここから見る景色は美しく、周りの人達はその美しさに見惚れ、声を上げる人もいた。
だけど、俺とネージュさんはあの2つの光と影からにはぶつかり合う意志がひしひしと感じられ、見惚れる事も、声もあげることはせず、ただこの戦いの行く末を見守った。
「リシュリュー様、ジャン・バールさん……どちらが勝つのでしょうか」
指揮官の能力を見込んでなのか、ネージュさんは俺を見てそう言ったが、俺は答えられないという意味合いで首を横に振った。
「分かりません。だけど、大事なのはこの後かもしれません」
「後、ですか?」
「はい。互いの思いをぶつけた後、2人は何を思って何を感じたのか……正直、勝ち負けとかそっちの方が気になりますね」
勝ち負けを気にしてない指揮官という、KAN-SEN達に勝利を導く存在である指揮官に有るまじき言葉を出したなと自分でも思い、無かった事にする様にネージュさんに笑った。
だけどネージュさんも何がおかしかったのはつられたように笑ってくれた。
「ふふ、勝ちに執着が無い指揮官ですか。可笑しいですね」
「たはは〜……こういうのダメですよね」
「いいえ。指揮官の成り立ちはどうあれ、貴方が指揮官で本当に良かったと思っています。貴方だからこそ、ここまで来れたのかもしれませんね」
「成り立ち……」
俺が指揮官になれたのは上層部が俺を指揮官にしようと最初から決めていたからだ。だから俺の指揮官という言葉の下には、沢山の人の思いや気持ちを踏みにじってようやく出来た物と言ってもいい。
自分の熱意、親や誰かの期待、そして時間。その全てを犠牲にしてなってしまった1人でもあるネージュさんは指揮官の俺を認めてくれていた。
ネージュさんだけじゃなく、ジンさんもこの事を抜きにしても同じ事を……指揮官として認めてくれてはいたけど、こうして言葉にしてくれると心が救われる様な気になった。
「例え貴方が上層部によって決められた指揮官だとしても、貴方は確かに認められた存在です。みんな、あなたの事が大好きなんですから」
ネージュさんがチラッと人混みにいるジャベリンやラフィー、綾波とZ23に目を向け、俺もつられてそこにいるジャベリン達に目を向けると、ジャベリン達は俺の視線に気づき、手を振ってくれた。
ジャベリンは満面の笑みで手を振り、俺も返すように手を振った。
「ですが、執務はしっかりしないとダメですよ? なんだか最近サボりがちのようですね。さもないとジンさんの様に怠け癖が出来てしまいます」
「さ、最近はあんまり執務作業は無いので……」
「なら良いんですけど」
言った通り執務作業はあんまり無いし、あったとしても秘書艦が手伝ってくれるし……ってあれ、何だか無意識にKAN-SENに頼っている様な気がする。
気のせいだろうか。皆が皆率先して手伝ってくれるから無意識に甘えているのかもと思い、今後見直そうと決心した。
……さて、リシュリューとジャン・バールの決着の時は近づいていた。互いの榴弾がぶつかり、砲撃の音の感覚が徐々に短くなった手前、ジャン・バールの砲撃がリシュリューの艤装に直撃し、リシュリューが被害を受けてしまった。
しかもジャン・バールの方も同じくリシュリューの榴弾に当たり、2人ともこれ以上砲撃すれば砲塔の暴発の危険があり、取るべき行動は1つ、接近戦のみとなった。
2人は剣を構えて一直線に突撃をし、剣を交えた。
火花を散らせ、鉄がぶつかり合う鈍い金属音がこっちに届くという事は、それほどの力のぶつかり合いを示していた。
一瞬の気の緩みも許されない鍔迫り合いはジャン・バールの荒々しい攻撃によって中断され、2人は互いの距離を取った。
そしてすかさず2人は互いの距離を詰め、2人の位置が交わるその瞬間剣と剣が振るわれた。あまりの一瞬の動きで傍から見れば二人の位置が入れ替わった瞬間にどちらも剣を振った様にしか見えないが、俺にはハッキリとあの刹那の一部始終が見えた。
「……流石です、ジャン・バール」
「アンタもな」
背中合わせの2人の剣は同時に亀裂が走り、同時に粉々に砕け散ってしまったと同時に、制限時間終了のブザーが鳴った。
『終了──!! にゃんと大破した艦は0! これは少しの損傷が勝敗を分けるにゃ! それじゃあ早速調べるから、その場で待機するにゃ〜』
数々のドローンや饅頭たちが、アイリスとヴィシアの損傷率を確認して行っていた。見た所全員同じぐらいの損傷率っぽいが、詳しい所は流石に見えない。
饅頭やドローンが撤収している所から察するに、どうやら計算が終わったらしく、明石が結果を口に出す。
『にゃ……にゃんと! 両陣営どちらも損傷率は同じにゃ!! これは凄いにゃ!!』
「て事は……?」
『にゃんと引き分け! 連合演習で初めての引き分けにゃー!!』
「ちっ、決着つかずか」
引き分けという満足のいかない結果になってしまった事にジャン・バールはその場に座り込み、リシュリューも緊張感から解放された様な清々しい顔を浮かべ、座り込んだジャン・バールに手を差し伸べた。
「良い戦いでした。……強くなりましたね、ジャン・バール」
「……アンタも強かったよ」
ジャン・バールはリシュリューの手を握り、リシュリューの力を借りて立ち上がった。
一見何の変哲もない光景だが、俺にはようやくアイリスとヴィシアが手を取り合う第一歩という光景にも思え、思わず盛大な拍手を送った。
ネージュさんも同じ気持ちを抱いたのか同じように拍手を送り、2人の……いや、2陣営の手の取り合いを祝福した。
「そうだ。この後オフニャカフェに行きませんか? オフニャが沢山いるので貴方も……」
「行くわけ無いだろ」
「そんな事言わずに行きましょうよ」
「お、おい!」
……どうやら、まだまだかかりそうだけどそれでも友好関係は続きそうだ。
「二人とも仲直り出来たのですね」
「姉妹はやっぱり仲良くないと」
「……私も、あの人と仲直りしないといけませんね」
「あの人……」
あの人とは、マーレさんの事だろう。世間にとってマーレというのは俺の事を指しており、万が一周りの一般人に聞かれるのを考えての言い回しだろう。
ネージュさんは首にかけられていたロケットペンダントを握りしめ、マーレさんとの対話を望んでいた。
「……そうだ。姉妹と言えば、次の演習はちょっと手強いかもしれませんね」
「あぁ……まぁ、頑張ってみますよ」
次の演習は確かに手強い。
その演習相手は重桜だ。そしてその対戦相手の主力艦隊には……俺の姉さん達がいる。
「一筋縄では行かない……よな」
最近忙しくて書き損ねた日記だけど、少しづつ書こうと思っている。
最近特に思い出深い事と言えば、アイリスのリシュリューとヴィシアのジャン・バールと会った事だ。
リシュリューとはロイヤルとの交流で初めて出会い、その場の流れでリシュリューと話をした。初めはかなり崇高的で近寄り難いイメージがあったけど、近くにいたオフニャを見てリシュリューは目の色を輝かせてオフニャと戯れていた。
その後リシュリューは我に返って赤面し、気恥ずかしそうにお茶会を続けた。いい意味で、リシュリューのイメージは崩れた良い1日だった。
ジャン・バールとは森の中で出会い、その時のジャン・バールはあらゆる動物に囲まれながら寝ていた。
この時は確かヴィシアとの交流があるからジャン・バールを探しに行ってたから、ジャン・バールを見つけて声を掛けようとしたら動物は逃げ、残ったのはジャン・バールだけだになったから、寝ているジャン・バールに声をかけた。
そしてジャン・バールは目を覚めると、目の前に俺がいるからジャン・バールは驚きながら俺の顔を殴った。今これを書いてたらその痛みが思い出して顔が痛くなってきた。
その後、お詫びにとお酒とか貰ったけどあいにく未成年と言った後、ジャン・バールは美味しい料理の店に一緒に行ってくれた。意外と面倒見が良いのかな……?
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