もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜 作:白だし茶漬け
クリスマスだからってほのぼの話だと思ったら大間違いです!ここから先はシリアス路線の一方通行です!ですが幕間ではほのぼのさせます!本当です信じてください!
いつの間にか海には赤い霧が覆っていた。
赤い霧で空も赤く染まり、心做しか視界も悪くなってきた。
セイレーンが出現したということは、この海域は鏡面海域となっており、通信も皆には届かない。つまり増援は期待出来ず、俺とオロチさん、そしてテネリタス3人とテネリタスが作った騎士の一艦隊分の人数であの数百規模のセイレーンを倒さなければならない。
地平線を埋め尽くす物量を換算するに、1体50は覚悟しないといけない。しかもその敵は1体1体が雑魚じゃなく、1体いるだけで驚異になる奴ばかりだ。
1人で50体倒せば勝てると言ったが、実際にはその倍の数を倒すぐらいの労力は必要だ。
だが、不思議と負ける気は無かった。そもそも負けるつもりは無いが、こっちにはロイヤルの英雄と言われている人達が図らずしも味方にいるのが要因だと思う。
「じゃっ、僕は親玉のHermitをやるから、周りのエグゼキューターシリーズは任せるよ」
アトラトさんが右手の白い大剣を前に構えると、片方の黒い大剣から刃が黒いビットが展開され、白い大剣に装着され、先が開くように変形し、開いた所から青色の光が集まりだした。
「大剣じゃない……?」
黒い大剣だったものが刀身が黒い普通の片手剣になり、逆に白い大剣だったものが黒と白の巨大な大剣となった。
全長がアトラトさんの数倍大きくなり、見ただけで重みを感じられる大剣をまるで板切れを持っているかのように軽々と動かし、そのまま剣先を向こうにいる大軍に向かって構えた。
「いっくぞぉぉぉ!!」
青い光が臨界に達したその瞬間、海が割れる程の超高出力ビームが解き放たれた。
ビームは海をえぐりながらセイレーン達に向かい、射線上にいたセイレーン達は青色のビームに次々と飲み込まれる。だが、それだけじゃ無かった。アトラトさんが体ごと大検の向きを動かすと、ビームも同じようにその角度を変えた。
普通のビームじゃない。これじゃあまるでビームの大剣だ。
地平線を埋めつくしていたセイレーンはビームの大剣でなぎ払われ、断末魔や艤装の爆発さえも掻き消す様な攻撃に、セイレーンの中層端末、Hermitは顔を引き攣らせ、冷や汗が上がるほどの恐怖を描いた。
「ふぅー、半分ぐらいやったかな。じゃ後は頼んだよ」
大剣……いや、片手剣を纏っていたビットが全て展開されると、アトラトさんの周りには10基のビットが展開され、アトラトさんを守るように宙を飛び続け、Hermitに向かうアトラトさんに追従した。
アトラトさんの武器はこれまで大剣だと思っていたけど、実際は違う。あの大剣は刃の付いたビットと片手剣を合体して出来たものであり、アトラトさん本来の武装はあの2本の剣と10基のビットだったのだ。
アトラトさんは初撃で貰ったアドバンテージを活かす様にHermitに近づき、1体1の状況になった。
アトラトさんのビットが風を切るかの様にHermitに突貫し、全方位から攻撃を艦載機を突撃させて迎撃しようとしたが、Hermitが出した黒い艦載機は全てビットの突撃によって真っ二つに破壊され、Hermitの艤装がビットで切り裂かれていき、あっという間に表面がズタボロになった。
「ぐっぅ……!!」
Hermitは近くにいたエグゼキューターに指令を飛ばしたのか、10体のエグゼキューターがアトラトさんに向けて榴弾、魚雷、ビーム、艦載機、人間1人に対して小さな町ひとつ破壊出来る物量の攻撃は
凄いとか、そんな次元じゃない。
セイレーンを赤子の手をひねるかのように圧倒しており、アトラトさんは傷一つどころか息が一つも乱れていない。これがロイヤルの英雄と言われた伝説の男であり、俺達が倒すべき敵……正直勝てる未来が見えなかった。
「指揮官さん、お父様の勇姿を見るより、こちらも自分の役目を果たしましょう」
隣で巨大な盾を構えていたシーアさんからそう言われた。敵なのにこっちに気を遣う余裕があるのは、それだけアトラトさんの事を信頼している証拠なのか、父であるアトラトさんにシーアさんは全く見向きもしなかった。
その母親にあたる2代目当主のラハムさんだってそうだ。向こうの戦いを見向きもせず、逆にこっちを取り囲んでいるセイレーンに意識を集中させていた。
心配という感情は一切なく、傍から見れば薄情者と言われるかも知れないが逆だ。アトラトさんなら大丈夫だという絶対的な信頼、家族の絆がそこにはあった。
関心に似た感情浸っていた間、セイレーンが攻め込んでくる。四方八方に囲まれて逃げ場はなく、迎撃するしか無いがどちらか一方向に攻撃したとしても他の方向から攻撃が集中するのは間違いない。
圧倒的な物量差を誇示するかのようにセイレーンは一斉に攻撃を開始した。
放たれたビームの攻撃は流星群かのように降り注ぎ、俺たちに迫っていく。迎撃しようにもこれじゃあ絶対に当たる、多少のダメージは覚悟したその時、シーアさんが盾を海に突き刺した。
「させません!」
シーアさんから中心に巨大なドーム状のバリアが俺達を包む様にして広がり、セイレーンの攻撃はバリアによって防がれた。
「これ、私のバリアと似てるんだけど?」
「ええ。貴方の力、お借りしちゃいました」
確かにオロチさんと戦っていた時にあったバリアに似ている所あったが……出力と範囲が桁違いだ。
バリアは半径20m……いやその倍近く展開しているのにも関わらず、全ての包囲の攻撃を無力化している。これだけのバリアの出力を維持出来るのはKAN-SENやオロチさんでも不可能に近い筈なのに……末恐ろしいこの上ない。
「さぁ皆さん、今のうち攻撃を!」
「攻撃って言っても……」
攻撃するも言ってもシーアさんのバリアの中にいたらこっちの攻撃すら通らないと考えてしまって攻撃する手を止めてしまう。だけどシーアさんは大丈夫と言い、その言葉を信じて俺は左手のライフルを構えた。
「リフォルさん、使わせてもらいます!」
リフォルさんが作ってくれたライフルに装填されているグレネード弾をうち、グレネードは火薬の力を借りて真っ直ぐセイレーンに向かって飛んで行った。
だが、セイレーンに到達する前にシーアさんのバリアによってはばかれてしまってこのままだとグレネードがバリアに激突し、セイレーンに攻撃出来ないと思った矢先、何とグレネードはバリアを貫通し、グレネードはセイレーンの顔面に直撃して爆破した。
セイレーンを倒したが……バリアを突破した感じは無い。まるでバリアが俺の攻撃だけ通り抜けた様な感じに見え、バリアが解除された様には思えない。
現にバリアは展開したままでセイレーンはバリアに立ちふさがれてバリアの中には入れず、攻撃すら通っていなかった。
「どんな原理でこんな事出来るんだ……?」
「企業秘密です。さぁ、安心して攻撃して下さい」
「じゃあ遠慮なくやらせて貰うわよ!」
オロチさんも攻撃が通ると分かった矢先に赤色のミサイルやビームを乱発し、無作為にセイレーンに攻撃した。
KAN-SEN達が使う実弾の轟音では無く、ビームが発射される独特な軽い音と共に赤色の光がセイレーンの大群に突き刺さり、バリアの向こうで徐々にその数を減らしてはいくが、まだまだ地平線が埋め尽くされるほどの数がそこにはいた。
「ああもう多すぎる! これ負けないけど勝てないわね」
確かに、このまま数の物量でゴリ押されたらこっちの弾薬とエネルギーが尽きてしまう。エネルギーは時間が経てば回復して再度ビームを使う事は出来るけど、それだとこっちの体力が持たない。
それはテネリタスも同じ筈だ。いくら超人的な能力があるとは言え、素体がKAN-SENと同等ならお腹も減るし体力も減っていく。そうなってしまえば全滅は必須だ。シーアさんの破られないバリアがある内に何とか全滅させたい所だ。
一旦シーアさんの様子を見る為にチラりとシーアさんを見ると、シーアさんがどこからともなく自分の顔や体よりも大きなおにぎりを持っていた。
「……え?」
あまりにも信じられない光景に目を丸くしながら呆気に取られ、一気に緊迫感や緊張感が無くなった。
緊張感が無いどころかこんな所で食事を始めようとしているシーアさんは艷めく米で握った大きなおにぎりをうっとりと輝いた眼で眺めたあと、笑顔でおにぎりを食べようとしていた。
「いっただきまーす♡」
てっぺんから一気にノリが巻かれた所を一気に平らげたシーアさんはほっぺたにご飯粒を付きながらも幸せそうにおにぎりを頬張り、その後具が梅干しだったのか口を×の時にさせてすぼめさせた。
「んー酸っぱいです! でも美味しい! 重桜はお菓子も料理も美味しいので大好きです!」
「えっと……何してるんですか?」
「何って……食事ですよ? あ、おにぎり食べます?」
シーアさんは盾の内部から隠し持っていた普通サイズのおにぎりを俺に渡そうとしたけど、ここで受け取るほど状況は良くない。
こう言っちゃなんだけど、いかれてると言う言葉しか思い浮かばなかった俺は言葉を失い、オロチさんも大きなおにぎりを食べているシーアさんを見て絶句していたが、それすら超えて最早興味を示す域まで達していた。
「えぇ……こんな所で何で食事しているのかしら……神経が図太いとかそんな域超えてるわよ」
「モグモグモグ……だって、お腹が空いたら力が出せないので……それに重桜のことわざ? というのをロドンから聞きました。『腹が減っては頑張れない』と!」
「それを言うなら『腹が減っては戦ができぬ』じゃ……」
「あ、それです! ご丁寧にありがとうございます」
「調子狂うわね……」
「ですね……」
「ふふ、確かにちゃんとご飯を食べないと大きくなれないわ。偉いわよ、シーア」
2代目のラハムさんもお咎めなしにシーアさんの頭を撫でた。血縁上では祖母と孫娘にあたるから甘やかすのは当然だと思うけど状況を考えて欲しい。
いくらシーアさんの絶対防御のバリアがあったとしても、緊張感を無くしては行けないと言うのにこの人は呑気におにぎりを食べている……これが伝説の英雄の胆力……図太さ……ううん、何だろうかこの和やかさは。
まるで本人達は戦っているとは思えないぐらいの緩さだ。
シーアさんはおにぎりを美味しそうに食べ進め、僅か1分で顔よりも大きなおにぎりを完食し、更にもう1個盾から同じ大きさのおにぎりを取り出し、また食べ進めた。
「呆れた……ほんとに勝つ気あるの?」
「お父様がいるから大丈夫です。もぐもぐ……私の知る限り、お父様に勝てるセイレーンは存在しませんから」
おにぎりを食べながら向こうにいる自分の父親であるアトラトさんの戦いを呑気に眺めていた。本当にアトラトさんに対して絶対的な信頼がある事が分かり、この緊張感の無さは本人達の強さもそうだけど、それ以前にアトラトさんの絶対的な力故の物と思うとあの人の力は、敵にとっては絶望そのものだ。今まさに、俺達はそれを目の当たりにしているのがどれだけ怖い事か、言葉にする事もできなかった。
「あっ! シーアってばおにぎり食べてる! 良いなぁ〜僕も重桜食好きだから食べたいな〜」
「よそ見している場合!?」
向こうでアトラトさんがこっちの何を見たのか分からないけど、アトラトさんがこちらを向いた瞬間、Hermitが扇状に広がる砲塔を全てアトラトさんに向け、砲塔に青い光が集まり始めた。
その僅か数秒後でビームが打ち出され、直撃出来るとHermitが確信の笑みを浮かべたその瞬間、剣型のビットがアトラトさんの前に円になるように展開し、中央で海色のバリアが形成され、Hermitの高出力ビームを弾くようにして防いだ。
直撃を確信していたHermitは目は瞳孔が開ききり、隠せない動揺とアトラトさんとの絶対的な力の差を思い知らされ、その動揺は頬をつたう汗すらも感じられない程だった。
「……まだするかい?」
哀れみの目をしたアトラトさんは本気でそう願っていた。
だがHermitは戦闘の意思を消さず、この海域を包み込む赤い霧の中へと消えていった。
戦闘が続く事に悲しみを感じたアトラトさんは肩を落としながら深いため息を吐き、霧に囲まれた海を見渡した。霧のせいでHermitの姿が見えない所、1つの足音が聞こえた。
海の上なのにも関わらず足音が聞こえるのは変だと分かっている。だけど俺達の耳には、確かに地面を歩く足音が聞こえた。
しかも複数人の足音で2,3人のものでは無い。アトラトさんは大衆の足音の方に顔を振り返ると、赤い霧の向こうには、艤装を持ったKAN-SENでも、セイレーンでも無い、ただの人間達がアトラトさんと対面するように立っていた。
「君達は……」
『この悪魔がっ!!』
『よくも俺の人生を奪ったな!』
アトラトさんに向かって大衆は罵詈雑言を言い放った。大衆の姿が徐々に黒い陰へと変わり、その陰はおぞましく、人とは言えない何かに変わっていった。
「どういう事だ……? あれは一体……」
「あれがHermitの力、他人に幻覚を見せる事が出来るのよ。悪夢、トラウマ、あの個体は精神的に追い詰めることに決めたらしいわね」
ということは、アレはアトラトさんにとっての悪夢なのだろうか。察するにアトラトさんに負けた人……だとは思う。
陰はアトラトさんへの罵詈雑言を止めず、アトラトさんは拒む事はせず、受け入れるように陰から目を離さなかった。
「……そうだね。僕は僕自身が掲げた正義の為に君たち……敵を傷付けた。キューブの力で蘇ったからあるか分からないけど、心が痛くなるね」
『ソウダ、オマエの正義はイツワリだ』
「偽り? それは誰にも分からないよ。そもそも戦争に正義も悪も無い。あるのはただの虚無、虚しさ、辛さだけだよ。だからその全ての悲しさを……」
アトラトさんはビットを剣に集めて大剣へと変形させ、何の躊躇いもなく人だった陰に向けて大剣を振り下ろした。
『ぐぉわぉがっぎぁがかぁあがぁぁぁあがぁぁぁあっぁあわががぁぁァァァァあ!!!!』
真っ二つになった陰はこの世の物とは思えない程の断末魔を叫び、思わずこっちの方が耳を塞いでしまう程に恐ろしかったが、アトラトさんはその断末魔を聞きなれているかのように静かに立ち尽くし、断末魔を最後まで聴いていた。
「取り除く」
最後にそう言い残し、アトラトさんは陰を斬り裂いた。
陰はそのまま赤い霧に溶けていくようにして消え去り、アトラトさんは赤く染まった霧を見渡し、大剣に変えた武器をビットを展開し、元の片手剣へと戻した。
「おーい、まだやるかい? 僕としてはこれ以上戦いたくは無いんだけど」
赤い霧の向こうにいるであろうHermitに向けて声を上げたが、Hermitは応答せず無言を貫いた。
赤い霧がまだ晴れてないからまだ撤退はしていない筈だ。アトラトさんもそう考えたのか、突然目を閉じ、大剣の刃となったビットを全て自分の周りに集め、何かを感じ取っていた。
いきなり隙だらけの行動でチャンスと判断した残りの量産型セイレーンが早速アトラトさんに攻撃を仕掛けようと動き始めた。
アトラトさんの圧倒的な迫力に思わず集中力が途切れてしまい、セイレーンへの反応が遅れてしまった。急いで艤装のミサイルを使ってセイレーン達に攻撃を仕掛けようと構えたその一瞬、隣で沈黙を貫いていた騎士が疾風の如く海を駆け抜け、先頭にいたセイレーンを身体ごと槍で貫いた。
槍に黄色の血が流れ、騎士はそのまま突き刺したセイレーンを鈍器に見立てる様にして槍を振り回し、他のセイレーンをなぎ倒していた。
騎士とは思えない荒々しい戦いはまさに蹂躙という言葉が相応しかった。
体と体がぶつかって骨や肉が軋む音と、艤装と艤装がぶつかる鈍い音がここまで聞こえてきた。
攻撃を通さないバリアでも音は流石は通され、嫌な音が耳にまとわりついて思わず耳を塞ぎそうになる。
「目を背けないで、これは戦争なのよ」
子供の姿でありながらも歴戦の勇士の様な強い目をしたラハムさんが俺にそう言ってきた。
それはとても重々しく現実を突きつける冷たさを感じ、子供が発した物とは思えなかった。
事実この人の実年齢……もとい、享年は見た目よりも随分と上な筈だ。覚えている限りは20……30辺りだった筈だ。
この人からは年齢相応の確かな重みがあり、言葉一つ一つが神経に重圧がかけられた。
「戦争……?」
「悲しくて辛い、だけど人が避けては通れない戦争。貴方はそれを知らない。だから、耳を塞がず、目をそらさないで。それはきっと貴方の力になるから」
「どういうことですか?」
まるで俺を成長させようとしている言動に少し戸惑い、質問を返そうとしたけど、ラハムさんは風のように質問を受け流す笑顔を向けた。
「今は敵を倒す事に集中しなさい。息子を援護しないと」
どうやらこれ以上踏み入っても無駄な様だ。
ラハムさんの真意が分からない以上、今やるべき事をやる為に行動した。
ミサイルを発射する為のハッチを全て開放し、今出せるだけのミサイルを全て吐き出すようにして発射した。
煙の糸を描きながらミサイルはセイレーンの大群に向かい、更なる弾幕の為に武器をアサルトライフルに変形し、リフォルさんが作ってくれたアサルトライフルと合わせて二丁拳銃のアサルトライフルのスタイルで弾幕を張った。
アサルトライフルのフルオート射撃で普通より2倍の反動が押し寄せてくると覚悟していたけど、思っていた以上の反動は無かった。
むしろ反動がいつもより少ないように感じ、リフォルさんの技術が手から体へと伝わり、言葉には出来ないけど感謝をした。
実弾とミサイルの嵐の猛攻に巻き込まれたセイレーンはミサイルの爆発で艤装を誘爆させられ、固まっていた艦隊は爆発の連鎖で次々と轟沈していき、着実に数を減らしていった。
「……見つけた」
この赤い霧の中でHermitを見つけたのか、アトラトさんが目を開いてビットを赤い霧の向こうに飛ばし、飛ばした先には赤い霧に紛れたHermitが、足にビットが突き刺さった。
「ガッ……!」
喉を絞られたような声を出したHermitは動きを止め、ビットは躊躇いなくHermitを囲い始め、無機質に手や艤装を切り裂き始める。
無数のビットに肌を切り裂かれ、砲塔も斬られ、艤装が斬られ続けられる度に戦意さえも切り裂かれる様は敵であっても痛々しい物だった。
傷が無いところが無いほどに切り裂かれ、武装全てが無力化されたHermitに最早戦う術は残されておらず、Hermitが出した赤い霧が晴れて元の青い空の下へと戻ってきた。
すると地平線を覆っていたセイレーン達が消え始め、俺たちが知る海の地平線が見えた。
「え? どういう事だ……?」
「恐らく、殆どのセイレーンはHermitが見せた幻覚だったという事かしら。まんまと騙されたわね」
という事は……実際の敵はもう既に倒したという事だろうか? 良かったと安堵して俺は力を抜き、アトラトさんも勝ちを確信して武器を閉まい、ボロボロになったHermitの前に立った。
「……続けるかい?」
最早立つことすら限界と叫んでいる足を震えさせながらも立ち続けが、力尽きて海の上に片膝を着いた。
アトラトさんは片膝を付いて目線が下がったHermitと同じ目線になる様に膝まづいて目線を合わせたが、Hermitにとってそれは屈辱以外の何物でもなかった。
怒りに満ちた目と歯ぎしり、体の震を見たアトラトさんは自分が如何に相手を屈辱に追いやっているのを理解はしているとは思う。
きっと無意識な優しさから出た行動何だと思う。けど、その優しさは時として無自覚な暴力や悪になる。それが分かる光景だけど、アトラトさんはそれでもHermitに手を差し伸べた。
「貴方は……何がしたいの?」
Hermitは混乱しながらアトラトさんの手を跳ね除け、残された艤装の力でアトラトさんから離れた。
跳ね除けられた事に悲しんだアトラトさんは体制を変えず、目線を合わせながら話した。
「僕はただこの世界に生きる者全ての人がずっと幸せに居て欲しいだけだよ」
「本当にそんな理想が叶うとでも? この謀略という混沌が入り交じった世界の中で、そんな夢物語は絶対に叶わない!」
せめてもの反抗心からなのか、それとも合理的に判断しての言い草なのか、Hermitは声を荒らげても嘲笑した笑みを浮かべてアトラトさんが願う世界を否定した。
「それに貴方達がやろうとしている事は逆に混沌へ導いているように見える。自分の理想と行動が矛盾している時点で、貴方達の理想は叶わない!」
「いいや、混沌にはならないさ。何故なら……」
『……揮……ん』
(通信……!? 誰から?)
突然誰からの通信が割り込んで来たけど、通信状況がおかしい。ノイズ混じりの通信の向こうでは、何か別の音が聞こえる。
途切れ途切れだけど一瞬でとてつもない音で一瞬で消えるこの感じは……爆音と轟音? ここの他にどこかで戦闘が起きてるのか?
嫌な予感が体の体温を奪うかのように背筋が震え、懸命に通信を繋げようと願ったその時、ようやく通信が安定した。
『指揮官……!』
「エンタープライズ? どうしたの?」
『演習……場に……テネリ……タスが!』
「演習場にテネリタス……? そんなっ!」
『指揮官……そちらも気をつk』
いきなりエンタープライズの通信が切れてしまい、言葉の意味を理解した俺は無意識に体を反転させ、皆がいる島へと戻ろうとしたその時、シーアさんが展開したバリアがまた輝き、今度俺を閉じ込めるようにサイズを絞り、俺はバリアの鳥籠に閉じ込められてしまった。
さっきまで内側から外側までの攻撃は全部すり抜けたのに、今度は内側から全ての質量を通さない様になっており、バリアを破る為にライフルで攻撃してもバリアはビクともしなかった。
「優海!」
幸いオロチさんはバリアに閉じ込められる事は無く、助けようとバリアに向かってビームを打ち出したが、打ち出されたビームはバリアを貫通し、そのまま俺の横を通り過ぎた後、内側のバリアと衝突して消えてしまった。
「バリアが貫通した!? どういう事なの……?」
さっきとは逆だ。内側から攻撃が貫通出来た物を、今度は外側から貫通出来るようになっている。
つまり、内側からの攻撃はバリアで防がれ、逆に外側からの攻撃はバリアの影響を受けない……これはバリア所では無く、完全に鳥籠だった。
言ってしまえば一方的に攻撃が出来て、この狭いバリアではこっち逃げ道がない。
身を守る為のバリアが使い方次第でこれ程凶悪な逃げ道を塞ぐ物になるなんて……何とかしてバリアを破壊しようとしても下手に攻撃すれば逆にこっちが攻撃の余波でやられてしまう。
下手に攻撃出来ず動けない所を、シーアさんとラハムさんは騎士と共にこちらに来た。
「こんなバリアの使い方はしたく無いのですが……君には少しここに居て貰います。元々、私達がここにいる理由はその為ですから」
「どういう事ですか……?」
「これから起きる事は、人類にとって最悪な歴史になる。そして同時に……」
「人類が1つになる時だよ」
アトラトさんが島がある方向に顔を向けたその先には、小さな炎と消炎が立ち昇っていた。
つまり、島が燃えているということだ。
「そっちは任せたよ、10代目君」
鳥籠の中で俺は燃え続ける島を見ながら、ただ皆の安否を祈るしか無かった。
「皆……無事でいてくれ……!」
だが、炎は消えず寧ろ更なる業火を上げ、それと同時に聞こえない悲鳴が聞こえるような気がした。
どのテネリタスが好き?
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ロリママ創造者の2代目 ラハム
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人類最強の天然3代目 アトラト
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食いしん坊な絶対守護者4代目 シーア
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武士道と極める騎士5代目 ロドン
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風のように自由なガンマン6代目 セイド
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完璧で究極のアイドル7代目 マリン
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おっとり包容力で全知全能の8代目 ミーア
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元人間のセイレーン 10代目マーレ