もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜   作:白だし茶漬け

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皆様、新年明けましておめでとうございます。

今年でこの小説も5年目となります。

まぁ5年目にしては少し話数が少ないかもしれませんが、それでも読んでくれる人がいて、今でもコメントやお気に入り登録をしてくれる人がいてくれてここまで来れました。本当にありがとうございます。

特に、コメントが何より一番の楽しみでもあるので、この小説を読んでまだコメントしていない人がいれば、是非コメントをしてくださると嬉しいです(笑)

今年から社会人となってますます更新頻度が下がってしまいますが、それでもご愛読してくれると嬉しいです。




誓い-英雄

 

 海の上で誰かの叫び声が聞こえる。

 

 赤い炎と、崩れゆく瓦礫と轟音が止まらない包まれたこの地獄の中で、微かな助けを求める声が耳から離れない。

 

 世界が崩れる音がする。

 

 一発の光線が立派にそびえ立っていた建物を焼き付くし、連鎖するように建物は崩れ去る。

 

 何かを作るのは途方も無い時間を費やすというのに、壊すのはこうも簡単なのは何故だろうか。それが人がもつ力の本懐だと言うかのように、建物は瓦礫の屑となり、その姿を消していった。

 

 あの頃の地獄を思い出す。

 

 炎で皮膚が焼けただれた痛みに堪えながら、必死に母親を助けようと傷ついた足を引きずりながら、情けなく助けを求めたあの地獄を。

 

 あの時初めて神様を信じ、恨んだ。

 

 何故こんな事になった? 

 

 どうして俺の母さんは死んだ。

 

 何故、どうして、こんな理不尽な事に合わせるんだと神様を恨んだ。

 

 だから決めた。

 

 もし神が俺をこうさせる為にあの地獄を作ったというのならば、俺は神さえも殺してみせると。その為にはまず、やるべき事がある。

 

 俺の目的の為にも、この小さな地獄を皮切りに新たな戦争の幕を上げなければならない。

 

 右腕に取り付けられたライフルで目立った建物を狙ってビームを放ち、人類に対して攻撃を仕掛ける。

 

 よく見ると島の反対側から複数の艦が出港しているのが見え、どうやら足の早いKAN-SENの艦を出して民間人を避難しているのだろう。

 

 このまま逃がすまいと艤装の出力を上げて艦を強襲しようとしたが、迫り来る艦載機の音が近づき始めるのと同時に機銃がこちらに向かってきた。

 

 普通の人間なら振り向いた瞬間脳天に機銃の弾丸が突き抜けて血飛沫が出る所だが、振り向いた瞬間僅か後ろに下がるだけで機銃は海の底へと落ちていき、続けて艦載機が俺の上空を通過すると同時に2隻で出したであろう艦載機から爆撃が落とされた。

 

 無駄な事だと内心呆れながら左側の艤装の対空砲と、右腕のライフルで爆撃を全て狙い撃ち、爆撃は空中で轟音を響かせる花火となった。

 

 だが、さっきから感じる殺気の様な視線が俺から離れない。

 

 どこからか俺を狙おうとしているのは明確であり、しかもそれは一方向では無かった。

 

 殺気の様な物が感じた方向から飛行物体が見える。艦載機……いや、艦載機は艦載機だが、今までアズールレーンで見た艦載機とは全く別物のフォルムだった。

 

 全体的に白色で前方にプロベラが一切無く、自身の推力のみで飛ぶ姿はまさに鳥のようだった。

 

「ジェット機……?」

 

 今まで見てきた物の中で最も近い物を言葉にした瞬間、ジェット機はこちらに向かいながら機銃を放ち、回避をする為に上空に逃げる。

 

 だが、空中の先にはジェット機では無く見覚えのある艦載機の上に、弓を引いた灰色の亡霊が俺を殺そうと力強い目を向けられていた。

 

「エンタープライズか」

 

 名前を呼んでも彼女には聞こえなかったのか、灰色の亡霊は躊躇いなく弓を引き、放たれた青い矢が鳥へと変貌した。

 

 鳥を打ち落とそうと艤装のビーム対空砲で弾幕を張り、懸命に鳥は弾幕の嵐を掻い潜ろとうしたが、羽が一発のビームで焼き尽くされ、そのまま失速して鳥はビームの嵐へと消滅した。

 

 鳥を撃ち落とした後、エンタープライズが乗っている艦載機の翼も同時に撃ち抜いた後、エンタープライズは艦載機から脱出し、海の上へと着地した。

 

 ユニオンの英雄や灰色の亡霊と言われたKAN-SENだが、俺にとってはただ何もしない幽霊と同じように驚異では無かった。

 それよりも俺はあの白いジェット機の艦載機が気になり、いつの間にか見失ったジェット機を探すと向こうから現れてくれた。

 

 目視で推定50メーメル程の距離で直進で来るなら迎撃は簡単だった。艤装の主砲で簡単にジェット機は爆発の中で粉砕したが、その爆発の向こうからエンタープライズとは違う複数の鳥の矢と、蜂のように鋭い弾丸が襲いかかっきた。

 

 一瞬反応が遅れて弾丸が頬を掠り、頬から薄い血が流れ出る事すら気に止めない程俺は攻撃を避ける事に集中し、攻撃から距離をとる。

 

 だが、青い光を纏った複数の鳥は獲物を追いかけるように俺について行き、迎撃しないと永遠に追いかけて来そうだ。

 

 鳥を撃ち落とそうと弾幕を張り、鳥達は翼をもがれるようにして落ちていく。だが、蜂の弾丸がどこからともなく俺に襲いかかってくる。

 

 俺に追尾こそしてないが風速を越えるような弾速に防御するのがやっとだ。この2つの弾幕を避け切る為には上空では無く海上出なければダメだと判断した俺は直ぐさま急降下して海に着地し、向かってくる弾を全て撃ち落とした。

 

 威力や性能が格段に違うが、この攻撃を俺は知っている。だから迎撃出来たのだ。この感覚は……

 

「ホーネットとヨークタウンか」

 

 俺の声が聞こえるはずが無いのにも関わらず、その2人はエンタープライズと共に俺に立ち塞がるように現れた。

 

 ヨークタウンの姿形が見違えるように変わっており、服は白く、まるで自分の心の闇から脱却したと言わんばかりの純白さだ。

 

 ホーネットの方はヨークタウン程姿形は変わっていないが、艤装が明らかに進化している。艦載機の発艦速度重視の真っ直ぐな滑走路はまさにホーネットの真っ直ぐさを現していた。

 

「私達……強くなったんだよね? それなのにアイツ、涼しい顔しているんだけど」

 

「大丈夫だホーネット。確実に手応えはある」

 

 ホーネットの不安を払拭するようにエンタープライズが鼓舞し、ホーネットの表情から不安は消えた。

 

 手応えを与えられたのは、俺があの程度の攻撃を軽くいなせなかったからだ。他のテネリタスなら、あんな攻撃余裕で迎撃出来た筈だと考えると、自分の弱さが恨めしい。

 

 このモヤモヤした気持ちは恐らくあっちも同じだ。自分の弱さが憎い、恨めしい。そんな歯がゆさが、エンタープライズからヒシヒシと伝わってくる。同じ気持ちを抱いたからか、そういう確信があった。

 

 消炎の臭いが鼻につき、次の一手を見極める達人の読み合いの様に黙りこみ、動きを止める時間が続く中、その均衡を壊すかのような上空からミサイルがエンタープライズ達に向かって飛んできた。

 

 ミサイルを察知したエンタープライズ達は咄嗟にその場から離れ、ミサイルが海に衝突すると同時に爆発し、たからな声が上空からこっちに向かってきた。

 

「おーお、苦戦してんのか? だらしねぇぞマーレ!」

 

 上空から俺の前でダイナミックに着地したのは、テネリタスの中で最もテンションが高い6代目当主のセイド・テネリタスだった。

 

 セイドさんは両手に持ったビームライフルをエンタープライズ達に向けて乱射し、ビームが上空に飛んでいた艦載機さえも巻き込み、空が爆発のカーテンを生み出した。

 

「ははは! どうしたどうした! 新しい艤装の力はそんなもんかぁ!?」

 

 大規模な戦闘でテンションが上がっていたセイドさんは自分の艤装であるサンゴ型の艤装を海中から浮上させ、そこからガトリング砲を2つ武器を取り出してはエンタープライズ達を狙った。

 

 セイドさんよりも背が高い全長があるガトリング砲の引き金を引かれた瞬間、ガトリング砲はそのバレルを勢いよく回転しながら、青色の弾丸を撃ち続けた。

 

 ビームの軽い発射音とは裏腹に1発1発の威力は今アズールレーンが作れる最高威力の武器よりも強力なものだ。掠っただけでも艤装の装甲は破壊され、1発直撃したらその後に襲いかかるビームの餌食になり、防御という選択肢は無い。

 

 エンタープライズとホーネットは右に、ヨークタウンが左に避け続け、セイドさんは重いガトリング砲をそれぞれ左右に銃口を狙い続け、執拗にエンタープライズ達を狙った。

 

「何よこの弾幕! 反則でしょ!」

 

「避け続けるので精一杯っ……!」

 

 弾幕を避ける為に中央ががら空きになり、このまま行けば人類を載せている避難艦に辿り着けそうだ。

 

「ほらよ、道を空けたぜ! 凱旋門を通るように堂々と胸を張って歩いても良いんだぜ? ファンファーレの花火を上げてやるよ」

 

「……最初からこのつもりで?」

 

「そんなに頭良く見えるか?」

 

 いい意味なのか、悪い意味でなのかは俺の匙加減で決まる返しだった。これ以上時間が無駄に出来ないのと、何か言ったらダル絡みして来そうな事を考えたら、返しは1つだ。

 

 それは、何も言わず行動しで示す事だ。

 

 セイドさんのマシンガンが壁となり、がら空きとなった航路へと俺は駆け抜ける。

 

「良いね、言葉ではなく行動で意志を示すの。俺は大好きさ」

 

「くっ……マーレが避難艦の方に!」

 

 無理矢理エンタープライズが弾幕を突っ切る様にしたが、セイドさんの弾幕はガトリング砲だけじゃない。足と背中、そして艤装に搭載されたミサイルポッドのハッチを展開し、ミサイルが煙の糸を引きながらエンタープライズに襲いかかり、俺へと寄せ付けない。

 

 歯がゆい感情が見え隠れしているエンタープライズを端目に見ると、エンタープライズが完全に足止めを食らっていたのが見えた。

 だが、エンタープライズだけだった。他の2人はセイドさんや俺の予想を遥かに超えた性能をしていたのか、すぐさま俺に攻撃を向けた。

 

「逃がさないっ!!」

 

 直線の連続で飛行してきたホーネットが出す艦載機の飛ぶ軌跡には曲線は無く、その名の如く蜂のように俺に迫ってくる。

 迫り来る蜂の艦載機は高速のロケット弾が蜂の針の様に刺し迫る。

 

 真っ直ぐ迫るロケット弾を避けると、今度は蒼い鷹が迫ってくる。鷹は左腕の剣で撃ち落としたが、完全に動きが止められ、俺の前にはまたヨークタウンとホーネットが立ち塞がってきた。

 

「どうしてこんな事を……」

 

「どうして……か」

 

 ヨークタウンが慈悲深く俺達の目的について問いただしてきた。

 

 ……本当に、どうしてだろうなと俺は考えてしまった。命を落としたと思ったら人類の敵であるセイレーンへと体と魂を作り替えられ、挙句の果てには昔死んだ英雄を蘇らせた所まで来てしまった。

 

 いつからこんな事になったのだろうか、俺がセイレーンになったからか、この世界が進む最悪の未来を見てしまったのからなのか? 

 

 いや違う。

 

 どれも違うと確信した。

 

 俺がこんなことをするのは……俺の出発点(オリジン)はもっと別にあった。

 

 遠い記憶で蘇るのは雪のように白くてつい触りたくなる様な柔らかい髪に、エメラルド色に輝く唯一無二の輝きを持つ目を持ち、ボロボロなったクマのぬいぐるみを大事そうに持っていた少女だった。

 

 その子の笑顔は他のどんなものよりも美しかった。

 

 笑顔を向けられて嬉しかった。誇らしかった。初めて自分が生まれた意味すら見いだせた様な気さえもした。

 

 だから約束したんだ。もっと、もっと君を笑顔にさせるって。

 

 君だけじゃない。もっと色んな人を、いや……この星に生きる人達全員が心から笑える世界を作る。そうすれば君も……お前も……

 

「……ネージュ」

 

 意識が現実へと戻ってくる。きっかけはちっぽけだった。ただアイツの笑顔がもう一度見てみたいって。

 

 それがこんな風になるなんて笑ってしまう。どこで大きく湾曲したのか、それすらも分からなくなったが、それでも目指すべき世界は決まっている。

 

 これはその為の反逆であり、試練だ。

 

 俺や、人類にとってもだから決して止まらない。止められない。

 

 止めてくる奴が入れば……そいつら全員をなぎ倒すと違うように、左腕の剣を鏡に見立て、自分の顔を移して言い聞かせた。

 

「俺が目指す世界の為だ」

 

 この誓いだけは、絶対に揺るがない。 そしてこの誓いは俺だけの物ではなく、先代の英雄にもある物だ。

 

 

 _同時刻にて

 

「弱い……弱すぎる」

 

 海の上で侍の英雄が弱さに嘆いていた。それは自分自身に対してでは無く、自分に刃向かってくるKAN-SENに対しての物だった。

 

 一振でKAN-SEN達の艤装を切り刻み、二振りでその身を切り裂き、三振りで意思さえも切り刻む強さに、KAN-SEN達は為す術なく倒れていく。

 

 だが、KAN-SEN達は自分達の使命の為にも奮戦していく。

 

「これ以上好きにはさせないです!」

 

「改造した成果を見せるわよ、綾波!」

 

 勇敢にも綾波が2本の剣を構え、Z23が改良を施し綾波と同様に改造で強化された艤装を手に取っててロドンに向かっていく。

 

 綾波が先陣を切って突撃、Z23がロドンの背後を取り、鉄血特有の生物型の艤装の口の中にある銃口をロドンの頭部に向けると、Z23は間髪に入れずに引き金を引き、轟音と共に超弾速の徹甲弾を打ち出した。

 

 徹甲弾は大気の壁を突き破るかのようにロドンの頭部を目掛けて直進し、あとコンマ数秒でロドンの頭に直撃するその瞬間ロドンは後ろに振り向きながら刀を鞘に収め、右手で拳を使ってその裏拳で徹甲弾を横から殴りつけ、そのまま遥か彼方へと吹き飛ばした。

 

「素手で徹甲弾を……!?」

 

 有り得ないという文字がZ23の頭の中を埋めつくし、非現実的な現実にZ23は思わず怯え、艤装を下ろしてそのまま立ち尽くしてしまう。

 

 そんな怯え顔のZ23を知らない綾波は背後を向けたロドンの隙を付いたと考えたのか、ロドンに向けて2本の剣を振り下ろす。

 

 しかしロドンは背中にも目がついているかのように綾波の振り下ろされた剣をロドンは後ろを向いたまま両手で剣を掴み、一瞬力を込めると綾波の剣に亀裂が走り、綾波の白く刀身の赤い刀はガラスのように粉々になった。

 

「綾波の刀が素手でっ……?」

 

 綾波の刀を粉々にした手でロドンは綾波の胸ぐらを掴み、そのまま綾波をZ23がいる所まで投げ飛ばした。

 

 身体が軋みそうな程強く投げられた綾波がZ23と衝突するのは1秒も要らず、一瞬で綾波とZ23は衝突し、そのまま島の岸壁へと叩きつけられ、2人は意識を失って海の上に倒れた。

 

「綾波ちゃん! ニーミちゃん!」

 

 綾波達と一緒に戦闘に参加していたジャベリンは、まるで野球ボールの様に投げ飛ばされた2人を案じたが、英雄相手にその暇は無い。寧ろ、自殺行為他ならなかった。

 

「他人の心配をする暇があるのか」

 

「えっ……?」

 

 まるで瞬間移動でもしたみたいに一瞬で距離を詰められたジャベリンはロドンから感じた圧に怯み、足元が凍ったかのように動かなった。

 

 そんなジャベリンにロドンは躊躇いなく刀を振ろうと腰に添えられた鞘から刀を掴むと、突如ジャベリンの頭上からラフィーと島風が手甲に装備された2つの主砲をロドンに向けた。

 

「倒す……!」

 

「先輩方には手を出させません!」

 

 その時のラフィーの目はいつもの気だるげな小動物の目では無く、敵を倒さんとする確固たる意思がある戦士の目だった。

 

 島風もこれが初の本格的な戦闘と意気込んでいるが、その目は真剣だ。普段のようにふざけてる姿は、そこには無い。

 

 だがロドン本人にとっては動物と同じ様な目だとロドンは賞賛も関心もせず、ただの兎が迷い込んだと思う程度だった。

 

 ラフィーが打ち出した弾は予定調和の様にロドンは顔を少し傾けただけで交わし、ジャベリンの武器である槍を奪い、そのままジャベリンの腹部に蹴りを入れた。

 

「ジャベリン先輩! ラフィー先輩!」

 

 あまりにも早く鋭い蹴りにジャベリンは反応することも出来ずに口から吐瀉物を出してしまいそうな気持ち悪さを堪えたが、蹴りの威力は凄まじく後ろにいたラフィーさえも巻き込み、近くにいた島風も蹴りから生まれた衝撃波で吹き飛ばされた。

 

 普通の人間だったら間違いなく四肢が爆散し、内部の器官も辺りに吹き飛ぶ威力だが、KAN-SENだから何とか耐える事が出来たようで、ジャベリンとラフィーは近くにあった岩場に激突した。

 

「かはっ……げほっ……! はっ、ラフィーちゃん! 大丈夫!?」

 

 脳が揺れる気分になりながらも健気にジャベリンはラフィーの安否を確認した。だが、ラフィーは返事も出来なければ額から血を流すだけで目も開けなかった。

 

「そんな……しっかりしてラフィーちゃんっ!」

 

 どんなに叫んでもラフィーは目を開けず、慌てて治療しようと自分の服の一部を破いてラフィーの頭に包帯の様に巻いたが、戦場ではそれが命取りになる。

 

 遠くの殺気を本能で感じたジャベリンは先程蹴られた所に顔を向くと、ジャベリンの槍を持ったロドンがこちらに向かって槍を投げようとしていた。

 

 ジャベリンにはロドンが誰を狙っているのかを考え、咄嗟にラフィーを庇うようにして体を覆いかぶさった。

 

 蹴りでここから数百メートルも離れた岩盤に亀裂が走る程の身体能力を持った男が全力で槍を投げたらどんなものでも貫通するのはジャベリンは薄々考えついていた。

 

 だが、それでも僅かな可能性に駆けてジャベリンは艤装を展開し、何とか槍をラフィーに届かせまいとしていた。間違いなく当たればジャベリンの艤装は粉々になり、体も貫いて死ぬ事は間違いない。

 

 死を覚悟したジャベリンは瞳を閉じ、ロドンは標的目掛けて槍を彗星の如く投げた。

 

 音速を超えた槍は空気との摩擦で一部発火しながらジャベリンに向かっていき、音速を超えた事でソニックブームを巻き起こしながら進んでいく。

 

「先輩! 逃げて下さいっ!」

 

 島風が声を上げたが、その声が届く前に槍は標的に向かって貫通していった。

 

 槍はジャベリン……では無くその近くにあった岩盤を貫き、槍はその衝撃で砕け散りながらも、岩肌を紙の様に貫き、ガラスの様に砕け散った。

 

 助かった安心感と、目の前で突きつけられた圧倒的な力の差にジャベリンは呆然とし、ようやく蹴りの衝撃が追いついたのかジャベリンは静かに意識を失った。

 

「ジャベリン殿!」

 

「案ずるな。殺生はしておらん」

 

 ロドンの言葉の真意を探るように、島風は綾波、Z23、ラフィー、ジャベリンの倒れた姿を見て、艤装にほぼ影響はない事からとにかく生きている事に安堵した。

 

「これが力だ。世界を作り、この世を統べる為の絶対的な存在だ」

 

「つまり……力こそ全てだと仰りたいのですか?」

 

 島風の問いにロドンは頷いた。

 

「平穏も、平和も、秩序も、全ては力こそあっての物だ。故に力は無くならず、力が全てに置いて絶対条件となる」

 

「そんなの……間違っています! 島風は決してそうは思いません!」

 

「なら何故貴殿たちは争う! セイレーン達や当方達と戦う為に、貴殿らは刀を持ち、武器を持ち、そして貴殿らKAN-SENという力を持って対抗している!」

 

「それは……」

 

「いや……人類はいつだって戦ってきた。奪い、取り合い、平和を勝ち取るなどと戯言を言い訳にして倒し、そして憎み、潰し合う。これが何度繰り返された? 平和を願う者達が居ながらも! 力こそが全てでは無いと言い切れる者が居ながら何故だっ!!」

 

 ロドンの脳裏には、戦いの日々で埋め尽くされていた。

 

 死体の腐った臭いは体の内側から吐き気を誘わせ、血の匂いが何時でも頭を襲ってくる。

 

 そして刀で切りつける肉のそぐ音と、骨に達した硬い感覚が蘇る。

 

 これが何度も、何度も、何度も繰り返された。これで最期だとどれだけ思った? これで終わりだとどれだけ願った? 

 

 ロドンの願いと思いは力によってすり潰され続け、いつしかロドンの足元には葬ってきた死体の山が天にも届きそうな程で積もっていた。

 

 勿論これはロドンがイメージした前世……いわば比喩みたいな物だ。だが、ロドンはこの地獄のような世界に一筋の力を見出していた。

 

 最初は見えなかった光が、死体の山を築いたその時見えた事によって、ロドンはある願いと誓いを立てた。

 

「当方……いや、俺は作る。絶対的な力の名のもとによる平和を!」

 

 

 

 _同時刻にて

 

「どうしたエンタープライズ! その程度なのかぁ!?」

 

 煽るようにセイドはガトリング砲を捨て、艤装から2丁のビームライフルを手に持ってエンタープライズを狙撃した。

 

 狙撃したライフルの方が命中精度が遥かに高く、僅か一射でエンタープライズが乗る艦載機の機関部に命中し、エンタープライズは飛び降りることを余儀なくされた。

 

 エンタープライズは自由落下によって身動きが取れず、一直線に落ちる的になってしまった。

 

「へへ、ドンピシャに当てれるな」

 

 呑気に口笛を拭きながらセイドは落下していくエンタープライズの頭に狙いを定めた瞬間引き金を引き、青いビームがエンタープライズを襲った。

 

 避けられないとエンタープライズが悟った瞬間だった。突如エンタープライズの前に複数の赤い式神が集まって出来た壁が現れ、青いビームを式神が防ぎ止めた。

 

 これにはセイドは当然、エンタープライズも予想だにしていない状況だったが、エンタープライズは一瞬困惑しながらも、その赤い式神の持ち主が誰なのか理解すると、小さな笑みを浮かべた。

 

「あら、たまたまそこに飛ばしたらたまたま貴方を守る形になったわね」

 

「赤城か……助かった」

 

「勘違いしないで貰える? 私は貴方を助けたつもりは無いわ。けど……貴方がいたら優海が悲しむから仕方なくよ」

 

「ふっ、そういう事にしておこう」

 

 赤城はこう言ってはいたが、いくらなんでもタイミングが良すぎた事から恐らくは狙っていたんだろうとセイドは確信していた。

 

「お仲間さんが一隻来ても、俺は余裕だぜ」

 

「私一人では無くてよ」

 

「だろうな」

 

 セイドは自分の力とKAN-SEN達の力の差が分かっていた。自分の方が圧倒的に強いと自負しており、だからこそ増援も確信していた。

 

 その増援が来たのか突然笛の音が鳴り響き、聞き馴染みのない音にセイドは若干動揺し、音が聞こえる空に目を向けた。

 

 空は青く蒼天に広がり、良い天気だ。ビーチ日和には持ってこいとセイドは思っていたが、太陽を背に何か近づいているのが見えた。

 

 それは蒼く揺らめき、徐々に大きくなっていくと、そのシルエットが見え始めた。

 

「鳥……にしては足多くね?」

 

 セイドが目を凝らしてそのシルエットを見ると、鳥だと思っていた影には4本の足があり、まるで空を走っているかのような足運びだった。まるで獣……いや、獣そのものだった。

 

 そしてその獣の上には加賀が乗っており、加賀が青い式神を飛ばすと青い炎の弾を周りに浮かばせ、時間差で次々とセイドに襲いかかっていく。

 

「ワーオ、まさか鳥以外の動物が空からやってくるとはな!」

 

「なんなら横からの攻撃もついてくるわよ」

 

「良いね、暑い日差しのサービスはよ!」

 

 関心しながらもセイドは左手の銃で狂いなく向かってくる青い弾幕を撃ち抜き続け、同時に右手の銃でエンタープライズと赤城が撃ち出した弾を全てピンポイントで撃ち続けセイドには1発も攻撃が当たらなかった。

 

「なんて正確な射撃なんだ……!」

 

「だけど足を止めてる! 翔鶴、瑞鶴!」

 

 名を呼ばれたKAN-SENが加賀の後ろから飛び出すと、翔鶴が笛の音を鳴らしながら艦載機を飛び立たせ、飛び立った艦載機は瑞鶴の刀へと吸い込まれるように刀へと宿り、鶴の羽のように白い炎が瑞鶴の刀を燃え上がらせた。

 

「行って瑞鶴!」

 

「ありがとう翔鶴姉! はぁぁぁぁ!!」

 

「おいおいそういうのはオヤジの方にしろよな! コード:バレットビット!」

 

『承認、バレットビット起動します』

 

 両手で精一杯迎撃し、更に白い炎を纏った刀を防ぐのは不可能だと

 判断したセイドは音声認証での武装を展開し、セイドの艤装から無尽蔵の自立兵装のビットが飛び出していく。

 

 ビットは意志を持つかのように縦横無尽に動き回り、まず最初に瑞鶴を狙い始めた。ビットの銃口からは赤色のビームが打ち出され、セイドに切りかかろうとした瑞鶴は咄嗟に防御の構えを取った為、バランスを崩してセイドから距離を離されてしまう。

 

 ビットは次にエンタープライズと赤城を狙い、別方向からの攻撃にたまらず2人は攻撃を止めて回避に専念し、エンタープライズ達の攻撃が止まった隙にセイドは2丁の銃を直列に繋ぎ、ライフルへと変えた。

 

 ライフルを構えたセイドはスコープ越しで加賀の肩に狙いを定め、スコープを定めた瞬間に引き金を引き、その後直ぐに青い獣の頭に狙いを定めてまた引き金を引き、僅か1秒で2発のビームを放った。

 

 狙いを定める所から引き金を引くまではコンマ数秒の出来事で加賀は反応出来ずに加賀は肩にビームが貫通し、獣の頭も貫通してその役割を終えたかのように獣は炎となって霧散してしまい、寄る辺を失った加賀は海に激突してしまう。

 

「加賀!」

 

「私は……大丈夫……です」

 

「当たり前だ。急所外してんだからよ」

 

「どういう事? 貴方、私達を倒す気はないのかしら?」

 

「んー? 倒す気はねぇよ。これぐらい手加減しねぇとお前らすぐやられんだろ」

 

 セイドは本心のままにKAN-SEN達に言いながら口笛を吹いた。明らかな慢心にエンタープライズ達は怒りを通り越して困惑が埋め尽くされた。

 

 言葉の意味を間に受ければ、セイドはKAN-SEN達を倒すつもりは無いという事になる。実際その通りではあった。

 

 テネリタス全員は本気を出せばKAN-SEN達を一捻りする程の実力があり、ここまで誰も倒されなかったのは運や実力でもなく、テネリタスの慈悲にあった。

 

 それがなんの為なのかは分からない。だが、セイドの言葉を聞いてその慈悲を理解したKAN-SEN達は慈悲という名の屈辱を受けながらも、その真意を問いただした。

 

「お前達の目的は何なんだ!」

 

 火蓋を切ったのは以外にもエンタープライズだった。

 

「目的つってもなぁ〜。俺はただ、自由が作りたいんだけなんだよなぁ」

 

「自由……?」

 

 セイドは銃を閉まい、エンタープライズ達を囲んでいたビットさえもしまい、挙句の果てにはタバコを吸い始めた。

 今は間違いなく戦闘中なのにも関わらずタバコを吸い始めるセイドの考えは理解出来ず、今なら倒せると思ったKAN-SENもいた。

 

 だが、間違いなくこちらから仕掛けても倒せないという確信もあった。今までみせた圧倒的な実力差が説得力を持たせており、KAN-SEN達も自然と武器を下ろし、いつの間にかセイドの話を聞く姿勢へと変わっていった。

 

 しかしこの展開はセイドの思い描いた展開だった。

 

 武器を下ろしてタバコを吸うという奇想天外な行動と自分と相手の実力差という説得力を武器に、KAN-SENの『好奇心』を引き出した。

 

(食い付いたな……)

 

 人間にも、動物にも、そしてKAN-SENにも好奇心というものがある。何故そうなるのか、何故そうするのかという『無知』に対して人は『好奇心』が産まれる物であり、まずそれが話し合いでの絶対的なスタートだとセイドは理解していた。

 

 それを引き出す為に、セイドはこれまでの言動や行動はこの為の布石になっていたのだ。何がどうあれ、意識をこちらに向かせたのだから。

 

 だが、セイドが自分の理想を語りたかったのは本当だ。何故なら、KAN-SEN達に自分の行動を理解して貰いたいと願ったのだから。

 

「お前らさ、人類全員が自由って思うか?」

 

 セイドはエンタープライズ達にそう投げかけたが、答えられる者は居なかった。

 

「俺さ、結構ユニオンとか見てきたんだけどさ。居るんだよ、どっかに自由になれない奴がさ……」

 

 セイドの脳裏には、様々な理由で自由に慣れなかった子供達の姿が目に移った。

 

 貧困、境遇、人種、環境、様々な問題のしわ寄せが関係ない無垢な子供達に押し寄せた光景を見たセイドは、己の無知を恥じた。

 

 狭まれたレールの道でしか生きられない子供の姿を見たセイドは友人と決意した、誰しもが自由に道を選べる世界を造ると。

 

「お前らってさ、人類の事なーんにも分かってねぇよ。そんな奴らが本気で世界救えると思うなよ?」

 

 セイドはKAN-SEN達を軽蔑するように目を細め、顎を差し出すようにして口を半月の形にして笑った。

 

「俺は目指すさ、全員が自由に道を選べる世界をよぉぉ!!」

 

 まるでその世界が今すぐにでも叶うかのように、セイドは祝砲をあげるように弾丸を空に撃った。

 

 

 _同時刻

 

「ねぇねぇ、もうやめよーよ。戦闘って苦手だからやりたくないんだけどー」

 

 7代目テネリタス当主、マリン・テネリタスがアイリス・ヴィシア、そしてサディアのKAN-SEN達に向けてそうぼやいた。

 

 だが、戦闘が苦手と言ってはいても、彼女に傷は無く、逆にKAN-SEN達がボロボロになっていた。

 

「このッ……!」

 

 ボロボロになりつつもジャン・バールはマリンに向かって突撃したが、マリンの前に虹色の粒子が壁となってジャン・バールの進攻を遮られ、光はまるで銃弾の様にジャン・バールの体と偽装をボロボロにさせた。

 

「だーかーら、こんな事やめよ? そんな事より私の歌を聴いてよ♪」

 

 マリンは旗を海に刺し、指を鳴らすと海中から貝殻の形をした巨大な艤装が現れた。

 

 貝殻の艤装がゆっくりと開かれるとそこには武器は一切無く、アイドルが使うようなステージがあった。

 

 マリンはステージに上がるとスポットライトが当てられ、どこからともなく軽快な音楽が流れた。

 

『みーんな! 今日はとびっきりの歌を聴かせてあげるよー!』

 

「な、なんなんだアイツ!?」

 

『ミュージックスタート!』

 

 困惑するKAN-SENの前に粒子で作られたイルカ達がステージの前でうさぎのように飛び跳ね、マリンの前にいたKAN-SEN達はいつの間にか戦う姿勢を失いつつあり、マリンの歌に耳を傾けた。

 ﹁

 どこまで行けば あの夢へ逢えるのだろう

 

 あの青い空の下で君は生まれ 貴方はどんな思いで海を見たの

 

 上手く言えないけれどとても大事な夢をみたの

 

 生まれた時に定められた私の夢は誰にも理解されなくて

 

 私も君の事を理解しようとはしなかった

 

 それでも君は愛してくれたよね

 

 私を永遠にしてくれたから

 

 その永遠を皆にわけられる様に私は歌うよ

 

 この穢れた世界の中でも永遠の美しさがある花があると伝える為に私は歌う それが永遠になった私の役目だから

 ﹂

 

「この世界はとっても綺麗だよ。歌を、曲を、芸術を美しむ心が人にはあるの。でも……皆が皆そうじゃないのが悲しいの」

 

 マリンはマイクを手放し、突きつけた旗を持って大きく振り、光の粒子を周りに撒き散らすと、KAN-SEN達は薄れかけた戦意を取り戻した。

 

 それほどマリンから漏れだした戦意を感じ取ったのだ。さっきまで歌っていたマリンとは、別人のように。

 

「だから私は皆が綺麗な世界を美しむようにしたいの。だから私は歌い続ける。その邪魔をするのなら……こっちも容赦しないから」

 

 

 _同時刻

 

「科学者とは孤独……そう思いませんか? ビスマルクさん」

 

 8代目テネリタスの当主、ミーア・テネリタスが鉄血の指導者的存在であるKAN-SEN、ビスマルクにそう尋ねた。

 

 まるで嵐の前の静けさのような雰囲気にKAN-SEN達の神経はピリつきはじめ、誰も動きたくてと動けない金縛りにあっていた。

 

 そんな金縛りの中でビスマルクは半歩だが右足を出し、ミーアに近づき、その問いに答えた。

 

「いつだって科学者は孤独な者だ。だが、その孤独というのは一人では内無い」

 

「と言うと?」

 

「科学という物は他者の価値観の融合や発展によって進歩するもの。孤独な科学者というのは、思考や論理が孤独と言う意味だ」

 

 自分の考えを嘘偽りなくミーアに言ったビスマルクに、ミーアは賞賛の拍手をあげた。

 

「その通りです。科学者というのはそういう意味での孤独で無ければなりません。ですが、私はそうなれませんでした。そしてそれが……私の罪です」

 

「懺悔を聞くつもりは無いわ」

 

「ふふ、そうですか。では同じ科学者同士、理論を交わしますか?」

 

 ミーアは自分の周りの海を凍らせ、その氷から椅子と机を産み出させ、ミーアの周りから飛んでいたビットがティーカップへと変形させ、更に別の機械から水を生み出した。

 

 無から有を生み出した現象にビスマルクや鉄血のKAN-SEN達は驚き、ミーアはそれを気にすること無くまた別の機械にミーアはピアノの奏でるかのようにキーボードを打ち込み、透明の水が沸騰寸前の温度となり、色が紅茶の美しい澄んだ色へとなり、ただの水が紅茶へと生まれ変わり、ティーカップへと注いだ。

 

「さぁ、皆様もどうぞ」

 

 ミーアは本心からKAN-SEN達をもてなそうとしたが、KAN-SEN達からすれば得体の知れない物だった。

 

 当然そんなもの飲める訳が無く、それ以前に近づく事さえ躊躇った。

 

「あ、もしかして毒がある事を警戒していますか? 大丈夫ですよ、成分を生み出した際に毒は入れていませんし、むしろ普通の紅茶よりも美味しくなる様にしたんですけど……」

 

「それよりも貴方達の目的が聞きたいのだが」

 

「目的ですか? そうですね……強いて言えば、絶対平和の基での科学の進歩を確立させる事ですね」

 

 さも当然かのようにミーアは氷の椅子に座り、自分が生み出した紅茶を飲みながらそう言った。

 

「私が思う平和の絶対条件とは、この世に生きる人全員が心から安心して人生を過ごす事です。そのために科学が存在しているのに……その発展に貢献しているのは戦争でした」

 

 ミーアの目が曇り、ティーカップの揺れで紅茶を持っていた手が震えていたのが目に見えた。

 

「今でこそ当たり前に使われている家電や必需品は戦争でそれが必要だったから生まれた物です。元々の用途は違えど、考え方次第では生活を豊かにする反面、悪用すれば命を奪う毒にもなる……まさに科学は光と影です」

 

「貴方の言い分とこの状況がどう結びつくのかしら。貴方達がやっているのは、ただいたずらに恐怖を植え付けているだけ。貴方が哀れみ、忌み嫌いとしている戦争と同じなのよ」

 

「その通り。では再度質問です。私が最初に言った絶対平和とはどうやって出来ると思いますか? ビスマルクさんだけでは無く、皆さんで考えてください」

 

 震えた手で紅茶を飲み干したミーアは、鉄血のKAN-SEN達がどう答えるのか待っていたが、ミーアが望んだ物に場面は動かず、鉄血のKAN-SEN達は武器を手にした。

 

「貴方は1つ勘違いをしている。私達は貴方の議論を交わす為にここにいるのでは無い。己の存在意義の為に、敵を倒し、仲間を守る。それが今の私たちがやるべき事だ」

 

 鉄血の御旗を掲げながら漆黒のマントをなびかせたビスマルクの姿と宣誓に鉄血達は士気を上げ、それと対になるようにミーアは悲しげな表情を浮かべた。

 

 だが、ミーアは同時に笑っていた。それは哀れみやこれから起こることの悲劇に対して、目に映る者がどう乗り越えて行くのかを期待している目でもあったが、KAN-SEN達に取っては、愉悦に満ちた笑みであった。

 

「……では、ちゃんと仲間を守ってくださいね。その気持ちが暴走しないように祈っています」

 

 祈る等という科学者が使わない言葉を口にした瞬間、突如島の上空の雲がドーナツの様な穴が開き、あまりの異常現象に鉄血だけではなくテネリタス以外の全ての者があの穴の空いた雲に目を向けた。

 

 そして次の瞬間、穴の空いた雲の中にまるでそれが今そこで作られているかの様に、六角形の光と共に少しづつその姿を現しつつあった物体があった。

 

 それは鋼鉄な黒に血管のような赤いラインが蠢くように周期的に光り輝いており、その全長はこの島の直径程巨大であるかつ、ロケットの様な形は誰が見てもそれだと認識する物だが、それが規格外の大きさに戸惑いを待つと同時に、ここにいる全てのKAN-SEN達の刻み込まれている本能がそれに危険信号を出していた。

 

「あれってミサイル……? なんて大きさなのっ……!」

 

「姉さん、あれってまさか……」

 

 ティルピッツがあの黒いミサイルが何なのかを察知し、ビスマルクに目を向けると、ビスマルクも同じ様にあのミサイルの危険さとそれを躊躇いなく使うミーアに恐怖と狂気を覚えたビスマルクは誰にも見せないほどの焦りが混じった声を出した。

 

「貴方……なんて物を使ったんだ!!」

 

「早く逃げた方が良いですよ。アレの危険さは貴方達が一番良く分かっている筈ですから」

 

 ミサイルはゆっくりと島に近づく度に赤いラインが輝く周期が早まり、最早臨界は時間の問題だった。

 

 あのミサイルの危険性を知っているビスマルクは直ぐに他のKAN-SEN達に連絡を取り、鉄血のKAN-SEN達もこの場から全速力で離脱した。

 

『皆逃げっ……』

 

「ここから始まります。あの子が望む世界が……」

 

 ミーアの言葉と同時にこの海域にいるテネリタスが離脱すると、その黒いミサイルは白い光を一瞬だけ生み出し、その直後轟音と共に島を飲み込む程の爆発が起こった。

 

 誰しもが一瞬何が起こったのか分からなかった。最後にある記憶はビスマルクが荒げた声であり、その次の瞬間雷のように音と光がほんの少しだけズレた後、体を蝕む熱さと風がまるで鈍器になって体を粉砕させる程の衝撃だった。

 

 いつの間にか気絶していた者は直ぐに早い段階で目を開ける事が出来、何とか意識を保てた者はそのミサイルの恐ろしさに体とその体を作り出している細胞が震え出し、声を失っていた。

 

「これって……嘘っ、こんなっ……!」

 

「さっきのミサイルってまさか……」

 

 かつて自分達が料理を食べ、交流を深めていた島だった所は瓦礫の山に立へと変わり、たち上る消炎と、灰による黒い雪が降り注ぎ、島に残っていたのはキノコの様な形をした爆炎だった。

 

 その爆炎を見たKAN-SEN達は、メンタルキューブに刻まれた記憶を知る。

 

 禁忌とも呼ばれるそのミサイルの名を、誰かが口に出す事さえ躊躇っていたが、言わなければずっとその恐怖に縛られてしまうかもしれないという錯覚が遂にその禁句を誰かが言い放った。

 

 それは果たして、人が生み出した過ちなのか、それとも人類が生み出した英智なのか、それとも自然が生み出した世界の総意なのか。

 

 今ここに、禁忌がまた生まれたその名前は……

 

「核ミサイル……?」

 

 ここに今、かつての英雄が幕を開けた戦争が始まろうとしていた。

 

 核という、人類の英智であり過ちでもある鐘を鳴らして。

どのテネリタスが好き?

  • ロリママ創造者の2代目 ラハム
  • 人類最強の天然3代目 アトラト
  • 食いしん坊な絶対守護者4代目 シーア
  • 武士道と極める騎士5代目 ロドン
  • 風のように自由なガンマン6代目 セイド
  • 完璧で究極のアイドル7代目 マリン
  • おっとり包容力で全知全能の8代目 ミーア
  • 元人間のセイレーン 10代目マーレ
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