もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜 作:白だし茶漬け
最初に耳を突き破る程大きな聞こえ、その後真っ白で眩い光が目を直撃した。
そしてその数秒後、物凄い衝撃と風が俺を吹き飛ばそうと荒ぶり、青い空を覆うように黒い雲が出来上がり、島の中心にはキノコ型の火災雲が起こった。
アレが何なのか俺には分からないけど、俺の中にある『何か』が、訴えかけていた。
アレは危険な物であり、畏怖するものだと。
さっきから自分の意志とは無関係に体が震えだし、未だにあの爆発の衝撃が残っている。
何も分からないという恐怖と、ここから見える程の巨大なミサイルに対しての畏怖が合わさり、まるで体が凍りついたかのように動けなかった。
「何なんだアレは……? 一体あのミサイルは?」
「……核爆弾」
オロチさんも俺と同じ様に震えながらも、ミサイルの名前を口にすると、直ぐにアトラトさんの方に顔を向けた。
「貴方達……とんでもない物を使ったわね。まさかあんな物を使うとは思わなかったわ」
その時のオロチさんの目は、人を人とは見ていない、悪魔か、人では無い何かを見たような目だった。
「へぇ、君ってそんな目をするんだ。指揮官君と一緒に過ごしたから、人間が好きになった?」
「……そうかもしれないわね。今の私っておかしいのかしら、何故か貴方達に対して言葉では言い表せない何かを感じるの。これが感情かしら……だとしたら、私も随分と変わったわ」
「じゃあその感情って何?」
「分からないわよ。怒り? 恐怖? 葛藤? 全部かもしれないし、全部違うかもしれない。だけど、今貴方達がこの世界で一番脅威だって言うのは分かるわ」
初めて感情を剥き出しにしているオロチさんはアトラトさんに向かって攻撃を始めた。
手始めにオロチさんは蛇の形をした主砲から出す赤いビーム砲をアトラトさんに向けて放ったが、赤いビームはアトラトさんには当たらず、宙に浮いた剣型のビットがビームを切り裂いた。
「感情的になっただけで勝てたら人間苦労しないよ」
「そのようね」
「逃げても良いよ。僕達の目的はそこの指揮官君をあそこに行かせないようにする為だしね」
「俺をここに……?」
「そっ、だから僕達は本気で君たちと戦うつもりは無いって訳。まぁ、念の為にそのバリアに閉じ込めているのは申し訳ないけど……」
本気で申し訳なさそうな顔がますます不気味さを醸し出し、同時に島にいる皆の安否が心配が体を支配した。
早く戻って皆の安否を確認し、助けを求めているなら助けないと行けない。必死にバリアを壊そうと武器を振り回し、弾丸を撃ち続け、拳で殴りつけようとしても、バリアはビクともしなかった。
「だったらこれで……」
最後にリフォルさんから貰った左腕のパイルバンカーを構え、パイルバンカーの杭が腕の動きに連動して内部に入り込み、拳を前に押し出した瞬間、杭が飛び出すと同時にブースターが起動し、推進力を破壊力に変わりつつあった。
通常の十倍の炸裂とブースターによる加速力、そして艤装の出力による破壊力が合わさった杭とバリアがぶつかると、ガキっと甲高い音と共にパイルバンカーの装甲に亀裂が走り、左腕がまるで多くのハンマーに力強く殴られた様な痛みが襲う。
「これでもダメなのかっ!?」
俺が今一番出せる近接武器の中で一番の威力の攻撃がビクともしないバリアに圧倒され、思わず数秒立ち尽くしてしまった。
亀裂どころか傷一つすら付いておらず、パイルバンカーと俺の左腕もボロボロになってしまっている。
この程度の威力じゃバリアを突破する事は無理だ。こうなったら……レールガンも使うしかない。
パイルバンカー単体が無理なら多分レールガンも無理だ。なら、そのどちらも使って突破するしかない。
多分全ての骨がボロボロになっている左腕を鈍い声を漏らしながら上げ、右手腕部の艤装に装填されたレールガンを同時に起動させ、狙いを一点に定めた。
たとえこの両腕が使えなくなったとしても、俺は皆の所に帰らないといけない。
誰かを守る為に俺はこの力を使うって決めたと誓った瞬間、パイルバンカーとレールガンを同時に起動させた。
左腕のパイルバンカーが杭を打ち出すために限界まで火力を高めてているのと同時に、レールガンの威力を最大限に引き出す為に艤装のエネルギーを全て火力に回し、余剰なエネルギーの暴走で艤装が火花を散らし、今でも爆発しそうになっていた。
多分この後俺はまともに動けない。だからその後はオロチさんが頼みの綱だ。
オロチさんに目を向けると、オロチさんは一瞬自身の考えに疑いを持ちながらも、俺ならやりかねないという確信を持ってシーアさん達の方に向かった。
「まさかあの子……止めなさい! そんな事したら貴方が!」
「邪魔させないわよ!」
オロチさんが僅かな隙を作るために全方位にビームを乱射させ、流石のテネリタス全員もこれには防御するしか無かった。
このチャンスを逃す訳には行かない。絶対にバリアを壊すという意志と共に、最大火力のパイルバンカーとレールガンを同時に起動させ、パイルバンカーの杭とレールガンの弾丸が一点のバリアに衝突したその時だった。
パイルバンカーは爆発し、レールガンの砲塔が艤装から与えたエネルギーの許容限界を超えたせいで青い稲妻を纏わせながら爆発し、その衝撃で体と艤装も巻き込まれてしまった。
「がぁぁぁぁぁ!!」
「なんて事……」
左腕の骨が砕け散る音と、艤装の武器の爆発の熱さと衝撃が体を襲い、体が引き裂かれそうな痛みに襲われた。
最早声すら出す事も難しく、艤装は悲鳴をあげて涙を流すように白い装甲が剥がれ落ちていき、意識を保つ事すら難しくなった。
だが朦朧する中で、一点からバリアに亀裂が走ると、僅か1人に抜け出せる程にバリアが剥がれ落ちたのを見た。
確かな達成感と安堵を胸に弱々しい一歩でバリアを抜け出したのと同時に体に力が入らなくなった。
そこで足の骨も折れているのが今ようやっと理解ができ、海に落ちるのをオロチさんが体を支えてそれを防いでくれた。
「無茶するわね全く」
「は…………やく、み……んな」
「分かってるから喋らないの」
オロチさんは逃げるためにスモーク弾を放ち、アトラトさんの視界を封じた瞬間、急いで島へと全速力へと向かい、そこで俺の意識はプツリと途切れてしまった。
「かあ…………さん………………」
「逃げられたわね、アトラト」
「いや、10代目君がアレを使ったという事は目的自体はほぼ達成しているよ。もう僕達が指揮官君を足止めする理由は無いかな」
アトラトは剣を収める感覚で武器の姿を消し、背中から俯いているのが分かるほどのショックを受けていたシーアに手を伸ばそうとしたが、彼にはすんでのところで伸ばそうとした手を止めた。
「父親らしい事はしないのかしら?」
母親であるラハムに慰めなさいと言われているかのような圧を感じたアトラトの姿は、最強の英雄では無く母親に叱られた息子そのものだった。
どの人間も子供は子供という事だろうか、母親の圧に負けたアトラトは自分の娘である筈のシーアの肩に恐る恐る手を置いた。
「……大丈夫?」
精一杯の慰めは傍から見たら慰めとは到底言えない不器用すぎる言葉だったが、シーアにとっては十分過ぎるほどだった。
「ありがとうございます、お父様。もう……大丈夫です」
シーアの目頭が少し潤み、少しだけ赤くなっているのは何も言わなくてもその原因は分かるだろう。
「私の盾で誰かが傷つくなんて……」
「シーア、これはあの子が選んだ道。誰も止めることなんて出来ないのよ」
「分かってます! ですが私は……私はそれでも今度こそ全員が助けられる盾に……」
「分かってる。指揮官君が全力で攻撃しようとした時、バリアを消そうとしたんだよね」
「はい……ですがオロチに……」
「妨害されると思ったんだろうね。……難しいな、分かり合うのは」
オロチさんの肩を借りてようやく島が見え始めたけど、島は数時間前と姿を変え、悲惨な姿になってしまった。緑一面だった所は灰色になり、立派な建物は全て瓦礫になっていた。
これが突如島の上空に現れた1発のミサイルによって引き起こされたとは到底考えられず、ただ戦慄して立ち尽くす事しか出来なかった。
「これが核爆弾……まさかこれを使うなんてね」
「あの……さっきも言っていた核爆弾って一体……」
オロチさんは未だに登っているキノコ型の爆煙を眺めると、吐き捨てるように核爆弾の事について話した。
「核爆弾……人類が生み出した、叡智でもあり、大罪でもあるもの。そして、KAN-SEN達が生み出したソースである【かの大戦】を終わらせた物よ」
かの大戦……KAN-SEN達が生まれる為に必要な情報がある大きな戦争と言うぐらいしか情報が無く、多分殆どの人がKAN-SENを作り出す為に必要な物しか分からないものだ。
歴史が記された本にもかの大戦については殆ど情報が乗っておらず、断片的にしか情報が無い。唯一分かるのは、KAN-SEN達が生まれる基となる情報と、途方もない大きな戦いだった事のみだ。前に見た本によれば、最悪の場合、人類が滅んでいたかもしれないとも記載されていたのを覚えている。
そして、オロチさんがいった核というのがその大戦を終わらせた……そんなのどこにも載ってないけど、この島の惨状を見てしまったら信じてしまう。しかもそれが人の手によって作り出したなんて……
「待ってください。じゃあどうやってテネリタスはその核を作ったんですか? だって、俺たち核って言葉初めて聞いたんですよ?」
この世界で誰にも知らない兵器の筈なのに、それを使ってきたテネリタスは少なくとも使う方法を理解しているという事だ。
かの大戦がどんなものかさえも分からないと言うのに、どうやってそんな兵器を作り出せたんだ? 可能性があるとするなら、セイレーンだろうか。
元々セイレーンによって造られたオロチさんが核の存在を知っているということは、セイレーンは核の存在もしくはそれを作り上げ、それをマーレさんが持ち出したのが自然だけど……
「あれは私が作ってしまった罪ですよ、指揮官さん」
海の上を歩くようにしてこの廃れた島を背にしてやって来たのは、鉄血で出会ったテネリタスのミーアさんだった。
「お久しぶりです……って、酷い怪我ですね」
俺の酷い怪我を見たミーアさんは口を手で覆って痛々しい顔で同情しており、戦う意思は無いように思われた。
それよりも俺はある言葉を聞き逃さなかった。
「罪ってどういう事ですか? あれは貴方が……作ったんですか?」
するとミーアさんの顔は曇り、瓦礫の山となった島の有様と爆煙を見た。
「そうです。人が生み出した最悪の兵器。それが核ミサイルです」
「どうしてそんなものを……あんなもの、人が扱って良いものじゃない!」
「そんなものは分かってますっ!」
初めて聞くミーアさんの怒鳴り声は、この海域を響かせるようだった。思わず口を閉ざしてしまい、振り返ったミーアさんの目は後悔や怒りが混ざったような眼をしていた。
「核には無限のエネルギーを生み出す力があります。発見した時はそれもう喜びましたよ。これで人類はもっと発展し、より豊かな未来になると。……ですが、そうはならなかった」
ミーアさんは言葉にするのもおぞましいのか、その後については何も喋らなかった。
その代わりに口を開けたのは、オロチさんだった。
「その発見の技術を貴方は全ての陣営に提供した。それが引き金となり、ユニオンがあの核ミサイルを作り出した。これで合ってる?」
「……流石元々セイレーンによって造られた艦ですね。その通りです。そしてそれが、アズールレーンとレッドアクシズと分断するきっかけになりました」
「アズールレーンとレッドアクシズが分断するきっかけ……?」
久しく聞いていない言葉がまさかここで聞けるとは思わなかった。
レッドアクシズ……今は、アズールレーンと統合する形になってその言葉形骸化しているけど、アズールレーンが設立された数年後、突如として重桜、鉄血、ヴィシア、サディアが結成したいわばもう1つのアズールレーンだ。
セイレーンの力を持ってセイレーンを倒す目的で結成され、勿論これには批判的な意見もあり、結果として対立する形になってしまった。
「でもそれでどうして対立のきっかけに……」
「簡単ですよ。核爆弾が強力だから、それに対抗する武器が欲しかったのです。そしてそこで出会ったのが……セイレーンという訳です。最も、あちらから人類にコンタクトを取ったようです。後は想像はつきますよね?」
ミーアさんの言う事は分かる。
島1つ簡単破壊できるミサイルを作れたと言えば、まず湧き出てくるのは恐怖だ。下手すれば自分たちの陣営が壊されるという、一種の束縛さえも当時の人達は思ったに違いない。
だからこそ、レッドアクシズに入った陣営は核に対抗できる為の技術を欲しがるために、セイレーンと協力したいたのだ。
「そして、セイレーンがこの世界に介入したのはこの世界で作られた核を抹消する為です。こんなものこの世界にあったら、一瞬でこの星が死にますからね」
「核の情報があまり無かったのはその為か……」
「ですが私の罪は消えません。現に、人類は1度ある陣営に核爆弾を落とし、多くの人間の命や場所を奪ったのですから」
「あれを人類が!? その落とされた陣営って一体……」
「……重桜よ」
「は……?」
思わずオロチさんが発した言葉を疑ったが、オロチさんの顔は、嘘をついている顔では無く真相を話す語り部のような目をしていた。
「重桜が……核に?」
「ええ。元々重桜は1つの陸続きの陣営でしたが、核よって様々な島に分かたれる事になりました。貴方が育ってきた重桜の形は、核によって作られた場所という事になります」
思わず声を失ってしまい、そして今……また重桜が核に撃たれた事実に何かが切れた音がした。
「貴方達は……また重桜を傷つけようとしているんですか……?」
「いいえ、私もこれ以上核は使いたくありません」
「じゃあなんで!!」
「それです。その敵意を、憎悪を、私たちが絶対的な悪だと決めつけられる事があの子の目的だから」
「何を言って……」
その時、島の中央で巨大なダークブルーのビームが柱のように雲を突き抜け、突き抜けた雲の穴に光が差し込んでいた。
崩壊した島の背景にした神秘的にも見られたその陽射しの下には右腕の銃を空に掲げ、黒いコートを羽織ったマーレさんが瓦礫の山の天辺に立ち、その周りには小さいがビット兵装が向けられていた。
「一体何を……」
「……世界は、何も変わってはいない。何も変わらなかった」
突然マーレさんが言葉を放つと、その声が大きく反響し、この海域全てに声が届かせるようにしていた。
「これってまさか……」
「自由と謳いながらもその自由を圧制する者よ。
栄光に縛られ続けその下の者を見ようとしない傲慢な王よ。
偽りの神秘に踊らされ続けている哀れな獣よ。
未だ人の手に縛られ続けている鉄の兵器達よ。
己の正義が為に道を違えた、暗躍の糸に縛られた愚者達よ。
過去の栄光に縋り虚構の威厳を振りまくだけの傍観者達よ。
疑念を抱き続けながらも孤独にはならぬ弱者の騎士達よ。
青き航路を求む者として、紅き枢軸の力を持つ矛盾を背負う者よ……」
(全ての陣営に対して言っているのか……?)
「そして、この海を統べようとしている者達よ!! 我らテネリタスと、十代目当主でありアズールレーン指揮官のマーレ・テネリタスがここに宣言する!」
高らかに自分の名前を叫び、天高く左腕の剣を空に掲げた。
「この海を空を、そして星すらも我らテネリタスが統べると!!」
全陣営……いや、全人類に対しての宣戦布告は世界を震撼させた。
無理だ、出来るわけが無いと思うのが大半だ。
だけど俺たちは今それが実現可能に出来る力を目の前で見てしまっている……この人達ならやりかねない。
本当に……全ての陣営を征服するつもりだ。
「全陣営の征服がマーレさんの目的という訳ですか」
ミーアさんは何も言わず、ただ含みのある笑みを浮かべるだけだったが、それだけで十分な程に答えが出た。
「正直、そういう事をする人達には見えないです。マーレさんも含めてテネリタス全員」
今までの戦闘に関しても、テネリタス全員は被害を出さないようにして戦っていた。それはマーレさんも同じだ。
どことなく、人類を守ろうとする行動があったのにも関わらず、こうして
「私達を聖人か何かと勘違いしているようですね。私と貴方達は敵だと言うことを忘れずに」
突然ミーアさんの周りにこちらに銃口を向けた花形の自立兵装がノータイムでビームを放ち、傷ついた体では足も動かず、肩を貸しているオロチさんだけが頼りだ。
だが、細いビームの弾速は予想以上に速く、オロチさんも俺の肩を持ったままの回避は無理そうだ。
「せめてオロチさんだけでも……」
「貴方何やって……」
何とかオロチさんを右腕の力だけで振り払うと、オロチさんは手を伸ばそうとしていた。
だけどその手を握ること無く海に膝をつきながらも、迫り来るビームに対して大剣を構えて頭と体を守るようにした。
しかし艤装がボロボロのせいで上手く力が入らず、大剣は3発程ビームを直撃しただけで壊れてしまい、艤装に直撃を受けて更にダメージを受けてしまう。
もうこれ以上は耐えられない。慈悲もなくミーアさんは第二波を打ち込もうとしていた。
大剣も折れて武器としての役目を失い、身体中が動きたいく無いと叫んでいるように痛みが走る。
それでもミーアさんは無慈悲にも第二波を打ち込もうとビットの銃口が淡く光出している。ダメだ、間に合わない……!
死を覚悟しつつも何とか生き延びようともがこうと足に力を入れた瞬間、足に出来た傷から赤い血が吹き出し、足に力が入らず膝が崩れるように倒れてしまう。
オロチさんが助けようと動いているけど間に合わないのは目に見え、熱線が放たれようとしたその瞬間、空から突然青い鳥が彗星の様にミーアさんに襲いかかってきた。
「……!?」
青く光る鳥の突撃にミーアさんは撃ち落とし、更に襲いかかって来る魚雷と榴弾がミーアさんに襲いかかり、攻撃が来た方角の空に顔を向けると、そこから艦載機の音が大きく近づく。
その艦載機の上には、灰色の髪をなびかせながら不安定な位置でも正確に狙いを定めたエンタープライズと、海上には白いメイド服で颯爽とベルファストが現れた。
「エンタープライズ!ベルファスト! 良かった、無事だったのか!」
エンタープライズが来た驚きよりも無事だった事の安堵が込上がり、エンタープライズと目が合うと同時に矢が流星の様に降り注ぎ、ミーアさんは距離を取った。
「指揮官!」
「ご主人様!ご無事ですか!?」
エンタープライズは俺の怪我を見ると途端に艦載機から飛び降り、血相を変えてこっちに来た。
「酷い怪我だ。……あの女がやったのかっ」
「いや……これは俺がちょっと下手をやらかしただけだよ。それよりも皆はどうした? 母さんや姉さんは?」
「ご心配なく、ジン様達は避難船で脱出し、KAN-SEN達も避難できています」
「皆が無事ならそれでいいよ。本当に良かった……」
皆が無事な事が何よりも救われ、力が抜けてエンタープライズに体を貸すように倒れてしまった。
「無理をするな指揮官、ここは私に任せて速く避難船に向かうんだ。そこにヴェスタルが待機している筈だから直ぐに修理して貰うんだ」
「ごめん……ありが」
「お前にもう居場所は無いぞ」
体を震わせる重い声がすると、島の中央からここまで跳んだせいで着地の衝撃波と水飛沫が襲いかかって来た。
海水で傷が沁み出し、重くなりつつある瞼を開きながらも、目に映った人物は懐かしくも忘れられない人だった。
「マーレ……さん」
名前を呼んでも対した反応はせず、ただ無言でこっちを見ていた。
「優海、お前にもう指揮官としての居場所は無い」
「どういう……事……ですかっゴホッ……カハッ……」
思った以上にダメージが大きく、最早喋る事さえ困難になっている。今間違いなくマーレさんとミーアさんに攻撃されたら間違いなくやられる。
それでも2人が攻撃しないのは、ただの哀れみなのだろうか。膝をついている俺をマーレさんは見下ろすようにして睨むと、マーレさんは話を続けた。
「世界にとってテネリタス10代目、マーレ・テネリタスはアズールレーンの指揮官であり、今この瞬間人類の敵になった。そして、そのマーレは誰だ?」
「まさか……」
「そう俺だ。俺がマーレ・テネリタスであり、今この瞬間お前からその名前を返して貰う」
世間にとって、アズールレーンの指揮官はマーレ・テネリタスただ1人。そんなことは最初から分かっていた。
借り物の名前が俺を指揮官にしてくれているという事実を忘れないでいるつもりだった。
だけど、忘れてしまっていた。まるで甘い夢から覚めてしまったような感覚で、呆然と立ち尽くし、マーレさんは俺の心を代弁するかのように言った。
「元々この世界に天城優海という男はこの世には存在しない。この世界でお前の居場所はどこにも無い」
突きつけられた現実は、体の傷よりも深く傷つけられた。だけど認める訳には行かなかった。何故なら、俺自身はここにいるんだから。
「違う! 俺はここにいる!」
「あぁそうだ。人類の敵としてな」
「どういう事ですかっ」
「俺は指揮官として人類に宣戦布告した。そしてお前と俺の顔は同じ……言いたい事は分かるだろ」
「まさか……」
「そう、世間にとってはお前が人類に宣戦布告した事と思うだろう。だからお前の居場所はどこにも無い。指揮官としての地位も、力も、そして仲間もどこにもな」
普通の敵ならここで勝利を確信して高らかに笑う所だろう。だけどマーレさんはまるで文章を読み上げるように淡々と事実を言いながら、笑いもせずに後ろに振り返った。
あの時、宣戦布告をする際にマーレさんの周りにあった物がカメラ見たいな物だとしたら……あれが全ての人間に知れ渡っているという事になる。
つまり、俺が……指揮官がアズールレーンを裏切り、人類に対して宣戦布告をしたという事実だけが受け取られたということだ。
「お前はもう指揮官じゃないのさ」
「指揮官じゃ……無い?」
指揮官という立場を失った俺はある事を考えてしまう。指揮官では自分は何なのだろうと、真っ先に思い浮かべたのは、ただの人間……でもこれは願望だった。
俺は人間じゃない、それはこの艤装が物語っていた。恐る恐る傷つき、震えた手と壊れた武器を見てしまい、その願望は砕け散ってしまう。
「お前は俺と同じただの人の形をしたバケモノだ」
違うとは否定出来ず、受け入れ難い現実に打ちひしがれてる。足元から地面が崩れ落ちる様なショックで言葉が出ない。
「指揮官とお前は違う! その事を示せば……」
「それが誰に分かる。どうやって理解して貰えるんだ。人間同士がまだ理解出来ないでいるのに、どうやってそれを示すんだ」
「それは違います。人類は貴方の様に愚かな人達ではありません。共に話し合い、歩み寄れば分かり合える事ができる筈です」
「分かり合う訳が無い。人は皆、自分だけの幸せだけを求める生き物だからな!」
マーレさんの言い分にエンタープライズは気圧されるように口を閉ざしてしまった。
「お前達は何も知らない。知らなすぎている。人は愚かで、醜悪で、欺瞞な事に!」
これまでにない感情的な表情のマーレさんが振り返ると、思い出したくない過去を必死に押さえつけようと頭を押さえつけていた。
「そのせいで俺や……母さんや罪の無い人達がどれだけ無意味に死んだんだ! 分かるかっ!? 俺や母さんはアズールレーンに殺されたんだよっっ!!」
「アズールレーンに……!?」
荒々しい息で呼吸が乱れていたマーレさんは直ぐに落ち着きを取り戻しつつも、事の経緯は何も話さなかった。
単に話す理由が無いからだろう。だが、反応からしてマーレさんが死んだ事件がきっかけで今の状況になったのは確かであり、しかもアズールレーンが絡んでいるとなると……根は深そうだ。
「ともかくだ。そいつはもう指揮官じゃなくなり、俺が宣戦布告したことによりアズールレーンの不信を抱く者が火に集まる蛾のように集まるはずだ。お前はのうのうと……」
その時だった。マーレさん……では無く、ミーアさんが目の色を変えた。
「後ろです!!」
後ろ? 後ろって何だ? だけど真剣な声色と命令形な口調で咄嗟に後ろに振り返ると、その瞬間艤装を貫通して背中から腹にかけて黒い矢が体を貫通した。
体が破り裂かれる様な痛みが一瞬強く入り、その後腹から煮えたぎるような熱さが体を駆け回った時、体に力が入らなくなって倒れてしまった。
その時、飛び散る血飛沫の一部がエンタープライズの顔と髪を赤く汚してしまい、その顔を曇らせながら、光を灯すのを止めた目をしていた。
「……指揮官? 指揮官っっっ!!!!」
エンタープライズが声を震わせながら倒れた俺に血相を変えながら隣に来たのに対し、後ろからの攻撃への迎撃に艤装に搭載されたビーム砲を構え、狙いを定めていた。
俺も倒れながらも背後の存在を何か確認する為に後ろに目を向けると、そこには灰色の髪にボロボロになった黒いマントを羽織った誰かがいた。
その目は冷たくて全てを諦めたような虚空が広がりつつも、どこか懐かしい感じがした。
俺は一度彼女を見たような気がする……どこでだっけ。
「これで、貴方はもう戦わずにすむ……」
最近発達してきた聴覚でそう聞こえたような気がしたけど、直ぐに彼女は姿を消した。その後体がどんどん冷たくなると同時に、瞼が重くなって眠たくなった。
「コードG……? なんであの子が優海を?」
「そんな事どうでもいい! 今はとにかく指揮官を!」
エンタープライズの荒々しいながらも浅い呼吸から、これまでに無く焦っている姿がおぼろげながら見えた。
エンタープライズは急いで黒の上着を破り、ベルファストはメイド服を破いて怪我をした箇所を包帯の様に巻き付け、これ以上出血しないように力強く握りしめた。
「指揮官……ダメだ! 生きてくれ! 貴方が居たから私は戦えるんだ! 貴方が居ないとダメなんだっ!」
「ご主人様っ!大丈夫です!私が必ず助けますから!だからっ……お願いです!目を開けて下さいっ!」
エンタープライズとベルファストの頬から涙が伝い、それぞれの涙が俺の頬に落ちていく。だけどその涙の熱さも冷たさも感じず、エンタープライズ達の願いを聞けそうになかった。
黒と白の布が赤黒く染まり、痛みもだんだん無くなってきた。
「ごめん……ね」
最後は笑っていこうとして、精一杯の笑顔を浮かべた。
「…………指揮官?」
「ご主人……様?」
「指揮官? ダメだ起きてくれ指揮官、こんな所で寝たらダメだ。指揮官? 指揮官、指揮官、指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官指揮官?」
「…………」
「あぁ……ああ……ああああぁあぁあぁあああ!!!!! 」
その時、一人のKAN-SENの叫びと共に、暗い雲を突き破るかの如く黒い光が天を貫いた。
どのテネリタスが好き?
-
ロリママ創造者の2代目 ラハム
-
人類最強の天然3代目 アトラト
-
食いしん坊な絶対守護者4代目 シーア
-
武士道と極める騎士5代目 ロドン
-
風のように自由なガンマン6代目 セイド
-
完璧で究極のアイドル7代目 マリン
-
おっとり包容力で全知全能の8代目 ミーア
-
元人間のセイレーン 10代目マーレ