もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜   作:白だし茶漬け

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嵐と希望

 

 青い海は、まるで彼女の心の内を表すかのように荒々しく波打っていた。

 

 青い空を埋め尽くすような雷雲はある彼女の怒りを表すかのように稲妻を振り落とし、轟音を鳴らしていた。

 

 その雷雲から降る雨は彼女の悲しさを表すかのやうに強く彼女の肌を打ち付けていた。

 

 そして彼女から放たれた黒い光の柱は天を貫く程高く輝き、彼女が背負う艤装を黒く染めていく。

 

 より漆黒に、より禍々しく。彼女が、エンタープライズがそう望んでいるかのように艤装は姿を変えていく。

 

 1つだった甲板が4つへと増え、エンタープライズの背後に展開された姿は鳥と思わせるような物だった。

 

 だがエンタープライズに戸惑いの表情は無く、ただ無表情に彼女は黒く染った弓を引く。自分の生きる理由を奪った元凶である敵を倒す為に。

 

「あれは……覚醒。いや、暴走か」

 

 弓から矢が放たれた瞬間、エンタープライズの艤装から多数の艦載機が発艦していき、その艦載機さえも黒く染まり、セイレーンと同じ様な形状の艦載機が飛び立った。

 

 黒い艦載機にはプロペラが無くなり、形もまるで全てを拒絶するかのように全体的に鋭利な箇所が多くなっており、

 

 そしてそれは、敵であるマーレに向かっていった。大気の壁を突き破るかの如く、黒い矢と艦載機はマーレを追いかけ続け、マーレは難なく同じ様に艦載機を出して迎撃し、黒い矢を剣で弾いた。

 

 内心マーレは驚いていた。想定以上の速さで一瞬だけ反応が遅れたのを実感したマーレはエンタープライズに対しての意識を改めた。

 

(あの氷河の時の覚醒と同じでは無い……トリガーになったのは優海か)

 

 マーレの目に傷口に黒と白の布が巻かれ、その布に赤い血を染め、倒れて目を覚まさない優海が映る。

 

 倒れた優海は荒々しくなった波に飲み込まれそうになるものの、近くにいたベルファストが傷口を広げないようにしながら優海を抱えあげ、急いでこの場から離れようと動こうとした。

 

 しかし、荒ぶる波は彼女達にとっては地面が揺れているのと等しく、思ったように進めずにいた。

 

「このままじゃご主人様の治療が……」

 

 いつも冷静なベルファストがこの時ばかりは焦っていた。誰も見た事無い動揺で周りが見えなくなっているのか、ベルファストは危険な海を渡ろうとしていたが、オロチに止められた。

 

「貴方死にたいの? このままじゃ貴方も優海も海の底真っ逆さまよ」

 

「それは承知の上です。今はご主人様を治療しなくては……ご主人様はまだ生きています。私が行かなければご主人様は……」

 

 平静を装っていても声の震えは隠しきれず、このままオロチを倒してまで行きそうな空気になっていた。別にオロチはこのまま二人がどうなってもいいとは思ってはいた。

 

 オロチにとって、この2人は幾多の人間1人とKAN-SEN1隻の存在、たとえどれだけ共に過ごしたとしてもそれ以上でもなくそれ以下でも無い存在の筈だった。

 

 だがオロチがベルファストを止めたのは、彼女の中で形容できない何かを感じたからだ。そしてその何かに関係あるのが優海だと理解していた。

 

 その何かを理解する為、優海は必要不可欠だ。だからこそ彼女はベルファストを止め、ある事をしようとした。

 

「はぁ……そんなに優海の事助けたいのなら、私が治療するわよ。ちょっと荒っぽいけどね」

 

「オロチ様がですか?」

 

 ベルファストは反射的に優海をオロチの間に目に入らないようにし、その目に疑心に満ちさせた。

 

「その目は信用して無いわね。まぁその前に、どこか波が届かない場所……あそこがいいわね」

 

 オロチは瓦礫の壁紙ある所に指を指すと、ベルファストとオロチは波が届かない瓦礫の壁の向こうに優海を下ろし、オロチは優海を仰向けにさせた。

 

 その後オロチの右手から赤い光が集まりだし、光は小さな箱へと姿を変えた。

 

「オロチ様、どう治療なさるつもりでしょうか?」

 

「私、元々巨大な艦なの覚えている?」

 

 ベルファストは無言で頷いた。

 

 元々オロチはKAN-SEN達と同じ様に人の姿をしておらず、通常の戦艦の倍近く全長を持った1つの艦の形をしていた。

 

 戦艦、空母等の役割を全てこなしながらも、攻撃を無力化するバリア、そして艦首には蛇の様な模様でまさにオロチという名に相応しい姿だった。

 

 だが今は違う。長い白髪に赤い瞳を持ち、蛇らしい要素と言えば長い舌だろうか。

 

「私は、あの時マーレにブラックキューブの殆どを奪われた結果、艦としての形を保てずにいた。だから、人の姿に『再構築』したのよ」

 

「再構築? つまり、体を作り替えたと言うのでしょうか?」

 

「そうよ。天城の幻影……いや、人形というのかしら。それを作ったからKAN-SENの構造は理解したから出来た事よ。その結果がこれ、あの時の半分以下の力しか出せないけどね」

 

「まさか、ご主人様に対してもそのような事を?」

 

「その通り。心配しないで、単なる治療だから。まぁ初めての執刀医なんだけどどうする?」

 

 選択肢があるように見えて、ベルファストには選択肢が無い。このまま治療を施さなければ間違いなく優海は命を落とす。

 

 だが、ベルファストは迷わず微笑みを浮かばせた。

 

「お願いします、オロチ様」

 

 あまりの決断にオロチは少し驚いていた。何故ならどんな形であれ、元々敵だった存在にそこまで信頼を寄せる事がオロチにとっては考えられないものだったからだ。

 

「意外ね、こんな蛇を信頼していいのかしら」

 

「はい。オロチ様は共に戦う仲間ですから」

 

「……ホント、分からないわ。貴方達人間は」

 

「貴方もその1人ですよ」

 

「私は1匹の蛇よ。じゃ、行くわよ」

 

 オロチの右手に集まった赤い光は少しづつ優海の傷口へと集まっていくと、傷口が少しづつ塞がっていき、細胞の一つ一つが再構築されていった。

 

 あまり見ない光景にベルファストは関心に似た感情共に治療の様子を見守りつう、優海の手を握って無事を祈った。

 

「生きてください……ご主人様っ……!」

 

 一方、エンタープライズの暴走は続いており、なりふり構わずマーレを執拗に攻撃し続けていた。その攻撃は雨のように降り注ぎ、エンタープライズの表情が無感情なのにも関わらずその一つ一つが憎悪に満ちていた。

 

 マーレは容易く雨のような砲撃を回避していくが、エンタープライズの攻撃範囲が徐々に広がっていた。

 

「ちっ、このままじゃ拉致があかないな」

 

 回避こそは簡単だが、このまま消耗戦になっては不毛だとマーレは考えていた。目的自体は果たし、後は撤退するだけなのだが、エンタープライズがその邪魔をしていた。

 

 しかもエンタープライズの攻撃はマーレだけでは無く、ここから避難しようとするKAN-SENや人類にも影響を受けていた。荒狂う波が船の進みを止めており、人類の安全の為にマーレ達を見逃すのがセオリーな筈だが、エンタープライズは人類の安全を無視して攻撃を続けていた。

 

「マーレ、もうこれ以上ここに居る理由は無いわ。撤退しましょう」

 

 ミーアの言う通り、これ以上テネリタスがここに居る理由は無い。優海を抑えていた2代目から4代目も恐らくは撤退していると考えたマーレはここで撤退を決めようとしていたが、エンタープライズがそれを許さなかった。

 

 他のKAN-SEN達は疲弊し、人類の救助を最優先としているのにも関わらず、エンタープライズはマーレに拘り続ける様に攻撃を続け、周りにいるKAN-SEN達の被害を気にせずにいた。

 

「チッ、人類や仲間を守ると言った割にはこれか……」

 

 そう吐き捨てながらマーレは人類が乗っている避難船に向かった。

 

 避難艦を盾にすれば、如何に暴走していようともエンタープライズの動きが止まると考えたのと、もう1つ理由がある。

 

 エンタープライズもそれに続いて黒い矢を放ち続けようとしたが、エンタープライズは一瞬その手を止めた。

 

 何故ならその射線上にはKAN-SENが、しかもヨークタウンとホーネット、赤城や加賀、そして土佐と天城が護衛として待機していたのだ。

 

「ねぇ赤城、姉ちゃんのアレって……」

 

「ええ、私を撃ったあの時と同じ……だけど、随分と我を失っているわね」

 

「マーレも来るし……どうするの!?」

 

 暴走した姉を止めたい感情と、マーレの迎撃しなければならない責務が拮抗しているホーネットに、天城が背中を押すような言葉を喋った。

 

「ホーネットさん、ヨークタウンさん、私達がマーレを止めます。貴方達はエンタープライズさんを」

 

「ですが……」

 

 恐らく今最も艤装の性能が高い2人をマーレの迎撃に出せなければマーレを止められず、ヨークタウンはそれを危惧して行動には移さなかった。

 

 こうしている間にもマーレは近づき、自分達を倒して向こうにいる避難船のいる人間に危害を加える可能性がある以上、天城はもう一押しの声を出した。

 

「ご心配なく、私には考えがあります。さぁ、早く」

 

 曇りなき眼でそう言った天城を見たヨークタウンは、何か思うところがあれどその考えを信じた。

 

「分かりました。行きましょう、ホーネット」

 

「絶対……無理しないでね」

 

「赤城達がいますのでご安心を」

 

 安心させる笑顔を見せた天城はヨークタウン達を見送り、入れ替わるようにマーレが目の前に現れようとしていた。

 

 圧倒的な力の差がある故に、ビリビリとする威圧が天城達の体を支配し、勝つ見込みは無いと本能が叫んでいた。

 

「天城さん、考えがあるのは本当なのか……?」

 

 土佐が疑うようにそう言った。土佐は別に天城の事を信用していない訳では無く、逆に天城の言葉は信頼はしていた。だが、この状況に置いてはどうしても聞かずにはいられなかった。

 

「それがマーレに対して勝つ考えの事を言っているのなら、そんな物はありません」

 

「何!?」

 

「ですが、武器を使わず退ける考えはあります。どうか先に手を出す事はしないでください」

 

「だが……」

 

 あのマーレを武器を使わず退けるという夢みたいな不可能に近い事にやはり口を出さずには居られず、考えを改めようとしたその時、土佐と天城の間を割って入るように赤城が止めた。

 

「くどいわね、姉様に考えがあるのならそれを信じなさい」

 

「土佐、今は天城さんの事を信じるべきだ。気持ちは分かるがな」

 

「姉上まで……」

 

「優海がいなくなって気がたっている事は分かります。私だって早く優海を見つけたい気持ちを抑えています。本当なら、今すぐにでも……」

 

 拳を握り、唇を噛み締めていた天城の姿を見て本心だと確信した土佐は、ついに心を折った。

 

「……全く、天城さんには敵わないな」

 

「ありがとうございます」

 

 ようやく和解したその時、凄まじい波飛沫と共にマーレが天城達の前に現れ、その足を止めた。

 

 マーレを武器を構えた瞬間、天城が言わなければ防衛本能で武器を出して攻撃しようとしていた所を、赤城達は天城を信じ、武器を上げることはしなかった。

 

 それにマーレは疑念を持ち、攻撃する手を下げず、その銃口だけを向けた。

 

「どういうつもりだ。何故攻撃してこない」

 

「少しだけ思った事があるからです」

 

「何だと?」

 

 敵に会話を求めるその姿に、マーレは天城と優海を重ねて見えた。

 

 対話を求める姿勢は同じだが、何もかも見透かし、その先を見せる目はどこか優海に似ていた。

 

 本当の家族でもなく、天城から産まれた訳では無いのにも関わらずそう見えてしまったマーレは自分がそう見えてしまったおかしさと、セイレーンとKAN-SENの家族という歪な関係に吐き捨てる様かのように笑った。

 

「親も親なら子も子だな。お前達と話す事は何も……」

 

「貴方は人類に危害を加えるつもりは無い。そう考えています」

 

 突拍子も無いその言葉はマーレだけでは無く赤城達も驚きの表情を見せた。

 

 そんな訳が無いと誰もが思う中、マーレは天城のとち狂った言い分に笑ってやるべきかと思い、大きく乾いた笑いを上げ、その後直ぐにその笑みを消して銃口を向けた。

 

「笑わせるな。だったら俺の宣戦布告はなんだ。アズールレーンの上層部を虐殺したのはなんだっ! 人類に危害を加えるつもりは無い? ほざくな!!」

 

 マーレは馬鹿にされたと考え、怒りを顕にして天城に銃口を向け、その銃口に赤い光が集まり始めた。

 

「そこを退け。退かなかったらまたあの時のように殺してやる」

 

 赤城達は直ぐに天城を守ろうと動いたが、天城は天城達を止めるように手を伸ばし、マーレの銃口に対して引くことも避ける事もしなかった。

 

「天城姉様っっ!!」

 

「天城さん!!」

 

 銃口に集まった光が今打ち出されそうな瞬間、全く別の方向から発砲音が鳴り、小さな弾丸が天城の頬を掠め取り、天城は銃弾が来た方向に顔を向けると、銃口消炎が立ち昇った銃を構えたセイドがいた。

 

「うおマジか、俺が外したのかよ」

 

 誰もが分かるバレバレな演技にマーレは違和感を持った。

 

 暗闇でも正確に標的を狙う腕があるセイドが、この状況で外す訳が無い。つまり、わざと外したとマーレは確信し、それが天城達を倒すつもりが無かったマーレの意思を汲み取ったのだ。

 

 その真意を理解できる術が無い天城達は、突然の現れたセイドに挟み撃ちになった事で危機感を覚え、マーレはチャージを止めて武器を下ろした。

 

 セイドは天城達に目もくれず、遠くにいるエンタープライズに狙いを定めるようスナイパーライフルを珊瑚型の艤装から取り出し、エンタープライズを撃つ。

 

 ライフルの銃弾が大気の壁を貫きながらエンタープライズに迫り来るが、エンタープライズはそれを軽々と避け、弾丸はエンタープライズの髪を掠め取るだけの結果になった。

 

「うへーマジか。なんか強くなって……」

 

 状況に反して呑気な口調のセイドに、間髪入れずにエンタープライズは攻撃し、お返しと言わんばかりの超弾速の黒い矢を放った。

 

 セイドは急いで回避したが、黒い矢は向こうの避難艦の一隻に風穴を開けて爆発を起こしてしまう。後ろから爆音とそれに乗っていた人類の悲鳴が海域に響き、セイドは火が立ち上る艦を見つめ、恐る恐る上空にいるエンタープライズを見た。

 

「おいおい……マジかよ」

 

「っ……ネージュ!」

 

 あの避難艦にはネージュがいる事は、この島を襲撃した時に確認していた為分かっていた。

 

 天城達を無視して急いで避難艦へと迫るが、赤城達はマーレを行かせまいと式神を使ってマーレに攻撃を仕掛けた。

 

「邪魔するなぁぁぁぁ!!」

 

 左腕の剣からケーブルが伸びると、マーレの艤装にケーブルが直結すると巨大なビームサーベルとなり、ビームサーベルは赤城達式神や艦載機、天城達の榴弾を全て溶かし尽くした。

 

「何て奴なの!?」

 

「このままじゃ……クソっ!」

 

 土佐が無理やりにでもマーレを止めようと1歩を踏み出した瞬間、セイドからの弾丸が髪を掠め取り、あと一歩前に踏み出せば頭を撃ち抜かれる所だった。

 

「おっと、邪魔立てはさせねぇよ」

 

 セイドが口笛を拭きながら銃を回している間、無数のビットが天城達に銃口を向けていた。

 

「男と女の感動的な再会の邪魔すんじゃねえよ。ん? 再会なのか? まぁどっちでもいっか!」

 

 天城達を制圧したセイドは、避難艦へと向かうマーレを見守った。

 

 間違いなくエンタープライズの攻撃で重症を負った人数はいる。しかも避難が出来ない状況で、治療できない怪我は命を落とすに等しい物だ。

 

 艦の中は火災でパニック状態になり、誰が下ろしたか知らないがこの状況で救難ボートを下ろし、避難艦から逃げ出そうとした人物がいた。

 

 波が大きいままの状況で救難ボートで逃げるのは無理なはずだが、火災によって命の危機が迫って正常な判断が出来ない人間が次々と救難ボートに乗ろうとしている中、その流れを食い止めようとネージュが手を広げて道を塞いだ。

 

「待ってください! 今救命ボート下ろしたら波に飲み込まれてしまいます!」

 

「うるさい! こっちは火の海が迫るかもしれないんだぞ!」

 

 焦りで我を失った一人の男がネージュをつき倒すと、ネージュは壁に頭を強くぶつけ、後頭部に出血が起こし、意識が朦朧としてしまう。

 

 それと同時に火の手が迫った避難船にマーレが近づくと、艦上は更にパニックを起こした。

 

「お、お前はアズールレーンの指揮官!? 何なんだその背中に付いているものは!」

 

「化け物だ! 来るなっ! 寄るなぁぁ!!」

 

「お前退けよっ! 俺はユニオンで有数の資産家だぞ!」

 

「私だってロイヤルの貴族よ!」

 

 情けなく泣き叫びながら懇願するように逃げた民衆は、子供すらも置いて逃げ場のない艦尾へと逃げていった。

 

 子供の鳴き声、大人の叫び、他者を蹴落とす声の阿鼻叫喚はマーレが1歩ずつ進む度にその声は広がり、大きくなり、波の音や艦のサイレンまでもかき消すようだった。

 

 だがマーレにはその声は届かず、有象無象の人間も影のように映っていた。マーレの目には、雪のような白い髪を持った女性が横たわった姿だけであり、雪は有象無象に踏みつけられ、やがて波の勢いに呑まれた艦が動き出し、ネージュは倒れたまま安全柵の隙間を流れるように通り、海に落ちていった。

 

 それを見たマーレは落下するネージュを空中で抱え込むようにして助け、後頭部から流れ出る血を見て一瞬我を失う程に動揺した。

 

「ネージュ……!」

 

 名前を呼んでも返事はしないが、呼吸と脈があるのを確認し、すぐにでも治療が必要だと脳が知らせる前に本能で理解した。

 

「全員撤退します。もうここにいる必要性はありません」

 

 通信でマーレは撤退を指示したが、エンタープライズが許さなかった。

 

 ヨークタウンとホーネットが近くまで来ているのにも関わらず、エンタープライズは再度黒い艦載機と黒い矢をマーレに向け、射線上にいたヨークタウンとホーネットは咄嗟に攻撃を避け、エンタープライズの攻撃を察知したマーレは攻撃を避け、その攻撃は背後にあった避難艦の装甲を貫いた。

 

 装甲を貫かれた艦は風穴が間所からオイルや電流が流れ初め、危険を察知したマーレがネージュを抱えて艦から離れた瞬間、避難艦は爆発を起こした。

 

 人々の断末魔が爆炎の中へと消え去り、爆発した艦は中央が折れ、最早生存者は絶望的だった。

 

「あっ……あぁ!」

 

 エンタープライズの行動にKAN-SEN達は驚愕した。

 

 人類を守る為に産まれたKAN-SENが、人類を多く殺した。その事実が受け止めきれずにいたホーネットは何も言えず、震えた体でエンタープライズに振り返った。

 

 エンタープライズの顔は何も変わらなかった。それはまるで心が通ってない機械のようであり、今目の前にいるのが本当にエンタープライズなのか疑う程でもあった。

 

「何してるのエンタープライズ!?」

 

「姉ちゃん! どうしちゃったの!!」

 

 必死にエンタープライズを説得したが、言葉と声はエンタープライズには届かない。今エンタープライズの目に映っているのは、敵であるテネリタスだけだった。

 

 それは、エンタープライズが最初になりたがっていた兵器そのものだった。戦うために生まれ、戦う為に存在する、エンタープライズが目指そうとした存在。

 

 皮肉にも、今エンタープライズは自分が目指した存在になれたのだ。

 

 無機質に弓を引き、敵を倒すまで動きをとめない。エンタープライズの攻撃にヨークタウンとホーネットは巻き込まれ、体と心が引き裂かれていく。

 

「姉ちゃん! 本当にどうしたの!?」

 

「エンタープライズ……! お願い、元に戻って!」

 

「黙れ」

 

 たった3文字の言葉だけだが、ヨークタウンとホーネットの心をボロボロにするのには充分すぎる言葉だった。

 

 黄金に光る目に映る2人をまるで出会った事も無い人物を見るかのように睨みつけながら弓を引き、その手に躊躇いは無かった。

 

 そこに姉妹艦の絆は無く、敵と味方という最も分かり合えない関係だった。

 

「姉……ちゃん」

 

「終わりだ」

 

 敵に向ける言葉を放ち、弓から手を離そうとしたその時だった。

 

 エンタープライズとホーネットの間を通り抜けるように一筋の青い光が差し込む。光は徐々に消え去り、その光を見たヨークタウンとホーネットは希望を見つけたかの様に光が放たれた場所に目を向ける。

 

 だが希望というにはあまりにもボロボロで、ふっと息を吹きかけるだけで消える残り火の様な淡い希望だった。

 

 武器は折れ、白い艤装はくすんでしまって灰色になり、溢れ出ている火花は悲鳴のようだった。

 

 それでも希望は震える足で体を支え、上空にいるエンタープライズに目を向け、その名前を叫んだ。

 

「エンタープライズっ!!」

 

 彼がその名前を呼ぶと、エンタープライズは声の元に目を向け、一瞬だけだが光に目が灯った様な気がした。

 

「……指揮官」

 

 だがその直後、エンタープライズの目は無機質な目に戻り、近くにいたホーネットとヨークタウンに攻撃し、2人は優海がいた所まで吹き飛ばされてしまう。

 

「ヨークタウン! ホーネット!」

 

 優海は2人の元に行き、吹き飛ばされただけで目立った損傷は無い事に安心した。

 

「指揮官……姉ちゃんが……」

 

 優海は今の状況とあの時エンタープライズが同じように暴走したあの日を重ねた。

 

「大丈夫、今度もきっと……」

 

 希望は折れず、ただ吹き荒れる嵐を見続けた。その嵐を止める為に、何がどうなってもいい覚悟を持って。

どのテネリタスが好き?

  • ロリママ創造者の2代目 ラハム
  • 人類最強の天然3代目 アトラト
  • 食いしん坊な絶対守護者4代目 シーア
  • 武士道と極める騎士5代目 ロドン
  • 風のように自由なガンマン6代目 セイド
  • 完璧で究極のアイドル7代目 マリン
  • おっとり包容力で全知全能の8代目 ミーア
  • 元人間のセイレーン 10代目マーレ
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