もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜   作:白だし茶漬け

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コンパス

 

 アズールレーンの指揮官が、人類に宣戦布告をした事件から数日が経ち、世界は大きく変わっていった。

 

 指揮官が宣戦布告してきた事と、テネリタスが各陣営に攻撃し、領土を支配している事でアズールレーンに対する不信感は積もりに積もっては溢れ出し、暴動が起きている所もあった。

 

 その場にいた軍人や警察が暴動を鎮圧しようと努力はしているが、各地に暴動がおきて最早KAN-SENまでも鎮圧に駆り出されるまで自体は拡張した。

 

「アズールレーンは何をしているんだ!!」

 

「早くアイツら何とかしてよ!!」

 

 市民の罵詈雑言は止むことは無く、人々の怒りと不安は全てアズールレーンとKAN-SEN達にぶつけられていた。

 

 KAN-SENに石を投げて人の形をした化け物と言い放ったり、兵器だからちゃんと敵を倒せと、無責任な事を吐き続けていた。

 

 勿論KAN-SEN達もそれは分かっている。だが、相手があまりにも強すぎた。

 

 当初テネリタスは単騎の力は強かったが、数が少ないのが唯一の救いだった。しかし2代目当主であるラハム・テネリタスの復活を果たしたテネリタスは、軍勢という力を手に入れた。

 

 ラハムには海から生物を創り出す力が備わっており、海が7割以上を占めすこの世界にとって、無限とも言えるリソースを秘めている。

 

 その力でテネリタスは各陣営に対して一斉に攻撃出来る力が生まれ、徐々にテネリタスに領土を取られていた。

 

 領土を奪われた市民達はテネリタスの圧倒的な力の前に立ち向かう事も出来ず、逃げる事しかできなかった。幸いにも、テネリタスは人類を攻撃はせず、死者は出なかった。

 

 だが土地は奪われ、そこで育んだ食料も失った者達は行く当ても無く、死にゆく未来に怯えるしか無い。生き抜く為には何かにすがらなければ行けない。

 

 人類にとってそれがアズールレーンだが、そのアズールレーンも今はただの見せかけの城だった。

 

 指揮官である天城優海の消失によってKAN-SEN達の戦意は落ちていき、敗退が続いて心身ともに傷つくだけになっており、最早状況は絶望的だった。

 

「指揮官……どこなんですか?」

 

「指揮官が居れば、何とかなったのかな……」

 

「会いたいです、指揮官……」

 

 すがるように指揮官と連呼したKAN-SEN達だが、その願いは虚しく消え去り、日に日にアズールレーンは衰退して行った。

 

結果、テネリタスの進行を許してしまいKAN-SEN達も日を重ねるごとに傷つき、領土は更に失いつつあった。

 

 そしてその影響はアズールレーン後方支援部隊にも被害を受けていた。

 

「暴動でドックが民衆に占拠された!? しかも後方支援隊に内通者!? 近くの軍関係者をかき集めて取り戻して! 人手が足りない? うっ……仕方ない、ドックの奪還を優先して、他のところは退去しなさい」

 

 鳴り止まない電話と喧嘩するように声を荒げている女性は、リア・ミレバス。

 

 ユニオン出身で特にこれと言った特別な家柄では無く、どこにでもいる勤勉な女性だ。

 

 彼女は努力だけでアズールレーン後方支援隊という、アズールレーンに武器の流通や情勢の提供、そして補給物資を届ける、アズールレーンの生命線とも言える所のNo.2まで上り詰めたが、それ故に責任は重く、今の状況だとそれが恨めしいと思っていた。

 

「これじゃあ優海の探すのは当分先になりそうよ、ジン……」

 

 ジンと呼ばれた彼は、ジン・カービスという。

 

 出身はユニオンでリアと同じだが、ジンの家柄はユニオンでも指折りの投資家兼事業家の顔を持つカービス家であり、ユニオンで知らぬ者はいないとされている。

 

 だが、ジンは幼い頃から父親から非人道的な教育をされた事に嫌気がさし、家元から離れている。

 

 元々ジンはアズールレーンの指揮官に立候補したが、優海が指揮官になった為、次席成績の彼はこの後方支援隊のトップになっている。

 

 そんな彼は、鳴り止まない暴動の対策でため息が止まらなかった。

 

「そうだな……」

 

 気晴らしにテレビでも付けたが、どのチャンネルもニュース速報ばかりであり、気の利いた番組は無かった。

 

 だが無理も無い。こんな状況で特番やアニメ、ドラマなんで放送できる訳が無いのだから。

 

 だが、やはり人には気晴らしという物が必要であり、こう暗いニュースばかりでは気が滅入る。しかもほとんどアズールレーンに対してのニュースであり、何も知らない批評家達が我が物顔をして喋っていた。

 

『そもそもアズールレーンには不透明な部分が多く、KAN-SEN達がどのようにして作られるのかも分からない訳で……』

 

『そもそも既得権益者で作り上げた団体は更なる利益の為に人々から血税を巻き上げて……』

 

『指揮官であるマーレ・テネリタスが裏切る程の暗部がアズールレーンにはあるのですよ! しかも彼の背中にはセイレーンの艤装が……』

 

 嫌気がさしたジンはテレビの電源を切り、また更に重苦しいため息をはいた。

 

「たくっ、好き勝手言いやがって」

 

「仕方ないわよ。皆、誰かの悪口を言いたくて仕方ないんだから」

 

「それの何が楽しいんだ?」

 

「自分が正義だって示したいんじゃない? 誰だって、正義の味方になりたいものでしょ」

 

「だったら暴動なんか起こすなよ……」

 

 タブレットで見る電子新聞のニュースに映し出されている、暴動を起こしている市民に向けてジンはそう吐き捨てた。

 

 我ながら随分と追い込まれたものだとジンは自覚していた。

 

 そんな中、追い打ちをかけるように一本の電話がジンの携帯から鳴り、ジンは携帯の画面を見て顔を苦虫を噛み潰したようにさせた。

 

 電話した来た名前は……べリタス・カービス。ジンの父親だった。幼い頃からの影響でジンは父親に対しての感情は地をえぐるよう程の感情しか無いが、べリタスはアズールレーンの上層部であり、自分の上官に値いする他、ジンは今、ある指令を受けて言う事を聞くしか無い状況にあっていた。いやいやとため息を吐きながら、ジンは耳に当てて電話に出た。

 

「もしもし?」

 

『遅い。3コール以内に出ろ。俺の1秒の価値は、誰よりも重たいものだからな』

 

「うるせぇこっちも立て込んでんだよ。……んで、なんの用だよ」

 

『天城優海の排除はどうなっている。その定時連絡だ』

 

「……こんな状況でそもそも探せる訳ねぇだろ」

 

 話は、事件の2日後に戻る。

 

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 事件発生から2日後、テネリタスの攻撃が続く中で対策を練っている中、後方支援隊も出来る限りのサポートを続けている中、突如ここにべリタスが到着した知らせを受けたジンは、さり気なくこの場から出ていかせようとしたが、相手は一応アズールレーン上層部の1人だ。

 

 無下にする事も出来なければ、後で何かしらの制裁があるのは目に見えている為、仕方なくジンはベリタスをここの執務室に招き入れた。

 

 執務室に入る前に、リアは来客用のコーヒーとお茶菓子をテーブルの上に置き、準備が完了したと同時に執務室の扉がノックされると、ジンの断りもなく扉が開かれ、べリタスが我が物顔で執務室に足を入れた。

 

「返事ぐらい待てねぇのか?」

 

「待つ必要は無いからな。俺の時間は1時間1分1秒も無駄には出来ないからな」

 

 べリタスは早速空いている椅子に座ると、テーブルの上で綺麗に陳列されている茶菓子とコーヒーを見つめると、コーヒーを手に取り、それを飲んで味わった。

 

「ほぅ、来客の心構えは立派だ。美味いコーヒーだ。KMJマウンテンに匹敵するかもな」

 

 上層部からのお褒めを頂いたリアは無言で頭を下げ、ジンは意外と思いながらも、早く終わらせたい一心で話を進めた。

 

「それで? なんの用なんだ?」

 

「お前に指令だ。極秘だから誰にも知らせるな。例え5本の指の中の3本の指に入り、その中2人の友人でもな」

 

 独特な言い回しだとリアは思いながら、2人は極秘と言われ、ジンはリアと目を合わせた。リアはかなり重要な話だと空気を読んでこの部屋から出ようとすると、べリタスはリアを止めるように右手をあげた。

 

「いや、お前にも同じ通達だ。お前達にはある事をしてもらう。……そうだ、済まないがミルクを3杯と、砂糖の入った瓶をくれ」

 

「あんた……そんな甘党だったか?」

 

「単なる気分だ。気にするな」

 

 ジンの目配りでリアはコーヒーに入れる為のミルクを3杯分の量が入ったコップと、24個の角砂糖が入った瓶をテーブルの上に置いたが、べリタスはそれを手につける様子は無く、1つのUSBメモリをジンに渡した。

 

 ジンはリアにPCを持ってくるようにと言い、近くにあったノートPCを机に置き、USBを差し込んだ。

 

 USBメモリのデータの移行が完了し、パソコンのディスプレイには1つのファイルだけが移った。

 

 恐る恐るそのファイルをリアはクリックすると、一文目には作戦呼称が書かれていた。

 

 その名は……天城優海抹殺指令と。

 

「優海の抹殺だぁ!? 何考えてんだお前っ!!」

 

 ファイルの中身見る前に、大体の作戦内容を予見したジンは机を怒りに任せて叩き、怒りの弾みでべリタスのネクタイに掴みかかろうとしたが、既の所でそれは止めた。

 

「少しは声を落とせ。部外者に聞かれたらどうするんだ。3人、4人と聞かれれば、その倍のもの達が次々と真実がどうあれ他者に伝わり、噂となるからな」

 

 ジンの幼稚な行動にべリタスは落胆し、黙々と作戦内容を伝えた。

 

「指揮官がアズールレーンを裏切った……この事実は民衆に知れ渡っている。だが、お前達は知っているのだろう? あの宣戦布告したのは、本物のマーレ・テネリタスだと」

 

「まぁな、大体の事情は優海から聞いた。けど、それが優海の抹殺と何の関係があるんだ」

 

「ならアズールレーンとセイレーンの関係は知っているだろう。天城優海は必ずテネリタスに接触し、人類の為に戦うだろう。そうなれば、いずれ民衆は天城優海とマーレ・テネリタス、2人の存在に気づく」

 

「だから、それがなんの問題……」

 

「天城優海は元セイレーンだ。そして、アズールレーンはそれを容認しながらもアイツを指揮官にした。この事実が世間にバレたら……どうなるかは予想付くだろう」

 

 ジンはその時の事について頭の中でシミュレーションした。

 

 優海とマーレが接触し、戦火が広がりつつある中、必ず民衆の目に戦いが映る時は必ず来る。その時にマーレと優海、2人の存在が確認した時、必ず指揮官という存在に矛盾が生まれる。

 

 そして必ず問いただすはずだ。だが、優海が絶対に真実を話すわけが無い。自分がセイレーンである事を知れば、アズールレーンとセイレーンが裏で繋がっている事が公になってしまうからだ。

 

 セイレーンはかつて海を支配し、人類の恐怖に落とし込んだ存在だ。そんな存在が、アズールレーンの繋がっていたと言う事は、アズールレーンが人類を滅ぼしかけたと同意義になってしまう。

 

「アズールレーンとセイレーンの繋がり民衆に知られでもすれば、暴動じゃすまない。最悪、アズールレーンVS人類の構図が出来上がるって訳か」

 

「そうだ。それを避ける為に秘密は闇に葬る必要がある訳だ」

 

 するとべリタスはサプレッサーの付いた銃をスーツの内側ポケットから取り出し、銃口をジンに向けた。

 

 いきなり銃を向けられたジンは思わず内側のポケットに入っている銃を取り出そうとすると、べリタスは躊躇いもなく銃の引き金を打ち、小さく乾いた銃声を鳴らしてジンの頬に弾丸を掠め、弾丸は赤い絨毯を突き破って床へとめり込んだ。

 

「本物……!? べリタスさん、一体何を!?」

 

「騒ぐな。これは取引じゃない、命令だ。ジン・カービス、天城優海を抹殺しろ。出なければ、秘密を知っているお前もこの女も殺す」

 

 べリタスはもう一丁同じ銃を取り出し、今度はリアにも銃口を向け、ジンの怒りは限界を超えた。

 

 だが、一歩でも動いたり反抗したりすると真っ先にリアを打つ体制をべリタスは維持しており、ジンを見ると同時にリアの動向にも注意を払っている。全く隙のない男だった。

 

「30秒時間をやる。もし応じなければ今日が命日となる」

 

 最早ジンの目の前にいるのは父親でもなんでも無いただの悪党……いや、悪という言葉では計り知れない程邪悪でおぞましい物にも見えていた。

 

 こんな事している間にも刻刻と時間は過ぎていき、残り20秒程まで迫っていた。

 

「あと18秒だ。それともお前は友人の為にこの女の命と自分の命、そして世界の安泰さえも手放すと言うのか? 唯一無二の物を、お前はどう選ぶ」

 

「こんの……クソ野郎っ……!!」

 

 ジンは歯を食いしばりながら拳を握り、悔し紛れにテーブルを叩き、ガラスの灰皿を粉々にした。

 

 破片となったガラスが拳に突き刺さり、ジンの拳から赤い血が流れたがジンは怒りと悔しさで痛みは全く感じられず、ジンが感じているのはべリタスに対しての憎悪だけだった。

 

 こんな事しても何も変わらないと分かっているが、やらなければ本気でべリタスに歯向かってリアの命を落としてしまうと自分自身で考えたからだ。

 

 だから痛みで冷静になり、今最良の判断をした。

 

「……わかった。指令を……受けるっ!」

 

「ジン……」

 

「言質は取った。ここでのやるべき事は終わった。後はお前の好きにしろ。ここを出るなり何なりとな」

 

 べリタスはコーヒーを飲み干してこの場から立ち去り、リアは急いでジンの負傷した手を治療した。

 

「べリタス……お前は、どこまで人を踏みにじれば気が済むんだ……!!」

 

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 これが事の発端だ。現にジンとリアには、べリタスが特別に調達したエージェントが至る所に監視されている。

 

 全員同じ様な顔で、同じ様な服、更には同じ様な動きをしているからまるでロボットの様で気味が悪い。

 

 だが、民衆が暴動を起こしている為その対応で指令の方は進んでいないのが、ジンにとっては何かと気が楽に思える状況だった。

 

 流石のべリタスもこれには納得しているのか、それ以上口出しはしなかった。

 

『分かった。進展を期待している』

 

 ツーツーと電話が切れたと同時に、ジンは携帯をソファーにほおり投げて怒りをぶつけていた。

 

「だァァァ!! クソムカつくなアイツ! というかアイツがこの暴動何とかしろよっ! 一体何のための上層部何だよ!! あのゴミクソfu〇k! (ユニオンスラング)野郎がぁぁ!!」

 

「ジン、言いたい気持ちは分かるけど公共の場でその発言は控えて」

 

「けどアイツ、お前にも銃口向けて来たんだぞ!」

 

「そうね……それは忘れてないわ」

 

 ジンは不機嫌になりながら、山積みされた民衆の問題を解決と対策に明け暮れる中、リアはあの時べリタスがした行動を思い返していた。

 

(あの人の引き金の動き……モールス信号だったわよね?)

 

 リアはべリタスがある一定の間隔から引き金から指を離したり付けたりした行動が気になり、ついそんな事を考えていた。

 

 記憶を辿って繰り返し伝えようとした事を思い出し、リアは端末を使ってモールス信号を文字化した。

 

「H E L P J I N……『ジンを助けろ』……?」

 

 そんな筈無いともう一度モールス信号を解読したが、やはりさっきと同じ文字列が現れ、リアは困惑した。

 

 彼はジンを助けるどころか縛りあげようとしている。なのにこのモールス信号はどういう意味なのだろうか? 

 

 口に出していた事は嘘で本当の真意はこのモールス信号なのか、それともこの言葉こそが嘘なのか。

 

 リアはモールス信号の方が嘘だと言うことを頭の中で浮かび上がったと同時にそれを否定した。何故ならわざわざモールス信号で嘘を言う必要性が無いからだ。

 

 何故言葉では伝えずモールス信号を送ったのか……リアはあの時の言葉や行動を全て思い返した。

 

 そういえば、べリタスは人一倍外部の情報に気を張るような言い方をしていた。

 

 確かに指令は機密情報だからそれは当たり前だが、「聞かれてたりすればどうする」という言葉が妙に引っかかった。いや、もっと他に何か引っかかりというか、違和感がリアの胸を掴んでいた。

 

「だぁぁぁ! しかもアイツ事ある毎に指令書を読めって……うるさいんだよ!」

 

「指令書……?」

 

 胸のしこりが晴れるかもしれないとリアの直感が囁くと、リアは報告書の1ページ目の1行目にある1文字目を見た。

 

 その文字にあったのは「貴」という字だ。

 

 もしやと思い、次はKMJマウンテンという、ユニオンでは有名なコーヒーの元となった山の標高5895に合うページ数と行間らそして文字数を調べた。

 

「これは……58ページの9行目の5文字目で良いのかしら?」

 

 だがこの報告書には50ページも無い。もう一度良くべリタスを思い出すと、確か彼は次に五分五分と言った。

 

 五分五分……つまり、半分という意味だ。

 

 この数値を半分にすると、小数点を無視すれば2947になる。つまり、29ページの4行目、7文字目には「様」という文字があった。

 

 並べると貴様……。べリタスがジンとリア達に言っていた言葉だ。

 

 疑惑が確信へと変わり、リアはべリタスの言葉を元に言葉を辿った。

 

 3ページの2行目の1文字目、3ページで1行目……1瓶ということは1文字目……いや、瓶の中に入っていた角砂糖は24個あったから24文字目だ。あったのは「達」という字。

 

 リアは次々とべリタスの暗号を解読していく、5ページ目の2行目の2文字目、3ページの4行目……その倍、足して倍の14文字目。あったのは「も」という文字だ。

 

 次は確か……30ページと命日? 昨日は確か7月15日。つまり7行目の15文字目は……「対」。

 

 最後、18ページに……唯一無二、言葉に1と2があるから、1行目の二文字……言葉は「象」。

 

 

 貴様達も対象

 

 

 それが、べリタスの隠された暗号文の正体だった。

 

「貴様達も対象って……何の?」

 

 その後のべリタスの言葉に特に意味のある数字らしき物はなく、対象という言葉が何を現しているのか分からずじまいになったかに思えたが、リアはそもそも何故指令書の中の文字を遠回しで教え、あの言葉を伝えたかったのかを考えた。

 

 誰かに知られたくなかった? もしくは会話内容を悟られたくなかった……もし、どちらとも取れるとしたら、べリタスが気にしていたのは後方支援隊の人間に聞かれる事では無いのだとしたら、この【対象】という物が何を指しているのか、理解した。

 

「ジン、ちょっと良いかしら?」

 

「ん、どうしたリア」

 

 リアはその場にあった紙とペンを使ってある言葉を描きなかまら、最大限の注意を払って声を出した。

 

「市民の暴動の影響で、物資が鎮守府に届かないの。ルートを変えれば行けそうだけど、日はかかるわ」

 

 ﹁この部屋、盗聴されている﹂

 

「!?」

 

 声を上げようとしたジンはその叫びを飲み込み、直ぐ様パソコンのメモ帳を起動させ、キーボードで入力した文字を撃ちながら、盗聴されていると気付かないふりをする為、何気ない会話を出した。

 

「なら、ルート変更するか。推定遅延は?」

 

 ﹁どういう事だ? ﹂

 

「1日……かしら」

 

 ﹁分からない。けど、ここから離れた方がいい﹂

 

「1日か……んじゃあ、その運搬船に行く奴らにルート変更の案内をしてくれ。それと、ちょっと様子見てみるか」

 

 ジンは右手人差し指で外に出ろと合図し、リアと一緒に執務室から出ていった。

 

 もう日が沈んで夕焼けが無くなり空が暗くなる頃、2人は息が詰まる思いで執務室から抜け出し、たまらず溜めていた空気を吐いた。

 

「おいリア、本当に盗聴器なんて仕掛けられたのか?」

 

「分からない……けど、べリタスさんのモールス信号や、暗号文から察したらもしかして……」

 

「モールス信号と暗号文? 何だよそれ」

 

「貴方本当に気づいてなかったのね……良い? 何故か分からないけど、べリタスさんは貴方を助け出したいのよ。モールス信号は【HELP JIN】。そして暗号文は【お前達も対象】。これを現すことは……」

 

 リアは思わず歯切れを悪くさせた。予想は予想だ。間違っているかもしれず、こんな状況でジンに確信の無いことを言うべきでは無いかもしれない。

 

 だけどもしその予想が的中したとすれば、事が始まってからじゃ遅い。

 

 リアは勇気を振り絞って、ジンにある告白をした。

 

「……私達も、抹殺対象って事よ」

 

「…………嘘だろ? べリタスの言葉だぞ」

 

 ジンはやはり信用出来ない様子であり、苦虫を噛み潰したような顔を浮かばせた。

 

「ならなんでわざわざこんな回りくどい事したの? 勿論間違っているかもしれ無いけど、あの人が冗談でこんな事する人だと思うの?」

 

「それは……」

 

「ジン、ここは一旦信用しましょう。確かあの人は、こうも言っていた。『ここを出るなり何なりとな』って……もしかしたら、ここを出ろって意味じゃ」

 

「っ! 伏せろリア!!」

 

 いきなりジンが叫び、リアの頭を掴んで自分事地面に伏せると、リアとジンの頭上から何かが飛んできた。

 

 風を切るこの音は間違いなく弾丸であり、2人はべリタスの言葉を信用から確信へと変えた。

 

「まさかっ、本当に私達を……!?」

 

「とにかく逃げるぞ!」

 

 またいつ向こうが撃ってくるか分からず、近くにある階段は危険だと判断したジンは、近くあった窓ガラスを割り、リアを抱いて窓から飛び降りた。

 

 ここから地表まではビル4階分の高さがあり、ただ着地しただけじゃジンの足が折れてしまう。

 

 だが、ジンは着地と同時に両足を曲げて体を大きく回転させ、地面の接触時の衝撃を体全体で分散させる事で衝撃を受けとめ、しかもリアには一切の衝撃を加えないようにしていた。

 

 とても常人じゃ真似出来ず、ジンだけが出来る芸当だ。ジンはリアを抱えながら必死に逃げるが、この場所に逃げ道はあるのだろうか。

 

 輸送を重視したここは島であり、逃げても外は海だけだ。逃げられる場所なんて無い。

 

「ジン! この先を進めば使われていない船がある筈! そこに行けば……」

 

「くそっ! 何で俺達を狙うんだ!?」

 

「多分私達が優海やアズールレーンの秘密を知っているからよ! それに……貴方、優海を始末するつもり無いのでしょ?」

 

「当たり前だ! あんな馬鹿な指令なんかクソ喰らえだ!」

 

 文句を言いながらようやく港にたどり着いたジンは、まだ使われていないボートを発見し、早速乗り込もうとしたが、突然空から榴弾がボートを直撃させ、砲弾の火薬とボートのエンジン後反応して大爆発を起こし、ジンとリアは爆風の衝撃で後ろへと体を押し戻されたしまった。

 

 ジン達から見ればいきなりボートが爆発したと見えてしまい、混乱しながらもジンは周りを見渡すと、港の海に夕陽を背にした何か人影が浮かんでいた。

 

 ジンは目を凝らして海の上の存在を確認し、ようやく姿形が見えると同時に、ジンは自分の目を疑った。

 

「嘘だろ……?」

 

 幻覚が見えたのかと思い、ジンは腕で目を擦ってもう一度人影を見つめる。そして、答え合わせをするかのように影は夕日から離れるように港の海から地面へと上がり、その正体を顕にした。

 

 その影は、桃色のツインテールに暗めの銀色のメッシュした髪を持ち、ユニオンタイプの艤装を背負ったKAN-SENだった。

 

「ブレマートン……か?」

 

 ジンはその名を呼んだが、ブレマートンは返事をせず、艤装にある主砲をジン達に向けるだけだった。

 

 その目に光も無ければ生気も感じられず、まるで人形の様だとジンは感じた。

 

「……ねぇ、これってセイレーンの【駒】ってやつよ。姿と性能だけ似せたただの人形よ!」

 

「なるほどな! となると、俺を狙ってきた奴らは……」

 

 ジン達を最初に撃ってきたであろう人物がようやく人たちに追いつくと、その者は黒髪のショートボブヘアーに青を基調としたコートを羽織り、何故か胸下から腹部にかけては露出している服を着ている、ボルチモアがいた。

 

 ブレマートンもボルチモアも、艤装を展開して着ている衣装も姿形も何もかも似ている。これがセイレーンが使っている駒の特徴だ。

 

 だが、性能面は若干劣っているらしく、本物のKAN-SENと戦ったら瞬殺は間違いない……が、普通の人間相手ならそれは通用しない。

 

 ジンの様に、常人からはみ出た超人の運動能力を持ったとしても所詮は人間。KAN-SENには適わず、ましてや2隻いると来た。絶望的な状況は言うまでも無いだろう。

 

「ジン……」

 

「大丈夫だ、何があってもお前だけは絶対に守ってやる……!」

 

 ジンはしっかりとリアを抱きしめ、榴弾が直撃しようともリアだけは守る意志を貫き通し、ボルチモアとブレマートンが同時に主砲をジンに打ち込もうとしたその時だ。

 

 空から流星の如く、白く輝く何かが炎を纏いながらジン達の前に現れ、落下の衝撃で炎が地面へと伝わり、炎の焦げた臭いが鼻につきながらも、ジンは落下した物体を見離さなった。

 

 ジンの目の前には、白銀の装甲を纏った全長がジンよりも少し高く、人と同じように手足がある190cm程のロボットが立っており、ロボットはジンに顔を振り返ると、エメラルド色のバイザーでジンの顔を見つめていた。

 

 ロボットはそのバイザーでジンとリアの生体反応を確認すると、ロボットは礼儀正しくお辞儀をした。

 

「お待ちしておりました、ジン・カービス、そしてリア・ミレバス様」

 

「こいつ、喋っ……!」

 

 ロボットの声は低い男性の物であり、喋り方に知性を感じさせた。

 

 予想外の展開だが、ボルチモアとブレマートンの駒は気にせずジン達に榴弾を撃ち込むと、白銀のロボットは背後にいたボルチモアの榴弾を右手の裏拳で榴弾を海の方角に弾き飛ばした後、凄まじいスピードでブレマートンの榴弾を片手で掴むと、榴弾をまるで砲丸投げの様に空高く投げ飛ばした。

 

「KAN-SEN名、ボルチモア、ブレマートン……量子情報からセイレーンの駒と断定。排除を開始します」

 

 ロボットのバイザーが一瞬光り、ロボットはまずブレマートンを狙って接近戦を仕掛けた。

 まるで地を這う炎の様なスピードでブレマートンの背後に取り付き、右手から赤いビームサーベルがブレマートンの体を切り裂き、駒のブレマートンは小さなキューブとなって霧散していった。

 

 ブレマートンを倒された事で、ボルチモアが倒す優先順位を変えたのか、狙いをジンからロボットに変えた。

 

 ボルチモアは全ての砲塔をロボットに向け、一斉に砲撃を仕掛けてきた。

 

 あれだけの量、1つでも逃せばこの辺りは間違いなく爆発で吹き飛ばされてジン達は消し炭になるだろう。

 

 白銀のロボットは瞬時に状況を判断し、ジンの服を引っ張って上空に投げ飛ばした後、右手を広げてその掌からエネルギーをチャージしていた。

 

「出力20パーセント開放。発射します」

 

 白銀のロボットの手から炎を纏ったビームがボルチモアの榴弾を全て焼却させ、同時に斜線上にいたボルチモアも焼却し、熱に耐えきれなくなったボルチモアの体がキューブへと変化し、キューブは溶けるように無くなった。

 

 その間空中にいたジンは自由落下でまた落ちていき、何とか着地しようとしたが、白銀のロボットが着地寸前にジンの服を掴み、ジンを落下死させずにいた。

 

「ミッションクリア。脅威は排除されました」

 

「な……何だこのロボット。それに……」

 

 圧倒的な強さだった。いくらセイレーンの駒がKAN-SENよりも能力値が低いとは言え、KAN-SENを模している以上その強さは引けを取らない。

 

 だが、このロボットは別格に強かった。

 

 白銀のロボットが放ったビームは、確か20パーセントと言っていた。それは事実だ。

 

 だが、ロボットよりも先の道がドロドロに溶けて道から白い煙が立ち上り、沸騰した水が出す音を鳴らしていた。

 

 人間と機械の実力を思い知らされたかのような衝撃を受けたジンは、リアを下ろして白銀のロボットと会話を試みた。

 

「お前、何者だ? セイレーン……じゃないよな?」

 

解答(アンサー)。私はある方からの命令(オーダー)によって造られたロボット。私の事は、JB(ジェービー)とお申し付けください」

 

「JB?」

 

 JBは主人に忠誠を違うように片膝を付いた。

 

 ロボットなのにどこか人間臭いと思い、中に人間でも入っているんじゃないかと思ったジンはJBの頭を掴み、引っ張った。

 

 しかしJBの頭はヘルメットでは無く、覗き込むようにバイザーを見ても中に人が乗っている様子は無く、間違いなく本物のロボットだった。

 

「このロボット何なの? 誰が貴方を作ったの?」

 

 リアが恐る恐るJBに質問すると、JBは快く質問に答えてくれた。

 

解答(アンサー)。私は貴方達をサポートする為に造られた、多目的モジュール、JBでございます。後者の方はプロテクトがかかっているため、お伝え出来ません」

 

「じゃあ、私達を守るように命令した人は?」

 

「申し訳ございません。その質問も答えられません」

 

「秘密が多くて信用は出来ないわ……」

 

 だが、リアの中にこれを作れる人物は大抵予想出来た。

 

 それはリフォルだ。こんな高性能なロボットを作れるのは、リアが知る限りではリフォルだけだ。一体こんな物を作ったのだという疑問は残るが、その点では信用出来そうだが、まだ謎な部分が多く、どうにも信用はならない。

 

 ジンもそれを思ったのか、リアを庇うようにまえにでた。

 

「これだけは教えろ。お前はなんの為にここに来た」

 

解答(アンサー)、貴方方をここから連れ出し、守る為です」

 

 JBは海面にバイザーを向けて何か情報を送り出すと、海面からいきなり白い潜水艦が浮上した。

 

 だが、潜水艦としてはやや全長が大きく、普通の潜水艦の倍近くの大きさがあり、フォルムも潜水艦とはかけ離れた形をしていた。

 

 艦首はジェット機の様に尖っており、船の真ん中が少し盛り上がっているのは、あそこがブリッジだからだろう。

 

 近未来という言葉を具現化したような潜水艦に、こんな状況じゃ無ければ大声を上げて興奮していたとジンは思いながら、白い潜水艦を見つめた。

 

「ステルス汎用機動特装艦、通称『ノアズアーク』です」

 

「『ノアズアーク』……ノアの方舟って意味ね」

 

 ノアの方舟とは、聖書に書かれている神話であり、神が全ての生き物を滅ぼした大洪水から、ノア一家と動物たちが乗って生き延びた船の事を意味する。

 

 自分達を乗せて生き延びる船という意味では、これ以上無い名前だ。

 

「これに乗る前に、貴方達には選択肢があります。このまま貝の様に閉じこもって生き延びるか、それともアズールレーンに離反し、テネリタスとアズールレーンと戦うのか、お選びください」

 

 ノアズアークの館内に繋ぐ扉が開かれ、行動によって答えろと言わんばかりにJBは待っていた。

 

 どちらを選んだとしても、命の危険は大差無い。このまま隠れてもいずれは見つかる可能性もあり、立ち向かおうとしてもその戦いで命を落とす事もあるだろう。

 

 だがコソコソ隠れるのは性にあわないとジンは直ぐ決断しようとしたが、さっきから体が震えているリアを見て考えを少しとめた。

 

「なぁ、もしここで隠れることを選んだらどうなるんだ?」

 

解答(アンサー)、貴方方の名義を偽装し、安全な場所で一生を過ごして貰います。私も監視下にいるので問題は無いでしょう」

 

 ジンは少し安心した。

 

 もしここでリアと分かれたりでもすれば、守る術が無いリアは真っ先に狙われてしまうかもしれない。だが、このJBの言う事が正しいのなら、リアが安全な場所で居れるのなら、心残りはなかった。

 

「リア、お前は隠れてろ。全部が終わったら必ず迎えに行く。約束だ」

 

「約束……ね」

 

 いきなりリアはジンのネクタイを掴みかかり、ジンに怒り顔を見せた。

 

「私、アンタの約束信用してないから」

 

 リアは最初にジンの約束に破られ、1人で白い雪に頭を被り、その翌日は重い風邪を引き、ジンを恨みに恨んでいた。 その記憶がリアの脳裏に過ぎり、ジンのこめかみに指を弾いた。

 

「また私にあの寒い雪の日に置いていくつもり?」

 

「いや、それはべリタスの野郎に……」

 

「でも結局来なかったじゃない。だから、貴方の約束は信用ならないの」

 

 リアはジンよりも先にノアズアークの船内に入った。

 

「だから、信用させたかったら証明しなさいよ。私の隣でね」

 

「……はぁ、分かった。けど、ぜってぇ守ってやる」

 

「ええ。そこは信用してあげる」

 

 ジンもノアズアークの船内にっ中に繋がる廊下に入った。

 

了解(ラジャー)、ようこそ『ノアズアーク』へ。私は貴方達2人を歓迎します」

 

 JBは早速ノアズアークを案内すると、船内はかなり居住スペースがあり。とても潜水艦とは思わなかった。

 

 いや、そもそもこれは汎用機動特装艦とJBと言っていた為、正確には潜水艦では無い。

 

 潜水する事が出来る戦艦とでも言っておこう。

 

 そしてようやくブリッジに足を運ぶと、意外と簡素な作りだった。

 

 ブリッジの真ん中には巨大なスクリーンと一体化のテーブルがあり、操縦席は何かを差し込む為の穴があるだけだ。

 

 後は特に変わったところは無く、オペレーターが使う為の装置やらと、基本的な構造は確認出来た。

 

「これはすっげぇな……」

 

「操縦は私がしますので、目的地までどうぞゆっくりとお休み下さい」

 

 JBが操縦席に立ち、両腕を空いた穴に射し込むと同時に船が揺れ始め、ゆっくりと潜水していくのをブリッジのガラス窓から見て取れた。

 

 どうやら、JBが両腕がこの艦のハンドルになっているようだ。

 

「目的地って……どこに行くんだ?」

 

 するとJBは答える前に、ブリッジの上にあるモニターで今世界がどのような状況になっているのを纏めたデータをジン達に見せた。

 

「現在、テネリタスはサディアを中心にして進行を開始しています。そして、その場所にはあるお方がいます」

 

 その答えを示すように、モニターには1枚の画像が表示された。

 

 モニターに映し出された画像は、姿を隠すように白いパーカーを被った青年と、白いローブを頭に被っていた女性が映し出されていた。

 

 顔を隠してないが、パーカーから見えるあの癖のある黒髪に髪先が青い姿と、雪のように白い髪を持ったあの女性の優雅な立ち振る舞いは、ジン達は見覚えがあった。

 

「これ、優海とベルファストか!?」

 

「Yes。どうやらあちらもテネリタスがサディアに侵攻したと知って来ている様子です」

 

「テネリタスがサディアに侵攻している理由は?」

 

「Sorry……それは現在不明です」

 

 サディアがなにかあるのだろうか。とにかく、アズールレーンを今脱退したジンとリアが辿る道は、サディアにしか無かった。

 

 それに、優海がいるのは好都合だ。

 

 優海がどうにかしてKAN-SEN達の元に送り届ける事が出来れば、必ずKAN-SEN達の士気も上がる。

 

 それにこれはジンの直感だが、ジンは優海がアズールレーンをどうにかするかもしれないと踏んでいた。

 

 これまでも重桜と鉄血、レッドアクシズの問題を解決したんだ。きっと、アズールレーンの問題も解決する筈だと……ジンは信じていた。

 

「そうと決まれば、早速サディアに行くか!」

 

了解(ラジャー)、それではジン。艦長席へとお座りください」

 

 JBはブリッジの中で少し上にある座席に目を向け、艦長席にジンを座らせようとしたが、ジンは座らず首を横に振った。

 

「いーや、あの席に座る奴は俺じゃねぇよ。それに、ノアズアークっていう名前も気に入らねぇな」

 

「じゃあどんな名前にするの?」

 

「ん? そうだなぁ……どうすっか」

 

 ジンはこの艦の名前について悩んでいた。

 

 ジンがこの名前を気に入らないのは、ノアの方舟という神話が、選ばれた命が助かったという話であり、これも命を選んで助けるという形になってしまうのでは無いかというジンクスがあるのが気に入らないからだ。

 

 だから誰の命も選別せず、全員が平和へと道を示せる艦を目指すのなら、そういう名前が良いと思った訳だが、どうしても思いつかず、ジンはうなり続けた。

 

「なら、『コンパス』はどうかしら」

 

「コンパス? 文房具のか?」

 

「違う。私が言っているのは、方位を示す方のコンパスよ」

 

「あ〜あれか! ……なんで?」

 

「私達は、人類全員を救う力は無いわ。ましてや、平和に皆を引っ張る力もね。けど、一緒に示す事は出来るはずよ。平和とは何なのか、そしてそれを実現する為にはどうするのか……そういう意味を込めたつもりなのだけど、どうかしら?」

 

「お前……センスあるな。子供とか産まれた時、良い名前付けれそうだな」

 

「子ど……!? な、何言ってるの!? この馬鹿っ!!」

 

 リアは顔を真っ赤にしながらジンに強力なビンタをかますと、ジンは頬にリアの手形をつかせながら壁に吹き飛ばされ、思い切り頭を打って気絶した。

 

 一部始終を見たJBはバイザーに『?』マークを浮かばせていた。

 

「出発しても、問題ないでしょうか?」

 

「ええ、問題ないわ!」

 

「あと、伝えておきます。ジンとリア様のお部屋は同室なので、ごゆっくりお二人の時間をお過ごしください」

 

「はぁ!? なんでこいつと同室なの!? え? えぇ!?」

 

「心配せずとも、ベットのサイズは問題なくダブルサイズです。もしや、もう少し狭めのベットで抱き合うのが好……」

 

「そういう問題じゃなぁぁぁぁぁぁあいいいい!!」

 

 リアの叫びが狼煙代わりとなり、コンパスはサディアに向かって出発したのであった。

 

 




新キャラ紹介
・JB(??)
全長193cm
体重148kg
主な武装:ヒートブレード、超高出力ビーム砲

突如ジンとリアの前に現れた、汎用人型強襲モジュール兵装のロボット。KAN-SENにも引けを取らない性能を持っており、その実力は計り知れない。

誰がいつどのように作ったのかは全くの不明であるが、ジンとリアを守る為に作られ、ジンとリアが言う事には従順に従っている。

ロボットという人に使われる事を強調する為か常に敬語で接している。

戦闘以外でも、作戦立案や艦の修理、家事から育児まで等、幅広くサポート出来るように作られている。

どのテネリタスが好き?

  • ロリママ創造者の2代目 ラハム
  • 人類最強の天然3代目 アトラト
  • 食いしん坊な絶対守護者4代目 シーア
  • 武士道と極める騎士5代目 ロドン
  • 風のように自由なガンマン6代目 セイド
  • 完璧で究極のアイドル7代目 マリン
  • おっとり包容力で全知全能の8代目 ミーア
  • 元人間のセイレーン 10代目マーレ

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