もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜 作:白だし茶漬け
私の耳元に内蔵されたマイクから人々の泣き叫ぶ声と悲鳴が拾う。
瓦礫が崩壊する音が誰かの命が砕け散り、潰れる音にも聞こえる。
助けて、どうしてこうなった、誰でもいいから助けてくれと、喉が潰れるぐらい助けを求めても、誰も助けてくれない。
死ぬ間際の人間は走馬灯を見ると言いますが、この地獄でもそれが見えるのだろうか。
私はJB、血が通っていない汎用強襲兵器。いわゆる戦闘用アンドロイドです。
私の装甲はどのKAN-SENよりも硬く、強く、冷たい。
私が操る炎は全てを滅却させ、全てを焼き尽くす灼熱の業火。
そして私の冷たい拳は、全てを貫く鋼のドリルともなる。
そんな私が作られた目的は……分からない。
ただこう言われた。
『ジン・カービス、リア・ミレバス、ネージュ・トケル……そして、天城優海を助けて欲しい』と。
ただ、私の中で何故かジン・カービスを特に守らなければならないと強くプログラミングされている。
人間でいう……使命、というものに似ています。何故私にこのようなプログラミングがあるのか分からないですが……今はとにかく敵対勢力の排除します。
目の前の巨大な敵、ドロイドに向けて拳を突き上げる。
鋼鉄の拳がドロイドの体を貫き、生物を模した赤い血の様なオイルと血管のようなコードが飛び散り、赤い海に触れた後、ドロイドの部品はまるで全てが無かったかのように霧散していく。
「まずは1つ」
敵を倒した事の残心や達成感は無い。私は直ぐさま2体目のドロイドを倒すために、内部のエネルギーを蓄積し、蓄積したエネルギーを一点に解き放ち、燃え盛る業火でドロイドを滅殺する。
「2つ」
まだドロイドはいる。しかし、KAN-SEN達がほとんど戦闘不能の状態では多勢に無勢というもの。
私一人でもやるしかないと思った矢先、後ろの方角から青い矢がドロイドの目に突き刺さり、ドロイドの動きを止めた。
振り向かなくとも攻撃方法で誰が攻撃したか分かる。
この攻撃方法はエンタープライズである事は分かります。ですがドロイドのウィルスによってまともな攻撃方法が出来ない中、あれほどの攻撃をする余力があるとは思えない。
その確認を行う為に振り返ると、やはりそこには口元に血液が付着し、目が朦朧としたエンタープライズがいました。
「っ……はぁ……くっ、お前はっ、何だ……!」
これは私の事を指しているのは間違いない。激しく肩を上下するほどの浅く、苦しそうな呼吸。
バイザーに表示される情報からして、立っているのもやっとな状態の筈。それでもドロイドに致命傷とはいかずともダメージを与えるとは素晴らしい。さすがユニオンの英雄と言ったところです。
その行動に敬意を払うように、私は投げられた質問に答えた。
「私はJB。貴方方の味方です」
「J……B? その姿は……ロボットなのか?」
「肯定。しかし疑問、貴方も何故この状況で損傷が無いのか……」
疑問に思い、スキャンモードを起動してエンタープライズの細部まで観察し、この状況の適応理由を把握する。
すると、エンタープライズと艤装から僅かですが特殊な粒子を検知した。
エンタープライズだけじゃない、損傷問わずにこの場にいる全てのKAN-SENをサーチすると、同様の粒子が確認された。
(推測。この微細な粒子がドロイドのウィルスを抑制しているのでしょう。そしてこの粒子の出処は……)
上空にいる彼女でしょう。7代目テネリタス、マリン・テネリタス。
彼女の特性は粒子を駆使して仲間の援護と敵の妨害。彼女は今、その特性を駆使して仲間の援護に徹すると同時に、KAN-SEN達にウィルスから守るよう、粒子をKAN-SEN達の艤装に纏わせているだけでは無く、街全体を覆うようにしている。
……だが、あれでは全てのウィルスを抑制するのは無理でしょう。
推定30分が限界でしょう、この30分が過ぎる前に全てのドロイドを倒せば、このウィルスも全て除去される。
ドロイドのウィルスは空気感染せず、ドロイドから直接付与されて初めて体を蝕ませる。
つまり、ウィルスを出している温床を抹消すれば解決する。実に簡単な解決策で私好みではありますね。
……いや、私では無く、私を設計した人物の好みですね。
人間のような思考をした自分に1ミクロンのバグを消し去り、近くにいるドロイドに攻撃を仕掛けようとしたその時、空から1発の弾丸がドロイドの頭を撃ち抜き、白い光となって消えていった。
「うっし、これで5体目だな!」
「もー! 遅いよパパ!」
「悪ぃ悪ぃ、けどちゃんと間に合っただろうがよ」
あれは、6代目テネリタスのセイド・テネリタスでしょう。セイドと目が合い、向こうもこちらの存在に気づいたのか、セイドは足を止めて私の方に目を向けた。
「なっ……お前」
セイドは私の姿が珍しいのか、瞳孔を開いていた。ロボットである私が例え話を言うのも何ですが、まるで死人を見ているようでした。
「マリン、ちょっと先にいけ」
「なんで? ……えっ、なにあのロボット! 凄いー!」
うさぎのように小刻みにはしゃぐマリンに対し、セイドはガンマンハットを深く被り、重いため息をつくと、セイドはマリンを先に行かせた。
マリンは私の事をもっと観察したいと騒いでいましたが、状況が状況なのと、セイドの重苦しい真剣な顔を見て、セイドの心情を察し、静かにこの場を去ってドロイドへの撃退に移った。
私とセイド、2人だけの空間になった今、セイドは何も言えない空気を変えるかのようにタバコを吸い、こちらに目を向けた。
「……お前、JBか?」
耳を疑う……と言うべきでしょうか。会話ログは疑いようが無い事実を記していました。
誰も知らない筈の私の名前を、初対面の彼が答えた事に驚きを隠せなかった。
「疑問。何故私の名前を知っているのですか」
この個体名を知っているのは、ジン・カービス、リア・ミレバス、そして私を作った開発者にしか分からない筈。
それなのにも関わらず、初対面のセイドが私の名前を当ててきた。しかも、間髪入れずに。
私を知っていなければ、私の名前を当てることは出来ない。だが、数百年前の英雄が私を知ること等出来ないはず……好奇心では無く、不確定要素を取り除く為にセイドに質問をしましたが、セイドはのらりくらりと答えなかった。
「さぁな、何となくそういう名前だったと思っただけだ」
「理解不能」
「そうだな……わかんねぇ。けど、お前のその声……いや、元になったやつを俺は知ってるからさ」
「……?」
「とにかく、今はドロイドだろ」
「……共感。任務に戻ります」
セイドの言う通り、今はドロイドの撃退に集中すべきです。足の裏のジェット噴射で加速していき、また1つ、拳に血のようなオイルを纏わせる。
この一撃が、世界を救うと信じて。
「お前の遺産か? カービス……」
_鏡面海域 コロッセオにて
無機物と有機物の中間の様な感覚が剣から直に伝わっていく。
腕に剣を通すと、骨の軋む硬い音と肉を切る柔らかい感覚が混じり合う。もう何度もこの感覚を通し、戦いを重ねてきた。
駒との戦いは何度も経験した筈だが、今この場にいるサディアの駒達はどこか様子がおかしかった。
駒は通常、意志という物が無く、ただ機械的に行動するだけだ。
敵を狙う、撃つ、攻撃を回避する等、例えるならゲームのCPUの様な動きしかできない。だが、この駒達は少しだけ様子がおかしい。
『はぁぁ!』
サディアのリーダー的存在のKAN-SEN、ヴィットリオ・ヴェネトの駒は、レイピアを持って俺の剣と鍔迫り合い、鍔迫り合いを制しようと前のめりになり、歯を食いしばって俺を打ち勝たんと必死な顔だった。
感情を乗せた剣先は重く、これまで戦った駒とも違う違和感に体を取られ、動きが鈍くなる。
コロッセオの外には、五体のドロイドも居るというのに……このザマだ。情けない自分を奮い立たせ、ヴィットリオ・ヴェネトの無防備の横腹を思い切り蹴り伏せる。
意識外の攻撃にヴィットリオ・ヴェネトはよろめき、体勢を崩した所でその喉元に剣を突き刺し、駒は泡となって消えていく。
だがまたすぐに倒した駒は復活するように再生し、俺の前に立ち塞がった。
「キリがないな……」
つい弱音を口にし、一呼吸間を置いた瞬間、上空から稲妻が降り注ぎ、稲妻を避けながら直撃コースは剣で受け止め、別の駒に打ち付けるように受け流す。
ロドンさんの剣術を学んだかいがあったというものだ。
稲妻の出処は……上空で浮かぶ白い玉座に座っているマルコ・ポーロだ。
アイツの駒が一番様子がおかしい……と言うより、本人に近い意思を感じる。
『私の力にひれ伏しなさい! そしてサディアの栄光を取り戻す贄となれ!』
言動、行動、仕草……どれをとっても、マルコ・ポーロとほぼ似ていると言うより、まるで自分自身がマルコ・ポーロだと信じて疑わないと思わせる。
駒にここまでの自由意志を持つ意味は無く、コスパの無駄遣いだ。性能もそこまで高くなく、単体なら駒とほぼ同じ力だ。
だが、無尽蔵に湧き出て来るのは厄介だ。ならば取るべき行動は……
「彫刻室の破壊だな」
湧き出るならその巣を破壊し、増殖を潰す。それしかない。
コロッセオの地面に大穴を開けるため、上空に向けてはるか高く飛ぶ。艤装の出力を最大に引き上げ、コロッセオが両手で覆えるほどの小ささになるまで飛ぶと同時に、右腕の銃からコードが伸び、左右両方の艤装へと直結させる。
最大火力であのコロッセオの地面を撃ち抜くと同時に、ここにいる残り三体のドロイドと駒を焼き尽くす。
だがこれを使ってしまえば、艤装のエネルギー供給が一定時間オーバーヒートしてしまい、艤装の出力が大幅に低下するリスクがある。
だがこれしか、方法は無い。
左右の艤装からのエネルギーを全て右腕の銃に集中させ、銃口に青黒い光が集まり出していく。
光が集まりにつれて光熱が帯びていき、余分なエネルギーがあるのか銃口周りに青く小さな稲妻が走る。
俺よりも低い意味にいるドロイドや駒達は対空砲撃を行い、艤装や頬に弾丸やビームが掠めていき、いつ致命傷に当たるか分かったものじゃない。
だが動く訳には行かない。下手に動けばちょうどよく集まっている敵を一掃出来ないからだ。
「出力79……85……89」
100になった瞬間撃てるように、刻々と100に近づく数値を数えていき、2秒後直ぐにそれが叶った。
エネルギーが満タンになった事を示す様に、銃口に溜まっていくビームのエネルギーが大きくなり、今すぐ吐き出さないと暴発しそうだ。艤装も早く撃たせれと急かすように機械の駆動音を鳴らし、急かす艤装に応えるように引き金を引いた。
「消し飛べ……っ!」
引き金を引いた瞬間、とてつもなく銃口から伸びる巨大な光の柱と思わせるようなビームが発射され、光に飲み込まれたKAN-SEN達は一瞬で蒸発し、ドロイドも外装がアイスのように溶け、内部の機械が剥き出しになった瞬間爆発した。
爆発が爆発を呼び、コロッセオの柱が崩れると同時にその全体が崩壊していく。
規模が大きいからか砂埃は砂塵の様に島を包み込み、サディアでは彫刻のような闘技場は、あっという間無惨な瓦礫へと変わっていく。
生き延びた駒達も瓦礫の下敷きとなり、全てが終わった。
最大限のエネルギーを攻撃に転用したせいで、体が上手く動けない。
ここから数分エネルギー供給の為に武器すら使えないのはネックだ。セイドさんはロマンの引き換えだから問題無いと言っているが、大問題だ。
これを解決する為には、エネルギー供給量の最適化か、予備エネルギーをどこかに蓄える必要があるが……今は難しく、ないものねだりに近い。
深い溜息をつき、砂埃が止んだ頃合で空中から海上へと降り立ち、瓦礫の山となったコロッセオに足を踏み入れる。
「……やはり地下に何かあるのか」
瓦礫の山となったコロッセオの中心には、巨大な穴が形成されており、ただの穴では無く所々に外層やコードが剥き出しになっている。
間違いない、ここだ。KAN-SEN達の駒を作っている【彫刻室】は、コロッセオの地下にある。
レーダーから敵性反応は感知してないが……熱源が2つあった。どれも近く、隣である可能性が高い。
しかもこの熱源……全く動いていないのが気になった。
これだけの騒動で動いていないのはおかしい。振動が伝われなかった……のは無い。コロッセオが破壊され、外装が破壊するほどの攻撃をしたんだ。多少の攻撃による余波は届いている筈だ。
「……行ってみるか」
ちょうどエネルギー供給も完了し、普通の戦闘なら問題無い所まで回復すると同時に穴に飛び込んだ。
_現時刻 サディア 司令室にて
淡い青色のホログラムから、戦場のデータがめまぐるしく変わっていく。
被害状況、KAN-SEN達のバイタリティ、弾数、KAN-SENの位置関係、気候等……指揮官は戦場に関する全ての物を把握し、瞬時に適切な指揮をする。
指揮官に必要な素質は複数ある、天性のリーダーシップ、ユーモア溢れる順応性、どんな状況でも適切な指揮を取れる冷静さ等が上げられる。
天城優海は、この全てを兼ね備えていた。
愛される素質もあり、天性の指揮の才があり……仲間を守れる絶対的な力がある。
望んでも手に入れられない才能が妬ましくもあり、当然だという諦めもある。
だが、優海くんは指揮官に絶対に必要な物が備わって無い。それは……
「何もかも犠牲にする……非情。君にはそれが無かったね」
試しと言わんばかりに、僕は通信機器を取り出した。
「……ザラ。そのまま前進。ポーラはザラさんの援護を」
『分かったわ、ヤークトさん』
「……指揮官とは言わないのか」
まぁKAN-SEN達は優海くんしか指揮官として認めていない。交代して、今は僕が唯一無二の指揮官だと言うのに、寂しい物です。
まぁ、道具に対して感情も無いんですけどね。あるのは利用価値があるかどうか、それだけ。
そうじゃなければ、KAN-SENの指揮官は務まらない。
ザラは僕の言う通りに動き出すと、直ぐさまドロイドの射線上に入り、無数の赤い球がザラに襲いかかる。
『っ……ザラァァ!』
ポーラがザラを助けようとしたが、ポーラの速力では間に合わない。
何故助けようとするんだ? どうせ、KAN-SENだ。データさえあれば、メンタルキューブで同じ物が作れると言うのに……いや、絶対では無いかな。
何故か分からないが、メンタルキューブから造れるKAN-SENは、同じ種類のは作れるが、任意のKAN-SENを作り出す事は出来ない。データを元にしても、それが作れる確率が上がるだけだ。
「でもまぁ、いつかは作れますよ」
確かな希望を持って、僕はあるスイッチを起動する。
スイッチを起動した瞬間、ポーラから苦しげな叫び声が聞こえた。
『なんで……!? 体がっ……動けない……!』
「!? どうしたんですか、ポーラ!?」
なんてね。ふふ、リードはしっかり持たないと、噛まれますからね。
指揮官には、KAN-SEN達の動きを一時操作出来る権限が備わっている。勿論優海くんは使わなかった……というより、知らなかったでしょう。
まぁ、いちいち言う通りにしない兵器なんて危険ですし、こういうリードを持っていた方が安心出来ます。
けど、知らないふりをした方が悲壮な物語を演出出来ますし、テネリタスに擦り付けられば問題無いでしょう。
『いや……嫌っ! 逃げて! ポーラ!』
無理ですよ。逃げられないように誘導しましたから。
ポーラは必死にザラの砲撃とドロイドの攻撃から避けようと逃げ回っていますが、ドロイドの包囲射撃に逃げ場は無い。
泣いて叫んでも現実は変わらない。
ザラは嗚咽と涙を流しながら、自分の意思とは無関係に全ての砲塔をポーラごと向けた。
『嫌っ! こんなのっ! 指揮官っ……!!』
主砲は放たれた。もう終わりだ。おめでとうザラ。
君は尊い存在を引き換えに、使命である人類を守れるのだから。
心からの賛美を向けたその時だった。ポーラを守るように炎の壁が形成され、ドロイドの背後を炎の流星が貫いた。
「なんだ……?」
ホログラムの画面をズームさせ、炎の流星の中にいる人影に注目する。
ポーラを守っていた炎の壁はドロイドが霧散したと同時に鎮火し、ザラは急いでポーラの隣に駆け寄り、流星から姿を現した人……いや、ロボットを見上げた。
「間に合いましたね。おふた方」
「……何? このロボット」
「私の名はJB。それでは」
「JB……?」
JBと名を告げたロボは次のドロイドを破壊する為に空を駆け巡った。
聞いたこともない識別名だが、アズールレーンのデータベースにはそのような識別名は存在しない。
という事はつまり、アズールレーン以外の技術で作られた存在という事だ。
セイレーン……では無いと考えたが、所々にその名残りかまある。装甲やフォルムは、セイレーンの技術では無く、現代の技術で作り上げられるレベルだと分かるが、内部構造は恐らくセイレーンの技術だ。
艤装も無く、内部出力エネルギーだけでドロイドを一撃で倒せるあのパワーは、そうでなければ説明出来ない。
「……少し、調査が必要かな」
と言っても、恐らく証拠はあまり出てこないだろう。
それでも、千里の道も一歩からという重桜の言葉がある。地道に進むとしましょうか。
丁度よくドロイドから発生するウィルスの感染率が46%を達成している。これ以上広めたら本当にサディアを滅ぼしかねない。
「さて、後は英雄様達が何とかするでしょう」
光り輝くアイリスの王冠を指先で撫でるように触り、ドロイド達は白い泡となって次々と消滅し、まるで何も無かったかのように消えていった。
だが残した物は消えない。ドロイドのウィルスは消えずに残っており、KAN-SEN達と人類達はウィルスに犯されて次々と倒れる。
KAN-SENはともかく……人類がどれだけ生きていられるかが問題だ。もしサディアの人間が半数が死ねば……うーん、再興が難しくなりそうですね。
組織の再編……人員の配置……やる事なす事、裏で根回しが大変ですねぇ。
「けど、英雄様なら……おっ、そろそろですかね」
コーヒーを一口飲みながら、ホログラムから聞こえる歌を傾聴した。
_サディア海域にて
ヤークトの操作により、残りのドロイド達は泡のように消えていき、KAN-SEN達は安堵の息を漏らし、テネリタスも同じように重い溜息を吐いた。
「あ〜終わったー!! ちゅかれた〜! もう動きたくない! スイーツ食べたーい!!」
マリンが仰向けに倒れ、赤子のように手足をばたつかせた。
「お疲れ様ですお母様。けど、私達にはもう一仕事ありますよ」
駄々こねたマリンに母親の様にミーアが寄り添いに行き、両足を曲げてマリンの頬を人差し指で触れた。
……正確には、マリンの方がミーアの母親だが、これを見たら逆かと思う事だろう。
一仕事と聞いたマリンはすんと無感情になり、虚無感が広がった。
「あー……うん、もう一仕事頑張ろうか」
マリンは仕方ないと言いながらも気合いを入れ、旗を広げて扇状に振り上げると、旗から虹色の光が溢れ出し、サディア本国に向けて虹色の粒子をオーロラの様に纏わせた。
「あー……よし、喉はバッチリ。じゃあ歌うよ。皆の為に」
マリン歌声を風に乗せるように歌うと、歌声はサディアを包むかのように広がり、虹色の粒子が歌声に反応してまた輝き始めた。
透き通った曇りなき歌声が人々の耳に届くと同時に、粒子は雪の様にゆっくりと人々の肌に寄り添うように振り落ちると、粒子に触れた人間は先程までの苦しさが嘘かのように回復していった。
空が赤から青へと色と暖かさを取り戻し、一筋の太陽の光がマリンの方へと射し込んだ。
太陽の輝きを背に歌うマリンの姿を見た人類は、マリンに様々な事に形容した。
歌姫、女神、救世主……英雄。今この時、この瞬間、マリンを見た者全てはマリンを崇めに似た感情を抱いた。
そして、それはKAN-SENも例外では無く、その力に劣等感も抱いていた。
自分達もあのような力が欲しいと、強く……強く願い、色が混じりあうように渦巻いた。
そして、その混じり合う色がたどり着く先は……黒である。
_サディア地下鏡面海域にて
「……懐かしいな」
元セイレーンの仲間であったからか、セイレーンの技術が盛り込まれた機械を見ると、嫌でも懐かしさが込み上げてくる。
ケーブルに繋がれた端末、様々な海域が映るモニター、静寂な空気の中で聞こえる機械の駆動音……あれから1年程経ったのかと思うと、随分と早いものだ。
もっとも、俺が死んでセイレーンになったのはもう10年ぐらい前なんだが。
鑑賞に浸っている場合では無い。さっさとこの彫刻室を破壊し、駒の量産を抑えなければ物量差で侵攻が遅れてしまう。
だが、まだ潰す訳には行かない。
この彫刻室は他とは違い、駒の性能が桁違いで倒すのにも一苦労をかける程だ。その秘密を探れば、俺達の艤装の強化に繋がると考え、こうして散策をしている訳だが……どうやら、取り越し苦労に終わるようだ。
彫刻室の奥、牢屋の様な柵の向こうには2人のKAN-SENがいた。
1人は黒い肩までかかる程度の長髪で、白いドレスに赤の装束を来ており、もう片方は灰色の髪に黒いドレスを着たKAN-SENであり、どちらも手錠で拘束され、背中からコードが繋がれており、コードから緑色の光が2人から端末の方へと流れていた。
「ローマとマルコ・ポーロか?」
名前を呼ぶとローマだけは反応し、マルコ・ポーロは反応しなかった。反応したローマはゆっくりと顔を上げ、俺と目が合った。
「貴方は……指揮官……いえ、マーレ・テネリタスですね」
「俺とアイツを知っているのか」
「指揮官とは、少しお話しましたので。ここで何を?」
「それはこっちのセリフだ。……いや、大体は分かる」
恐らく、駒を造る際のデータ収集されたんだろう。メンタルキューブに蓄積された経験、情報を再構築し、それを駒に流し込めば、本体と余り変わりない駒が作れるというのは、セイレーンにいた頃から知っている。
通りでローマやマルコ・ポーロの駒だけ少しの意志がある訳だ。
「ところでマルコ・ポーロはどうしたんだ。さっきから項垂れるが」
「私は……サディアの為にやってきたのに……どうして……なんで……」
耳を傾ける言葉はこれしか聞こえず、壊れた機械のようにずっとこの言葉を繰り返している。
マルコ・ポーロは自己中心的で傲慢な態度をとっているが、今はその面影すらない。
何かをされた事は間違いないが、ローマにこの事を言っても首を横に振るだけだった。
「私にも何故彼女がこうなったのか分かりません。ですが……あの新しい指揮官、ヤークトが関係していると思います。何故なら、彼女をここに幽閉したのは……」
「察するにヤークトという事か」
ローマは俺の答えに頷いた。
「その口ぶりからして、お前は違うようだが」
「私は……分かりません」
ローマが一瞬マルコ・ポーロの方に目を向けた事から、恐らくだがローマをここに幽閉したのはマルコ・ポーロで間違いないだろう。
察するに、マルコ・ポーロが暗躍しようと行動を起こす直前、あのヤークトという男がマルコ・ポーロを唆し、ヤークトの話術に見事騙されたと考えるべきだ。
「おいマルコ・ポーロ。お前は何を企んでいた」
しかしマルコ・ポーロは何も答えなかった。これ以上情報を得ることは無いと踏んだ俺は柵を破壊し、2人に繋いでいるコードと手錠を破壊し、開放した。
開放されたことに戸惑っていたローマは真意を探るような目を向け、マルコ・ポーロを抱えて俺と距離を置いた。
「どういうつもりですか」
「今からここを破壊する。俺の気が変わらない内にさっさとここから離れろ。この部屋を出て、奥に進めば鏡面海域を出るゲートがある。それを使え」
ローマの警戒は無くなるどころか更に強くなり、信じられないと言わんばかりに艤装を展開してきた。
ここで嘘をついてどうするんだと言いたいが、ローマのこの行動はマルコ・ポーロを守るためだと立ち位置で分かった。
ローマはマルコ・ポーロの前に立ち、俺が攻撃しても自分が全て受け止める事前提に立ち回っている。
(……人類の敵と対面したらこうなるか)
倒す気もさらさらない俺はローマに背中を向け、当初の目的である、古のタイルというものをさがす。
「どうやら本当に敵意は無いようですね」
「俺には俺の目的がある。さっさと行け」
ようやくローマは俺の言葉を信じ、マルコ・ポーロを抱えて奥の部屋に向かい、ゲートを通って通常海域へと出ていった。
モニターを見る限り戦闘は終わり、ドロイドは全て破壊……はしてないか、恐らくヤークトが出したドロイドは全体の一部な為、これから出てくるだろう。
それはともかく目的の物を探さなければ……タイルと言うからには厳重に保管されていると考えローマが向かった物とは反対の部屋へと向かう。
そこには様々な彫刻品が展示されており、過去の遺物のコレクション部屋と言ったところだろう。
壺、絵画、剣……骨董品の全てが完璧な状態で保存されており、これを1つ持ち出すだけで大昔の背景が分かるぐらいだ。だが目的の物はこれじゃない。
目的の物を探しながら部屋の奥へと進むと、他とは違ったケースに、その目的の物はあった。
巨大なガラスケースの中に浮かぶ、1つのタイル……あれだ、あれがサディアを侵攻した目的の1つである。
「見つけた……古代図書館のタイル」
ガラスケースを壊し、宙に浮かぶタイルを手に取る。
石のザラザラした感触、そして所々に潰れた古代文字に、端には少しの苔……間違いない本物だ。
「これで、貴方の復活に一歩近づきましたよ」
「初代テネリタス……ティアマト・テネリタス」
どのテネリタスが好き?
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ロリママ創造者の2代目 ラハム
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人類最強の天然3代目 アトラト
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食いしん坊な絶対守護者4代目 シーア
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武士道と極める騎士5代目 ロドン
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風のように自由なガンマン6代目 セイド
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完璧で究極のアイドル7代目 マリン
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おっとり包容力で全知全能の8代目 ミーア
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元人間のセイレーン 10代目マーレ