もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜 作:白だし茶漬け
残念ながらイベントの方には行けませんでしたが、生放送を通じて多くの情報が出回りましたね〜
まさかの空母天城の実装!これは確保したいですね〜色んな意味で。
「優海が死ぬってどういう事よ!!」
月も無い新月の夜の中で赤城が怒りを乗せて叫び出す。
恨み、憎悪、ありったけの怒りに支配された赤城は目の前にいるオロチの胸ぐらを掴み、喉元に刃物の様に伸びる爪を突き立てた。
天城が赤城を止めようと諌めるものの、赤城はそれでもオロチに対しての憎悪は止まらず、未だに喉元に爪を立て続けていた。
そんなオロチはまるで殺されないと分かっているのか、余裕の笑みを浮かべて赤城を宥めるように両手を動かす。
「まぁまぁ、カルシウム取って落ち着きなさいって。牛乳飲む? 産地直送よ」
「貴女の血という血を全て絞り出しても良いのよ?」
おちょくられた赤城はオロチの右腕を握りしめ、文字通り雑巾の様に絞ろうとしていた。オロチの腕の骨が軋む音が鳴り響き、このままでは確実にオロチの骨が折れ、赤城はオロチの右腕を半壊させる気でいた。
それでもオロチは表情1つ変えず、ただ平然と天城の目を見た。
「もう一度聞くわよ。優海が死ぬってどういう事? どうしてそうなるの? さもないと本当に血を絞り出して殺すわよ」
「だーかーら、アンタのそんな状況じゃ何言っても聞かないでしょ? その為に牛乳持ってきて落ち着かせようとしてるの。おわかり?」
「このッ……!」
「やめなさい赤城っ!!」
天城の怒号で一瞬この地が揺れたかの様な衝撃に全員天城に目を向ける。
逆立つ栗色の髪と耳、そして激しく尖らせた尻尾でこの場にいる全員、初めて見る天城の本気の怒りに身の毛がよだち、赤城はその迫力に負けて無意識にオロチから手を離した。
「オロチさん、状況をお話ください」
「うわっこっわ……アンタも意外と怒りっぽ……」
「早くしてください。私も赤城と同じ気持ちを抱いているのです。さもなくば……本気で何をするか分かりませんよ」
「はいすみません。やっぱり貴女と赤城って姉妹艦よね」
通ずる物があるとオロチは勝手に納得し、赤城に握りつぶされかけた右腕を労りながらオロチは今の状況について話した。
「まず、死ぬっていうのはただの表現。厳密に分かりやすく言うと、優海の心の崩壊が進んでいるのが現状よ」
「優海の心……?」
「優海の中にあるメンタルキューブとセイレーンのコアの共鳴が不安定になっている。このままじゃキューブとコアが壊れて、優海は永遠にこのままお休みよ」
オロチは手に持っていたミルクに水を入れると、ミルクは透明になりつつあり。ミルクと水が混ざった液体はコップからこぼれ落ち、最後にオロチは机の上にコップを落とし、コップは粉々に砕け散る。
それは優海の今と未来を表しており、残っているのは砕けた残骸とミルクと水の臭いが混じった何か残りカスだった。
「このままじゃ優海はこんな風になる。こうなったらもう、二度とどうにかすることも出来なくなる」
「対処法は?」
「うーん……もう一度同じ方法を取ってみるのも良いけど。それじゃダメ。何かもっと優海の方から目覚める様なきっかけを持たせないと」
「きっかけ……」
「その手助けとしてある人物からの伝言よ。『貴方達は本当に優海を理解しているのか』ですって」
コネクターからのメッセージをオロチは『皆』に伝えた。KAN-SENだけではなく、優海と関わりがあるジンとリア、2人にも確かに伝えた。
しかし、コネクターからのメッセージとは知らずに受け取った者達は言葉の意味が理解出来ずにいた。
「優海を理解? そんなのしてるに決まっているじゃない。だって家族だもの」
赤城は胸を張って自信満々に言った。
だが、そこに吐き捨てるように否定の言葉を投げつける人物も存在した。
「家族だからって何でもかんでも理解出来るもんじゃねぇよ」
赤城に言葉を吐き捨てたのは、意外にもジンだった。
どちらかと言えば赤城の言葉を肯定する様な人物がまさかの否定する意見に赤城は最初こそは戸惑いつつも、その戸惑いは怒りの炎によって消え、赤城はジンを睨みつけ、ジンも負けじと睨み返す。
「俺も最後まで母さんの事を理解出来なかった。どうしてあんな奴の事を愛していたのか……何にもな」
ジンは幼少期の頃の記憶を蘇らせ、唯一の心の拠り所だった母親の姿を思い浮かべる。
もう昔の事だからなのか、声はおぼろげで薄れていくが、唯一母親の笑顔とそれを口にしていた時は覚えていた。
それは父親を……べリタスを敬愛する言葉であり、べリタスと深い溝があるジンに取ってそれは理解できない言葉であった。
「言っちゃ悪いけどさ。家族って言ったって言ってしまえば他人だ。分からない事やまだ理解しきれてない事だってあるだろうよ」
これまで苛立ちを燻らせていた赤城はジンの言葉に胸が痛み、脳天が鈍器に殴られたかのようなショック……図星や納得を受けた。
赤城だけではなく、天城、加賀、土佐、そしてベルファストも黙り込んでしまい、顔を変えず虚ろ目の優海を見た。
今まで、自分は優海を理解していたと思い込んでしまった今までの自分を悔い、気づけられなかった自分を憎み、そしてそんな自分達の不甲斐なさに顔を曇らせる。
「……今更、どうやって理解しろというんだ」
土佐がそう口にすると、重苦しい空気は鉛のように更に重くなる。
理解したくても、今の状態ではまともに話す事なんて出来ないのは火を見るより明らかだ。
もう一度同じように深層世界に入っても否定される結果も見えている今、1人が口を出した。
「貴方なら、分かるんじゃない?」
その人物とはリアだった。リアはジンに向けてそう言うと、ジン本人も当てられるとは思わずに目を丸くさせ、肩を上げて驚いた。
リアは当てられた事についての真意をジンに話した。
「貴方、人を見る目だけはあるんだから。男同士、何か気づいてるんじゃないの?」
「だけって言うな。だけって。まぁ、思う所はあるけどよ。合ってるかどうか……」
「いえ、是非とも聞かせてください」
罰が悪くジンは首元に手を置き、言葉を渋っていたジンを天城が背中を押すようにして説得する。
「恥ずかしい話。私は優海と離れていた時の方が長く、指揮官を目指していた時となったばかりの頃を知りません。リアさんの言う通り、この場で優海を理解しているのは恐らく貴方です。ジンさん」
「俺よりもベルファストの方が理解してると思うけどな」
「そう言いたいのは山々ですが、今回ばかりは天城様の言う通りです。お恥ずかしい限りですが、ご主人様に抱いている考え、どうかお教えください」
天城とベルファストは頭を下げ、引き下がらない状況でジンは唸り声をあげる。
赤城も、「天城姉様が頭を下げているのだから早く喋れ」と顔で訴えおり、ジンは苦笑いを浮かべて話す事に決めた。
「分かったよ……まっ、俺のカンなんだけさ。コイツさ、多分強がってるだけだ」
「強がってる……?」
「あぁ。『指揮官にならなくちゃならない』『皆に誇れるような指揮官にならないと』ってな感じのな。強迫概念みたいなやつだ」
ジンは今までの優海を思い返し、いつしか自分と似ているのだと感じ始めた時期がある。
それは優海が指揮官になる『前』の事だった。
毎日毎日、指揮官になる為に誰よりも努力している優海の姿を見たジンはふと違和感……いや、親近感を持った。
努力の裏の恐怖、かつて自分が父親の要求の事を成し遂げられなければ、手痛い仕打ちが来るあの恐怖を、優海から感じたのだ。
どうして優海からそんな事を感じたのかは分からないが、ジンは時折見せる優海の張り付いた笑顔で確信していた。
「アイツの笑顔は……自分を奮い立たせる為の仮面なんだよ。泣きたい自分をグッと堪えて、立派な指揮官になれるようにってさ。それだけなら良かったんだがな……」
それだけじゃない何かを持っていると確信したのは、優海の過去や生い立ち、これまでの事を聞いたあの日だった。
優海がセイレーンだった事、マーレとして生きて指揮官にならなければ死ぬ可能性だってあった事。
『自分』という物を押し殺して、前に進むしか無かった優海の軌跡を知ったジンはようやく親近感を感じます理由を理解出来た。
「『そうしないと生きていけ無かった』。そんな状態が続いたせいで、コイツは自分が何をしたいのか、どんな奴だったのか、何を目指していたかすらも押し殺してしまったんだ」
戦う時も、指揮官の椅子に座っている時も、優海は仮面をつけ続けた。
自分を奮い立たせる為に、居場所を守るために、涙と本心を押し殺す仮面を被り続けた結果、テネリタスという圧倒的な力の前に絶望した。
その成れの果てが今の優海だとジンは考えていた。
経験則からなる推測に過ぎないが、大まかに当たっているとジンは確信を持った。
「なるほどね〜ふーん……」
「なんかの突破口になるか?」
「なるかもしれないし、ならないかもしれない。どっちになるかはアンタ次第かも」
「はぁ?」
オロチののらりくらりな言い分に疑問を持ったジンに、オロチは何か企みを含む笑みを浮かばせた。
「アンタさ、優海の深層世界に入ってみない?」
「…………は? 無理だろそんなの」
理解出来ないというより、そんな事が可能なのかという疑惑が浮かんだジンは眉を顰めて首を傾げた。
優海の深層世界は、謂わば彼の心の世界のようなものだ。
その世界に入るのは容易な事では無いが、オロチはKAN-SEN達のメンタルキューブの中にある量子情報という物のみを抽質させ、その情報のみをを自身の深層世界へ引き入れてしまう事が出来る。
例えるなら、VRの様なものだ。だが人間であるジンは当然メンタルキューブ等持っておらず、深層世界に行く事は出来ない。
それはオロチ自身だって分かっているはずにもかかわらず、何か秘策があるかのようにオロチは鼻を鳴らす。
「まぁこのままだと無理ね。だけど、信濃の他にもう1隻いれば、何とかなるかも」
「1隻? それは誰だよ」
「……雲仙」
その船の名を口にした時、天城達重桜のKAN-SENの顔が固まった。
それに気づいたジンは、何やら雲仙という恐らくKAN-SENだろう人物に興味を示す。
「雲仙って……なんだ?」
「雲仙は
赤城が雲仙の事を話し、話を聞く限りでは滅多に人前には姿を見せず、ほぼ全てのKAN-SEN達もここ数年雲仙の姿を見ていないという。
「雲仙は信濃と同等の力を持っているから、彼女の力を合わせればおそらくはいけるかも」
「そんな奴どうやって探せばいいんだよ。もう時間ねぇんだぞ」
探そうにもめぼしい場所を特定出来なければ時間をかけすぎて優海のメンタルキューブが崩壊してしまう。
こちらから連絡が取れる手段も無ければ、合うつてもない。
八方塞がりの中、天城が何か思いついたのかその場で立ち上がり、優海の部屋へと足を運ぶ。
「姉様?」
赤城達も天城を追いかけて優海の部屋に入ると、天城は何かを探しているのか本棚や机の上にある日記を捲り続けていた。
「どうしたのですか天城姉様?」
「確か優海の日記に雲仙の事について書かれていたはず。……これです」
﹁○月✕日
今日はうんぜんさんっていう人とあった! 富士の山の森で迷子になっていたら、うんぜんさんと会って助けてくれた! ﹂
天城は日記の1ページを広げて皆に見せると、そこには確かに雲仙というKAN-SENの名前と、子供らしい絵日記も描かれていた。
優海に面影ある落書きと、白髪で腰に刀を携え、右目に蝶が止まっている女性が雲仙だろう。
「これは……夏に富士を見に行った時迷子になった日だな」
「あぁ。私達がどれだけ探し回った事か」
加賀と土佐はその日を思い返すと小さく笑うと、2人は感傷には浸らずに直ぐに真剣な顔つきに戻った。
「富士の山付近の森……か、時間がかかるような所では無いが」
「森も深く、何処にいるのかも分からない……それに、時間が無い以上、優海を雲仙の元に連れていかなければならない」
「それどころか信濃も一緒に行かせるのは必須よ。時間無いし」
「信濃の方は三笠に任せて、私達は準備を進めましょう」
天城達は早速遠出の準備を進めていき、僅かに照らされた希望の道を辿っていく。
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現時刻 重桜妖狐の間にて
「こうして互いに酒を交わすのは何時ぶりかのぉ?」
「覚えてない」
月夜に輝く白髪をなびかせながら、透明な酒を妖狐は飲み干す。
それを見続けていたのは……リフォルだった。
優海を裏からサポートし、KAN-SENの能力や武装を底上げした功績を持っていたが、優海が失踪したと同時に姿を消していたが、そんな彼女が今妖狐と酒を交わしていた。
交わすと言ってもリフォルは出された酒を一滴も口にはしなかった。
「心配せずとも毒は入っておらん」
「別にそんな心配はしてない」
「連れないのぉ……して、今日は何用じゃ? そちから出向くとは珍妙なことがあるものよ」
「これはどういうつもり?」
リフォルは白衣の袖内から赤い液体が入った小瓶を妖狐に見せると、リフォルはこの液体について妖狐に問いつめる。
「これを調べたら人間の中枢神経の感覚を麻痺させる効果がある薬だった。これを飲んだ人間は疲れを知らずに生きていける」
「それはそれは画期的じゃのう〜」
確かに夢のような薬で妖狐は喜んでいるところ、リフォルは怒りを乗せて机に拳を叩きつけた。
「ふざけてるの? これは決して『疲れない』って訳じゃ無い。疲れ知らず……いや、分からなくなる。やがて限界が来て、必ず死ぬ」
「ほぅ〜そうか」
薬のデメリットを話して怒りを露わにするリフォルと対照的に妖狐はまるでデメリットを気にしていないようだった。
「分かってるの? 人が死ぬんだよ? アンタがこれを量産して既に大勢の人達に投与しているのは分かってる」
「だからなんじゃ? 人はいずれ死ぬものじゃ。それが少し早くなるだけ。別に心配せずとも良いじゃろう」
「……アンタって人は」
「それにこの薬を投与したのは本人自身じゃ。妾の為にと言ってその身を捧げ、重桜の為にと意気揚々と働いておる。泣けるでは無いか」
「腐ってるね。アンタも、重桜も」
「何を言うか。この夜を照らす桜と重桜を守る大結界がある限り、重桜は他の陣営よりも美しい所になっておる」
話が噛み合わない。妖狐は自分が絶対的で揺るぎない価値観の中心だと思い込んでおり、リフォルはこれ以上話す事は無意味だと判断し、席を立った。
「じゃあ、アンタのその自慢の美貌と不老不死になる薬はもう渡さない。私達の関係もこれで終わりだから」
「良いぞ。その薬が無くとも、妾は永遠な存在となる」
「どういう事……?」
「関係は終わったじゃろう? もう他人に教える義理はない」
「それもそっか。じゃあね、クソババア」
最後に捨て台詞を吐いたリフォルは目の前の空間に扉のような物を生み出し、扉の先には遥か遠くにある自分の研究室が映し出された。
リフォルは扉を跨ぎ、自分の研究室に足を踏み入れた瞬間扉を閉め、空間と空間を繋ぐ扉は消えていった。
誰にも知られない密会を終え、妖狐は夜中でも照らされている重桜の街並みと、天高くそびえ立つ大木……重桜を見つめ続けていた。
「流転の魂は重桜に捧げられやがて大木は神の依代となる……んふふふ……もうすぐじゃ。もうすぐで妾は永遠を手に入れられる」
小さな笑みをは大きな笑いになって止まらず、今か今かと忙しなく妖狐は待ち望んでいた。
「この重桜を永遠にする為に、それまではくたばってならぬぞ」
「桜お姉様……? うふふふふ……」
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