もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜   作:白だし茶漬け

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お久しぶりです。

くっっっそ久しぶりですね。
一か月半ぶりですね。

結構忙しい時期が募って小説書く暇がありませんでした。社会舐めてた。

さて、重桜編もクライマックスに近づきました。
正直かなりかかったなと思いますね~少し引き延ばしすぎた感が拭えません……。

ですが最後まで書ききりますよ~!

応援、よろしくお願いします。


逢魔の刻

この世には同じ顔をした人間が自分含めて3人いると言われている。

俺はそれを信じているし、もう二人であっている。

 

1人はマーレさん、もう1人はコネクター。コネクターに関しては自分自身だからカウントするのはどうかと思うけど、俺にとっては別の存在だ。

 

同じ顔をしても結局は別の存在、決して自分自身ではない。だけど目の前にいるKAN-SENと、隣にいるKAN-SENは……まったく同じ顔をした、まったく同じ存在だった。

 

「久しぶりですね、優海」

 

柔らかな声色、いつも向けてくれる優しい笑顔と目は間違いなく天城母さんだ。

だけど、目の前の天城からは何故か姉さんたち3人の存在が感じられる。

 

頭に付けている狐の面は、赤城姉さんの赤、加賀姉さんの白、土佐姉さんの青い狐の仮面を継ぎ接ぎ、服は赤い着物ではなく、白い指揮官用の軍服……つまり、俺が着ている物と全く同じものを羽織っている。

軍服はボロボロで煤に塗れていて、あれが一層不穏さを醸し出していた。

 

その不穏さを一番感じていた隣の天城母さんが俺より一歩前に出て、下がらせるように右手を伸ばす。

 

「貴女は私なのですか……?」

 

支離滅裂そうな言葉だけど、今この状況に相応しい言葉でもあった。

なぜなら、目の前に自分と同じ顔であり、同じ存在が目の前にいるのだから。

 

俺の前にいる天城は天城母さんに微笑んだ。

 

「ええ、そうですよ。戦艦天城……ですが、貴女とは少し別の次元の天城です」

「別次元……?」

 

確かに別次元の存在はセイレーンに確認されている。だけど違う次元に行くのはまだ確立はされていないはずだと、コネクターの記録から分かった。

 

行く方法自体はあるけど、膨大なエネルギーが必要になったり、行き先が想定と違ったりと不安定な箇所が多い。そういった観点から、別次元かつ同一個体のKAN-SENは考えにくい物だけど……目の前にいるのは、間違いなく天城母さんだ。

 

それに隣にいるコードGも気になる。天城と一緒にいる所を見れば、恐らくは仲間内だと判断出来る。

 

何のためにこの場所に来たのかは不明だけど、俺達に危害を加える気は無さそうだ。

もしその意思があるのなら、こんな悠長に立ち話している暇は無いからだ。

 

「こんなところで立ち話している暇も無いでしょう。今はあのヤマタノオロチをどうにかしなければ」

 

気になることが多いのは一緒の筈なのに、天城母さんはこの話を切り上げ、大神木とその傍にいるヤマタノオロチに目を向ける。

 

こうしている間にも重桜の被害は増すばかりであり、KAN-SEN達も持たない。

 

短期決戦に挑みたいが、ヤマタノオロチには強力なバリアが張り巡らされている。

良い作戦を頭の中で模索する中、天城は俺の手を掴み、微笑んだ。

 

「優海、大丈夫よ。私達がいるんだから」

 

喋り方の何もかもが天城母さんそのものだった。

間違いなくそうであると同時に、どこか俺に対して固執している様な雰囲気は、赤城姉さんと同じ物を感じ、困惑する。

 

なんで目の前の天城から赤城姉さん達の気配がするんだと言う、疑問が浮かぶ中、母さんが天城の腕を掴み、俺の手を握っているその手を離させようとした。

 

「今はあのヤマタノオロチをどう対処するのか動くべきでは?」

「折角息子に再会出来たのです。少しぐらい、その感動に浸らせて欲しいものです。ねぇ?優海」

(……何だ?あの天城からは、赤城姉さんの様な物を感じる)

 

言葉遣いは母さんの同じだけど、今一瞬母さんに向けた敵意の様な物と天城の目と雰囲気は、少し暴走気味になっている赤城姉さんとそっくりだ。

 

まるであの天城の中に赤城姉さんがいるような……そんな気がしてならない中、隣にいたコードGが天城の肩を掴み、自分の方に手繰り寄せる。

 

「そちらの天城の言う通りだ。今はこの状況を脱する事が先決だ」

「……まぁ、良いでしょう。ですが」

 

天城はボロボロになった黒い傘の先端を母さんの鼻先に向ける。この行動な敵意とかは一切無かったけど、その変わり母さんに対しての怒りはあった。

 

何に対しての怒りなのかは分からない。敵意が無いのが恐ろしいと思いつつ、俺はこの光景を見届けた。

 

「貴女はこのままでは行けません。優海がどれだけ強くなっても、貴女……いえ、KAN-SEN達が強くならなれば意味が無いのです」

 

母さんは何も言わなかった。それどころか納得している様子もあり、そんな事無いと言えなかった。

その理由は、俺自身そう思っているからだと、自分自身で分かっているからだった。

 

俺の心が壊れた理由は、皆を守る為に1人で背負い続けてしまった事……それはKAN-SEN達の弱さを理解しての行動だった。

 

今思えばどんた馬鹿な考えだったなと自虐してしまう。けれど、母さん達KAN-SENにとっては歯をかみ締めたい程の悔しく、残酷な現実だろう。母さんは顔にこそ出さなかったけど、内心では自分の弱さに歯がゆさを噛み締めていた。

 

「優海だけじゃない。貴女も次の場へと進まなければならない。優海と大切な存在を守りたいのなら、貴女が本来なるべき姿になる事です」

「本来なるべき姿……?それってまさか……」

 

俺の言葉は続かず、天城とコードGはヤマタノオロチに向かって前身してしまった。

少しだけ、ほんの少しだけ静かな空気になり、天城母さんは天城の艤装を見つめ続けていた。

 

「本来なるべき姿……ですか」

「それって、空母の事だよね」

 

小さい頃、加賀姉さんに聞いた事がある。

 

天城母さんは、本当は空母になる予定だったと。

でも母さんのリュウコツはボロボロになっていて、とても空母に変われる余裕は無かったし……それにあの日、俺の前から母さんは消えた。

 

だから元々戦艦だった加賀姉さんが空母になったという訳だけど……。

 

「オロチ、少しよろしいでしょうか」

「んー?なになにー?」

 

いつの間に後ろにいたオロチさんにびっくりしたが、母さんはいつからか気づいたのか驚きもせずに後ろに振り向き、オロチさんと目を合わせる。

 

「貴女の力で私を空母に出来ますか?」

 

母さんは目を合わせたと同時に口を開いたと思ったら、いきなり母さんはそんな事言い出した。

オロチさんはさっきまでの会話を聞いていたのか、特に理由とかは聞かなった。

 

「どうしてそんな事出来ると思ったの?」

「……私は一度、マーレに倒され、マーレの手によってもう一度体を得ました。その時から私の中に何かを感じるのです」

「へぇ……どんなもの?」

「私の中にもう1人の私がいる様な……優海とコネクターと同じ様なものですが、どちらかと言えばヨークタウンさんの様な二型改修が近いですね」

 

二型改修と聞き、一瞬最悪な状態が頭を過ぎった。

 

二型改修と言えば、ヨークタウンとホーネットがその改修を受けた記憶が新しい。通常の改修と違い、メンタルキューブとリュウコツに手を加える事により、別次元の力を手に入れる改修……だが、リュウコツというのはKAN-SEN達の記録だ。

 

それに手を加えるという事は、KAN-SENの記憶に手を加える意味にも繋がる。その結果、最悪これまでの記憶を全て失うリスクもあり、ヨークタウン達は最初は乗り気では無かった。

 

最終的に無事に記憶は保ったまま改修は成功したけど……今回は状況が違いすぎる。オロチさんなら出来るって……どういう意味だろう。

 

そんなオロチさんは顎に指を引っ掛けて頷いていた。

 

「まぁ出来なくは無いんだけど、私よりもコネクターの力全部持ってる優海が適任かもよ?」

「優海は他の方々の指揮と戦闘に集中しなければなりません。出来るのでしたら今すぐお願いします」

 

オロチさんは母さんに腕を捕まれ、母さんの圧にオロチさんはたじろぐ。

記憶が失うかもしれない不安が過ぎり、思わず母さんの左腕を掴んでしまった。

 

行かせたくない。多分、赤城姉さんだったらもっと引き止めて、「私がその分敵を倒す」とか言う姿が想像出来る。

 

姉さん程では無いかもしれないけど、俺は母さんを大事に思っている。思っているからこそ、引き止めてしまう。そんな不安が顔に出ていたのか、何も言わずに母さんは左手を俺の頭に置き、撫でた。

 

「大丈夫です。優海が戻ってきたのに、私が居なくなっては元も子もありませんから」

 

心配させないようになのか、それとも成功出来る確信があるのか、母さんはいつもと終わらない微笑みを向けてくれた。

柔らかくて、暖かくて、何時でも俺を照らしてくれた笑顔と、母さんの折れない意思を見せられたら、こっちが折れるしかなくなる。

 

「……オロチさん、母さんを頼みます」

「ん、了解〜。任されました〜」

 

口を3の字にしながら軽い返事をしたオロチさんを見ると少し心配だけど、真面目な時は絶対に何とかしてくれる信頼はある。

ゆっくりと後進しながら母さん達から離れ、一定の速度に達した時、体を振り向いてヤマタノオロチの方へと全速前進で駆け抜ける。

 

 

 

 

「……行ったね、じゃ早速やっていきましょうか」

「その前に1つ、聞いておきたい事があります」

「なによ?」

「どうしてそこまで協力的になのかと。昔の貴女……まだ人の形をしていない時から、随分と変わったなと」

「あーアレは一種の黒歴史ねー。変な口調だったし、まぁアレはその方が雰囲気出るかなーって思っただけの事だけど……見てみたくなるじゃない?」

「何をですか?」

「これから先の人類がどうなるか気になるじゃない。この次元にいる人間が1番面白いもの」

「悪い人です。さぁ、早くしてください」

「はいはい。それじゃ、アンタがなるべくしてなったであろう姿の登場よ」

 

 

 

 

 

 

 

天城とコードGの介入により、散らばっている黒い獣の数は減りつつある。2人の力は圧倒的であり、息をするように獣を駆逐していく。

 

コードGは黒い矢を何度も獣の頭に打ち込みながら、艦載機が飛び交う爆撃の中でも攻撃を命中していく。

 

天城は紫の炎を纏った榴弾を放ちながら、式神が織り成す黒い炎で獣達を焼き払う。

一種一挙に迷いなく、圧倒的な戦闘力にKAN-SEN達は見慣れない天城達の姿に動揺しつつも、今目の前にいる現状を打破しようと動き続ける。

 

だけど根本的な問題が残っている。

 

ヤマタノオロチが止まらない事だ。

 

今も尚ヤマタノオロチは重桜に向けて攻撃を行い続け、重桜の地を破壊し続けている。

桜は燃え、道は砕け、家は瓦礫へと変わっていく姿は痛々しく、これ以上攻撃を許したら重桜という土地は地図から無くなってしまう。

 

攻撃を止めようにも、ヤマタノオロチの周りにはバリアが張られていて今の戦力じゃ突破ができない。

 

「そもそもどこからあんなエネルギーがあるんだ……?」

 

強力な隕石の様な攻撃に絶対無敵なバリア。これらを両立する為には必ずどこかにエネルギーを補給しなければならない筈だ。

しかし、あの黒い靄がかかっているヤマタノオロチが消耗している様子は無い。

 

どこか体内にエネルギーを作り出す力があるのか、それともどこから供給しているのかすらも分からない。

まずはそこから探っていく必要がある。

 

コネクターの力を使いながらKAN-SEN達の指揮を行いながら、どこからエネルギーを受けているのかを探っていく。

 

もちろんヤマタノオロチもただ漠然と攻撃を防ぐだけではなく、攻撃してきた者を倒そうと8つの首をそれぞれに向け、その鋭い牙でKAN-SENや俺を噛み砕こうとしたり、口から黒い炎を出して海を燃やす。

 

激しい攻撃に防戦を強いられつつも、ヤマタノオロチに攻撃をし続けた時、ヤマタノオロチに少し違和感を感じる行動を見る。

 

波状攻撃に参加した綾波だが、攻撃するよりも前にヤマタノオロチに狙いを定められてしまう。

おかしい、綾波は一度もヤマタノオロチを攻撃していない筈だと疑問に思いつつも、全速力で綾波の前に駆け寄り、綾波の腕を掴んでそのまま抱き抱えるようにして後退する。

 

ヤマタノオロチから放たれる光弾が俺達の横を通り過ぎ、体に寒気が走りながらも紙一重の所で避け続け、一旦体制を整える。

 

「大丈夫!?綾波」

「指揮官……帰ってきてくれたのです!」

 

あの表情を崩さない綾波が目に涙を溜めながら抱きつき、再会を一時喜び合う。

直ぐに綾波を下ろし、再会の喜びはこの戦いが終わった後でと目で伝え合う。

 

「綾波、一応聞くけどあれに攻撃してないよね?」

「はい。何故か綾波に狙いを定めてたです」

 

何かがきっかけで綾波に攻撃を向けたのは間違いない。KAN-SEN達の波状攻撃にも注目してもう一度ヤマタノオロチの行動を観察していく。

 

(そういえば、ヤマタノオロチってあの場所から動いてないような?)

 

もしやと思い、俺はKAN-SEN達にヤマタノオロチから距離を置きながら攻撃する様に指揮をする。

KAN-SEN達はヤマタノオロチから距離を置きながら警戒すると、すぐさま八つの口から炎を吐き出し、ビームのように薙ぎ払っていく。

 

「よし、ここだ……!」

 

ヤマタノオロチの攻撃と同時に前に飛び出し、向かった先は紅く染まった大神木だ。

大神木に近づくと、攻撃を行っていたヤマタノオロチが攻撃を急に止め、俺の方に狙いを定め直す。八つの頭が襲いかかり、両手の武器を二丁の銃へと姿を変え、ヤマタノオロチを頭に向けてビームを連射する。

 

ビームが頭部に直撃する前にバリアで防がれるが、バリアが発生している間、ヤマタノオロチは動きを止めた。

攻撃と防御には同時には行えないのと、ヤマタノオロチは大神木を守っている。

 

恐らく、大神木に距離が近い者を優先的に倒すようにしている。つまり……それほど大神木が重要という訳だ。

 

「大神木からエネルギーを供給しているのは間違いない。けど……」

大神木の枝には捕らわれた人たちが大勢いる。攻撃すればその人達に危険が及んでしまう。

まずは囚われている人を助けようと考えていると、ヤマタノオロチが俺を噛み砕かんと首を伸ばし、空中で宙返りをしながら攻撃を避ける。

 

あと少し反応が遅れていたら、背中にある艤装ごと体を持っていかれるほどのギリギリだ。ホッと安堵しながらも一旦距離を話し、空中から海上へと着地すると、さっきの光景を見たのか、長門と赤城姉さん、加賀姉さん、土佐姉さんがこっちにやってきた。

 

「大丈夫か優海!」

「大丈夫だよ長門。……それよりも、あのヤマタノオロチは、大神木からエネルギーを供給していると思う。だからあの大神木をどうにかしないとダメだ」

「大神木を……」

 

俺の言葉に長門の顔が曇り始める。それはそうだ。

 

大神木はこの重桜の天候さえも操ることが可能であり、重桜の豊穣を約束している。災害や外敵から身を守れる大結界があるのも、大神木のおかげだ。

 

俺の言葉は大神木を破壊するという事と同意義だ。それはつまり……重桜の安泰は無くなる。

 

重桜を、そして民を一番に考えている長門は今の状況と未来を自分の天秤に図っていたが、それは直ぐに傾いた。

 

「その前に囚われている人間達を大神木からどうにか助けないと」

「それは……大神木を破壊する事で良い?」

 

長門は力強く頷いた。

 

「大神木に囚われている人はどうすれば……」

「余が何とかする。大神木に触れさえすれば或いは……」

 

長門は大神木にいるヤマタノオロチを目にする。

 

長門が大神木に触れるという事は、ヤマタノオロチの防御領域(テリトリー)に入って戦う事を意味する。

 

ヤマタノオロチは強大な敵だ。それに打ち勝つには、更に力が必要だ。

この場にいる全員の協力が必要なほどに。そして、それを察したかのように2人の英雄が俺の前に現れた。

 

「よっ、なーんか面白そうなパーティーを考えてんじゃん」

「あんな物、俺1人で充分だ」

「良いじゃねぇかよ。パーティーは皆でやるもんだぜ。しかも蛇の丸焼きつきだなんて、ワイルドで良いね〜」

 

どうやら、俺が何をしようとしているのかセイドさんとマーレさんは理解しつつあり、同時に白銀のロボットJBも降り立った。

 

『作戦理解。私もあのヤマタノオロチの撃退作戦に参加します』

「我も忘れては困るぞ」

 

黒い獣を撃退しつつ、少しばかりの隙を付いて来てくれたKAN-SEN達が集まりだしていく。

三笠さん、綾波、武蔵、陸奥……重桜KAN-SEN皆が来てくれた。

 

これならやれる。いや、やらなければならない。

 

重桜の未来の為に……ここで終わらせないといけない。

 

「んで?パーティーはどういう風に進行するんだ?指揮官さんよ」

 

セイドさんがワクワクしている笑みを浮かばせながら、作戦内容を聞いてきた。突貫だからあまり作戦らしい作戦は無いけど……、今考えている作戦を話す。

 

「まず、長門以外の全員でヤマタノオロチに攻撃して足止めする。ヤマタノオロチは攻撃と防御を同時に行えないから、攻撃し続ければ攻撃出来る筈」

「ほぼ全員攻撃……ならそのまま倒せる事が出来るのではないか?」

 

三笠さんの言う事に全員頷いてはいるけど、多分それは無理だ。

 

「大神木から力を与えられていると思うから……多分、復活とかすると思う。ならば無理に消耗せず、足止めだけする」

「それでその間に長門姉が大神木にいる人間を助けるんだね?どんな風に助けるの?」

「妾にも分からん……少なくとも、囚われている場所から解放するぐらいにかもしれぬ」

「じゃあ、その先はどうするの?人間を救ったとしても、ヤマタノオロチを倒さないと意味が無いわ」

「……」

 

赤城姉さんはその後の言葉を言わなかった。そう、KAN-SEN達が救出作業に入る中、ヤマタノオロチと戦うのは俺とマーレさんとセイドさん。この3人のみとなる。

 

「無茶よ!私も優海と一緒に戦うわ!マーレ達と協力なんて有り得ないわ!」

「それはこっちのセリフだ。俺1人で充分だ」

「おーおー、喧嘩始まってんね〜。まっ、俺とマーレは好きなように動く。そっちも勝手にやってくれ」

「待ってください!ここは皆できょうりょ……」

 

するとセイドさんは一発のビームを大神木に向けて放ち、青色の光が大神木に襲いかかる。

しかしビームは大神木には触れられず、周りに囲まれているバリアに阻まれた。

 

もしバリアが無かったら、着弾時点の所にいた人達は最悪命を落とす行動を何の前触れもなく行ったセイドさんにKAN-SENは警戒し、警戒した様子にセイドさんは鋭い目付きで返し、さっきの陽気な雰囲気が消え去る。

 

「勘違いすんなよ。俺らはあの蛇と妖狐が計画の邪魔だからここにいるんだ。俺らは手っ取り早くバリアを壊す。それだけだ」

銃弾に射抜かれた様な悪寒はセイドさんが深く被っている帽子の奥にある瞳のせいだ。

これが……人との間に語り継がれている英雄が出せる圧力。一歩でも動いたら、眉間に風穴が空く様だ。

 

「とにかく俺らはあの木についているミノムシ事燃やすからよ。そうしたくなければ、早く何とかしろよなー」

「そういう事だ。お前らと協力する事は無い」

 

マーレさんとセイドさんは大神木へと向かい、同時に攻撃を開始する。

2人で行っているとは思えない程の弾幕と質量はいくら大結界でもそう長くは持たないだろう。

 

「優海、どうする?」

「……俺一人でもヤマタノオロチを」

「そんな事してはいけませんよ、優海」

 

優海の言葉を遮るように後から現れた天城が優海の前に現れる。

この場で初めて見る別次元の天城の姿に赤城は目を丸くさせ、いつも慕っている姉とは違う雰囲気に言葉を失った。

 

「天城……姉様?」

「まぁ赤城……久しぶりに貴女の顔を見れて嬉しいです。加賀も土佐も元気で……あぁ、本当に懐かしい」

「まるで死人でも見ているような顔だな」

「天城さんとは似ても似つかない雰囲気で面妖だな……」

 

姉さん達はそれぞれ天城に対する反応はやはり戸惑っており、1番はやはり雰囲気だった。

天城母さんとは似ても似つかない雰囲気が怖く、近寄り難いというより、近づいたら呑み込まれそうな……そんな危うさがあった。

でも、天城は穏やかな顔で微笑み、赤城姉さんに近づく。

前に俺が一歩出たら加賀姉さんに止められた事があり、安易に近付いてはいけないという空気が流れているから、俺も迂闊には近寄れない。

そして手を伸ばせば触れる距離まで近づいた時……天城の雰囲気が変わる。その目はまるで獲物を狩る獣の様な目だ。

その目を見た途端、俺の体は金縛りにあったように動けなくなる。

 

「もう戦わなくていいの。痛みも苦しみも何も感じなくていいの。私たちが全て受け止めてあげるから」

 

天城の細くて白い指が頬へ触れた瞬間、天城の手を振り払い、拒絶された天城は目に影を落とし、震える瞳を向けた。

 

「……俺の母さんはそんなこと言わない。それに、苦しみや痛みをKAN-SEN達だけで背負わせない!」

「優海……!」

「俺はもう、一人で全部を背負わないし、背負わせない!」

 

一度決めた決意は曲げず、天城に立ち向かう。天城は言葉を失い、震える感情を押せるように両手で顔を覆う。

 

「ああ……そう。じゃあここで貴方を止めるわ」

 

鳳凰と九尾が高らかに咆哮をあげ、戦闘開始の鐘を鳴らす。銃を構え、先制攻撃を仕掛けようとすると、赤城姉さんが俺を止めた。

 

「優海!ここは私たちで抑える!」

「お前は先に行った奴と合流しろ」

「早くいけ!指揮官!」

「姉さん……分かった」

 

コネクターの自立兵装型の艤装であるリュウグウノツカイに乗り、空高く飛び立つ。

逃がさないと言わんばかりに黒い鳳凰は襲い掛かるが、赤城姉さんの艦載機の攻撃が鳳凰の体に直撃し、鳳凰は海に叩きつけられる。

 

「優海の邪魔はさせないわ!」

「赤城……貴方だって優海の身を案じている筈よ。どうして邪魔をするの?」

「案じています。ですが……弟の我儘は聞かないと……ね!」

 

姉さんと天城の戦闘が始まり、一瞬足を止めそうになる。だけど、そんな気持ちを吹き飛ばすかのような風と炎が俺の横を通り過ぎる。

緋色の鳳凰と共に1人のKAN-SEN達が天城の前に立つ。

 

「……母さん!!」

 

いつもの和装ではなく、白を基調とした軍服のような服とスカートに、薄灰色の着物をを羽織るような姿は、いつもの天城母さんと同じ雰囲気を感じつつも、別格の雰囲気も漂わせていた。

 

「子を思うのは親。それを尊重するのも親の役目です」

「天城姉様……!」

「赤城、加賀、土佐。私も戦います」

「この感覚……空母になったのか?」

「これは……百人力どころじゃないな」

 

空母となった天城母さんは上空の俺を見てほほ笑んだ。

 

「心配ない」と言ってくれたような気がした俺はさっきまでの不安を拭い去り、大神木に向かった。

 

「無事に空母になれましたか」

「ええ。おかげさまで。もう天城は、昔のようにか弱い天城ではありません」

「……ふふ、ふふふふふふ……あははははは!!!!」

「おい、なんだかあの天城。赤城のような笑い方をしてるぞ」

「あんな禍々しく笑ってないわよ」

「か弱い天城ではない……じゃあなんで」

 

 

 

どうして優海を守ってあげられなかったのですか

 

 

「……!?」

「話は終わりです。あの子を止める前に、まずは貴方方の存在をとめます」

 

 

 

 

 

 

 

 

「作戦はこのまま続行!全力で長門を大神木に向かわせる!」

『では、私が長門をデリバリー致しましょう』

 

JBは長門をお姫様抱っこをし、背中や足にあるブースターを起動させ宙へと浮かぶ。

 

「頼んだよ」

『了解。では、ヤマタノオロチは任せます』

「よし、それじゃ……作戦開始!」

 

JBが加速の準備へと入ると同時に俺達はヤマタノオロチへと駆け抜ける。

足音の変わりに海をかきわける音を察知したヤマタノオロチは4つの首を向けてそれぞれ黒い炎を吐き出す。

 

「駿河!名取!」

 

強力なバリアが貼れる2人を前に出し、コネクターの力で更にバリアの出力をあげさせる。最初は限界以上の出力のバリアを出せる事に戸惑っていた2人だけど、緊迫した状況の中で一々驚いては居られないのか、直ぐに気にならなくなる。

 

2人のバリアは黒い炎を防ぎ、耐えている間に後方のKAN-SENはその隙に散開してヤマタノオロチを囲むようにする。

 

ヤマタノオロチの首の半分はマーレさんたちに向いている。攻撃はここまで回らなくなり、KAN-SEN達は所定の位置についた。

 

「一斉射撃開始!」

 

撃てるだけの弾を撃ち尽くす勢いでの全力攻撃をお見舞いし、ヤマタノオロチの周りに小さなバリアが形成され続け、榴弾と全て打ち消した。

 

予測通りヤマタノオロチの動きは止まり、空中のJBには気づけない。

 

「JB!!」

『了解。では長門、素敵なジェットコースターをお楽しみください』

「ジェ?えっ、ええええ!!」

 

JBの最大出力は正しく流星そのものだった。赤く光るバーニアは青く燃え輝き、その軌跡は真っ直ぐ大神木へと向かっていく。

 

ヤマタノオロチはあまりの速さに反応すら出来ず、JBは大神木がある小島に足を踏み入れる。

長い石階段を超え、着地際に小さな炎を散らしながら、長門は大神木の側へと辿り着いた。

 

この間、僅か5秒以内。多分KAN-SENじゃなければあの加速は耐えきれなかっただろう。

 

「うぅ……なんてアトラクションなのだ……」

謝罪(sorry)。ですが、これで大神木まで辿り着きました。では、人間達をよろしくお願いします』

「うむ、民達は必ず守ってみせる!」

 

長門は早速大神木に触れると、長門の周りに青い幕のような物に包まれる。

あれは……長門が生贄になろうとした時に起こった時と同じ。だけどあの時のような不安は無い。

 

今はとにかく、ヤマタノオロチの攻撃に集中する。

少なくとも、重桜の人々が助かるまでは……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「存外、弱かったな」

 

黒く巨大な九尾は俺の体を傷一つ付けられずに倒れた。

復讐が果たせる事への昂りのせいなのか、いつもより良く動けていた。

 

桜刀・薄紅の刃こぼれも無い。と言っても、針のように細く、絹のように薄いこの刀が刃こぼれするということは、折れるという事になる。

 

刹那の過ちすらも許されないこの刀は人が扱うのには手が余る。だが断言する。この刀よりも斬れる刀は無い。

 

「さて、お前のペットは消えたぞ。次はお前だ」

「くっくっく……果たして本当に倒せたのかのぅ?」

「……!」

 

妖狐の薄気味悪い笑みを浮かべたと同時に、倒したはずの黒い九尾が力を取り戻し、九つの尻尾が刃の様に俺を切りつける。

まさに阿修羅の様な剣技だが対応は可能だ。

 

右、左、上、真ん中、やや右上、右、左下……単調で幼稚な剣撃で捌きやすい。

剣技の微かな隙をつき、もう一度九尾の頭部を真っ二つにする。

 

顔が右と左に観音開きに分かれたが、直ぐに顔が元に戻る。

 

「この力……お前か、妖狐」

「そうじゃ。妾の下僕は死なぬ。倒れぬ。負けぬ。あっはっはっ!お前は永遠にこの場で戦うのじゃ!」

「永遠に戦うか……ふっ、求めていた物だが……この場には桜がいる。遠慮させて貰おう」

「ふん、強がりを。お前は勝てぬ!勝てぬのじゃ!」

 

妖狐は高らかに笑い、勝ちを確信していた。だが、それは俺も同じだ。

 

「俺は負けない。生きてる限り、俺は誰にも己にも負けない。そして人は……己に負けなければどんなものにも負けん!」

「ロドン……!」

 

すると桜は立ち上がり、弱々しい足腰を立たせた。

 

「私……も……戦う……わ、ロドン」

「行けるのか?」

「あの九尾が……大神木の力を糧に……してるのなら、私が、止める……」

 

確かに桜は元々大神木の力を永遠に出し続ける為の贄……巫女だ。

だが今の大神木は妖狐の手によって本来の物とは掛け離れている物となっている。

 

桜の力を持ったとしても、元に戻せるかどうかは……神のみぞ知るだろう。

だが、桜の目は本気だ。強く、凛々しく、愛おしい。

俺が初めて出会った時と同じ目をしていた。

 

「それに、この大神木を止めるのは私だけじゃ。無いから。小さくて、大きな子もいるから……」

 

桜は上、地上の方を見上げていた。言いぶりからして桜の同じように大神木をどうにかしようと考えている奴がいるのだろうか。

 

マーレ……いや、違うな。あいつはまだ頼る事を知らない。となればあの指揮官の入れ知恵だな。

 

「頼んだぞ」

「ええ。……妖狐、貴女を止める」

「はっ、逃げた奴が何を言うんだこの裏切り者がっ!」

 

裏切り者と言われ、桜は顔を強ばらせる。

 

俺の刀を握り、不規則な呼吸を繰り返して鞘から刀を抜け出す。

 

「妖狐、ごめんなさい。私は確かに重桜を裏切り、重桜の未来より愛する人の未来を手に取った」

「痴れ者が……愛など虚像が産む幻想じゃ!」

「違うわ。愛は生きる糧になり、未来の道筋を生み出す物……愛がなきゃ、人は生きていない。貴女だって、民から愛されているから生きているのよ」

「黙れ!ならばその愛は全て妾が喰らってやる!全てなぁ!」

 

妖狐は激情し、式神の札を取り出す。呪文の様な物を唱えると、式神は鼠、牛、虎、兎、竜、蛇、馬、羊、猿、鶏、犬、猪と干支の生物達を作り出す。

 

黒く染まった干支の生物は大神木の前に立ち塞がり、桜に向けて牙を向き、襲いかかってくる。

 

仮にも一世紀生きてきた経験なのか、干支は雷の様に俊敏に動き、桜の周りを囲んでいく。

 

最初に動いたのは猿だ。猿は背後で桜を捕まえようと腕を伸ばす。しかしその刹那、猿の体が細切れになった。

 

見る限り桜は刀を抜いていない……だが、それは間違いだ。俺の目には確かに桜は刀を抜き、猿の体を五月雨に斬っていた。殆どの人間が認識出来ない程に。

 

「うん……良い刀。ちゃんと手入れしているのね」

 

手入れをした俺の刀を誇らしく眺めながら、桜は次々と干支の式神の体を切り続ける。

踊るような剣撃は一種の舞いであるかのように美しく、桜には式神の飛び散る黒い血飛沫さえもかからず、最後の一匹である鼠の体は刀の突きでトドメを刺した。

 

桜の道を塞いでいた障壁はこれで無い。桜は刀を鞘に納め、大神木に触れる。

 

「今……助けるから」

 

桜は青く輝く膜に包み込まれると、大神木の内側から僅かに光が漏れ出た。

桜の巫女としての力が大神木を……妖狐の力を押さえつけている証左なのか。

 

「馬鹿な……何故妾の力が乗っ取られる!?」

「単にお前が弱いだけじゃないのか」

「黙れ!九尾!あの裏切り者を喰らうのじゃ!」

 

桜の邪魔をしようとする九尾の手足をロドンが切り落とし、巨体な体の腹部に目掛けて正拳突きを放つ。

右手に力を込め、九尾を妖狐が居るところに向かって殴り飛ばし、九尾は妖狐が立っていた天守閣を壊し、妖狐はその崩落から一足先に脱出した。

 

己の力、立場を象っていた金色の天守閣は見るも虚しい瓦礫へと変わり、妖狐は歯ぎしりをする。

 

「よくも……よくも……!この掃き溜めの底にこびりつく蛆虫共がぁ!」

「口が悪いぞ。行き遅れの老人」

 

嘲笑いながらロドンは妖狐にそう言い放ち、ロドンが上だと認めたくない妖狐はまた更に式神を呼び出し、無数の獣を九尾と共に

 

この瞬間、巫女と神子の力が大神木に注がる事になり、大神木は少しづつその本来の姿を取り戻しつつあった。

その間にロドンは桜を守り切れば、優海の作戦も果たせる。その事を知らないロドンはただ桜の身を守る為だけに刀を振るった。

 

「さぁ、逢魔の刻だ。お前の生はここで尽きる」

 

決着の時を刻み始めるように、大神木は桜色に輝き始める。

 

 

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