もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜 作:白だし茶漬け
待つと言うことには慣れていた。
小さい頃は赤城姉さん達が任務から帰ってくるまで、ずっと家の縁側で夕日を眺めて待っていたから。
そうして一番に「おかえり」っていうのが好きだったからだ。
そういうと、笑顔で「ただいま」って言ってくれる姉さんたち……懐かしいな。
待っている間も何を話そうかとか、何をしようかとか悩む時間が好きだ。
だけど、今この瞬間だけは嫌いになりそうだった。
とある広場で桜が舞い散る中、屋根のある所で俺と……神妙な顔をしているリアさんと、胸につけているホルスターの銃を何時でも出そうとしているジンさんがいた。
俺たち3人は、この空いている椅子に座るであろう男を待っていた。
「……来た」
草むらを踏む足音が聞こえる。徐々に大きくなるにつれ、体が強ばり、ジンさんの目付きが険しくなる。
そうしてやってきた相手は……
「やぁやぁ、久しぶりだね。優海君」
「……ヤークト」
天使の様な笑顔を持った悪魔だった。
「うん、2人も来たんだね。ありがとう」
「来ない選択肢があれば来なかった」
「あはは、酷いなぁ」
ジンさんの重い声色に対して何も感じず、ヤークトは空いている椅子に座った。
「さてと、じゃあお話でもしようか。優海君……いや、指揮官?」
数日前
妖狐を止めることに成功した俺たちの前に現れたヤークトは、俺を見つけると再会を喜んでいた。
わざとらしい……とは言えない、喜びは傍から見れば感動の再会に見えるかもしれないが、俺にとっては全てが仮面のような冷たさを感じた、見せかけの感動だった。
「いやぁ〜優海君が見つかるなんて本っ当に良かったよ。それにジンくんとリアさんも見つかったしね」
「……何の用だ」
「そんな警戒しないでよ。僕は君にとある提案をしたいんだよ」
「提案……?」
「アズールレーンの指揮官に戻って来て欲しい」
願ったりかなったりの言葉が悪魔から出てきた。
戸惑いつつも、息をのんでその真意を探ろうとした。
「今の指揮官はそっちじゃないのか?」
「僕は代理。新しい指揮官が来るまでのつなぎさ」
すると、ヤークトは指揮官の証である上着を脱ぎ去り、俺に投げ渡す。
随分久しぶりに感じるこの服を受け取るものの、これを着ようとは思わなかった。
「正直、指揮官は君が相応しい。それに、これは君が天城優海としていられるために必要な事だと思うけどな~?」
「どういうことだ」
「選んでほしんだよ。君は天城優海か、セイレーンのコネクターか」
ヤークトはまるで祝福するように拍手した。
「おめでとう!君はようやくマーレという仮面を外すことが出来るんだよ。……ああ、でもそれはとっくに外したんだっけ」
「皆のおかげでね」
「愛されてるね……羨ましいよ」
違和感を感じた。
一瞬だけヤークトは目を逸らし、何かを思ってなのか目をつぶった。かと思ったら、次に目を開けた瞬間、元の陽気……風な笑顔を浮かべた。
「まっ、当日はよろしくね。指揮官くん」
そして時は現在。
静かながらも重苦しい空気が続く中、ヤークトは重桜のお茶を興味津々に見た後、丁寧に器を回し、飲んでいく。
「ん〜この渋み?っていうのかな。中々のものだね。鉄血のビールよりも、こっちの方が好きだなー僕」
「おい、さっさと要件話せ」
ジンさんの低い声にヤークトは目の色を一瞬変え、少し強くお茶を机の上に置いた。
「……要件は、優海君を指揮官にさせること。これだけ」
「なんの為にだ」
「いや、普通に優海君が指揮官に相応しいのと……監視しやすくする為とか?」
「本音は後者の方って事か」
どうやらヤークトは特に隠し事はしない様だ。
彼は表情を一切変えず、張り付いたような笑顔を向け、お茶を飲む。
「でも、メリットだらけだと思うけどな〜。君は大手を振って天城優海として指揮官に着任出来て、今まで通りあの道具達と仲良く出来るんだし」
「道具って……KAN-SENの事か?」
「それ以外何があるの?って、そうか。確か家族がいるんだっけ?はは!ごめんね」
悪びれる素ぶりを見せない彼の態度は、俺を怒らせたいのかと思う程だった。
だが、彼は怒らせる意志は無い。KAN-SENは道具なのだと、心から認識しているんだ。
けどそれは少数意見ではなく、むしろ多数意見だ。戦いを終わらせるための道具なのだと、選別学校時代にも教えられた。
家族がKAN-SENの俺にとっては、聞きたくもない言葉で胸が痛くて苦しかった記憶しかないけど。
「もし、断ったら」
「それは無い。君は絶対にこの提案に乗る」
絶対的な自信に満ち溢れたヤークトは足を組んで頬杖を付ける。この自信は多分、KAN-SEN絡みだ。ヤークトの性格……いや、上層部と繋がっている事を察するに、アレを知っている。
「【コード】を使うつもりか」
ヤークトの顔が一瞬で強張り、僅かだが初めて見せる動揺を見せた。それ程コードとは意味のあるものだけど、ジンさんとリアさんは【コード】を知らないけど、ヤークトの強張りから相当な意味の物だと察していた。
「へぇ、知ってるんだ」
「オセアンさんから聞きました」
「あの人か……」
余計な事と言うかのように、ヤークトは大げさにため息を吐く。
「ねぇ優海、【コード】ってなに?」
「KAN-SENが万が一暴走したとき、強制的に思考や体の制御を奪う物です」
コードはメンタルキューブからKAN-SENを生み出す工程で施され、全てのKAN-SENに必ずあるものだ。該当するKAN-SENにコードを使用すれば、解除しない限りKAN-SENはコードに支配されてしまう。
体だけじゃない、思考まで塗りつぶされてしまう恐ろしさがある、まさに呪いの様なシステムだ。
「KAN-SENはそれを知ってるの?」
「いえ、知らないと思います」
ビスマルク辺りなら気づいてはいると思うけど、その可能性は低い。
何故なら、KAN-SENはコードに対して認識が出来無いようにされているからだ。
これは、万が一コードを知られた時、人間に対しての不信感で反乱を起こさないように施された物であり、例えコードを使われたとしても、KAN-SENは体が勝手に動くしか分からず、使った数秒後、その記憶は消される。
しかも、使われるのを見たKAN-SENも数秒後にはそれすら認識出来ない様にされている。
つまり、KAN-SEN達はコードを知る術が無い。
「それって単なる洗脳じゃねぇか……」
「洗脳?なら、優海君の方がよっぽど洗脳じみた力を持ってると思うけどねぇ」
怒るジンさんを適当にあしらうヤークトは、目を細める
「君の力、KAN-SENのメンタルキューブに入り込む力こそ洗脳に相応しい。なんたって心の中に入って好き勝手出来るんだから。あ、もしかしてKAN-SEN達が君の事が大好きなのって、その力を悪用したからかな」
「ちがっ……!」
否定しようと立ち上がろうとした瞬間、ジンさんが俺の肩を抑えた。
「落ち着け。ムキになったらあっちの思うつぼだ」
「ふふ。話す事は終わったし、これで失礼するよ」
ヤークトは席を立った。
「あぁそうそう。ジンも好きに動いて良い。どこに戻ってもどこに居ても、もう君に危害は加えないさ。後方支援隊の席は空いてるし、復帰の手筈はする」
「そうかよ。なら、好き勝手にしてやるさ」
「あっははは。好き勝手してもなんにも出来ないだろうに」
「なめんなよ。直ぐにお前の喉元に喰らいついてやる」
「おーこわっ。じゃあ用心しておくよ」
そう言い、ヤークトは緑茶を飲み干すと笑顔で去っていくと、指で何かを弾いた。
弾いた物体は優海に向かって弧を描くように飛び、優海はそれを難なく掴む。
掴んだものは指揮官と示す金色の錨のバッジであり、正式に指揮官として復帰する瞬間でもあった。
「戻ってきたな」
「やっぱり、似合ってるわね」
「ええ。俺も、このバッジがあるとなんだか落ち着きます」
「お前も指揮官が板についたって訳だ。……俺も、できる事しねぇとな」
「ジンさんとリアさんはこれからどうするんですか?」
ヤークトは好き勝手していいと言った他に、ジンさんとリアさんの後方支援の復帰も認めた。
順当にいけば、このまま前みたいにアズールレーンの支援に回ると思うけど……。
「一度ユニオンに戻る」
ジンさんは神妙な顔でそう言った。
「今、どこも情勢がヤバい事になってるだろ?そんな状況で物資の調達は厳しいし、支援したくても出来ない」
「……確かに」
「ロイヤルは多分オセアンさんが何とかする筈だ。重桜……鉄血も建前上は支援する筈だ。
だが、問題はユニオンだ。こんな状況だからこそ、ユニオンの全てを手に入れようとする男を、俺は知っている」
忌まわしく、その名前を呼ぶことさえも躊躇う顔で、ジンさんは口を開く。
「ベリタス・カービス……俺の親父だ」
べリタス……ユニオンの上層部の一人で、ジンさんの父親だ。
一度だけ会ったことがある記憶があり、厳格という言葉を身に纏った人だった。
冷たい目と、他を寄せ付けない雰囲気は、親子であるはずのジンさんとは正反対なのを覚えている。
そんな父親を、ジンさんは仇を見るかのような目でユニオンの方角に目を向けた。
「恐らく、あいつはこの情勢を利用してユニオンを全部自分のモノにしてるだろうな」
「そんな事……出来るんですか?」
正直信じられないのが本音だ。ユニオンといえば、陣営の中でも領土が広く、大統領という重桜でいう妖狐見たいな存在はいるけど、ユニオンでの実質的な代表者は複数人いる。
そんな広大な陣営をたった一人の人間が掌握出来るとは思えないけど、ジンさんの目は確信的だった。
「出来るんだよ。そういう人間だ。とにかく今までの動きが出来るように俺は俺なりに動く。幸い、動ける船とかはあるしな」
「コンパス……ですね」
「あぁ。アズールレーンにやろうかなとは思ったが、しばらく使わせて貰う」
「構いません。そもそも、あれはジンさんの船ですし」
「はは、サンキュー。んで、ユニオンに行く以上、後方支援隊についてなんだけどさ……」
ジンさんはその後の言葉を詰まらせると、ニヤニヤと俺を見て笑った。
「その前に、お祝いだな」
「お、お祝い?」
「後ろ見てみろよ」
ジンさんに言われて後ろに振り返ってみる。
すると、そこに居たのは……。
「あっ……」
うさぎの耳に、白い髪の女の子……では無く、KAN-SEN。
島風だった。
「島風?」
「み、見つかってしまいました……!」
島風は見つかった事に恥ずかしがるように草むらに隠れてしまった。
しばらくして島風はあははと笑い、俺たちの前に姿を見せた。
「指揮官殿、ご無事でしたか?あのヤークトという輩に何かされていませんか?」
「全然大丈夫」
特に何もされた訳じゃ無いから、こっちは問題ない。
……逆に、何か動きが無いのが怖いんだけど。
「ところでこんな所まで来てどうしたの?」
「はい、指揮官殿が帰ってきたという事で、皆さんで宴を行うので、連れていくようにと赤城殿が!」
「宴?そんな事する余裕がある所まで復興したのか?」
ジンさんの問いに島風は誇るように胸を張った。
「まぁ、重桜の建築技術は陣営トップクラスだから、1週間もあれば全部治せる力はあるわね」
「陥没した道路を僅か2日で修復しますから」
「マジ?すげぇな重桜」
心の底から関心と驚きの表情を見せるジンさんを見ると、重桜出身として誇らしく思えた。
「ええ。薬とか妖狐への異常な忠誠とか無くても、ここの人達はすごい物を持ってるんです」
「ユニオンよりも小さい陣営なのによくやるぜ全く……んで、宴やるんだろ。早く行こうぜ」
「もう飲む気満々でいるわよこのダメ大人は」
「はは、良いじゃねぇかよ。な?」
「勿論、じゃあ帰りましょうか」
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「え〜と……あーあー……マイクテストマイクテスト…」
「さっさと挨拶しろ。神子様を待たせるな」
江風さんから突っつかれ、宴の席にて挨拶をする事になった俺は、皆の視線に当てられながら、なんて言えばいいか分からなり、固まってしまう。
「えっと、とにかく。皆、色々合ってお疲れ様。それと……なんというかその……色々とご迷惑をおかけして、すみませんでした……」
「もっと言うことあるでしょ〜!?」
「そうそう、折角帰ってきたんだから、言うことは1つでしょー!」
「へ?……じゃあ」
帰ってきた時に言う言葉は1つしかない。
「……ただいま!」
「「おかえりなさい!」」
「優海〜!おかえり〜!もうずっと待ってたんだから!」
宴会は最初から大盛り上がりだった。色んな人とKAN-SEN達が騒いだり食べたりと、先の戦いの傷なんか忘れているかのように盛り上がっていた。
「すぅぅぅはぁぁ……優海〜私ともっとくっつきなさ〜い。もう離さないから〜!」
「酒くっさ!?赤城姉さん、かなりお酒飲んだなこれ……」
「姉様だけじゃないぞ」
「うっう……優海〜お前……お前は本当に私をしんばいさぜて……うっ……うぉぉぉん!優海〜!!」
すっかり出来上がった赤城姉さんと泣き上戸の土佐姉さんに挟み込まれ、もはや料理を食べる所では無かった。
そんな状況を破ったのは、やはり天城母さんだった。
「2人とも、あまり羽目を外しすぎないように」
「「ごふっっう!」」
2人の背後に立ち、笑顔のまま拳骨をお見舞された姉さん達はそのまま倒れてしまった。
最早恒例と言えばそうだけど、何度見てもあの拳骨は恐ろしい。
「にしても……母さん元気になったね」
「ええ。いつもより、身体の調子が良くなって」
「うん。そんな山盛りの大福を物凄く食べていたらそうだよね」
天城の前にあるのは、重桜でも指折りな甘味とされているいちご大福であり、文字通り山の様に盛られた大福を天城は飲んでいるかのように食べ進めていた。
「よく食うな〜?病弱だったよな?天城」
「そうだけど、母さんは元々食べる人ですよ。カレーとか大盛り20杯ぐらい食べてましたし」
「oh......」
そんな雑談を交わし、騒いで食べたりする中、ベルファストが空のコップにジュースを注いでくれた。
「ご主人様、こちらを」
「ありがとう。ベルファストもこういう時ぐらい給仕しなくても良いのに」
「いいえ。私は何処にいても完璧なメイドでいたいのです」
いつも通りの笑みを浮かべるベルファストには、こう言ったら曲げないという意思も感じられた。
こうなっては強く言えず、注いでくれたジュースを一口飲む。
「ありがとう。……結構、長い間大変だったよね?色々」
「ご主人様のお世話をするのは当然の役目ですから」
こう言ってはいるけど、その献身さが逆にこっちに負い目を感じてしまう。
「やっぱり……何かお返しというか、お礼はしたいなぁって思ってるんだけど」
「であれば、無事に母港に到着して皆様に心配かけたと謝罪してくださいませ」
そう言ってベルファストは相変わらずKAN-SEN達の為に動き、空いているグラスや空になった皿を片付けたりと、この宴が円滑に楽しめるように陰ながら動いていた。
「……謝罪かぁ。時間かかるだろうなぁ」
「そりゃあみーんな大好き指揮官様が一人でどこか行ったらね〜?」
名前の如く、蛇のように巻き付くように背後に迫ってきたオロチさんは顔が赤く、酒気が漂わせており、思わず鼻を摘んで声を出した。
「お、オロチさん。オロチさんも色々とありがとうございました」
「んー?あぁいいのいいの。んで、指揮官様ー?この後はどうするつもり?」
「この後?えーと……」
この後の予定はあるって認識で聞いた為、俺は母さんに予定はあるかと告げようとする。
「あぁ違う違う。この後って言うのは、基地に帰った時の行動って事」
「あ……あー!それ!」
てっきり勘違いをしてしまい、少し小恥ずかしくなりながらも、気を取り直して言葉を続ける。
「……実は、前々から手を組もうと考えていた組織があります」
これは合同大演習の時から考えていた事だ。
今の戦力と陣営の状況では、テネリタスに立ち向かう事は難しい。
あのテネリタスに対抗出来るもう1つの組織といえば……アズールレーンやレッドアクシズ以外では、1つしかない。
「セイレーンを手を組みます」
どのテネリタスが好き?
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