もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜   作:白だし茶漬け

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どうも、白だし茶漬けです。
気づけばUAが4万突破し、お気に入り登録者も200人以上にもなりました。皆様のご愛読に感謝です!

さて、実はこの小説リア友にも見られており、なんかここおかしくね?と突っ込まれました。実はそこも伏線やでと言いました。
リア友ビックリこきましたね。はい。このように様々な所に伏線が張っているので全部回収出来るかなと少々不安な私です。


祭りと抱擁と膝枕と

第24話【祭りと抱擁と膝枕と】

 

太鼓の音が辺りを響き、提灯の灯りが夜を照らす。周りは屋台が沢山でいい匂いがそこら中に広がる。そして手に持っている雲のような物、綿菓子を一口食べる。甘くてふわふわしててとっても美味しい。一口、二口と止まらない。

 

_もう、そんなにがっつくと口元が汚れますよ。

 

天城お姉ちゃんがベタついた口元を少し濡らした手ぬぐいで拭いてくれた。今日は初めて天城お姉ちゃんと一緒に外で遊び来れた。

他にも赤城お姉ちゃんと加賀お姉ちゃんも一緒に夏祭りに来てくれた。

 

_何だかんだで天城姉様はあの子に甘い所があるものね。

 

_お前も大概だがな。

 

_貴方だってそうじゃない。あの子が千本くじで外れを出した時、貴方、血走った目で店員を睨んで当たるまで遣らせたくせに。

 

_む、むぅ...あれは外れを用意した店員が気に入らなかっただけだ。

 

_はいはい。そういう事にしておくわ。

 

_お前な...!

 

_はいはい。ここまで来て喧嘩はダメですよ。ねぇ、__?

 

天城お姉ちゃんが僕の名前を呼んで喧嘩はだめと催促する。でも二人はそのまま言い合いになってしまった。喧嘩している二人は嫌いだった。本当は仲良しのはずなのに喧嘩ばかりで嫌だった。僕は止める為に大きな声で赤城お姉ちゃんの悲しませることになってしまう言葉を言ってしまった。

 

喧嘩はだめ!仲良くしないと駄目って天城お姉ちゃんに教えてもらったよ。でないと赤城お姉ちゃんと加賀お姉ちゃんの事嫌いになる!

 

_き、嫌いに...?え..?嘘よね...?

 

_べ...別に嫌いになっても私は...か、構わ..ない。

 

赤城お姉ちゃんは泣きながらこっちに近づいて来る。加賀お姉ちゃんはなんだがそわそわしてる。でも喧嘩は止めてみたいで良かったけど...本当は大好きなのに嫌いって言ったから少しモヤモヤする。

 

_ほら、早く仲直りしないと嫌われちゃいますよ?

 

_そうね!仲直りしなくちゃね!ねぇ?加賀もそう思うでしょう?

 

赤城お姉ちゃんは加賀お姉ちゃんの手を取りそのまま握手を交し、泣きながら腕をそのまま激しく上下に振る。

 

_おいやめろ!分かった!仲直りはした。これで満足か!?

 

加賀お姉ちゃんはなすがままに腕を振られ、どうにかしろと言っているような目で天城お姉ちゃんを見つめる。天城お姉ちゃんはクスリと笑って赤城お姉ちゃんと加賀お姉ちゃんの手を握った。

 

_はい。これで仲直りです。皆仲良くしないとダメですよ?

 

ねぇねぇ、ぼくも手を繋ぎたい。

 

自分だけ仲間外れみたいな疎外感を感じ、自分も天城お姉ちゃん達と一緒に手を繋ぎたいとねだった。天城お姉ちゃんは微笑みかけ、僕を片手で抱き上げ、皆と同じ背丈まで抱き上げた。片手が綿菓子でふさがてるから、片手で天城お姉ちゃん達の手の上に自分の手を乗せる。人肌がとても暖かく安心する心地良さを感じた。

 

_はい。これで皆さらに仲良くなりましたね。

 

喧嘩は何とか止まったけど赤城お姉ちゃんの涙は止まらなかった。

多分僕が嫌いなると言ったから泣いてしまったと思う。天城お姉ちゃんの勉強で人に嫌な事はしないって言ってたのに...こういう時はちゃんと謝るって教えられた。

 

赤城お姉ちゃん。本当は赤城お姉ちゃんの事大好きなのに嫌いになるって言ってごめんなさい。

 

ちゃんと謝ることが出来た。その時、赤城お姉ちゃんが物凄い速さで僕に近づき、そのまま天城お姉ちゃんから僕を抱き上げた。

そして、泣きながら僕のほっぺをスリスリして来た。

 

_良かった〜!嫌われなくて良かったぁぁ!

 

涙でほっぺたが濡れる。どうにか泣き止ませる為に片手にある綿菓子を赤城お姉ちゃんに差し出した。赤城お姉ちゃんは一口食べてくれたけどまだ泣いていた。今度は嬉しいからと言ったけど泣き止んで欲しかったのに泣いてしまったから、どうしようも無かった。

 

_はぁ...お前は本当にこいつの事になるといつもそうなる。

 

加賀お姉ちゃんが他に聞こえるほどの大きなため息をつく。

僕は加賀お姉ちゃんも嫌いになると言った事を思い出し、加賀お姉ちゃんにもごめんなさいと謝る。でも、悪いことをしたから凄く怒るかも知れない。それが怖いけど頑張って謝ってみる。

 

加賀お姉ちゃんの事も大好きなのに嫌いって言ってごめんなさい...

 

怒られる。そう思って赤城お姉ちゃんに抱きつき胸元に顔をうずくませ目を閉じる。でも、いくら待っても怒鳴り声は出なかった。顔を加賀お姉ちゃんの方に向くと加賀お姉ちゃんは怒っていなかった。でも、怒ってもないのに顔は赤かった。

 

_そ、そうか...嫌いでは無いのか...

 

加賀お姉ちゃんはそのままそっぽを向いてしまった。やっぱり怒ってるのかな...すると天城お姉ちゃんが手を叩き、こちらに意識を向かせる。

 

_はい。この後は花火があるそうですよ。皆で見に行きましょう。

 

花火!見たい見たい!ねぇねぇ早く行こうよ!

 

僕を抱き上げてる赤城お姉ちゃんに早く花火を行こうと急かす。

赤城お姉ちゃんはいつの間にか泣き止んでいて、そのまま花火の場所まで抱き上げて移動してくれた。それについて行くように加賀お姉ちゃんと天城お姉ちゃんも一緒に移動した。

 

_本当にあんなに笑顔が素敵な子に育てってくれました...ゲホッゲホッ...

 

天城お姉ちゃんの様子が少し変だった。加賀お姉ちゃんは天城お姉ちゃんの背中をさすって、赤城お姉ちゃんはちらちら天城お姉ちゃんの方を気にしている様だった。この時、僕は天城お姉ちゃんがどんな状態でここに来てくれたことを知らずにいたのだった...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空は暗くなり、星が綺麗に輝いている。空に浮かぶ三日月が海を照らしてくれる。それをベンチの上でどれだけの時間だろうか見つめ続けていた。海の潮の匂い、潮風の冷たさが感じられる。

宣戦布告を受けて三日が経った。補給物資と装備の点検も完璧に終え、何とか編成も完了した。ついに明日は宣戦布告の期限、重桜との戦争が始まる...今までは突発的な戦闘だったので今回は規模が違う。初の大規模な指揮なるので寝付けられず夜風に当たっていた。

 

「明日か...俺にやれるのか...?」

 

緊張感と不安で呼吸が少し荒くなる。手汗も出てきて体が少しの震える。独り言も増える。

最も、指揮をするのは豹変した俺...俺ではない俺だ。しかし、あいつは基本的に俺の計画に沿って指揮をする。前に学校の時に、仮想型演習と言う、仮想世界でのKAN-SEN達の指揮をするという物があった。その時に、俺が戦術を立て、あいつが指揮をすると言う形になった。その際、仮想世界での指揮でも俺は豹変した。その時、確かにアイツは俺の戦術通りに指揮をした。

だから、この戦術が通用するか不安だった。この戦術が通らなかったら?そのせいで皆を...その後の言葉は恐れ多くて出なかった。

頭を抱える。これではダメだと言うのに頭から不安が離れない。

その時、後ろから声がした。その声のおかげで少し、我に返った。

後ろを振り返ると月に照らされ、美しさが一層増したイラストリアスがいた。

 

「指揮官様?こんな所でどうされたのですか?」

 

「イラストリアスか...ちょっと寝付けなくて...イラストリアスはどうして?」

 

「私も少し寝付けなくて...隣、失礼します。」

 

イラストリアスはそのまま俺の隣に座り、俺を見つめ続けていた。

イラストリアスは俺が何故ここにいるのかと問いた。俺は今抱えている気持ちをイラストリアスに言った。イラストリアスは最後までしっかりと聞いてくれた。だから少し落ち着いてきた。全て話したから、何を話そうか悩み、沈黙が続く。話題を探そうとこれまでの事を振り返る。そして出てきた言葉は

 

「ごめんな...」

 

「...え?どうして謝ってるのですか?」

 

自分でもよく分からなかった。いや、無意識では分かっているのだろう。謝った理由は秘書艦にしたのにこんな事になってイラストリアスが思い描いた秘書艦の日々を過ごせなかった事に謝ったのだ。

だからこんな言葉が出た。

 

「折角あのお茶会の時の権利を使って秘書艦になったのに、こんな事になってしまって...きっと、イラストリアスはもっと楽しい事を思い描いていた筈だったのに、申し訳なくて...」

 

俺はイラストリアスから顔を背ける。申し訳なさでイラストリアスの顔を見ることが出来なかった。

 

「指揮官様のせいではありませんわ。それに、私の方こそちゃんと秘書艦として、指揮官様のお役に立てたどうか分かりませんし...」

 

そんなことは無い。とても助かった。補給物資の見直しや補給の手配、俺のサポートを充分にしてくれた。

 

「イラストリアスは充分に役に立っていた。誰よりも頑張っていたし、俺の事を気遣ってくれたりした。本当に助かった。」

 

「本当ですか...?」

 

気が付くと俺はイラストリアスの方に顔を向けていた。イラストリアスは少し不安そうな顔で俺を見る。俺は首を縦に振り、本当に助かったともう一度言う。イラストリアスから不安の顔が消え、いつものように笑顔を振る舞う。

 

「良かった...本当に...!」

 

「だから、ちょっと提案なんだけど...俺をサポートしてくれたお礼とこんな事になってしまったことのお詫びで、あのお茶会の権利をもう一度使える事にしようと思うんだけど...どうだ?」

 

お礼とお詫び、この二つを合わせて今俺が出来そうで最も一番いい物がこれだった。なんとまぁ単純だと我ながら思う。イラストリアスの反応を見るが、少し怖いのでちらっと見る。イラストリアスはこちらと目を合わせる。驚きで思わず目をそらす。

 

「まぁ。それでは、お言葉に甘えて今ここで使いますわ。」

 

「え、もう使うのか?」

 

今でいいのかと問うがイラストリアスの意見は変わらず今ここで権利を使うと言った。しかし、わざわざ権利を使ってまで今ここで出来ることなんてあるのか?その疑問はイラストリアスの行動で明らかとなった。

 

「では、失礼します。」

 

イラストリアスはそのまま俺との距離を縮め、最後に俺に抱きついた。あまりの行動でイラストリアスから離れようとするがイラストリアスは腕を俺の背中に回し俺を離さない。むしろ更に密着させてきた。背中に伝わる腕の感触、更に密着しているのでイラストリアスの胸の圧迫感や感触がこれまで以上に感じる。下を向くともうその先にはイラストリアスの顔しか映らない。

「イ、イラストリアス!?何をやってるんだ!?」

 

「これが権利を使ってしたい事です。【もう少しこのままでいさせてください。】」

 

その権利の内容はユニコーンと全く同じだった。ユニコーンもそんな内容で俺に抱きついた。あの時は少しの気恥しさは最初だけだったが、今のこれはやばい。情報量の多さや恥ずかしさで汗が止まらなかった。

 

「指揮官様からも抱いて下さい...ちょっと寒くて...」

 

ここで更に追い打ちをかけるのはやめてくれ。確かに夜は冷えるが今はそんなこと考えている場合では無い。もう俺の脳はショート寸前だ。こんな状態で俺から抱くなんて無理だ。しかし、イラストリアスの目はお願いしますと言う視線が俺の目に突き刺さる。その視線に負け、俺はイラストリアスの背中に腕を回し弱く抱きしめる。

 

「こ、こうか?」

 

「もう少し強く...お願いします。」

 

もうどうにでもなれ。イラストリアスの要望を聞き、もう少しだけ強く抱きしめる。上半身に伝わる胸の感触が更に追い打ちをかけるように感じる。そのせいでもう心臓の鼓動がこの上なく早い。鼓動音が聞こえる。その鼓動音もイラストリアスに聞かれているのだろう。

 

「指揮官様はやはり優しいですね。イラストリアスの願いをちゃんと聞いてくれて...鼓動もこんなに早いのはこういうのはあまり慣れてないからでしょうか?」

 

「まぁな...こうやって抱き合うの初めてだから...」

 

抱きつかれるのは小さい頃しばしばあった。最近はユニコーンにも抱きつかれた。抱き合うことは...幼い頃よく怖い時は抱きついて寝ていたが、このように抱き合うのは初めてだ。

意識し始めると更に鼓動が速くなった。

 

「じゃあ、私が一番乗りですわね♪」

 

不敵な笑みを浮かべ更に強く抱きしめて来る。そろそろ俺の理性がショートする。このままでは不味い。今イラストリアスの顔を見たら後には引けなくなりそうなのでイラストリアスから顔を背け目をつぶる。きっと真っ赤になってる耳がイラストリアスの目の前に晒されているだろう。

 

「あら、耳も真っ赤になってますわ。」

 

「頼むから言わないでぇ...恥ずかしい。」

 

イラストリアスはクスリと笑いからかいながら俺の耳に息を吹きかける。耳に伝わる息の冷たさと形容しがたい感覚が全身に巡る。

 

「おい!もう...俺、指揮官なのに...」

 

立場的に部下であるKAN-SENに何だか手玉に取られてるみたいで情けなかった。

 

「ふふっ、大丈夫ですよ指揮官様。指揮官様の戦術と指揮はきっと私達を光満ち溢れる場所まで導いてくれますわ。」

 

イラストリアスは顔を俺の胸に寄り掛かる。イラストリアスはそのまま言の葉を繋ぐ。

 

「指揮官様は光そのものですわ。皆を導き、道を照らしてくれる存在...だから私たちは指揮官様の事を信じています。」

 

「イラストリアス...」

 

イラストリアスの言葉を聞き、最初に感じた不安や緊張感が無くなった。あるのはそれとは対する安心感だった。

 

「どうでしょうか...少しは不安は無くせましたか...?」

 

「え...あっ...ああ。うん。無くなったよ。ありがとうイラストリアス。」

 

不安を取り除いてくれるために抱きついて来たのだろうか?確かに不安は抱きついた時に消え去った。それと入れ替わるように極度の緊張感がましたけど...

 

「じゃあ、もう夜遅いし明日に備えて寝ようか。」

 

「私はこのまま夜風に当たりますわ。おやすみなさい指揮官様。」

 

「そうか..体を冷やして風邪引くなよ?」

 

俺たちは抱き合うのを止め、そのまま俺はベンチに立って早歩きで離れる。そして少し歩いてさっきの抱擁を思い出し全速力でその場から離脱した。不安は無くなったが、緊張感で更に寝付けなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところでいつまで隠れているんですか?ベルファスト?」

 

「...バレていましたか。このような粗相な事をし、申し訳ございません。」

 

ベルファストは物陰から姿を現した。恐らくずっと見ていたのだろう。その事を考えると気恥ずかしくなってしまう。

 

「全部見ていたのかしら...?」

 

「はい...基地を出られたご主人様の事が気になり...後を付けていたのを...」

 

「その後、私が現れて出るに出れず、タイミングを逃した事かしら...?」

 

ベルファストは肯定の意で首を縦に振る。申し訳なさそうな顔でベルファストは顔を下げ続けている。これではマズいと思い、何か話題を考える。

 

「ベルファストは、指揮官様の事をどう思って?」

 

「...とても素晴らしいお方です。あのような方がご主人様であることを誇らしく思います。」

 

「それだけじゃないでしょう?」

 

勿論根拠はない。だけど、彼女の反応を見るにそれだけじゃないことは確かだった。ベルファストは観念したのか言葉を続けてくれた。

 

「同時に...何かを隠しています。ご主人様の笑顔や仕草、思いは嘘偽りではないのでしょう。しかし、時々見せる諦めたかのような顔や隠そうとする素振りを見ると...」

 

諦めたような顔...心当たりはあった。私が秘書艦に着任した初日、指揮官様と朝食を共にした時、指揮官様は何処か諦めたような顔をされていた。それが気になってその後の食事は気まずくなってしまわれましたが...

 

「指揮官様は光です。それは本当です。ですが、その光が強すぎると影も大きくなる物...指揮官様の光はその影を隠そうとしているのかもしれません。」

 

「少し様子を見ていきます。イラストリアス様はどうなさいますか?」

 

「私はもう休みますわ。指揮官様から言われましたし。」

 

「承知致しました。それでは失礼致します。」

 

ベルファストはそのまま指揮官様を探しに出られた。普段は冷静に完璧にメイドとしての奉仕をしていますが、蓋を開けるとそうでも無い、凄くお人好しの所があった。

 

「あの人も指揮官様の事を好意に思ってるのかしら...?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああああああああぁぁぁ!!恥ずい恥ずいすっごい恥ずかしいぃぃ!」

 

忘れるように叫び、忘れるように基地の外を走り回るが、あの時の感触やイラストリアスの顔が忘れられない。むしろ鮮明に思い出してしまう。気が付くとジャベリン達と見つけたあの丘まで走っていた。

 

「丁度いいやちょっとここで落ち着こう...」

 

少し息を整えるために丘の頂上まで歩く。頂上に近づくとその先には人影がいた。直ぐに姿勢を低くし、警戒をする。気づかれないようにそっと近づく。しかし、その心配は無かった。それは見慣れた後ろ姿だったからだ。暗くて良くは分からないが長い髪、そして一緒に連れている鳥で何とか判別できる。

 

「そこにいるのはエンタープライズか?」

 

名前を呼ばたのか、そいつが後ろを振り返る。月明かりでようやく姿が見えた。やはりエンタープライズだった。

 

「指揮官か、こんな所でなんの用だ。」

 

「ちょっと寝付けなくてな...お前の方こそここで何を?」

 

寝付けないのはさっきの抱擁で別の要因になってしまったがな...

 

「私も寝付けなくてな...明日から戦闘が始まるというのに。」

 

「...不安か?」

 

「とんでもない。私は戦うために生まれた兵器だ。兵器が不安を感じたらそれこそ欠陥品だ。」

 

またこいつは...しかし、いつもこうだと何故こう意見が並行線になるんだ?考えるとすれば...過去でなにか起こったのか?しかし、聞いても答えてはくれないだろう。

 

「とにかく、明日の指揮に支障が来ても困る。貴方も早く寝るといい。」

 

エンタープライズはそのまま海を見つめ、そのまま宿舎に戻ろうする。しかし、エンタープライズが海をみつめた表情を見て、ひとつの確信にたどり着いた。

 

「もしかして...海が怖いのか?」

 

エンタープライズは図星をつかれたようにこちらに体ごと振り向く。反応を見るからに図星そうだが、反応がイマイチだ。恐らく、無意識に海を怖がっているのだろう。

 

「馬鹿な...何を根拠に。」

 

エンタープライズは認めるつもりが無いように俺を睨みつける。

確かに説明できるほどの根拠ではないのかもしれないだが、海を見つめる表情は、俺と同じだ。だがら分かる。お前が海を怖がっているのも。

 

「俺も...海が怖いんだ。」

 

エンタープライズはそのまま黙った。しかし、睨みつける表情は無くなり、疑問を浮かぶ表情に変わった。

 

「何故だ。だったら何故貴方は指揮官になった。」

 

「...少し話そうか。」

 

俺とエンタープライズはそのまま頂上まで歩き、頂上に着くと柔らかい草の上に座る。エンタープライズも少し間を空けて地面に座る。少し心の整理をつけ、俺の事を話した。

 

「昔、海からのひとつの光が俺がいた島を攻撃した。そこから先は、砲弾やらまた光が島を攻撃して建物を...家族や友達を無くしていった。」

 

あの時の事を思い出してしまう。一つの光、数多くの砲弾が海から無数に襲いかかった。海から来る恐怖に涙さえも流した。そして家族も友達も...いや、俺以外の人々は...死んでいった。

 

「その攻撃は...セイレーンか?」

 

「多分な。でも、その時の俺はセイレーンとかまだ分からなかったからさ、その時から海が怖くなったんだ。まぁ、今はそんなにだけど。」

 

俺がセイレーンの存在を知ったのは...天城さんの授業の時だ。

その時にセイレーンのことについて知った。

 

「指揮官は、その後どうしたんだ?」

 

「...その後何とか父さんと一緒に避難して、生き延びた。そこから決意したんだ。俺は指揮官になって海からの脅威を無くそうって。」

 

俺は嘘つきだ。事実では無い事を平然と言う。こうやって今まで欺き、騙し、嘘をつき続けた。その事に罪悪感のせいで胸が苦しくなる。だが、確かに俺が海を怖くなったのは本当だ。だけど、天城さん、赤城さん、加賀さんの他に重桜のKAN-SEN達が俺を助けてくれた。俺をもう一度前に歩かせてくれた。俺を、海を、怖くないって。教えてくれた。

 

 

 

_海が怖いの?

 

うん...

 

_大丈夫よ。私達が海からの脅威から皆を守るわ。だから、怖くないわ。私達を...信じて?

 

...分かった...

 

だけどまた海は俺を襲った。まるで、決して逃れられないような呪縛があるかのように。海はまた俺から家族を奪った。

 

 

 

 

「そんな事があったのか...」

 

エンタープライズの声で現実へと意識を戻す。根も葉もない嘘をエンタープライズは信じてくれた。罪悪感でエンタープライズの顔を見ることが出来ず、顔を背ける。

 

「お前はどうして海を...」

 

「答える義理はない。私は兵器だ。ただ貴方の命令に従うだけだ。」

 

エンタープライズの変わらなかった。エンタープライズは話を終わらせるため、その場に立ち、自分の宿舎へと戻ろうとする。しかし俺は、自分を兵器と卑下するエンタープライズに苛立ちを感じる。

 

「お前は決して兵器なんじゃ無い!」

 

この言葉を引き金にエンタープライズは立ち止まり意見をぶつける。

 

「私は戦うために生まれたんだ!どんな事があろうと決して生まれた理由は変わらない!私は戦う事しか出来ない!」

 

「確かに生まれてきた理由は変わらない!だけど、戦う意味は変えられる。お前はそんな下らない理由だけで戦って来たんじゃ無いはずだ!」

 

いつしか言い合いになってしまった。エンタープライズは俺を睨みつける。

 

「戦う意味...だと?」

 

「そうだ。どんな人も戦うのに必ず意味を持つ。戦っていった人達も愛する人のため、国のため、守りたい物の為に戦っていったんだ。」

 

少なくとも俺はそう思う。昔、セイレーンと戦って散っていった人達は守りたい物があったからこそ懸命に戦ってきた筈だ。

 

「...私には分からない...私は戦うために生まれて...」

 

「逃げるな。そんな安易で用意された言葉から逃げるな。」

 

「逃げる...?」

 

「あぁ。そんな下らない理由だけじゃお前は英雄になんかなれない。お前はきっと答えを見失っているんだ。」

 

エンタープライズは戸惑い、沈黙する。しかし、エンタープライズの考えは変わらなかった。俺の言葉はあいつには届かなかったのだ。

 

「私は目の前の敵を倒し続けたにすぎない。英雄なんていつの間にか呼ばれていだけだ。...もう良いだろう。明日の指揮を頼む。もっとも、するのは貴方では無い貴方だが...」

 

エンタープライズはそのまま丘を下り、自分の部屋へと戻って行った。結局、また彼女との間に溝がまた出来てしまったことでため息がつく。さっきの言い合いで目が冴えてしまったのでしばらく景色を見つめ続ける。月が良い感じに海を照らしいて、幻想的な景色となっている。

 

「まぁ、これは随分と美しい景色でこざいますね。」

 

「あぁ。ここ結構いい穴場なんだ。俺もこんな景色は初めて...ん?」

 

エンタープライズとは別の声に今気づき、横に振り向く。そこには白髪にメイド服、ベルファストがいつの間にか隣で座っていた。

 

「ベ、ベルファスト!?いつから居たんだ!?」

 

「はい。「俺も...海が怖いんだ。」の所からです。」

 

いや、ほぼ最初からじゃねぇか!ということはあれ全部聞いていたのかよ。しかし、それに飽き足らずベルファストはある衝撃的な事言うのである。

 

「実は、ご主人様自体を見かけたのは最初からです。イラストリアス様との抱擁をしっかりと拝見させて貰いました。」

 

..........!?言葉にならない声とはこの事だ。俺はそのまま絶句した。しかし、ベルファストは止まらない。

 

「その後、イラストリアス様とご主人様が別れた後、急にご主人様が走り出しましたので様子を伺うために探し、やっとご主人様を見つけたらエンタープライズ様との口論の最中だったので身を潜めて...ご主人様?大丈夫ですか?」

 

「...やばい恥ずかしい。死にたい。」

 

まさかの見られていた。恥ずかしさで死にたくなってくる。俺は鏡を見なくても分かる顔の紅さを見られないように顔を手で覆い、そのまま地面に倒れ込む。

 

「死んではなりません。」

 

的確なツッコミをされたけど、だってイラストリアスとの抱き合い見られたんですよ?これが恥ずかしい以外の何者でも無いわ。

 

「ご主人様は随分と可愛らしい所もあるのですね。」

 

だから俺に追撃をかけるのはやめてくれ。穴が入りたい。冗談ではなく。ここにいることも耐えられなくなり戻ることにする。

体を起こし、地面に立つ。

 

「夜風はやっぱり冷えるな!よし、戻ろうそうしよう!」

 

「承知致しました私もお供致します。」

 

何故だ。俺更に精神的に追い打ちでもするというのか?これ以上俺に攻撃して何があるというのか、ベルファストは結局俺の部屋まで着いてきた...そしてそれに飽き足らず部屋の中にまで入ってきた。

 

「どうして部屋の中まではいっているんですかね?」

 

「ご主人様が本当に睡眠をとるのか確かめる為です。また遅くまで戦術を考えては明日に支障をきたします。」

 

いやいやいくら俺でも大事な日の前日ぐらいは...分かった待て、そんな言う事聞かないと言うことを聞かす見たいな目で見ないでくれ。

 

「はぁ...とりあえず服を着替えるから一度部屋を出てくれ。」

 

「お手伝い致しま」

 

「良いから!部屋から一度出ろ!」

 

ベルファストを部屋から追い出し、軍服から就寝服へと着替える。

着替えた後、ドアに鍵を閉めようとしたその時

 

「ご主人様?鍵を閉めようとしたらその時は無理やりにでもドアを開けますが。」

 

なんで分かるの?とにかく鍵を閉めることを諦め、仕方なくもう一度ベルファストを部屋に招き入れる。そして、自分が寝るまでメイドにガン見されるという謎のシチュエーションが今ここにある。

 

「じゃあ、おやすみ。ベルファスト。」

 

「はい。おやすみなさいご主人様。」

 

__しかし、眠れなかった。イラストリアスとの緊張感のせいかそれとも不安がまた戻ってきたのかは知らないが眠れなかった。

ベルファストが部屋から出たのか確認するとなんということでしょうまだベルファストがいたのでした。

 

「...やはり狸寝入りでしたか。」

 

「いや、違うんだベルファスト。これはだな...」

 

ベルファストはベットに近づき、そのままベットの上にまで進軍した。

 

「お、おいベルファスト?何でベットの上にまで来てるんだ?」

 

疑問を投げかけてもベルファストは既にベットの上どころか俺の体の上にまで進軍していた体は寝かされ、押し倒された状態になった。

 

「ご主人様、少し失礼します。」

 

ベルファストはおれの体の上を通過し、ベルファストはその後正座し、膝に俺の頭を乗せる。こ、これって...

 

「膝枕でございます。如何ですか?ご主人様。」

 

悪くは無い。むしろいい感じだ。太ももの弾力が丁度良い...

 

「いやいや待て待て。どうして膝枕なんか..」

 

ベルファストは有無を言わさず、俺の頭を撫でて来た。ベルファストの指が髪を絡めながら髪を撫でる。なすがままにされ続け、そのままベルファストに委ねてしまう。しかし、恥ずかしさよりも一種の安心感の方が強く、心地よかった。

 

「大丈夫です。ご主人様の戦略、戦術、指揮は必ず艦隊の皆様をお守りします。私達がご主人様を信じているようにご主人様も私達の事を信じて下さい。」

 

良いようだと、俺がイラストリアスに言った事を全部聞いていたのだろう。だが、その言葉がより安心感に浸らせてくれる。

 

「...分かった。」

 

不安が一気に消え去ったせいかどっと眠気が一気に襲いかかった。

そういえばこの三日間ろくに寝てなかったな...その反動が来たのか俺は数分も待たず、意識が溶け、眠った...

 

 

 

 

 

 

「...ようやくお眠りになられましたね。では、私も着替えて眠らせていただきます。」

 

ベルファストは指揮官の頭を枕に戻した後、一旦自室へと戻る。

しばらくすると、白いレースのような就寝服へ着替えた後、変えのメイド服を持参しながらまた指揮官の部屋へと入る。ドアの鍵を閉めて、誰も入れないようにする。その後、ちゃんと寝ているか顔をしっかりと見る。

 

「よしよし、ちゃんと眠っていますが、また狸寝入りされても困ります。お隣、失礼します。」

 

まるで自分に言い訳をするかのように独り言を呟きながら、空いているスペースに侵入し、指揮官の隣で添い寝をする。

 

「ご主人様...どうか今だけはお許しください...」

 

ベルファストは何故このような行動をしたのか分からない。

いや、分からないフリをしているのだろう。

指揮官の心配も確かにある。主の為に働くのはメイドの務めであるからだ。しかし、心の中ではそれとは別の何かがベルファストをここまで動かしたのだろう。しかし、それは本人しか、いや、本人からしても分からないだろう。

 

「おやすみなさいませ、ご主人様。どうか良い夢を...」

 

ベルファストは目を閉じる。指揮官の寝息を聞きながらそのまま眠るために目を閉じる。




○月✩日
何とか大体のKAN-SEN達の顔と名前を覚えてきた。
それにしても此処にはメイドが沢山いるな。
例えばサフォークとケントのことについてだ。
サフォークは元々初日で俺の事を基地に案内する係だったそうだが、本人曰くカモメを見て遅れたらしい。大丈夫かこの子は?
次にメイドにしてはかなりフレンドリーなケントだ。
メイドなのにゲームして遊ぼうとかとにかく、遊びに誘って来る。
本当に大丈夫か?その後、ベルファストに見つかって自分の仕事に戻ったのだが...心配だ。

もしもの話(R-18)を観測しますか?

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