もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜   作:白だし茶漬け

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とうとうこの小説のUAもなんと5万を突破しました!皆様のご愛読に感謝です!
段々と感想してくれる方が増えて言ってるのでいつも感想を読むのが楽しみになっている自分です。

ここでお知らせです。近々学校が始まるのでこれまでみたいなハイペースな投稿は出来ないかも知れませんがそれでも読んで頂けると光栄です!

というかいい加減ちゃんとしたあらすじ書いた方が良いかなぁ?
( ˙꒳˙ )???


変わり目と吹雪と手紙と

第27話【変わり目と吹雪と手紙と】

 

季節は秋。肌寒くなり、葉が衣替えするかの如く紅く染められた。

天城お姉ちゃんと加賀お姉ちゃんが将棋をしている。

加賀お姉ちゃんの王が中段に誘われているので王手がかかるのは時間問題だろう。

 

大演習?

 

_そうよ。貴方にも見てもらいたいの。

 

天城お姉ちゃんは将棋の手を休めること無く話を続ける。

天城お姉ちゃんが言うには今年の冬に大演習って言うのをやるらしい。2つの軍に別れて、競い合ってその中で一番頑張った人が長門様の次にこの重桜の連合艦隊の旗艦に...つまり一番偉い人になれるらしい。

 

へぇ。赤城お姉ちゃんと加賀お姉ちゃんも出るの?

 

_残念だけど私は出られないの。まだ改修中の身だからね。だから、ずっと貴方と...フフフ...

 

赤城お姉ちゃんは僕を抱きしめる。なんだか凄く怖い笑顔になっていてちょっと怖い...

 

_赤城?粗相はいけませんよ?

 

_は、はい...

 

赤城お姉ちゃんは僕を抱きしめる事は止めずに背筋をピンと伸ばした。

 

_だが、これでようやくこんな盤上では無く、本気で決着が付けられるな天城。

 

加賀お姉ちゃんは天城お姉ちゃんの捨て駒にまんまと誘われてしまう。こうなってしまってはもう詰みになるには五手もかからないだろう。

 

_そうですね。はい、王手。詰みです。

 

_何!?

 

加賀お姉ちゃんが盤上を確認すると確かに詰んでいた。これで天城お姉ちゃんの十連勝だ。

 

_くそっ!もう一度だ!

 

加賀お姉ちゃんは駒を素早く並べ終えてもう一度勝負すると催促する。しかし、天城お姉ちゃんはそれを拒む。

 

_いえ、本当の決着は大演習で決着をつけましょう。演習とは言え、実戦で決めた方が公平でしょう。

 

_そうだな。なら、どっちが最強の新世代戦艦か、実戦で決めさせてもらう!

 

加賀お姉ちゃんは持っていた王将を突きつけ、天城お姉ちゃんに宣戦布告をする。天城お姉ちゃんは楽しみにしているのか不敵に笑った。

 

_では、優海。私の先に座りなさい。加賀と赤城は少し席を外して下さい。

 

天城お姉ちゃんに言われ、僕は赤城お姉ちゃんに抱かれている腕をどけて、加賀お姉ちゃんと入れ替わるように加賀お姉ちゃんが座っていた所に座る。赤城お姉ちゃんと加賀お姉ちゃんは部屋から一旦出ていった。

将棋盤を挟んで、天城お姉ちゃんが真剣な顔つきで此方を見る。

 

_では、私と最後の将棋を指しましょう。これまでの経験や知識を、全てを使ってこの一局に挑みなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

止まぬ吹雪、荒れる海、そして様変わりした海。海には氷が飛び出し、あたかも北方連合の領地だと思わせる。ローブが海風で強くなびき、雪が黒い仮面を白く邪魔をする。

 

「それにしても覚醒しただけでこれ程とはな...」

 

エンタープライズが覚醒した直後、光が広がりその結果このような海域となった。まぁ、原理はどうでもよかった。それよりもようやくアイツが自分の意思で艤装を全て展開した。これでアイツと俺の経路(パス)は繋がった。ようやく思い通りになったかせいか自然と笑みがこぼれる。まぁ、仮面で誰にも分からないが。

 

「見えてきたな...エンタープライズ。」

 

ようやく敵を見つけ、乗っていた艤装を再度右に装備し直す。まずは牽制にと右腕に装備されているビームを一発撃つ。エンタープライズはそれを最小限の動きで避ける。その後、俺を敵と認識したのか彼女は艤装に向ける。向けた直後に光の矢が俺に目掛けて飛んでくる。俺はそれを避け、今度は右の艤装の主砲でエンタープライズを攻撃する。

先程のビームよりもより強力な光がエンタープライズを襲う。しかし、エンタープライズは避けもせず矢をまるで鳥のように変え俺のビームと撃ち合い、打ち消した。

 

「ほう。さすがは覚醒...いや、期待外れだな。この程度とはな。」

 

確かに強くはなっていた。しかし、あまりにも無機質でまるで機械のように単調だった。俺は右の艤装からセイレーンの艦載機を多数発艦させる。艦載機はエンタープライズ目掛けて突撃をかける。エンタープライズは迷うことなく矢を放ち、その矢を拡散させ艦載機を全て撃ち落とす。そのせいで爆発が起こり爆風がエンタープライズを包む。エンタープライズは爆風から逃れる為、宙を飛ぶ、しかし、俺はそれを狙っていた。予めその場で待機していた艦載機をそのままエンタープライズに向けて突撃させる。

エンタープライズは咄嗟に身を守ったが爆発に巻き込まれ氷の壁に衝突する。しかし、苦しむ様子もなくすぐ様体勢を立て直した。

無機質に、敵を倒すためだけのただの兵器のように此方を見る。

 

「これでは本当に兵器だな。いや...お前はそう扱われる事を願っていたんだったな?知ってるさ。聞いていたからな。アイツの中でな。」

 

レーダーに多数の反応がある。重桜らしき空母が二隻、アズールレーンのKAN-SEN達が多数...そして、高速でこの場に近づく奴が一人...

 

「丁度いい。ここでアイツの実力をここで試していこう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_数時間前

 

「これが俺の全てだ。納得のいく答えかどうかは分からないけど...」

 

「いえ、納得はしたわ。貴方のその艤装についてはまだ不明だけど。」

 

ビスマルクは俺の艤装を凝視した。これに関しては俺も何故この艤装を使えるのか分からないのだ。ただ、あの時重桜が何者かに襲われた時に初めて知ったからだ。だが、この艤装は間違いなくセイレーンの者だ。つまり俺は...

 

「まぁ、この艤装だ。俺は少なからずセイレーンと繋がりがある。」

 

「ほう?卿は随分とあっさりと言うのだな?」

 

俺を卿と呼んだのは氷の一角で佇んでいる空母のKAN-SENだった。

ビスマルクが言うには彼女の名はグラーフ・ツェッペリン。

彼女からはどことなく赤城さんに似てるような...?

俺は彼女を凝視してしまう。そして彼女も俺を見つめる。

まるで俺を哀れんでいる(・・・・・・)かのように。

 

「あら?指揮官はツェッペリンに興味があるのかしら?」

 

オイゲンがからかうように俺がツェッペリンを凝視してたのを見てクスクスと嘲笑う。

 

「あ、いや。何となく赤城さんに似てるというかなんというか...」

 

俺は誤解をとくために感じたことをそのまま言う。

どうやら、ツェッペリンは赤城を元にして作られた艦らしい。

だからこそ少し赤城さんと似たような雰囲気を感じたのか。性格に関しては全く似てないが。

話が逸れてしまったが次はこっちのターンだ。

 

「次はこっちの質問だ。何故貴方達はここに来たんだ?」

 

正直言って重桜が鉄血に支援を要請したとは考えにくい。何故なら赤城と加賀はセイレーンと手を組んでいるからだ。【アズールレーン】と【レッドアクシズ】に別れてもセイレーンは共通の敵だ。それがバレたら間違いなく重桜は全人類の敵となる。だから重桜は鉄血に支援を求めてない。つまりは、ビスマルク達は自分達の意思でここに来た訳だ。

 

「【オロチ計画】って言えば分かるかしら?」

 

何となくは予想はしていた答えだった。やはり【オロチ計画】の全容は同盟相手の鉄血にも教えていないようだった。それを不信に感じたのか、ビスマルク達はこの戦闘に介入したらしい。

 

「オイゲンとZ23に【オロチ計画】の事を調べさせたけど...いつまで経っても収穫が無いから、オロチの力を存分に使うであろうこの戦闘に介入したわ。これで満足かしら?」

 

オイゲンの悪びれも無い態度とは対照的にZ23は不甲斐なさからか顔を俯かせる。

ビスマルクの言い分に行動との矛盾は見当たらない。やはり鉄血も【オロチ計画】についてには不信感があるようだ。

だが、一足遅かったのか結局何も収穫は無し、気づいたらこんな海域になっていたとの事だった。

そうこうしている間に突如空間に亀裂が入る。まるで空がガラスのようにひび割れ亀裂の中には宇宙のような光景が広がる。最早何でもありだな...

 

「ここは危険だ。お前たちは早くこの海域から離脱しろ。」

 

俺は離脱を勧告しながら、ビスマルクに向けて一封の手紙を投げつける。風をきりながら進む手紙は真っ直ぐビスマルクに飛び、ビスマルクはそれを難なく掴む。

 

「何かしら、この紙...赤城と加賀が使っているのと似てるわね。」

 

「同じ物だ。いつか渡す予定だったから肌身離さず持っていたけどこんな形で渡すことになるとはな。」

 

俺は昔、赤城さんと加賀さんからお守り代わりとして自分達使っているの紙を俺に渡してくれた。それを手紙になるように切り貼りしたりしたのがその手紙だ、お陰で俺が沈んでいたのにも関わらず、手紙は全く濡れていなかった。

 

「それを安全な所で読んでくれ。返事の方法はその紙に書いてある。」

 

「どういった物なのかしら?」

 

ビスマルクは手紙を不信に見つめる。今にも破り捨てそうな勢いだった。

 

「俺が指揮官になった理由の一つだ。さっき話しただろ。」

 

ビスマルクは何かを察し手紙を服のポケットの中に入れた。どうやら読んではくれるらしい。空間に亀裂がまた走る。どんどん亀裂が入る感覚が短くなっている。そして向こうの方で爆発が起きた。

 

「...どうやら。撤退するしか無さそうね。」

 

「気をつけろよ。」

 

「敵の心配をしてる暇があるのかしら?貴方はその姿を味方に見られた。この後どうする気なのかしら?」

 

この後...無事に基地に帰ったとしても皆は間違いなく俺の事について問いただす。ビスマルクはそれを言っているのだ。俺は間違いなくセイレーンと関わりがある。それを物語っているのは俺のこの艤装だ。

まるで意思を持っているかのように俺の周りを漂う機械。

そしてどの艦とも一致しない謎の艤装。

この後の事を考えると恐ろしさで手を握り締める。

 

「まぁ、その時はその時さ。」

 

見栄っ張りで強がりな声をあげる。ビスマルクは呆れたのかため息を漏らす。ビスマルクが合図をすると他の鉄血のKAN-SEN達がこの場から離脱をし始めた。

 

「なら、生きていることを祈るわ。出ないとこの手紙の意味が無くなるもの。」

 

「いや、分からないぞ。俺が居なくなっても、それがきっかけになるかもしれないしな。」

 

ビスマルクはこれ以上何も言わず、他の仲間たちとこの海域から離脱した。少し彼女達を見送った後、爆発がした方角を向く。もう一度

レーダー起動する。爆発があった方角に多数の反応とそれとは別に艦隊の数の反応があった。数からして恐らくは重桜の艦隊だ。

もしまだエンタープライズがあの状態でまだ戦おとしているなら止めなければならない。俺は艤装の出力最大にして重桜の艦隊へと移動する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_同時刻にて アズールレーン 第二艦隊 ロイヤル艦隊

 

最早海とは言えないこの海域でアズールレーンのKAN-SEN達は最早満身創痍だった。エンタープライズの異常な行動、エンタープライズが原因であろう謎の光により、辺り一帯の空間は不安定になっていた。そして、指揮官の生存不明が決め手になり、艦隊の維持は難しくなっていた。

 

「一体何が...あの指揮官がまさか艤装を...?」

 

フッドは自分が目の当たりにした真実が受け入れられずにいた。いや、この戦闘に参加している全てのKAN-SENがそう思っているのだろう。指揮官が艤装を展開していた。そして、赤城を庇うように海に落ちていった。その事が誰もが受け入れられずにいた。

 

「それに、重桜の【オロチ計画】とエンタープライズが引き起こしたこの現象..無関係とは思えません。」

 

「ウェールズ。無理して言わなくても良いわ。」

 

「...申し訳御座いません。」

 

エリザベスはウェールズがショックを受けている事を見抜き、彼女を一旦下がらせた。エリザベスは割れた空を見あげ、あるけつだんをする。

 

「下僕の事も気になるけど...セイレーンの企みを挫く為には重桜を見逃すことは出来ないわ。」

 

「陛下!それはつまり...」

 

フッドは何かを察し、その声を聞いたエリザベスは力強く頷いた。

 

「重桜艦隊に追撃をかけるわ。指揮は下僕に変わって私が引き継ぐわ!」

 

エリザベスの進言により、重桜の追撃が開始された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_同時刻

 

「寒い...」

 

氷が生まれ、雪が降ってくる。先程の海が嘘のように、まるで世界が変わったかのように辺り一帯が氷の海へと変わった。雪によってジャベリンとラフィーの体温は奪われる。腕を手で擦り、摩擦熱で体温をあげようとするが気休めに近いものだった。

 

「皆とはぐれちゃったね。早く艦隊と合流しないと...」

 

エンタープライズが引き起こした光はKAN-SEN自体には何も影響は無かったが場所に関しては影響が出た。ジャベリンとラフィーは確かに艦隊の近くで戦っていたが、光に飲み込まれた後、艦隊とは離れた場所で目を覚ましたのだ。幸い、レーダーは何とか生きているので艦隊の場所は分かっていた。ジャベリンとラフィーは急いで艦隊に合流しようとするが突然の吹雪により目の前が遮られる。吹雪の先には人影が見えた。ジャベリンは自分達と同じように艦隊とはぐれた人だと思った。しかし、吹雪が晴れた事によりそれは間違いだと分からされる。

若干白い髪のポニーテールに機械のような角。何度も会い、何度も海の上で戦って来た人を見間違えるはずなく、彼女名前を言う。

 

「綾波ちゃん...」

 

まるで光が彼女達と巡り合わせるようにまたこの海で敵としてであった。

 

綾波は右手に持っている剣を構え、左手で艤装のの取っ手を掴み主砲をジャベリン立ちに向ける。

しかし、ジャベリン達は構えずにただ綾波を見つめた。その事に綾波は苛立ちと疑問を感じた。

 

「またそうやって...どういうつもりなんですか貴方達は!」

 

綾波には理解が出来なかった。敵が今目の前に居るのにも関わらず、構えもせず抵抗もせず攻撃もしない。そんな自分達が生まれてきた理由を否定するかのような行動に綾波はどうしても理解が出来なかった。

 

「前にも言った。綾波と友達になりたい。」

 

ラフィーはあの時、前に綾波とあの島で、指揮官の救出の際にまた綾波と会った。その時ラフィーは綾波に手を伸ばし友達になりたいと言った。綾波は手を振りほどいてそのまま何処かへと行ってしまったがラフィーはそれでも諦めてなかった。

ジャベリンもあの時で自分が心の奥底で感じていたことがようやく分かった。だからジャベリンも諦めずに綾波とは武器を交えず、言葉で戦う。

 

「そうだよ!私たち綾波ちゃんと友達に...」

 

「敵同士で何を言ってるんですか!」

 

綾波は主砲をジャベリンに向ける。しかし、構えているその手は震えていた。それは決して寒さが原因ではなかった。綾波はジャベリンを狙うように真っ直ぐにジャベリンを見る。しかし、ジャベリンも綾波を真っ直ぐに見つめる。もう悩み、目を逸らしていたジャベリンの面影は無くなっていた。

 

「敵も味方も関係ない。」

 

「関係あるです!綾波たちは艦だから敵と戦うのは当たり前なのです!」

 

敵味方関係ないと言うラフィーの言い分に綾波は困惑を感じた。

自分達は戦うために生まれた。敵を倒すためが使命なのだと綾波は分かっていた。だから、友達になりたいと言うジャベリンやラフィーの考えを、それをする理由も綾波には分からなかった。

 

「違うよ!私たちはそんな単純じゃない!」

 

ジャベリンは真剣な目付きで綾波に一歩ずつ近づく。綾波はそれに圧倒されての事か一歩ずつジャベリンから離れるように後ろへと下がる。しかし、その時ジャベリンの言い分を否定する声が聞こえた。それは氷のように冷たく、冷徹で、突き刺さるような声だった。

 

「いいや、単純だ。だからこそお前達はこんな下らない戦いを繰り返すんだ。」

 

荒れ狂う吹雪の中、それをかえりみずに真っ直ぐとこっちに近づいている人影が映る。吹雪を切るように歩き、姿を現す。

艤装こそ何もかも変わっていたがこの威圧感はジャベリン達は恐怖を感じた。間違いない、あの時、あの島で出会った嵐...【テンペスト】だった。

 

「お前達はいつまでこんな下らない戦いを続けるつもりだ?」

 

ジャベリン達はテンペストに狙いを定めた。綾波も狙いをテンペストへと変えた。しかし、テンペストは動じない。

 

「何も疑いもせず、何も考えようとせず、流されるように敵を倒す。これのどこが単純じゃないと言いきれる。言ってみろ。」

 

テンペストは右腕に装備しているビームの銃口をジャベリンに向けて突きつける。突きつけられる恐怖がジャベリンを蝕んでいく。それを、見たラフィーはジャベリンのフォローをしようとするが...

 

「ジャベリンは...」

 

突然テンペストはラフィーに狙いを定めそのまま右腕のビームでラフィーを撃つ。ラフィーはギリギリの所でなんとか回避をした。ラフィーの後ろにあった氷が一瞬でビームの高熱で溶けて無くなった。

 

「お前じゃない。こいつに言ってるんだ。さぁ、答えてみろ。お前達は何故自分達が単純じゃないと言いきれる!」

 

テンペストは再度ジャベリンに狙いを定める。ジャベリンは恐怖で震えた。しかし、決めた決意は曲げなかった。悩み、分からずそれでも考え続けようやく分かった自分の気持ちを曲げずにいた。

 

「私もこんな戦いは良くないと思っている。だから綾波ちゃんと友達になりたい!間違っていると思っているから取り返しのつかない事をしない為にも皆と仲良くしたい!」

 

ジャベリンは自分の思いをテンペストの他に綾波にも伝えるように叫んだ。自分の考えを、気持ちを綾波にぶつけた。テンペストはビームを下げ、今度は綾波の方に振り向く。

 

「らしいぞ。お前はどうなんだ。」

 

「綾波は...」

 

しかし、その答えは一発の砲撃により聞くことが出来なかった。砲弾はテンペストに向けて放たれたが、テンペストは分かっていたかのように最小限の動きで回避をする。

 

「綾波をいじめるなー!」

 

砲撃したのは夕立だった。他にも雪風、時雨もテンペストとジャベリン達に向けて追撃をする。

 

「待って!私たちは戦うつもりなんて...」

 

「その手には乗らないのだー!」

 

しかし、相手はジャベリンの言い分を聞かずに撃ち続ける。

テンペストはため息を吐き、右の艤装で艦載機を三機発艦させる。セイレーンのと同じ艦載機を出したテンペストは夕立達に向け突撃させる。夕立達は対空砲で迎撃をするが最早艦載機の動きでは無い異常な速さの艦載機の突撃に夕立達は為す術もなく艦載機に当たってしまう。夕立はバランスを崩して倒れ込み、時雨は何とか防御をした。雪風は持ち前の幸運のお陰か二人よりも比較的に軽傷で済んだ。時雨はこれ以上テンペストを相手にするのは良くないと判断し綾波を重桜艦隊に引き戻す。

 

「ほら、ぼさっとしないで早く逃げる!雪風!夕立をお願い!」

 

「わ、分かったのだ!」

 

雪風は夕立を抱え、そのまま重桜艦隊と合流する為にこの場を離れた。時雨も綾波の腕を引き、魚雷を全弾テンペストに向けて放つ。

しかし、魚雷はテンペストの左の艤装の尻尾で全て斬り伏せられる。

しかし、魚雷の爆発で水柱が多数起き、時雨はその隙をついてこの場を離脱した。

時雨達を見逃したテンペストは再度ジャベリン達に砲を向ける。

 

「あいつらは聞かなかったな。お前の言い分を。これでもお前達は単純じゃないと言えるか?敵だから倒す。敵は全て倒す。これがお前たちだ。」

 

「うぅ....」

 

「ジャベリン...」

 

ジャベリンは何も言えなかった。聞く耳を持たなかった重桜の子達を目の当たりにして、自分の考えが否定されたかのように感じたからだ。ラフィーはジャベリンを守るように前に達は主砲をテンペストに向ける。しかし、ジャベリン達に勝ち目は無い。テンペストの艤装は完成し、未完成だった状態でもジャベリン達は為す術もなく負けたのだから。しかし、テンペストは武器を構えずジャベリンに近づく。

 

「諦めるのか?」

 

「え...?」

 

それは意外な言葉だった。惨めだなとか哀れだなとかそう言った言葉ではない。激励の言葉だった。

 

「立て。たった一度否定されただけでお前は諦めるのか。まぁ、それで諦めたらその程度だったと言うことだ。」

 

テンペストはそのまま何も言わずに吹雪の中へと消えていった。

 

「あの人...一体何を?」

 

「変な人だった。でもなんだか...性格が変わった指揮官と同じような雰囲気だった。」

 

ジャベリンとラフィーはあると人とテンペストを重ねていた。何処と無く指揮官と似ているような...特にジャベリンを激励したあの雰囲気はまるで豹変した指揮官と同じように感じた。

 

「御二方!大丈夫ですか!?」

 

テンペストと入れ替わるように今度はベルファストが出てきた。

 

「ここは危険です。速やかに艦隊との合流を。」

 

ジャベリンとラフィーは艦隊との合流をする為、ベルファストについて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かつて世界単純だった。

私たちは戦うために生まれ、敵は外からの侵略者。

そして人類は追い詰められていた。

世界は過酷だったが戦いに迷いは無かった。戦うことと守ること。その二つは矛盾無く等しい物だった。けれども...私たちを取り巻く世界はいつからこんなにも複雑になってしまったのだろう。共通の敵を前になぜ私たちは互いに銃を向け合って...

 

「私は何故...」

 

目の前に桜の木がこの暗闇を照らすように輝く。一つの木の下には狐の仮面を被った二人の少女と隅でポツンと座っている狐の仮面を被った少年がいた。

 

「あぁ...あの子達はまた思い詰めているのね。いつも二人一緒なのに泣く時はいつも一人...そしてあの子も仮面を被ってずっと一人...」

 

声をする方向に振り向く。和傘をさして、どことなく赤城を思わせるような姿を私にさらけ出す。

 

「あの二人は不器用なのです。貴方と似ていて。」

 

二人と言うとあの少女の達の事だろうかお互いに手を取り合い笑い合っている普通では微笑ましい光景だ。二人の少女はそのまま桜の向こうへと消え、残されたのは座っている少年だけになった。

 

「そしてあの子は一人です。家族と故郷を失い。それでも希望を見つけ、新しい家族と出会った...しかし、運命は彼をまた大切なものを失わせ、家族と対峙する事になった。仮面で笑顔を振る舞い。繋がりを持とうとするけど自分から壁を作る...それが彼です。今でも空っぽなのです。今はその空を仮面で埋めつくしているのです。」

 

少年は仮面を変え今度は笑っている顔の仮面を被り続け先程の態度が嘘のように陽気な動きをし始めそのまま暗闇へと消えていった。

 

「貴方とはどこかで会っただろうか?」

 

少なくとも私は彼女とは会ってはいない。彼女もそうなのか会ってないという意味合いか、首を横に振る。

 

「でも繋がっている。私たちは艦の記憶を宿して生まれてきた。時の彼方の遠い海。数多の思いを紡いで。どうか忘れないで。あなたに宿る人の祈りを。」

 

私の意識は暗闇に襲われ、暗闇へと溶けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだと!もう一度言ってみろ!」

 

「加賀先輩落ち着いて!」

 

エンタープライズの傷がまだ癒えない中で今にでも蒼龍に飛びかかろうとする加賀を瑞鶴は押しとどめる。

 

「現時刻を持って赤城の捜索を打ち切ります。全艦は速やかにこの海域を離脱。重桜本陣に帰投します。」

 

蒼龍の赤城捜索を打ち切りが加賀をここまで激情させる。オロチの接続が切れたせいか量産型セイレーンが全て機能停止となっていた。最早作戦を続行する余力は残っていなかった。

 

「赤城は旗艦なんだぞ!姉様を置いていくなどありえん!」

 

しかし、加賀は反対する。旗艦である赤城をそれ以前に姉を置いていくことなど誰であっても許されない事だろう。

 

「この海域に留まり続けることは不可能です。量産型セイレーンが全て機能停止して、こちらにはもう余力がありません。赤城一隻の為に艦隊を危機に晒すことは出来ません。」

 

しかし、蒼龍の判断も間違ってはいなかった。小を犠牲に大を生かす。それが最も合理的な判断だ。例えそれが誰かにとっての大切な人でもだ。加賀はそれを分かっていた。しかし、たった一人の姉を見捨てることは出来なかった。

 

「姉様...赤城姉様...!」

 

もう加賀には抵抗する力すら残されていなかった。加賀は諦めるように力を抜き、地面へ這いつくばる。

 

「だって仕方ないじゃない...」

 

蒼龍は顔を背ける。本当は彼女だって赤城を探したいのだ。だが、一人の命と大勢の命...天秤にかけるまでも無く、どちらを取るのかは火を見るより明らかだ。皆、分かっているのだ。重桜の皆の精神はその天秤の如く揺れ始める。そしてそこに追い打ちをかけるが如く。報告が入った。

 

「報告です。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「重桜の主力艦隊を発見しました。」

 

ヘレナの索敵能力の甲斐があって重桜の艦隊を発見した追撃部隊。

しかし、空気が重い。

 

「やるしかないのか...」

 

自分達がやる事に疑問を持ち始めるクリーブランド。

 

「あぁ。重桜が持つセイレーンの力は危険だ。ここで逃せばさらに情勢は悪化する。」

 

セイレーンの力を危険視しそれを使う重桜を叩く事に戸惑いないウェールズ。しかし、彼女はそれよりも居なくなった一人の男の方を気にしていた。

 

「ねぇ..やっぱり指揮官の捜索を優先した方が...」

 

「私だってそうしたい!だが...彼の艤装を見ただろう。あれは...セイレーンに似ても似つかない艤装だった...」

 

ウェールズは間近で指揮官が艤装を展開するのを見た。最初は目を疑った、しかし、現実だった。彼はそのまま赤城を庇うようにして海へと落ちていった。生存は絶望的...だから指揮官の捜索は打ち切って重桜への追撃に力を入れる。

 

「仕方ないさ...戦いだもの。」

 

ホーネットは深く帽子を被り仕方ないと嘆く。本意ではない、しかし敵がまた攻めてくるなら敵を倒すしか守る手段しかない。やり場のない感覚にホーネットは歯を食いしばる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アズールレーンの追撃部隊に発見され、このままの撤退は難しくなった重桜艦隊。皆は満身創痍、かと言って量産型セイレーンは使えない。万事休すだった。

 

「蒼龍姉様は撤退の指揮をお願いします。アズールレーンは僕が惹きつけます。」

 

蒼龍と同じ二航戦の飛龍が殿を買ってでた。しかし、飛龍の提案に拒否した者が現れた。

 

「いいえ、殿は私に任せて!」

 

「瑞鶴!?」

 

殿を買ってでたのは瑞鶴だった。彼女は加賀の援護が出来ずにいた事を気に病んでの事だろうか、自らを囮になると言ってきた。

しかし、それは彼女の姉である翔鶴が抑える。

 

「瑞鶴!貴方が気に病むことではないでしょう?」

 

「そうだ。後輩にそんなことさせられないよ。」

 

しかし、瑞鶴は止まらず、考えを曲げなかった。その目には確かな決意の炎が灯っていた。

 

「私ね、加賀先輩の気持ち痛いほど分かるんだ。私だってお姉ちゃんがいなくなったらきっと耐えられないって思うから。」

 

瑞鶴はそんな事を想像したのか険しい顔つきになり、胸を掴む。

それは翔鶴だってそうだった。翔鶴も瑞鶴が居なくなると思うと胸が苦しくなるほど辛く、痛くなる。

 

「大丈夫よ瑞鶴。お姉ちゃんはずっといるから。」

 

「翔鶴まで!」

 

それはつまり翔鶴も殿に加わることを意味していた。だが二人は折れない。最早折ること等出来ない。飛龍はそれに負け、殿を彼女達に託した。

 

「決して早まらないでよ二人とも。」

 

「平気よ平気。こう見えても私だって幸運艦だから。」

 

瑞鶴は冗談混じりの声で安心させようとしているのかにこやかに笑う。しかし、それは虚しく意味が無い行為だった。他の重桜のKAN-SEN達は最早何も言えなかった。

 

「皆をよろしく頼むわね。」

 

「翔鶴さん...」

彼女達の笑顔に何も言えなかった綾波達、しかし、綾波はその顔を見て一つの決心をした。

蒼龍達に託すように言い。二人はそのまま振り返らず、海へと降りそのまま氷の奥へと消えていった。

 

「行ったか...」

 

高尾は二人が行った事を確認し終えると、自分の無力さが込み上げ来た。高雄はどうにかするように服を握りしめる。しかし、苦しさは消えなかった。

 

「どうすればいいのか綾波には分からないのです。」

 

「綾波...?」

 

綾波は顔を俯かせながらも一方ずつ、着実に進む。一つの決意をしたかのような。それでもまだ曖昧な決意を抱いてるようだった。

 

「でも...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見えた!やっぱり重桜の艦隊だ。」

 

重桜の艦隊が見え、戦闘をやめてこの海域から離脱するように勧告をしようとする。その時、ある一人のKAN-SENが艦から降り、そのまま戦場へ行く姿が見えた。

 

「あれは...綾波?あっちは戦場なのにどうして...まさか殿か!?」

 

俺はある一つの考えを出した。移動している最中に機能停止した量産型セイレーンを多数見た。つまり残っている重桜の戦力は少ない。

俺が言わずとも重桜はこの海域を離脱するだろう。綾波は戦場に出た...考えられるのは殿だ。綾波は囮となって重桜の撤退を援護するつもりだ。

 

「くそっ!急がないと!」

 

だがその前にやるべき事がある。俺は重桜艦隊に近づくと空砲を一発放つ。重桜の数人がこっちに気づいたようだ。

 

「あれは...優海!?」

 

気づいたのは高雄さんだった。俺の名前を呼ぶとほとんどのKAN-SENが一斉に俺を見る。俺は艦の甲板に乗るため、氷の壁を蹴り、その反動を利用し甲板へと着地する。

 

「優海なのか!?それにその艤装は...」

 

「話は後です飛龍さん。教えてください。今綾波が出ていくのを見ましたが、殿は彼女だけですか?」

 

俺は飛龍さんの話を無視し誰が殿をしているのか問いただした。突然の事で困惑したのか飛龍さんは素直に答えてくれた。

どうやら瑞鶴、翔鶴、綾波の三人が向かったそうだ。

それだけ分かればいい。俺はこの場を離れようとしたが両腕を誰かに掴まれた。

 

「待て!その艤装はなんだ!」

 

「そうよ。話しなさい。」

 

俺の右腕に高雄さん愛宕さんが、左腕には蒼龍さんと飛龍さんがそれぞれ掴んでいた。俺はどうにかして振りほどこうとするが一向に四人は離れなかった。そして、俺はある事に気づく。

 

「そういえば...赤城さんはどうしたんですか?」

 

それを聞いてこの場にいた者は顔を背けた。その反応を見て確信した。赤城さんはまだ戻っていないことを。俺は沈んでいる空気の隙をついて掴まれていた腕を振りほどく。

 

「大体は分かりました...この艤装の事は実は俺にも良く分かりません...ですがいつか必ずお教えします。だから今は...」

 

「...優海か?」

 

ふらつきながらも俺の名前を弱々しく呼ぶ声がした。聞き間違える筈がなかった。

 

「良かった...本当に生きていてくれた..!お前まで居なくなってしまっては私は...」

 

突然加賀さんは目に涙を少し浮かべ俺に抱き着いてきた。普段の加賀さんからは想像出来ない行動だった。その後、加賀さんはエンタープライズから受けたダメージがまだ残っていたのかそのまま倒れ込んでしまう。俺は困惑しながらも加賀さんから離れる。

 

「話は後です。これから俺はアズールレーンを撤退させます。殿に出た奴も何とかしてそちらに帰して見せます。」

 

俺はビスマルクに渡した手紙と同じ物を今度は蒼龍さんに渡す。

蒼龍さんは手紙を難なく受け取り中身を見ようとする。

 

「待って下さい。それは長門様に渡して下さい。とても重大なものなんです。」

 

「重大なって...代表者を巻き込んでのかしら?」

 

重桜の代表者は長門様だがどういう訳か長門様はあまり表に立たれない、その為赤城さんが重桜の仮の代表となっているがその赤城さんが居ないため、これを長門様に見せるしか無くなった。

蒼龍さんは俺の言うことを聞いてくれて、手紙の中身を見ようとはしなかった。

 

「分かったわ...けどその艤装の事、いつか全部話して。」

 

「ありがとうございます...ではこれで。」

 

俺は綾波たちを追い越すように全速力で戦場へと向かう。

 

「間に合ってくれ...頼む。」

 

どうにかして最短ルートを見つけ出し綾波達より先にアズールレーンを撤退させる。

氷の山から山へと飛び移り最短で戦場へと駆けつける。

するとある氷の丘の頂上から無機質な圧を感じた。

白い服に黒いコートを羽織り灰色じみたの髪が風でなびいていた。

 

「エンタープライズ...?」

 

その雰囲気はまるで別の誰か、或いはエンタープライズが望んだ扱い...兵器のような無機質さを感じた。

 

「止めてやる。待っててくれ。エンタープライズ...!」

 

焦りと胸騒ぎを感じ、氷を飛び越え、海を蹴る。




〇月♢日
今日この日俺は困惑した。多分人生で五本の指に入る事だった。
いきなり執務室の机の上にイグアナのぬいぐるみが、しかもかなりリアルな見た目と質感がそこに置いてあったからだ。
誰かの落し物...とはいえ机の上にわざとらしく置いているから落し物とは考えにくかった。取り敢えずイグアナのぬいぐるみを机の上からどかそうとしたら突然イグアナのぬいぐるみが激しく動き出した。
気味が悪くなってそのままドアに叩きつけてしまった。
すると机の下からサラトガが出てきて上手くいったと思わせるような顔をこちらに見せつける。
どうやらサラトガのイタズラのようだった。はっきりいってタチの悪いイタズラだった。もうしないで欲しい...。いや本当に。

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