もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜   作:白だし茶漬け

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白だし茶漬けでーす!はい。まさかのまた学校延期です。
まだこのペースは続くんじゃい。
とうとうアニメでの8話がこの話で終了します。
戦闘シーン書くの本当に苦手なので大変でした(笑)
さて、次はとうとうほのぼのシーンの再開...とは行かないんですよねぇ!まだ不穏な空気は続くんじゃい。正直言って早く終わらせたい。


負けと素顔と解放と

第28話【負けと素顔と解放と】

 

張り詰めた空気と秋風が身体を通り抜け、嫌でも体の姿勢が正される。天城お姉ちゃんがこれが最後の将棋って言っていたけど...

僕はその考えを辞めて将棋に集中する。今までの戦績では僕は天城お姉ちゃんに一度も勝ったことは無い。でも天城お姉ちゃんは言った。

 

_負けてもそれで終わりではありません。その負けを、失敗をどう生かすかが重要なのです。

 

天城お姉ちゃんはそう言った。負けたからって終わりじゃない。その教えを僕は忘れずにいた。高雄お姉ちゃんの訓練の時もそれを思い出して頑張って来た。

だから、天城お姉ちゃんが次にどの駒をどんな風に動かすのか分かってきた。

天城お姉ちゃんが駒を動かし終わるのと同時に僕は駒を動かす。勿論適当では無い。分かってきたのだ、天城お姉ちゃんがどんな風に駒を動かすのか。

 

_ふふ...

 

すると天城お姉ちゃんは僕の顔を見て小さく微笑んだ。すると天城お姉ちゃんは直ぐにまた駒を動かす。

天城お姉ちゃんも読んでいたのだ。僕がどのように駒を動かすのか。それも一手先では無く、二手三手先も読んでいる。

それでも諦めずに考え、悩んで、最適解な答えを探す。

もし、それが崩されても何度も何度も....

 

うぅ...

 

諦めずに何度も...

 

あ...

 

諦めずに考えて、考えて、悩んで、もがいて、足掻いて、それでも...

 

うぅ...ぐすっ...

 

もう分かっていた。半ば諦めていた。もうどう足掻いても天城お姉ちゃんの勝ちだった。分かっているから足掻いてる自分が哀れで泣いてしまう。でもまだ負けと決まった訳じゃないから諦めずに最後までやった。

 

_王手です。

 

詰みだった。やっぱりどう足掻いても僕の負けだった。悔しくて情けなくてまた泣いてしまう。涙が滝のように止まらずに目から溢れてくる。

それでも最後は自分で認めなければならない。

 

まいり...ぐすっ..ました...

 

涙混じりの声で情けなくて、みっともない最後の将棋になってしまった。けれども天城お姉ちゃんは笑って僕を優しく抱きしめた。

 

_最後までよく頑張りました。貴方は諦めずに最後までやり遂げましたね。もう、私から教えられることはありません。立派で逞しく育ってくれましたね。

 

天城お姉ちゃんは僕を抱きしめ、優しく頭を撫でてくれた。

それは暖かくて、優しくて、嬉しくて、また泣いてしまう。

こうして天城お姉ちゃんが言った最後の将棋は僕の負けで幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

止まぬ吹雪、止まぬ砲弾の雨が二人の鶴を襲う。

重桜艦隊を撤退させる為、自らを殿に出向いた瑞鶴と翔鶴はアズールレーンの追撃部隊をたった二人で食い止めていた。

無慈悲な砲弾と無差別の嵐さえも彼女達を襲う。

 

「こんな時に【大時化】がいるなんて!」

 

「瑞鶴!無理に相手にする必要は無いわ!なるべく避けるのよ!」

 

突如として【大時化】が、アズールレーンでは【テンペスト】と呼称している謎のセイレーンが現れ、辺りは混乱していく。

テンペストは無差別にKAN-SENに襲いかかる。それは撤退中の重桜艦隊も例外ではなかった。テンペストは左にある何かの生物のような艤装を構え、口の中にあるビーム砲を重桜艦隊がいる方角へと向ける。しかし、瑞鶴はそれを止める為、テンペストに近づく。

瑞鶴は左手で無理やりテンペストの左の艤装の口を塞ぎ、ビームの発射を防ぐ。しかし、テンペストの右の艤装が瑞鶴を噛み殺そうとおぞましい口を開き、瑞鶴を襲う。瑞鶴は刀で何とか寸での所で防ぐ。

 

「仲間を...やらせはしない!」

 

瑞鶴は歯を食いしばり、2つの艤装を止める。しかし、テンペストの武装はまだ腕にある。テンペストは右腕にあるビーム砲の砲塔部分で瑞鶴の横腹を殴打する。

 

「かハッ...!」

 

瑞鶴は無防備な所をモロに食らってしまいふらつく。そのままでは飽き足らず、テンペストはそのまま時計回りに瑞鶴を振り回し、最後に瑞鶴を氷山に投げ飛ばした。

 

「瑞鶴!」

 

翔鶴は瑞鶴を受け止めるが勢いは止まらずそのまま二人諸共氷の山へと激突した。

 

「うぅ...はっ!?お姉ちゃん!?しっかりして!お姉ちゃん!」

 

翔鶴がクッションになってか、瑞鶴は何とか無事だったが、その代わり、翔鶴は瑞鶴を庇ってしまい気を失ってしまう。幸いまだ無事のようだった。しかし、これで終わりでは無い。瑞鶴は無機質な圧を感じる。顔を上げると氷の丘に佇むのはエンタープライズだった。

何やら様子が変わったようにも瑞鶴は感じたが今の瑞鶴にはそれを考える余裕は無かった。

 

「グレイゴーストォ!」

 

瑞鶴は彼女の名前では無く、彼女の呼び名を叫び、自分が持てる力全てを使い、艦載機をエンタープライズとテンペスト目掛けて放つ。

しかし、それは虚しく終わることとなった。テンペストは右腕のビーム砲で最小限の動きで艦載機を全て撃ち落とし、エンタープライズに至っては帽子を掠めただけで彼女自信には傷一つも付かなかった。

 

「ごめんね...お姉ちゃん...!」

 

瑞鶴は自分の無力さを嘆き、悔やみ、翔鶴を庇うように抱く。

エンタープライズは先程の攻撃で瑞鶴を敵と認識したのか。彼女目掛けて無数の艦載機を放つ。

終わった。瑞鶴はそう覚悟したが、それを裏切るように一筋の光線がエンタープライズが放った艦載機を全て消滅させた。

 

「!?何が?」

 

瑞鶴は光が出た方角に首を振る。そこにはまるで巨大な蛇のような長い胴体にそれに突き刺さっているかのように統一性の無い主砲や副砲がありそれはまるで...いや、間違いなくセイレーンの艤装だった。

 

「どうやら間に合ったようだな!」

 

後ろから男の声がした。その声の主は氷の山から海へと落ち、綺麗に瑞鶴達の前に着地をする。間違いない、あの人、アズールレーンの指揮官の声だった。

 

「早くここから離れてくれ。後は何とかする。」

 

その男は見た事無い艤装をしていた、いや、そもそも人間なのに艤装なんて有り得るのか。瑞鶴の思考はそれを考えるのに夢中になる。

 

「何やってるんだ!早く下がれ!」

 

「え...わ、分かった!」

 

瑞鶴は気を失っている翔鶴を抱えこの場から離れようとする。しかし、それを邪魔するようにテンペストは一気に瑞鶴へと近づく。

瑞鶴は反応出来ず、そのままテンペストは左腕の剣で瑞鶴と翔鶴を切り伏せる。

 

「させるか!」

 

指揮官は持っている白い大剣をふたつに割るようにする。そのまま一つ剣と変わり、もう一方は銃へと姿を変える。指揮官は一つの剣をテンペストへと回転させながら放り投げ、そのままもう一方の銃でテンペストでは無く、さっき放り投げた剣に向けて銃を向ける。指揮官は引き金を弾くと、銃口から一筋の光線が指揮官が投げた剣に迫る。光線はまるで剣が受け流すように剣の表面に当たり、屈折した。屈折した光線はテンペストに向かう。テンペストはそれを察知したのか瑞鶴への攻撃を止め、上空へ回避する。しかし、指揮官はそれを分かっていたかのように上空にいるテンペストに狂いなく狙いを定め主砲を放つ。主砲の弾はテンペストふ目掛けて空を切り、進んでいく。

しかし、テンペストは左の艤装でビームを放ち、指揮官が放った主砲は呆気なく消え去る。

 

「ぐっ...!」

 

「そんな主砲では無くもっと本気で来い。お前にはアレがあるだろう?」

 

「アレって...何だ?」

 

「まだ使っていないのか...アレがお前の本来の武器であるはずだが...」

 

テンペストは指揮官が投げた剣を氷から引き抜き、そのまま槍のように指揮官に剣を投げつける。物凄いスピードで襲ってくる剣に微動だにせず、指揮官は難なく剣の柄を掴む。そして指揮官はひとつの剣と銃を変形させ、元の大剣へと姿を変える。

 

「お前は...俺の何を知ってるんだ!」

 

「全てだ。」

 

テンペストは間髪入れずに仮面越しでも分かる確信をついた声でハッキリと答えた。その勢いに指揮官は戸惑う。

 

「一体何を言って...がハッ!?」

 

指揮官は突然前触れも無く苦しみ始める。苦しみからどうにかして意識を逸らすように頭を抱えたり、胸を掴んだり、武器をなりふり構わず振り回す。そしてそんな自分を抑え込むように海に這いつくばる。

 

「グッ...ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!?」

 

「指揮官!」

 

氷山の一角で瑞鶴達の追撃をしていたウェールズを先頭にアズールレーンのKAN-SEN達が指揮官を守るように前に立つ。

 

「指揮官!しっかりして!」

 

ウェールズは指揮官に寄り添い、暴れる指揮官を抑える。

しかし指揮官はまだ苦しみ続けていた。ウェールズだけでは抑えきれなかった。しかし、同じように苦しむ指揮官のもう一つの艤装が無差別に攻撃をする。その激しさ故にウェールズは指揮官と離れてしまう。

 

「何よこれ!」

 

それは瑞鶴達も例外では無く、瑞鶴達はまともに離脱する事が叶わずにいた。

 

「貴様!指揮官に何をした!?」

 

アズールレーンのKAN-SEN達は全員テンペストへと狙いを定める。

テンペストは臆することも、焦ることも無く、ただただ佇む。

 

「少し背中を押しただけだ。」

 

指揮官の艤装に変化が起きる。指揮官の右肩から腰にかけて長い銃の様なものが現れた。しかし、銃と言うには砲身が長く、砲身と言うより、二本の白いレールのような物で砲を象る形をしており、中身が見えていた。

明らかに他の武器とは違う何かをその場にいるテンペスト以外の全員が直感で感じ取れた。

 

「はぁ...はぁ...!何だ..これ?」

 

新しく現れた武器が完全に姿を現れたおかげか指揮官はようやく落ち着く。指揮官は自分の変化を確かめるべく、右肩にある武器を見る。

 

「【レールガン】...それがお前の本来の武器だ。」

 

「レールガン...?」

 

テンペストは新たに指揮官の艤装から表れたものを【レールガン】と呼んだ。指揮官はよろけながらも立ち上がり右の方にある【レールガン】を使おうとする。レールガンは下向きになっている銃口をテンペストに向けるように動き、狙いをテンペストに定める。しかし、指揮官は構えるのを止め、テンペストに銃口を向くのを止める。レールガンの初期位置なのか、指揮官の肩に装備するようレールガンは戻り、動きの邪魔ならないように二本のレールは短くなった。

 

「どうした撃たないのか。」

 

「...これは危険だ。何となく分かる。」

 

指揮官は使ってすらいない武器を危険だと判断した。

テンペストはそれに対してか少しの苛立ちを覚える。思い通りにいかないからなのか、はたまた別の理由があるのかは定かではないが確かに苛立っていた。

 

「そうか...まぁ良い。それよりも今はアイツの事をどうにかするんだろ。」

 

テンペストはエンタープライズの方角に指を指す。エンタープライズは俺や皆の事が分からないのかまた無差別に艦載機を放つ。

 

「まずい!」

 

指揮官は大剣を二丁の銃へと変形させ、エンタープライズの艦載機を撃ち落とす。同時に指揮官の艤装から対空砲とミサイルのような物も同時に発射され、発射されたミサイルは艦載機をどこまでも追尾し、艦載機にぶつかる。そして暴走が収まった指揮官のもう一つの艤装も主砲からビームを放ち艦載機を消し炭にする。

指揮官だけでは無く、他のKAN-SEN達もエンタープライズの艦載機を打ち落とすべく、対空砲撃に集中する。しかし、それでもテンペストは止まらない。

テンペストは艦載機を諸共せず、ミネアポリスを魚雷で狙う。

 

「なっ!?しまった...!」

 

魚雷はまるで意志を持ってるかの如くミネアポリスに襲いかかる。

しかし指揮官の異様な機動力で指揮官はミネアポリスを庇う。

魚雷はミネアポリスでは無く指揮官に直撃する。その爆風により飛び石のように跳ね飛ばされる。

 

「大丈夫か指揮官!?」

 

ミネアポリスは庇ってくれた指揮官に近づく。指揮官の容態を見ると足にかなりの怪我を負っていた。しかし、指揮官は何事も無いように立ち上がる。

 

「大丈夫だ。そっちはどうだ。」

 

指揮官は自分よりもミネアポリスの事についての心配をした。ミネアポリスは指揮官の足を見る。出血は止まっておらず立つと激痛が来るはずだ。

 

「いや...お前の方こそ...」

 

ミネアポリスは指揮官の顔を見ると絶句した。指揮官の顔はまるでどうでもいいと言ってるような顔だった。自分の事など度外視しているようなそんな目だった。ミネアポリスはそれ以上何も言わず、指揮官も迎撃に取り掛かる。

 

「エンタープライズ先輩!一体どうしたんですか!」

 

エンタープライズを必死に説得しようと何でも叫んでいるのはエセックスだった。しかし、彼女の言葉は届かず、エンタープライズは無機質に艦載機を放ち続ける。まるで、敵を全て倒すまで終わらないと示しているかのように。圧倒的な物量を前にエセックスは自身の艦載機が撃ち落とされ、一人相手に異様な量の爆撃がエセックスに襲いかかる。避けきれない。避ける場所など存在しない量だった。仮に迎撃出来たとしても爆撃の物量からして、もし一発の爆撃を撃ったとしたら爆発の連鎖反応により、全ての爆撃が誘爆するだろう。

故に何とかして耐えるしかない。しかし、耐えられるはずが無かった。エセックスはそれを分かっていたが防御の姿勢をとる。

しかし、爆風はエセックスに届かず、熱い風だけがエセックスを襲う。エセックスは目を開くと目の前には一人の男と頭上には艤装が漂っていた。どうやら指揮官と艤装がエセックスを守ったらしい。

 

「ぐっ...ちょっとキツいな...」

 

指揮官は海に膝を着く、爆発は全て指揮官と艤装が全て庇った。

ほとんどが艤装が庇っていたが、そのフィードバックのせいか指揮官は見た目よりもかなりのダメージを負っていた。

 

「指揮官!?だ、大丈夫ですか!?」

 

倒れ込む指揮官を見て、エンタープライズは少しだが動きを止めた。

それを見た指揮官はエセックスの事を無視し、テンペストに近づく。

二丁の銃を合わせ、元の大剣へと戻しながらテンペストに近づく。

テンペストは右腕のビーム砲と左の艤装の主砲で迎え撃とうとする。

しかし、突如テンペストは後ろからの攻撃を察知する。テンペストの右の艤装にある。一つの目が後ろを見つめ、危険を知らせる。

しかし、テンペストは反応出来ず一機の艦載機と激突する。

 

「これが...本当に..最後よ...一矢は報いたわよ。」

 

攻撃したの気絶していた翔鶴だった。翔鶴は先程で余力を使い果たしたのかまたもや気を失う。しかし、そのおかげでテンペストは体勢を崩した。指揮官はその隙を見逃さずテンペストを切り伏せる。

その時、指揮官の脳裏に躊躇いが起きる。それが仇となり指揮官の大剣は僅かにテンペストには届かなかった。しかし、テンペストの仮面とローブに傷は付けられた。仮面は徐々に亀裂が入り最後はガラスのように砕け散った。

仮面の中から、乱れた灰色の髪と人の姿が現れる。仮面の下の素顔に誰もが注目する中でその姿は衝撃的で、KAN-SEN達が何度も見た顔であった。しかし、一番困惑したのは指揮官だった。

まるで、死人を見た(・・・・・)ような目をしていた。

その仮面の下には指揮官と同じ顔をした男がいた。もっと正確には豹変した指揮官と同じ目付き、同じようか威圧感がそこには確かに存在していた。

 

「マーレさん...?」

 

指揮官は自分が名乗っている名前を口にする。指揮官はそのまま動かずに立ち止まった。マーレと呼ばれたテンペストはそのままじっと指揮官を見る。

 

「ここまで似てるとなると反吐が出るな。」

 

テンペストは後ろに振り向き、赤城が出していたのと同じワープゲートを出す。

 

「今日はここまでだ。目的は果たした。」

 

テンペストはワープゲートの中に入りとそれと同時にゲートも消えた。KAN-SEN達も指揮官もその場に立ち尽くす。感情に浸っている暇もなく、沈黙していたエンタープライズが動き出す。それを察知した指揮官はKAN-SEN達に速やかな離脱を促す。

 

『早く撤退しろ!急げ!』

 

最早どうなっているか分からないKAN-SEN達は指揮官の命令に流されるようにこの場へと撤退を始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

燃える海、それでも輝く星空、私の前には倒れている姉がいた。それを助けようともせずに私はただ、燃える海の中一人で立ち尽くす。

 

「誰か教えてくれ...争いの無い世は果たしてくるのだろうか。」

 

私の問に答えるように女性の声が後ろから囁くようにして答える。

 

「その答えは貴方が一番よく知っているでしょう?」

 

私は諦めたように悟った。分かっていたことだった。どれだけ願っても、どれほど想っていようとも、私は何度も戦い続けていた。

 

_あぁそうか...戦いは変わることはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エンタープライズが放った二つの艦載機は満身創痍の瑞鶴と翔鶴を襲う。指揮官はその二人を助けようにもアズールレーンのKAN-SEN達を庇ったダメージが大きすぎてまともには動けなかった。しかし、それでも指揮官は立ち上がり、二人を襲う艦載機へと近づく。

 

「やめろぉぉぉ!!」

 

指揮官の叫びに艦載機は応えない。そのまま無慈悲に二人を沈めるように二人に狙いを定める。

二人の心を表すように氷山が一つ崩れ落ちる。そして、その氷山に紛れる一人の影が艦載機に向かっていく。

その瞳は赤く、その髪は白く、ただ真っ直ぐに剣を握りしめ艦載機に近づく。

 

「綾波!」

 

瑞鶴が彼女の名前を呼ぶ、綾波は振り向く事無くひたすらに真っ直ぐ見る。

 

_どうすればいいか綾波にはよく分からないです。でも..

 

綾波の心に疑問が渦巻く。本当にこれで良いのか。こんな事をして良いのか。この戦いに意味はあるのかと。しかし、綾波には一つの答えが確かにあった。

 

「これは違う!嫌なのです!」

 

綾波は持っている剣を艦載機に真っ二つに切り上げる。

しかし、もう一方の艦載機が綾波のすぐ傍にあった。綾波は空中にいるため体勢が変えられない。綾波はどうすることも出来ずいた時、崩れた氷山の氷の破片を飛び移る指揮官がいた。

 

「させ...るかぁ!」

 

指揮官は大剣を振り下ろし、もう一つの艦載機を真っ二つにする。

そして、艦載機の爆発に綾波と指揮官は巻き込まれてしまう。

 

「指揮官...?」

 

それを見たエンタープライズは意識が元に戻ったのか、金色に輝く瞳は消え、元の灰色の瞳の色へと戻った。

綾波と指揮官は何とか無事だが指揮官は気を失ってるのか指揮官の艤装は消え、セイレーンのような艤装も消えて、そのまま海へと落下する。いや、海では無かった。またもや空間に亀裂が走り空間に穴が開く。それが二人を飲み込むかのように待ち構えている。このままでは指揮官と綾波はあの隙間へと入ってしまい何が起こるか分からない。綾波は助けを求めるように手を伸ばすがそこには勿論誰もいない。

 

「指揮官!綾波ちゃん!」

 

ジャベリンは二人の名前を呼ぶ。助けようにも戸惑った。敵ながらも友達としていたい者か。自分達の指揮官を助けるか。そんな二者択一の選択にジャベリンとラフィーは立ち尽くす。

 

「行きなさい!ご主人様は私が助けます!」

 

ベルファストが声を上げ、二人を嗾ける。ジャベリンとラフィーはそれを受け、迷いなく綾波を助ける。

 

「シリアス!着いてきてください!」

 

「かしこまりました!」

 

ベルファストはシリアスを呼び、二人は指揮官を助けるために崩れゆく氷の上を走る。

 

「自己リミッター解除!」

 

ラフィーはリミッターを解除すると他の誰よりも早く綾波に近づき、綾波を手を掴む為に跳ぶ。もう少し、あと少しで届く手を掴む為にラフィーは懸命に手を伸ばす。ようやく綾波の手を握ったラフィーは綾波の手を離さないように強く握る。ジャベリンは艤装にある錨を氷の壁に突き刺し、それをロープ代わりにして飛び込む。ジャベリンはラフィーの手を掴みジャベリンの錨の鎖は長さの限界が来たのかピンと張り、三人を支えるように止まった。

 

「重いー!早く登ってきてー!」

 

ジャベリンは二人を抱えているので相当苦しい顔をした。しかし、ジャベリンは絶対にラフィーを離さなかった。

 

「ありがとう...なのです。」

 

掴んで手はまるでようやく心が通ったかのように、ようやく掴んだ手をラフィーと綾波は離さなかった。

 

 

「シリアス!その剣で私を吹き飛ばして下さい!」

 

「へ!?は、はい!」

 

ベルファストはシリアスの剣の上に乗ると、シリアスは困惑しながらも指揮官目掛けてベルファストを投げ飛ばすように剣を振る。

物凄いスピードで飛ぶベルファストは確実に指揮官の体ごと掴み、離さないように強く抱く。ベルファストの速度は落ち、徐々に海へと落下し、ベルファストは華麗に着地する。それはさながら囚われの姫を助ける王子のようだった。

 

「ご主人様!しっかりしてください!」

 

しかし、指揮官は目を開けてくれず体から溢れ出る血液がベルファストの白いメイド服を赤く汚し、苦しみながら吐血した血が少しだけ海を赤く滲ませる。

 

「ご主人様!?しっかりしてください!ご主人様!」

 

その叫びで全員指揮官を見る。この戦闘で分からないことが、有り得ない事が、嘘みたいな事が多々起こった。最早その現実に誰も着いていけず、ただ皆立ち尽くす。

 

「私は...なんて言うことをしたんだ...」

 

エンタープライズは膝を着いた。うっすらとだが自分が指揮官を二度も撃った事に責任と恐怖を感じ頭を抱える。

 

「私は...あっ..ああ..あああああ!!!!」

 

灰色の亡霊の叫びと主人に仕えるメイドの叫びが、氷浮かぶこの冷たい戦場を響かせる。それが幕を閉じる為のバラードのようにその日のKAN-SEN達は自分達がどうやって基地に戻ったのか覚えていないだろう...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

久しぶりに直に空気を感じ取れた。仮面はまるでもう被る意味など無いと言ったかのように割れた。

 

「あら、おかえりなさい。どうだったかしら?」

 

タコ娘...いや、オブザーバーは分かってるくせにわざわざ俺から感想を言わせようとした。しかし、そんな事はどうでもいい気になるのは彼女が触手で抱えている赤城の姿だった。

 

「お前はどうせ見ていたからわざわざ感想を言う必要は無い。それよりそいつは何だ。」

 

俺は赤城を指を指す。どうやら息はまだある。気を失っているようだった。オブザーバーが言うにはまだ使い道があるからしばらくはこちらで預かることになるらしい。

 

「しかし、つぐつぐ人類って面白いわね。争いを恐れながら戦うことを選ぶ。度し難い程に矛盾してるわね。」

 

セイレーンの一人、【テスター】とか言ったか。彼女は俺を見ながらそれを言う。しかし、その言葉に反応したのはオブザーバーだった。

 

「彼女達は人の思いと歴史を映し出す鏡。闘争こそが人類の本質よ、そう。戦いはいつの世も変わることは無い。それはあの子の艤装が物語っているわ。」

 

あの子...アズールレーンの指揮官の艤装を指しているだろう。確かにあれは未来の艤装。人類が作り出すであろう兵器だ。

人は争いを拒みながら尚兵器を作り続ける。防衛の為にとか良く言ったものだ。だからいつまで経っても変わらない。

 

「貴方はどう思って?英雄の末裔さん?」

 

「それを言うのは辞めろ。反吐が出る。」

 

俺は右腕のビーム砲をオブザーバーに向ける。オブザーバーはわざとらしく両手を上げる。いちいちムカつく奴だ。

 

「エンタープライズのお陰で黒いメンタルキューブは膨大なデータを獲得...ここまでは同じね。だからこそあの子に艤装を完全に展開させてさらにデータを獲得させた...そして貴方のと合わせるとさらに強大なデータが集まったわ。これでさらに強力なオロチが生まれるわ。」

 

ここで言うデータとは言わば人類とKAN-SENのデータだ。

黒箱に戦闘のデータやKAN-SENのデータだけでは無く、KAN-SEN達の思いをもデータ化する。その為に黒いメンタルキューブは作り出された。そのデータがあればある程、オロチは強力になる。

しかし、同じ立場では取れるデータに偏りが出る。

人の考えなんて立場でいくらでも変わっていく。

例えば、一方が正義だとしてももう一方からしてみれば悪なんて事はよくあるケースだ。だからこそ俺たち二人は作られた。いや、変えられたと言っていいだろう。違う目線、違う立場を利用し、データを収集してオロチをさらに強力にする。これがこの世界における【オロチ計画】だ。

 

「それに、貴方達はただの予備じゃない。貴方達はオロチよりもさらに強力になる存在になるかもしれない存在...」

 

オブザーバーは俺に近づき、耳元で囁く。

 

「だからこそ貴方達二人を作ったのよ。残るのはどちらか一人...果たしてどっちが残るのかしら...?」

 

オブザーバーとテスターはワープゲートを作り、自分たちの基地に戻った。

俺は空間が割れた氷浮かぶ海を見つめ続ける。いつの間にあたりは夜となり星空がまた綺麗に美しく輝く。

 

「この星空と海は変わらないな...」

 

徐々に割れた空間が元に戻り氷は溶けずにまるで初めから無かったかのように消える。どうやらこの海域は赤城が使った黒箱とエンタープライズの覚醒によって生み出されたもののようだ。

戻っていく海を見て、この場で起きた戦いを思い出す。

アイツは最後の最後まで躊躇った。本来の武器を使わず、俺を倒さずにしたあの甘さに苛立ちを感じる。まるでそれは昔の自分のようだった。顔も似てるから尚更だ。

俺は燻る苛立ちを消すことを出来ずに行く宛ても無く海を彷徨う。




見回りをしている最中だった。いきなり上からゴミが降ってきてそのまま頭にぶつかった。上を見るとユニオン寮の窓の一つが空いていたので恐らくその部屋の主が外にゴミをポイ捨てしたのだろう。
俺はゴミをゴミ箱に捨ててからその部屋にダッシュで向かい。扉を開ける。部屋の主はロングアイランドだった。彼女は自称幽霊さんのユニオン所属の空母だった。彼女は悪びれもなくゲームの続きをした。部屋を見ると汚い。相当部屋が散らかっていた。俺はゲームをやめて部屋を片付けようと言ったがロングアイランドは聞いてくれなかった。仕方ないので掃除が得意なシェフィールドを呼び、彼女の部屋を掃除した。ロングアイランドはゲームを中断されてご立腹で俺の事を取り憑くと言って来た。しかも物理的に取り憑いて来た。俺はこの日一日中ロングアイランドに取り憑かれたのであった。

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