もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜   作:白だし茶漬け

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別れと味覚と異常と

第29話【別れと味覚と異常と】

 

_ここでお別れのようね...

 

天城お姉ちゃんとのあの将棋から月日が経って、季節は秋から冬へと変わった。数日前に大演習が始まって今はその最終日になっていた。なんだか皆が怖い顔になっていて演習所では無かった。

 

お別れってどうして?

 

天城お姉ちゃんの口からお別れっていう言葉聞いて、二度と会えなくなるという不安で涙ぐんでしまう。

 

_あらあら、やっぱりその泣き虫は結局治りませんでしたね。

 

天城お姉ちゃんは笑いながら僕の涙を拭く。その後、僕を抱きしめる。後悔しないように力強く、それでいてこの上なく優しく僕を抱く。

 

_でも大丈夫。貴方には皆がいる。赤城や加賀、三笠さんや高雄さんに愛宕さん、更にはあの長門様まで...色んな人がきっと貴方を助けてくれます。

 

でも、天城お姉ちゃんは?天城お姉ちゃんも一緒じゃなきゃ嫌だ!

 

天城お姉ちゃんを逃がさないように、離さないように強く抱きしめ返す。天城お姉ちゃんは苦しいのか少し悲しい顔をする。その目に少しの涙を添えながら...

 

_もう行かないと...じゃあ、赤城と加賀の事をよろしくお願い致しますね。

 

天城お姉ちゃんは僕の頬に両手を添え、そのまま僕のおでこに口付けをする。今までこんな事をしたのは赤城お姉ちゃんだから驚いてしまう。天城お姉ちゃんは驚いた僕の隙をつくように僕の手を振りほどく。

 

_ふふっ。赤城がよくやる気持ちが少し分かりますね。確かに...愛おしい気持ちになります...

 

天城お姉ちゃんは最後の最後まで僕に微笑みそのまま後ろに一歩、また一歩下がる。

 

待ってよ!お願いだよ!行かないで!

 

それでも天城お姉ちゃんは止まらない。この重桜は冬でも桜は咲くという。雪の白さと桜の色が幻想的な風景を生む。そしてそれに溶け込むように天城お姉ちゃんは消えていく。

 

_貴方に会えて、貴方と暮らして、とても幸せでした...

 

こうして僕は二度もお母さんを失った。

 

桜と雪が降り続く中でずっとずっとずっと待ったけど天城お姉ちゃんは帰ってこなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待って!」

 

あの人を追いかけるように手を伸ばしながら体を起き上げる。

意識が覚醒し、周りを見渡す。知ってる壁、知ってる机、知ってる本棚があった。その証拠に本棚にはユニコーンからもらった海のスノードーム。俺が買った万華鏡。テネリタスに関する本や他にもKAN-SEN達から貰った物が置いてある。そしていつの間にか就寝服に着替えていて、唯一違った所があるとすれば俺の左腕に点滴がつけられている所だ。

 

「...夢か。結構昔の夢だったな。」

 

あの日、また母を亡くしたあの日の事を思い出す。必死に走っても、必死に手を伸ばそうとしてもそれでも届かなかったあの日。

思い出すと後悔でどうにかなりそうだ。

右手で顔を覆い、俺があの後どうなったかを思い出す。

 

「確か...テンペストと戦って、エンタープライズの攻撃から綾波を守って...」

 

うん。しっかりと覚えている。鉄血に会ったこと、重桜の艦隊に接触し、久しぶりの顔ぶりにもあった事。エンタープライズがおかしくなった事、死んだと思われていたあの人が仮面から現れた事...そして綾波を助けようとしてそのまま...

思い返して見ると情報量が多すぎて少し混乱する。

ドアがノックも無しに前触れも無く勝手に開けられる。

 

「っ!ご主人様!ようやくお目覚めになられたのですね!」

 

ドアを開けたのはベルファストだった。ベルファストは、普段見せない焦りや安堵が混じった表情をしながら俺のいるベットへと駆け足で近づく。

 

「ようやく?俺...どのくらい寝てた?」

 

体感的にベルファストと会うのは久しぶりといった感覚だった。そしてベルファストから出た「ようやく」と言う言葉...どうやら俺は何日か意識を失っていたらしい。

 

「四日程でございます。ですのでこういった点滴をご用意致しました。」

 

「四日も...」

 

俺は表に出してる態度とは裏腹に内心は相当驚いている。いや、驚きすぎて笑えてしまう。俺はこの四日間目を覚めずにここでずっと寝てたって事だ。どうやらこの就寝服はベルファストが着替えさせたらしい。

艦隊の執務が溜まっているに違いない。遅れて分を取り戻そうとするべく俺はベットから出ようとするがベルファストにとめられる。

 

「お待ち下さい、まだ安静にしていてください。」

 

「いや...四日も気を失っていたんだ。執務も溜まっているだろうし、それに、皆も心配してるかも...」

 

俺は点滴を外して無理やりにでも体をベットから出ようとするが、

体が激痛に襲われるのと、四日も寝続けてたせいか上手く体が動かせない。

 

「まだ無理をなされないでください。執務の方は私たちにお任せ下さい。ご主人様が目覚めた事も後ほど皆様にお伝え致します。」

 

ベルファストは俺を無理やりベットに寝かせる。俺がまたベットから離れようとしてベルファストの肩を掴むが、またベルファストがベットに無理やり寝かせる。

ベルファストは何がなんでも俺をベットから離れないように全力で俺を抑える。KAN-SENが本気を出した力に人間が勝てる訳も無く俺は諦めてベットに横たわる。まぁ、ただの人間では無いんだが...

それは皆も分かってるはずだ。特に、俺の艤装を誰よりも間近に見たベルファストとウェールズには。

 

「...俺の事を聞かないのか?」

 

俺の艤装の事を追求しないベルファストに俺は自分からこの話題に入る。ベルファストは強ばった表情を変えなかった、まるで俺がこの話をするのが分かっていたかのように。

 

「確かに気にはなります。ですが今はご主人様の安静が大事ですから。」

 

俺は罪悪感に支配されそうだった。今まで皆の事を騙し、欺き、隠し続けたのに、尚ベルファストは俺の事を気遣ってくれている。

 

「ありがとう...」

 

こんな感謝の言葉しか贈られない自分が情けなく思う。

ベルファストの表情が柔らかくなり、ベットの傍にある点滴を片付けようとする。

 

「メイドですから。では、少し軽食をお持ち致します。絶対そのまま安静にして下さいね?」

 

ベルファストは点滴を持ちながら俺の部屋から退出する。

一人になった部屋でこれからの事を考える。俺は近い内に皆に全てを話さなければならない。その時に俺の処遇は生きるか死ぬかの二択になる。それを決めるのは俺ではなく、KAN-SEN達や俺の友...そして、俺を育てた人だ...

 

「まぁ、悪くない人生だったかな...」

 

俺は諦めるように呟き、ベットにうずくまる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時のアズールレーンの基地は特に空気が重い。

この前の戦闘の疲労感では無く精神的な物だ。

 

「ねぇ、あの時の指揮官見た..?」

 

「うん..あれってセイレーンの艤装だよね...」

 

「心配だよね...指揮官大丈夫かな...」

 

あちこちで指揮官の事で持ち切りだった。その事で皆は不安感がつのる。ベルファストは基地中を移動する機会が誰よりも多いため、そのような話題を嫌でも耳に入る。

ベルファストは点滴を片付けた後、指揮官に軽食を差し入れする為に食堂へ移動する前にヴェスタルの所へと寄る。指揮官が目を覚ましたのでその報告と指揮官の体の変化と艤装の検査の結果を聞くためだ。

ベルファストはドアを丁寧にノックする。

 

「どうぞ〜」

 

中からヴェスタルの声を聞いたのを確認して、ベルファストはドアを丁寧に開ける。部屋に入った後にドアの閉める音を立てずに静かに、丁寧にドアを閉める。

 

「ベルファストさんでしたか。指揮官の様子はどうでしたか?」

 

「先程お目覚めになられました。」

 

「本当ですか!?良かった...」

 

ヴェスタルはほっと胸を撫で下ろした。しかし、それは束の間でありそれとは別の心配をしている様子だった。

 

「...エンタープライズ様の事ですか?」

 

ヴェスタルは図星を突かれたのか、エンタープライズの事を話した。

あの戦い以来、エンタープライズは部屋に引きこもり始めた。ろくに食事を取ろうとせず、ただ自分を責めていた。あの時の行いをただひたすらに。

 

「指揮官を二度も傷つけた事を責任を感じているんです。もう今では声をかけても何も言わないんです。」

 

「左様ですか...」

 

打つ手がない。まさにそれだった。どんなに言葉を並べようともどれだけ声を出してもエンタープライズには誰にも届かない。ただ一人を除いては...

 

「でも、指揮官なら何とかしてくれると思うんです。あの人なら出来るかもって...根拠はありませんけど。」

 

ベルファストも同じ事を思ったのか小さく微笑む。するとベルファストは日記帳らしき物を一つではなく、二つ、三つとヴェスタルに見せる。

 

「これは...日記帳?」

 

「はい。ご主人様の部屋のお掃除をしている時に一部拝借させて貰いました。勿論後でお返しするつもりです。...ご主人様は私達と共に過ごした日々をこうも細かく覚え、記していました。これらの本も全て...まるで小説のような細さです。」

 

「随分と悪いメイドさんですね。」

 

ベルファストが日記帳を拝借したのは今の雰囲気を何とかしようとしたかったからだ。今のKAN-SEN達は少なからず指揮官の事を不安に思っている。だから、日記を持ち出した。指揮官はKAN-SEN達のことをここまで思っていると伝えたかったから。現に今のほとんどのKAN-SEN達は、心配こそしてるが不信感は無い。これはベルファストだけでは無く他のKAN-SENも動き回ったていたのをヴェスタルは見ていた。

それを察したヴェスタルは丁寧に日記を読み上げる。指揮官がこれまでKAN-SEN達との交流を文字だけでイメージ出来るような、まるで1つの本だった。

 

「だからこそ...ヴェスタル様も私もご主人様なら何とかしてくれると感じたのでは無いですか?」

 

ヴェスタルは何か分かったような顔をして、ベルファストに日記帳を全て返す。ヴェスタルから心配の顔は多少残っているが、何か安心したような顔をした。

 

「話がだいぶ逸れてしまいましたね。ご要件はやっぱり指揮官の事ですか?」

 

「はい。ご主人様の容態と艤装の件についてです。」

 

「艤装の件なら明石ちゃんの方が詳しいから彼女も呼びますね。少しお時間を下さいね。」

 

「では、その間にお茶の準備をしておきます。」

 

ヴェスタルは明石を呼ぶために部屋から出ていく。ベルファスト部屋から出ていき、食堂でお茶の準備を始める。お茶と菓子の準備が終え、また医務室へとベルファストは移動する。丁度ヴェスタルと明石が戻っていたので、スムーズに話を始められた。

 

「まず検査の方ですが...異常としか言えませんね。」

 

「異常...と言いますと?」

 

ベルファストは紅茶をヴェスタルに差し出しながら疑問を浮かべる。

ヴェスタルは紅茶を一口飲んでからその検査結果を話す。

 

「まず、指揮官は戦闘で両足の筋肉が破壊され、腕も両腕が骨折...しかも上半身がほとんど機能不全状態...これが運ばれた時の状態です。」

 

「いやいやそれ普通の人間ならもうとっくにお陀仏だにゃ...」

 

明石は何度も紅茶を冷ますように息を吹きかけ続けなが呟く。確かに人間ならとっくに死んでいる。...普通の人間なら。

しかし、指揮官は普通ではないのだから。それを物語っているのはあの艤装だ。

 

「実は...前から指揮官の体には少し変と感じたのです。」

 

ヴェスタルは一つのカルテをベルファスト達に見せる。

 

「これは、指揮官を救出した時の怪我の状態です。本来なら二週間の安静で完治ですが...指揮官は一週間程度で完治しました。」

 

「ですが、それはヴェスタル様が治療に専念出来たお陰では無いのでは?」

 

この時、つまり明石が来る前は工作艦がヴェスタルしかいなかった為やむなくヴェスタルが他の艦の修理をする予定だった。しかし、明石がこちらに来てから艦の整備は明石に任せ、ヴェスタルが指揮官の治療に専念出来たから早く完治した。ベルファストはそう考えた。

 

「確かに治療に専念はできましたが...それ以前に指揮官の足が治療されていた形跡があったんです。指揮官が治療器具を持っていて治療したのは考えにくいですし、誰かの応急処置にしては妙にしっかりしていた...しかし、指揮官の容態を見て確信しました。」

 

ヴェスタルはさらにカルテを取り出した。どうやらこの四日間の指揮官の容態をまとめた物だった。しかしカルテを見ると指揮官の様態は一日ずつ確実に良くなっていた。

 

「ちょっと待ってください。流石にこの回復は異常です。治療を施したとしても...」

 

ベルファストはこの異常な回復に疑問を持つ。それに先程、ヴェスタルは指揮官の腕は骨折していたとしかも両腕を。しかし、指揮官はベルファストの掴んだ(・・・)のだ。それに、ギプスらしき物を指揮官は巻いてもいなかった。

 

「指揮官の両腕の骨折と上半身の器官はたった一日で完全に治りました。二日目で足の怪我が...三日目で上半身の外傷が全て...勿論私も治療に専念しましたが...」

 

「それはそれで異常にゃ...」

 

明石はようやく息を吹くのを止め、少し冷めた紅茶を飲む。そして、ここににる誰もがこの異常な治癒力に関して疑問に思う。

 

「だから私はこう考えました。指揮官が自ら治している(・・・・・・・・・・・)と。つまり、自然治癒力です。」

 

自然治癒力...人が生まれながら持っている力の一つであると言われている。ケガや病気を治す力・機能を広くまとめて指す表現で手術を施したり、人工的な薬物を投与したりしなくても治る機能のことだ。

しかし、指揮官のは明らかにそれを超えている回復力だった。

 

「だけども異常にゃ。そこで考えたにゃ。これは指揮官の艤装が影響してると。」

 

「艤装が...?」

 

ベルファストの疑問に答えるように明石は指揮官の艤装をまとめた資料を見せる。そこには指揮官が艤装している姿やあのセイレーンの艤装の事が明石なりの分析結果が書かれていた。

 

「残念ながら本人は意識が無かったから映像だけの分析結果だけど...これは間違いなく艤装にゃ。もう一つのは間違いなくセイレーンの艤装にゃ。」

 

そう。指揮官の艤装は二つあった。一つは指揮官が直接装備している物。もう一つは自立型、もしくは離れても使える艤装だ。

 

「どちらかは分かりませんが、艤装が指揮官の身体に影響を及ぼしているのは間違いありません。異常な自然治癒力もその一つでしょう。」

 

「取り敢えず分かっているのはこれだけにゃ。艤装の事は指揮官が直接展開してくれないとこれ以上は分からないにゃ...」

 

「身体に影響...?」

 

ベルファストには思い当たる事があった。あの時、指揮官がエリザベスと初めて会ったあのお茶会の時だった。指揮官は菓子を食べるとまるで諦めたような顔をしていた。

 

「まさか...!御二方。私はこれにて失礼します。」

 

ベルファストは急ぐようにドアを開けた。先程の静かにドアを開けたのとは対照的に、ドアは大きな開閉音を出した。

 

「ベルファストがあんなに急ぐなんて珍しい事もあるのね...」

 

「というか、このお茶菓子どうするにゃ?」

 

「食べ終わったら食堂に戻しましょうか。」

 

ヴェスタルと明石はそのまま紅茶を飲み、菓子を最後まで食べ続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱりベルファストに黙って出ていくのはマズいよな...でも執務を任せ切りにもいかないし、何より今の基地の状況が気になるし...」

 

服を着替え、自分を正当化するように独り言を呟くきながら廊下を歩く。

KAN-SEN達に会う度に無事だったとか良かったとか取り敢えずは俺の事を労わってくれる。しかし、何処か不安そうな顔を俺は見逃さない。理由は分かっている。俺があの時戦った事だ。しかも艤装を装備してしかもそれがセイレーンの艤装なんかしていたらそりゃ警戒もする。俺はKAN-SEN達のそんな顔から逃げるように立ち去る。

そして行き着いた先は外のベンチだった。

 

「はぁ...そういや俺の体...何を失ったのかな...」

 

俺は艤装使う度に味覚を失う。今失っているのは甘味と辛味だ。

俺は今回派手に艤装を使ったので最悪味覚は全て無くしてるだろう。

そんな事を考えているとこちらに近づく者が二人俺のベンチへと歩く。二人ともメイド服を着ている事からロイヤルメイド隊に間違いないが...会ったことない二人だった。つまり、最近ここの基地に配属になったダイドーとシリアスで間違いない。

 

「ここにいらっしゃいましたか誇らしきご主人様。」

 

俺の事を誇らしきご主人様と呼ぶのは白髪のシリアスだ。

うん。とってもしっかりしてそうな顔だ。きっと真面目にメイドの務めを果たしている事だろう。

 

「ご、ご主人様...!具合の方はよろしいのでしょうか!?」

 

俺の事を気にかけてくれる白い髪でありながら少し蒼みがかった髪のダイドーがおどおどしながら心配してくれている。どうやら二人とも俺の事を探していたようだが...?

 

「二人は俺の事を探していたのか?」

 

「はい。ベルファストさんがご主人様の自室に入るとそこにご主人様は居なかったので..探して下さいと。」

 

ベルファストが笑いながら怒ってる姿が容易に想像出来た。間違いなく怒られる。かなり怒られる。首筋から変な汗が出てくる。これが恐怖という物だろうベルファストと会うのが怖くなってきた。

 

「そうか...悪かったな。執務室に行くからそこで待ってるって伝えておいて。」

 

するとダイドーが突然泣き出す。あまりにも唐突な事なので俺も混乱する。取り敢えずいつも持っているハンカチをポケットから出してダイドーに渡すがまともに受け取ってくれない。

 

「あぁ...やはりダイドーは捨てられるのですねご主人様とあまり会えないし今ようやく会えても直ぐにどこかに行かれてダイドーの事を後回ししてそして最後にダイドーは忘れられてこの子ように捨てられるのですね」

 

突然ダイドーは持っているシリアスに少し似ている人形を抱きしめて捨てると連呼する。俺は訳も分からずシリアスに助けを求める。

 

「シリアス!こういう時どうすれば良いの!?休ませてあげればいいのか!?」

 

「いえ、それでは逆効果です。誇らしきご主人様。ここは仕事を与えるのが良いです。」

 

なんだそりゃ。とにかく仕事を与えれば良いと分かったが肝心の仕事が思い付かない。そうこうしている内にダイドーからなんだが不穏のオーラが滲み出ている。マズいこれはマズいと直感で感じる。

その時、光明が見えた気がした。

 

「そ、そうだ!俺、この四日間気を失っていたからご飯食べてなかったんだ!折角だから少し軽食を作ってくれないかな!?」

 

混乱から出たのがこれだ。しかし事実だ。寝起きの時はそれ程空腹感は無かったが、意識がハッキリしたおかげで空腹感が感じられた。

ダイドーは不穏なオーラを閉まい、笑顔を見せていく。

 

「本当ですか!?じゃあ早速作りますね!だってダイドーはご主人様のメイドなんですから!」

 

ダイドーは先程の事が無かったかのように笑顔を振る舞い食堂へと移動した。変わった子だな....そう思った。

 

「あ、そうだ。シリアスも何か作ってくれないかな?簡単なやつで良いから。」

 

横でポツンと置いてけぼりなシリアスを見て俺は彼女にも軽食を作らせる。

 

「よ、よろしいのですか?」

 

しかし何故かシリアスは遠慮していた。話を聞いてみるとどうやらシリアスは料理問わず、メイドととしての能力は赤点ギリギリらしい。

人は見かけによらずとはこの事だ。こんなキリッとした顔の子が実はいつも何かやらかしているとは想像出来ない。

自分の能力を自覚しているのかシリアスは顔を下に俯く。だから俺のさっきのお願いを遠慮する。でも、なんだかシリアスは悲しそうだ。顔は髪で見えないが、きっとそんな顔をしている。俺はシリアスの頭を優しく撫でるように叩く。シリアスはそれに驚きようやく顔を上げてくれた。

 

「別に失敗しても良いよ。何事も繰り返しだ。俺はシリアスが作ってくれる料理が食べたいな?」

 

「...ありがとうございます。誇らしきご主人様。このシリアス美しく輝いてみせます!」

 

頑張るって意味の輝くなのかは知らないがシリアスと一緒にダイドーを追いかけるように食堂へと移動する。食堂へと移動すると珍しく誰もいなかった。まぁ、時間的に皆お昼を食べたのだろう。まるで貸し切りみたいな物だった。ダイドーとシリアスは早速調理を開始した。

 

「ご主人様は食べたい物はありますか?ダイドーが何でも作りますよ!」

 

生き生きしているダイドーを見て妙に圧倒される。

食べたい物か...空腹と言っても四日も意識を失っていたからそんなに食べられる余裕は無い。取り敢えず今の俺の味覚の確認さえ出来れば良いと考えた。俺はダイドーに少量のサラダにビネガーをドレッシングにとキノコを使ったスープをリクエストした。野菜の苦味、ビネガーの酸味、キノコの旨み、スープの塩味でこれで全ての味覚が確認できるだろう。

シリアスには今自分作れる簡単な物を頼む。

ダイドーは見事な手つきで調理をテキパキ進める。手つきはベルファストに引けは取らないだろう。対するシリアスはぎこちなかった。見ているこっちをハラハラさせるような失敗をしていた。シリアスが作っているのは材料からしてパンケーキだ。パンケーキの生地を勢いよく回して生地がそこら中に飛散していることや火力が強すぎで焦げてないかとかそう言った失敗はまだ可愛く、調味料間違えた時は本気で焦った。そこは何とかダイドーがフォローをしていた。

まぁ、とにかく無事に二人とも調理を終えて料理を出してくれた。

 

「おぉ...これは凄いな。」

 

ダイドーが出してくれた料理は頼んでいたサラダとスープ。

シリアスは少し焦げたミニパンケーキ一枚と上手く出来たミニパンケーキが一枚が重なった物を出した。パンケーキを見て俺は感じられない甘味から虚無感が生まれる。

まず俺はサラダを口にする。レタスをフォークで刺し、口に運ぶ。

...何だか紙を食べてるみたいだった。野菜の苦味もビネガーの酸味も感じられない。次にスープをスプーンで口に運ぶ。

キノコはまるでゴムのようで、スープに関しては温かみがある液体としか言いようがなかった。

もう何もかも味が感じられなかった。俺はそんな虚無感と絶望感なのか食べる手を止めてしまう。

 

「.........」

 

「ご主人様...?もしかして料理がお気に召しませんでしたか!?あぁダイドーはなんてことを折角ご主人様から直々にお仕事を下さったのにダイドーは捨てられてしまいます...!」

 

ダイドーはまたあの時のように捨てられると連呼し不穏なオーラを滲み出す。

 

「あ...いやいや!美味しすぎて思わず手が止まってしまったんだよ!いやぁ〜美味しいな!」

 

最早俺に「美味しい」と言える資格は無い。味が感じられないのに美味しいなんて感じられるわけが無い。でも、きっと美味しいのだろう。俺は紙のような野菜やゴムのようなキノコを手をとめずに食べる。味がしないものを一気に頬張るせいか、襲いかかる吐き気に耐え、何とか全て食べる。腹は満たされたが満腹感は感じられなかった。しかし、ダイドーを心配させない為に仮面のような作り笑顔でダイドーにお礼を言う。

 

「ご主人様に褒めて貰えた..!これでダイドーは捨てられないですよね?」

 

「いや、捨てるつもりなんて無いからな?じゃ、次はシリアスのだな。」

 

俺はシリアスが作ってくれたパンケーキをナイフでさらに小さく切り、一口サイズになったパンケーキをフォークで刺す。

フォークから伝わるのはパンケーキのフワフワ感ではなく少しベチョっとした感触だった。それでも俺はパンケーキを口に運ぶ。

パンケーキのフワッとした食感は無く火力が弱かったのかやはりベチョっとした食感が口に張り付く。勿論甘味等感じられるわけがない。

だが、きっと甘いのだろう。最初から分かっていたからショックは感じずそのまま笑顔でお礼を言う。

 

甘くて(・・・)美味しいよ。ありがとうシリアス。」

 

シリアスは顔を赤くして褒めて貰えた嬉しさと少しの気恥しさで顔を下に向ける。だが気持ちは俯いていない。俺はパンケーキをもう一口食べようとすると突然右肩を叩かれる。背中からゾワリと鳥肌が立つ。しかし、俺は振り返るのを拒む。何故なら俺の肩を叩いたのが俺の予想通りの人なら今すっごい怖い顔をしているからだ。前にいる二人もそれに圧倒されて恐縮しているのが分かる。俺は覚悟を決めてゆっくりと顔を振り向くとやはりそこにはベルファストがいた。

 

「ここにいらっしゃいましたかご主人様?絶対安静にしておいて下さいお仰ったはずですが?」

 

ベルファストは笑っているのに何故か物凄い圧を感じる。焦りからか全身から汗が止まらない。何か言い訳をしようと考える間もなく、ベルファストは俺の右手を掴み、そのまま俺の自室へと行かせる。

 

「あ、まだシリアスのパンケーキが...」

 

「少しお話がありますので。ダイドーとシリアスはここの清掃をしたら、速やかに皆様の部屋のベットメイキングを二人で行って下さい。」

 

ベルファストは俺を強引に連れていきながらもダイドーとシリアスに仕事を与える。俺はベルファストになされるがままに食堂を離れてしまう。

 

 

 

 

「...そういえばシリアスのパンケーキ、珍しく上手くできていたのね。」

 

「はい!ようやくシリアスは美しく輝く事が出来ました。」

 

「へぇ...ちょっと一口...!?酸っぱい!?シリアスこれ何入れたの?まるでレモンのような酸味だけど...」

 

ダイドーは吐き出さず酸っぱいパンケーキを飲み込む。シリアスはあわてて自分が入れた物をダイドーに見せる。ダイドーに見せたのは小さなビンだった。

 

「シリアスはバニラエッセンスをちゃんと入れましたよ。これですよね?」

 

ダイドーは瓶のラベルを見るとそこにはバニラエッセンスではなく、レモンビネガーと書かれていた。

 

「これ、レモンよ!...あれ?でもご主人様は確か甘い(・・)って...」

 

ダイドーは指揮官が言ったことを思い出す。間違いなく指揮官は「甘い」

と言った。嘘をついている様子も無かった。指揮官は表情を変えずにパンケーキを一枚食べたのだから。

 

「どういうことなのでしょうか...」

 

ダイドーとシリアスは指揮官の味覚に疑問を持ちながらもベルファストに言われた仕事をこなした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勝手に部屋から出ていった事は謝るから...だから話し合いを」

 

「大丈夫です。これからその話し合いをするので。」

 

ベルファストはてっきり俺を自室に連れ戻そうとしたと考えていたがベルファストが着いた先は執務室だった。

 

「失礼します。ご主人様を連れて参りました。」

 

ベルファストは執務室のドアを開けると執務室にはベルファスト始め、ウェールズ、フッド、ヴェスタル、ホーネット、クリーブランド、明石がいた。

 

「指揮官!良かった...無事だったんだね!」

 

クリーブランドは俺を見ると安心しきった表情になる。

ベルファストは俺の手を離し、ソファーへと誘導する。

ソファーは一人用で隣には誰もいない。ただここにいる全員が俺の事を見る。少し戸惑うと、ホーネットからコーヒーを渡される。

 

「まぁ、とにかく一杯どう...?」

 

「え?ありがとう...」

 

ホーネットはブラックコーヒーを俺に差し出す。なんとなくだがホーネットの雰囲気が少し暗く感じる。俺は差し出されたコーヒーを見る。

もう俺の全ての味覚は完全に死んでいるのでどうしても飲む気にはなれない。しかし、ホーネットの気遣いを無下には出来ず。味のしない泥水のようなコーヒーを一口飲む。最早苦味も一切感じなかった。

 

「指揮官、そのコーヒー甘かった?それとも苦かった?」

 

ホーネットは真剣な目付きでコーヒーがどうだったかと聞く。

何とも変な質問だった。ホーネットはブラックコーヒーを差し入れたのだから苦いに決まっているだろうに。

 

「そりゃ砂糖も何も入れてないコーヒーだから苦いに決まっているだろう?」

 

俺がそう答えると皆がざわめき出す。あれ、正解があったのかな?そんな感じの考えをしているとホーネットが差し出したコーヒーを下げる。

 

「指揮官...これ、炭酸抜いて温めたコーラなんだよ。」

 

「....は?」

 

意味がわからない何故こんなイタズラ紛いな事をするんだと考えた。

いや、それよりも俺は墓穴を掘った事に関して焦りを感じている。

もしホーネットが言ったことが正しければ俺はコーラをコーヒーと言ってしかもそれが苦いにと答えた。間違えたなんて言い訳は通用するわけがなかった。

 

「ねぇ...指揮官はもしかすると味覚が無くなったんじゃないの?」

 

ホーネットが突きつけるように俺の事実を言う。事実なので言い訳が思い浮かばず顔を手で覆う。隠している顔からでも分かる皆の視線が突き刺さる。俺は、言い訳もせずありのままの答えを言う。覚悟を決め深呼吸してから口を動かす。

 

「あぁ...俺の味覚はもう死んでいる。」

 

俺の答えに全員がまたどよめく。しかし、ベルファストだけはまるで分かっていたかの様に反応は無かった。

 

「ベルファストだけ反応が薄いけど...分かっていたのか?」

 

「はい。ご主人様が初めて陛下とお会いしたあの時、菓子を食べたご主人様の顔が妙に変でしたので。」

 

全くよく見てるメイドだ...感服するよ。

それに続きフッドも何か心当たりがあるように話す。

 

「そういえば...確か指揮官はアバークロンビーの激辛カレーをいとも容易く食べていましよね?」

 

「あぁ、辛さは感じられなかった。」

 

まだ追求は俺を逃がさない。今度はクリーブランドが俺を問いつめる。

 

「じ、じゃあ妹達と食べたあのピザも本当は味を感じられなかったの!?」

 

「いや、あの時失っていたのは甘味と辛味だけだ。俺が全ての味覚を失った事に気づけたのはついさっきだ。」

 

「そ、そうなんだ...」

 

クリーブランドは味を感じられない俺に無理やり物を食べさせてしまったのでは無いかという罪悪感は消え、少しの安心感がクリーブランドから滲み出る。

 

「次は別の質問です。味覚の次に何か失ったものは?」

 

今度はヴェスタルからだ。味覚以外失ったものは特には無い。

そう言うとヴェスタルは持ってる紙でメモのようなものをした。

 

「やっぱりあの艤装が原因なのか...?」

 

「多分な...」

 

ウェールズの問に俺は曖昧な答えを出す。実際、味覚が無くなり始めたのに気づいたのはたまたまだったのだから。

 

「ご主人様。全てをお話下さい。ご主人様にはその責務があります。」

 

覚悟していたものが来た。もうあの艤装を見られたからにはもう隠し事は出来なかった。ここが俺の人生を決める分かれ道となる。

 

「わかった。でも最後まで聞いたら決めてくれないか?」

 

「決めると言いますと?」

 

俺はポケットから携帯を取り出しジンに電話する。コール音が三回鳴った後ジンの声が電話から聞こえてくる。

 

「俺だ、悪いけど三日後までにあの時最後のパーティーに参加した奴全員で俺の基地に来てくれと言ってくれ。」

 

『はぁ!?そんないきなり言われても無理だって!』

 

ジンがいきなりどなりつける。そりゃそうだ、いきなり来いと言われてもあっちも用事というものがある。

 

「上層部から連絡が来るはずだ。悪いが頼む。」

 

『...何かあったのか?』

 

「お前にも全てを話しておきたい。」

 

ジンは了承してくれた。三日後何とかしてこっちに来るらしい。

俺はジンの他にもあの時一緒にすごした仲間...というか友達かな...

電話をした。その後、次はある人に電話をする。コール音が三回程鳴ったあとに電話から声が聞こえてくる。

 

『はい。どうしましたか?』

 

男の人の声で腰が低い姿勢で丁寧に話すのは今の俺の父だ。

 

「全てを話す事になりました。貴方も是非聞いてもらいたいです。」

 

親子にしては他人行儀に敬語で話しながら、俺は全てを話すと言う。すると俺の父...オセアンさんの声色が少し変わる。

 

『...分かりました。そちらでよろしいですね?』

 

「はい。三日後にアズールレーン基地に...それと今から呼ぶ名前に対して上層部からの通達という事でこちらに来させて頂きたい。」

 

俺は友の名前を読み上げる。オセアンさんは了承してくれて、三日後に俺の基地に来る。

 

「ありがとうございます。ではこれで。」

 

俺は電話を切る。そしてKAN-SEN達に目を向ける。

 

「ごめん。話の途中で決めてもらいたいのは俺の今後についてだ。」

 

話の途中で電話をするという無作法な行動に少し自粛する。

しかし、皆は俺の話を聞いてくれる。

 

「三日後、ここで全てを話す。そして話し終えたら...」

 

皆は緊張してか生唾を飲み込む。そして俺は覚悟するように決断するようにハッキリと答える。

 

「俺をこのまま指揮官にするか、セイレーンとして俺を沈めるかどちらか選んでくれ。」

 




俺は幽霊を見た。因みにロングアイランドのことでは無い。
俺は寝付けない夜でフラフラと基地を歩いていたら突然人魂みたいな光が俺の体に通過したのだ。幸い呪われても憑依されている訳では無かった。幽霊の正体を判明させる為俺は体を通過した幽霊を追いかけた。幽霊はユニオン寮に入っていった。
男の俺が勝手に寮に入る訳には行かず諦めたその時にホーネットと会った。
どうやらホーネットも幽霊を見かけたらしくしかも心当たりがあった。俺はホーネットと一緒に幽霊を探すと正体はエルドリッジの電気だった。
どうやらユニオン寮の近くはこの基地の電力を賄う施設の近くらしくエルドリッジは電気を使うKAN-SENらしく影響を受けたらしい。
これにて一件落着かな?もしも本当に幽霊だったら怖かった。

もしもの話(R-18)を観測しますか?

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