もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜   作:白だし茶漬け

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最近ちょっとずつですがTwitterでフォローして貰えている白だし茶漬けです。
でも私自身はツイートは全くしてないのでこの小説をTwitterで投稿報告させてもらうことにしました〜!
感想等もそちらでも募集しておりますので是非!


在りし日の日常と心の壁と名前と

第31話【在りし日の日常と心の壁と名前と】

 

ここに来ての2度目の冬が終わり、桜も今日も美しく咲き誇る。

この2年間で俺の人生は大きく変わった。変わったといえば、最近は赤城姉さんと加賀姉さんが昔のように喧嘩する事が無くなったことと、加賀姉さんは赤城姉さんの事を姉様と呼ぶようになったことだ。

それと...赤城姉さんの束縛が妙に強くなった気がする...

それは今に始まったことでは無いのであまり気にはならなかった。

この後の予定もあるので玄関で靴を履き替える。靴紐を結び、解けないようにしっかりと結ぶ。

 

_あら、もう出掛けるの?

 

静かな足音を立てながら赤城さんが玄関まで来た。

右手を頬に当て、何やら心配そうな顔をする。

 

_高雄さんの所に鍛錬をして行くだけだから。夕飯までには帰ってくるよ。

 

_高雄...そう、気をつけてね。くれぐれも愛宕には気をつけてね?

 

_なんでそこで愛宕さんが出てくるの?

 

_良いから!あの獣のような雌犬には気をつけてね!?

 

いつものように妙に愛宕さんのことを気にかける赤城姉さんにもう耳にタコが出来そうな程聞いたので聞き流す。そんなに危なそうな人じゃないと思うんだけどな...

 

_じゃあ行ってきます。

 

_行ってらっしゃい。

 

挨拶を済ませてから俺はドアを開け、高雄さんの所に走って移動する。ちょっと距離が離れてるがこれもいい鍛錬になる。

 

 

 

_...はぁ。また愛宕の所に行ってしまったわ...あの子大丈夫かしら...

 

赤城は溜息を吐きながらあの子が愛宕に襲われないか心配する。

そんな心配をしながら赤城は夕飯の下準備を済ます。味噌汁の出汁の準備やおかずの下準備...これだけ見ると良妻賢母の姿だった。

だが赤城からは包丁で食材を切る度に愛宕の事を呪うように何やら呟いていた。

 

_姉様...高雄もいるのでそんなに心配無いかと。

 

それを見かねた加賀は赤城のことを姉様と呼び、赤城を落ち着かせる。

 

_だって愛宕よ!?きっと今頃あの子の事をいやらしくて獣のような目付きで狙っているのよ!

 

しかし、赤城は落ち着か無い。優海が高雄の所で鍛錬に行く度に赤城はこういう事を言うのでいい加減呆れる。だが、加賀は変わらない日常を感じ、呆れながらも微かな幸せを感じていた。

 

_変わりましたね...あいつ、優海は。

 

_そうね...もう赤城お姉ちゃんとは呼ばないから少し寂しけど。

 

優海の成長に二人は嬉しくも、寂しくも感じた。天城がいなくなった数日は外にろくに出ず、立ち止まったままだったが、どうにかしてまた歩き出せることが出来た。

その成長が嬉しく思い、このまま何処かに行くのではという寂しさも感じられた。

 

_叶うなら、ずっと暮らしていきたいわね。私と加賀...そして優海と三人一緒に...

 

_そうですね...三人で...一緒に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三日月が廊下を淡く照らす夜の中、俺はホーネットに連れられヨークタウンと言うKAN-SENの部屋へと向かう。

ヨークタウンとはエンタープライズとホーネットの姉にあたる人でいわゆるネームシップのKAN-SENだ。

俺はその人とは一度も会ったことない故にホーネットが会わせてたがっていた。

薄暗い廊下の中ようやくホーネットの足が止まる。ホーネットは一つの部屋のドアの前に止まった。

 

「ここがヨークタウン姉さんの部屋だよ。姉さんには話がつけてあるから。」

 

俺は少しの緊張を無くすために一呼吸してからドアをノックする。

コンコンと指の骨とドアがぶつかる音を薄暗い廊下の中で響かせる。

 

「どうぞ。」

 

中から声がしたのでドアを開ける。部屋の中に入るとあとからホーネットも部屋の中へと入った。そこには目立つ家具は無く、本がびっしりと置いてある本棚に鳥の止まり木が机の上に置いてあった。

そして何より、ベットの上で俺を待ってたかのような顔をした白髪の長髪で青い目をしたKAN-SENが俺を見つめる。

 

「貴方が指揮官ですね?エンタープライズとホーネットから貴方のことは聞いています。私はヨークタウンです。このような形での出会いをお許しください。」

 

ヨークタウンはそう言いながらベットの近くにある椅子に座るように促す。俺はなすがままにその椅子座り、ホーネットは机の近くにある椅子に座った。すると、ヨークタウンから何か違和感のような物を感じた。彼女の事を見るとある事に気づく。

 

「...その足は?」

 

俺は布団に隠されたヨークタウンの足を見る。どう見ても短いその足は戦闘のせいか膝より先が無くなっていた。

 

「あぁ...これは私の不甲斐なさが生んだことです。気にしないでください。」

 

気にすると言われたがそんな事無視するような自分では無かった。

俺はヨークタウンの足の事を気にかけるようになり、肝心の要件を聞かずいにいた。

 

「そう言えば...エンタープライズは最近どうですか?最近会っていないもので...」

 

ヨークタウンは俺が足のことを気にかけていることに気づいたのかそれに逸らすようにエンタープライズの事について切り出した。

そう言われると俺も最近会っていないというか、俺も四日間意識を失ったもので分からない。俺はホーネットにエンタープライズの事を聞いた。

 

「あぁ、姉ちゃんは...あの戦闘のことを責めてるみたいでさ...ろくに部屋から出てきてないよ...」

 

「そうなのか...」

 

エンタープライズの性格からしてなんとなくは予想は出来たがまさか部屋から出てきてないとは...これは、俺からも言って方がいいのかもしれない。取り敢えずまずはヨークタウンからだ。

 

「そう言えば、俺の事聞いてるみたいだけど...何処まで知ってる?」

 

俺が言ってるのは俺が艤装を持っているということだ。

しかもそれがセイレーンの艤装だから不信感を持ってるKAN-SENがいるかもしれない。そこで俺を指揮官にするかセイレーンとしてしずめるかKAN-SEN達に決めてもらうことにした。

しかも俺の事をセイレーンとして沈める意見が一人でも入れば俺はそいつに沈めてもらう。ヨークタウンにも決めてもらわないといけないので、まずは俺の事を何処まで把握してるのか聞く。

 

「そうですね...貴方が指揮の時に性格が豹変することや貴方が艤装を装備した事や、こまめに日記つけてることはホーネットから存じ上げてます。」

 

「そうそう、指揮の時に豹変して..俺はこの前艤装を展開して...日記もさ忘れないようにこまめにって...ん?ちょっと待て。何で日記の事を知ってるんだ?」

 

確かに俺は日記をつけてるがこれを知ってるのはウェールズだけだ。ウェールズ以外に俺が日記をつけてることなんて誰も知らない。知ってる訳が無いのだ。

だから足を負傷して俺と一度も会ったことないヨークタウンが日記の事を尚更知ってるのは不可解なのだ。

 

「ああ〜指揮官?それなんだけどもう基地中の皆が指揮官が日記をつけてるの知ってるよ?ベルファストがみせびらかしてたよ。」

 

「...........ほぇ?」

 

変な声を出してしまった。え、ベルファストが?なんで?

ベルファストが俺の日記をみせびらかした所で考えが追いつかなくなり頭を抱える。というかなんで俺の日記の場所知ってるの?

なんでみせびらかしてるの?

 

「ホーネット。言い方が少し間違ってますよ。」

 

ヨークタウンが補足をして説明してくれた。どうやらベルファストは俺の事を信じて貰えるように...つまり俺がセイレーンだったとしても害はないとKAN-SEN達に伝える為に俺の日記を使ったらしい。

とは言え流石に日記をKAN-SEN達全員見られたのは恥ずかしい。

 

「そういう事ね...全く、悪いメイドだよ。」

 

別に責めてる訳では無い。寧ろここまでしてくれて逆に清々しく嬉しい。しかし日記が暴露された気恥しさで右手の人差し指で顔をかく。

 

「皆貴方のことをとても信頼しています。これは誰でもない貴方の功績であり誇れるものです。」

 

ヨークタウンは微笑みながらそう言ってくれた。

 

「まぁ、それが分かるのはあと三日後だ。それよりもエンタープライズをどうしたらいいか...」

 

俺はエンタープライズの事について気にかけた。

ホーネットから聞いた話によるとここ最近はろくに部屋から出てきてないらしい。あの戦闘で皆に攻撃したことに責任を感じてるが故なのか分からないがこのままではいけないと思う。それに、あいつにも俺の命運を決めてもらわけなければならない。

 

「でしたらエンタープライズの事を気にかけて下さい。私の事は構わずに...今日はもうこれで...」

 

一番上の姉だからか妹とエンタープライズの事を気にかけてくれとヨークタウンは言い出した。だがそういう訳には行かない。

ヨークタウンだってこの基地の一員だ。こうして話し合い機会はそうそう無いと思い、今日のこの夜はヨークタウンと話し合うつもりだ。

しかし、それでもヨークタウンは自分の事は構わずの一点張りだった。

 

「私の事なんか放っておいて、別の人に時間を割いて下さい。その方が皆にとっても貴方にとっても有意義な時間を過ごせるはずです...」

 

俺はその時ヨークタウンから何故か悲しさが伝わって来た。

いや、というより諦め...?人との関係に壁を作り、もう悲しまない為に繋がりを持とうとしない。だが、それは悲しいものだって俺は分かる。俺も...そうなのだから。

 

「いや、今日はお前と話がしたい。だから」

 

「ですから、私の事は放っておいて下さい。もう良いんです...」

 

しかし壁は開こうとしない。寧ろさっきより固く閉ざされている感じだった。

 

「もう...失うのは嫌なんです...」

 

その言葉を聞いた俺は家族を失った日を...いや、全てを失った日を思い出す。焼けた街、炎から出る煙の匂い、助けを求めても誰も助けられないあの叫び声、海からの砲撃、身も心も凍るあの寒さ、そして失った喪失感と絶望が前触れなく思い出してしまう。

俺はその時で全てを諦めた。何も求めず、何も見ようとせず、何も感じようとはしなかった。だけど俺はここまで来た。

底に落ちても、もがいて、諦めないで、前には進んだ。

 

「失う事の辛さは分かる。俺も...家族を二度失ってるから...」

 

「...え?」

 

「ちょっと昔話をしようか。」

 

ヨークタウンが俺の話に初めて乗っかってきた。俺はヨークタウンに皆より先に全てを話すことにした。同じ部屋にいるホーネットには悪いが部屋から出てもらい、ヨークタウンと2人きりで話すことにした。

 

「ごめん、ホーネット。俺の事は必ず三日後に話すから...」

 

折角ヨークタウンに合わせておいて部屋から出ていけと言った俺はホーネットに対して悪いことをした。しかしホーネットは責めもせずに笑って許してくれた。

 

「大丈夫だよ。それじゃ私はこれでさよなら!」

 

「あぁ。じゃあな。」

 

ホーネットとの別れを済ませ再びヨークタウンのベットの近くにある椅子に座る。時間を見ると日にちが変わっていた。しかし話さない訳には行かず、このまま話を進める。

 

「指揮官はどうしてそんなに強いのですか...?」

 

「強い?俺が?」

 

ヨークタウンは首を縦に振る。俺はこの質問の意味を悟った。

さっき言った「強い」は俺の艤装での戦闘能力では無い。

その意味の答えはヨークタウンの口から出た。

 

「私は...もう悲しい物別れをするのが嫌です。あんなに辛くて痛い思いをするならもう一層の事、繋がりなんて持たなければ良い...」

 

「......」

 

俺は黙って彼女を話を聞いた。

KAN-SENはそれぞれの元となった艦が形を変えそれがメンタルキューブとなり、メンタルキューブを元にして新たに人の形に変えて生まれてくる。それも艦の艦歴も受け継ぎながら。

ヨークタウンは艦歴から様々な物を失っていた。

自分に構ったおかげで他の誰かを失って、皆の頑張りで自分が何とか残り続けても、それに応えられず沈んだことと...最後には信じた者を信じた瞬間に裏切られた事...

 

「私は...何かに対して自分が何かをする事なんて出来ません...この足です。出来ることなんて何も...」

 

彼女は今、底にいる。暗くて何も無いただの底に1人で。そこから登ろうとも光を見ようともせずに諦めることでこれ以上傷つかないようにしていた。それが彼女なりの自己防衛だった。繋がりを持とうとせず、絶望することも無ければ何かにすがることもない。

何となく昔の俺に似ていた。...いや、もしかしたら今の俺にも...

とにかく、それは悲しい事だって俺にはわかる。何故なら俺もそうだったからだ。だけど、それでもここまで来た。俺だけの力じゃない。

あの人達がいたからここまで来たのだから。

 

「俺は強くなんてないよ。俺は誰かの助けがあってここまで来たんだから。」

 

だからヨークタウンにも誰かの助けが必要だ。暗い底に手を伸ばせるような人が。

 

「だからヨークタウンも前へ進める。エンタープライズやホーネットだけじゃなくてユニオン、ロイヤルの人達だっているんだ。だから...」

 

「...それでも私にはそれに対して応えられません。」

 

ヨークタウンは顔を俯かせ、布団を握りしめる。今の自分には足が無く、そのせいで出来ることが無い。だから皆には応えられないと。

 

「別に無理に応えなくて良いんだ。自分が自分でいることがそれが何よりも誰かの応えになる。」

 

必死に下手な激励をヨークタウンに向けて何度でも放つ。

ヨークタウンからはまだまだ厚い壁を感じるが何度でも俺はその壁を叩くように言葉を放つ。

 

「指揮官は何故こんな私に構うのですか...?私の心に踏み込もとして何になるというのですか。」

 

突き放すようにヨークタウンは構うなと言っているようだった。

俺のやってる事は彼女にとっては良い迷惑なのかもしれない。

いや、実際そうだった。俺の行動は偽善で、独り善がりな行動かもしれない。でも彼女のように暗く寂しい底に居続けるのは、苦しくて悲しい。それじゃあ生きてるとは言えない。だから踏み込む。

それが偽善だろうともそれで人が助けられるのならそれで良い。

俺は、口角を少し上げて小さく笑う。

 

「そんな所にいたら寂しいだろ?」

 

ヨークタウンはまるで図星をつかれたような驚いた顔をする。

やっぱり彼女は本当は人を信じたく、その心のどん底から抜け出したいと思っている。

 

「...変な人ですね。」

 

「よく言われるよ。...大分脱線したけど俺の昔話をしようか。俺な...」

 

ヨークタウンから微笑みが出てきた。彼女との心の壁が少しだけだが壊せたような気がした。こうして俺はヨークタウンにだけ他の誰かより先に自分の事を話した。

そう言えば俺がこんな風に自分の事を話すのは初めてだったかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_現時刻 重桜

 

誰も知らない泣ける歌の洞窟の中で加賀と触手型の艤装を出し続けているオブザーバーが動かないオロチを見つめる。薄暗い月明かりだけがこの洞窟を淡く照らしオロチをも照らし続ける。

 

「オロチは目覚める。数多の思いをその身に宿して。」

 

オブザーバーは加賀に囁くように耳をちかづけ言葉を紡ぐ。

 

「オロチの中には全てがある。あらゆる海を渡り、思いを集めてきた。」

 

「思いを...」

 

加賀は赤城の事を思い出す。行動や思惑はどうあれ、赤城の思いは間違っていなかった。誰よりも重桜の事を思い、誰よりも重桜の子達を愛していた。だが、その思いは灰色の亡霊によって海へと沈められた。

 

「赤城の思いもまたここにある。赤城の思いを途絶えさせてはいけないわ。」

 

道に誘導するように、加賀を唆すようにオブザーバーは加賀の心の傷につけ入れる。だが、これだけでは飽き足らずオブザーバーは加賀の頬に手を触れてさの狐の耳に彼の名を呼ぶ。

 

「それに...優海の事も助けたいでしょう?あの子は今窮地に犯されてるわ。あの時で艤装を使って、アズールレーンのKAN-SEN達は優海の事を不信に思っているかも...何をしてもおかしくないわ。」

 

「優海...!」

 

加賀は優海が艤装を使えたことは知らなかった。いや、そもそも重桜の奴らも優海が艤装が使えたこと自体知らずにいた。その理由に重桜は半分、アイツの事で持ち切りだった。だが、加賀にはどうでもいい事だった。

優海が危機に晒されている。その事実だけで加賀を動かすのは容易な事だった。

 

「あぁそうだ...優海を救いもう一度あの頃のように...だから私は!」

 

虚ろいていく目に決意をともしながら加賀はこの洞窟から出ていく。

それと入れ替わるように暗闇から一人の男が月明かりで姿を現す。

 

「まるで赤城が死んだような言い方だな。赤城はまだ無事だろうに。」

 

「でもおかげですんなりと加賀を丸め込めたわ。」

 

確かに...これで加賀はオロチを動かすのは確実となった。もう誰にも止められない。テンペストは今も尚動かないオロチを見つめる。

 

「それより、もう仮面は良いのかしら?」

 

「もう必要無いからな。」

 

仮面が無くなり、顔を確認するようにテンペストは顔を触る。

髪は灰色じみた色で乱雑に乱れており、前髪は目元まで届いていた。

 

「その髪、私が手入れしましょうか?」

 

「いらん。そんなもの自分でやる。」

 

テンペストはオブザーバーを跳ね除ける。オブザーバーは微笑みながら洞窟の暗所に溶け込むようにこの場から立ち去った。

ただ一人となったテンペストはオロチを見続ける。

 

「思いを集める艦か...」

 

テンペストはオブザーバーが言った事を思いだす。思いを集める艦

それがオロチだと。となればこのオロチはいわば大衆の願い、本心と言っても過言では無い。結局人は戦いから逃れられない。

それが現すように禍々しく、全てをねじ伏せる力を持ったオロチが生まれた。

 

「人って奴は...本当にどうしようも無いな...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_現時刻 アズールレーン基地

 

「...という事だ。これが俺の過去で生きてきた全てだ。」

 

俺は自分の過去をヨークタウンに全て話した。ヨークタウンは俺に同情のような顔をしていた。

 

「そんな過去があっても尚歩き続けようとする貴方はやはり強いですね...」

 

「でもそれは俺を育ててくれた人達がいたからだ。」

 

俺自身は強くは無い。あの人たちがいなければ俺はここには居ないからだ。

 

「話してくれてありがとうございます。今日はもう遅いですし今日はこれで...」

 

時間を見るとあれから一時間ほど経っていた。これ以上話すのは流石に迷惑かと思い今日はここまでとした。俺は椅子から立って、体を少し伸ばす。

 

「んー...しょと。それじゃ今日はこれで失礼するよ。」

 

「はい。おやすみなさい指揮官。」

 

ヨークタウンは笑顔で俺をベットで見送った。俺はドアを静かに閉め、薄暗い廊下を歩く。ユニオン寮から出ていき、自室へと戻ろうとすると道にエンタープライズと綾波が居た。俺はどうしてかその場の木の影に姿を隠す。

 

「そういえば...確か綾波は捕虜になったって...」

 

しかしそんな事はどうでもいい事だ。エンタープライズと綾波という敵同士のような組み合わせでエンタープライズがどう出るが注目していた。もしもの事があれば真っ先に止めなければ...

 

「なんだ脱走か?」

 

エンタープライズの言葉に綾波は首を小さく横に振る。

どうやら脱走する訳では無さそうだが監視を命じられたジャベリン達は何をしてるんだ...寝ているのかな...?

 

「冗談だ。眠れないのか?」

 

エンタープライズは小さく笑いながら冗談をぬかした。あのエンタープライズが冗談を言うとは些か驚く。そう言った類の事はあいつの口から聞けるとは思いもしなかった。

 

「よく分からないのです...」

 

綾波はあやふやな答えを出した。さっきのエンタープライズの質問の答えにしてはどうも話が見えてこなかった。エンタープライズもそう思ったのか首を傾げて疑問の顔を出す。

 

「アズールレーンとは敵同士で...でも皆は優しくしてくれて...戦いの事、重桜の事を色々考えるどんどん分からなくなって、もうずっと綾波は分からないままなのです。」

 

綾波はずっと考えていたから眠れなかったのか。戦いながら悩んで、答えを探し続けていたんだ。きっとエンタープライズも...

 

「まだ戦おうと思うか?」

 

「分からないけど...戦いは好きじゃないです。」

 

「そうか。私もだ。」

 

エンタープライズは綾波を背にしてそのままどこかへ立ち去ってしまった。話が終わりそうだったので俺は木の影から移動しようとしたが落ちていた木の枝を踏んでしまい木の枝が折れた音が辺りに響く。

 

「あ...やべ。」

 

「誰です!?...って指揮官?」

 

俺は素直に木の影から姿を現す。綾波は警戒を解いてくれて俺の話を聞いた。こっそり話を聞いた事に綾波は少し怒ったのかこっちを細い目でじっと見る。

 

「盗み聞きなんて...趣味が悪いのです。」

 

「いやたまたまと言うか何と言うか...」

 

綾波は小さく頬を膨らませて俺にそっぽを向いた。

 

「ありがとうなのです。」

 

「え?」

 

突然綾波から感謝の言葉が出てきたので反応に困る。すると綾波は寝付けないからと言って少しこの基地を歩くと言った。勿論、俺もついて行くことにした。

 

「あの時、指揮官が助けてくれたおかげでここに居る...感謝してるのです。」

 

綾波はあの時の戦闘のお礼を言ったのだ。最後には俺と綾波はエンタープライズの艦載機の爆発に巻き込まれたのだ。幸い綾波は軽傷だったのが良かった。

 

「別にお礼を言われるような事じゃないんだけどな...もう二度目だし。」

 

「二度目...?」

 

「覚えてないのか?まぁ、あの時は豹変した俺だから正確には今の俺では無いんだけど...」

 

綾波は疑問を浮かべながら首を傾げる。俺は覚えてないのかと思い、あの島でオレは一度艤装を展開してテンペストと戦闘した時の事を話した。しかし、綾波は覚えていなかった。恐らくだが、綾波もテンペストと戦っていたが、最後に魚雷で沈黙された。多分その衝撃で忘れてしまったのだろう。

話しながら坂道を歩くといつの間にか綾波と初めてあった丘まで歩いていた。

 

「...やっぱりここは良いな。草も柔らかいし、なにより落ち着く。」

 

俺はその場に座り込む。肌寒い夜風が少し心地よい。

俺は感触がまだ残っていることを噛み締めるように草を入念に触る。

柔らかい草の感触が手からまだ感じ取れた。

そのせいか味覚と嗅覚が消えた喪失感がまた込み上げてくる。

 

「ここにいると、初めて会った時の事を思い出すな。」

 

俺はそんな喪失感を紛らわすように綾波に初めて会った時の事を話した。あの時は綾波は黒いローブのような物を着ていたのを思い出して改めるとかなり目立っていた。その事を綾波にわざとらしく言うと、綾波は怒り出して、綾波は座っていた俺の肩を押して俺を寝転ばせる。海と月しか見えなかった景色が一変して満天の星空が目に入る。

そんなとき何か白いものが綾波に向かって転がってきた。

それは綾波の足に丁度良く当たり、綾波はそれを持ち上げる。

 

「...ぬいぐるみ?」

 

転がってきたのはユニコーンといつも一緒にいるユニコーンのゆーちゃんだった。またユニコーンから離れたのかと辺りを見渡すと後ろからジャベリン、ラフィー、ユニコーンがいつの間にかここに来ていた。このメンバーでこの場所はまるで綾波と初めてあったあの日を思い出す。

 

「あの時はゆーちゃんを見つけてくれてありがとう。」

 

ユニコーンは笑顔で綾波にお礼を言う。まるであの時、綾波がゆーちゃんのことを見つけた時にもユニコーンはお礼を言った。それを思い出させる笑顔で綾波にお礼を言う。

 

「でも綾波は本当に何もしてないのです...」

 

しかし綾波は疑問を顔を背ける。綾波は本当にたまたまゆーちゃんを見つけて、それを拾っただけだと言った。

 

「綾波はこの基地に忍び込んだ敵で...」

 

「でも、だから会えた。」

 

ラフィーの言葉に綾波は俺たちに顔を向ける。そう、理由がどうであれ俺たちは出会えた。例え敵だったとしても、例え全てを失ったとしてもこうして俺たちは出会えたのだから。それが無ければもしかしたら俺たちは出会えなかったのかもしれないのだから。

 

「わぁ!こんな穴場を知ってるなんて、貴方なかなかやりますね!」

 

ジャベリンはあの時と全く同じ事言葉を言った。綾波もその時を思い出しているかのようにジャベリンを見つめる。

 

「私、ジャベリンです。それから...」

 

「ラフィー」

 

「ユニコーン」

 

まるであの時の再現のように自分達の名前を言う。そして名前を言った三人は俺の事を見つめる。俺は彼女達がやりたい事を悟りその場から立ち上がった。背中とズボンに着いた汚れを払ってから俺は綾波に手を差し伸べる。

 

「で、俺はここの指揮官になった....マーレって言うんだ。よろしく。」

 

俺は今の名前を出すのに戸惑いながらもあの時と同じ事を言う。

あの時は綾波は握手に戸惑い、結局出来ずにいたが...

 

「綾波です...よろしくです。」

 

綾波は笑顔で俺の手を握ってくれた。あの時果たせなかった事が今ここで果たすことが出来た。綾波も皆も月明かりで笑顔がいつもより輝いて見える。

 

「...あぁごめん。俺嘘ついたわ。」

 

綾波たちは困惑する。今ので一体どこで嘘をついたのか分からないからだ。俺は皆から少し離れた所まで歩く。その後、俺は皆と目を合わせるようにして立つ。

 

「ごめん。マーレって名前は俺の名前じゃないんだよね。」

 

「「!?」」

 

全員驚愕した。無理もない、それはつまり、俺は今まで基地の皆に嘘をつき続けていたのだから。俺はそれを2日後に全てを話す。

だけどこの基地で最初に会ったこの4人にはせめて名前だけでも明かそうとした。

 

「指揮官。教えてください!指揮官の本当の名前を!」

 

「ラフィーもちょっと気になる。」

 

「ユニコーンもお兄ちゃんの本当の名前知りたい!」

 

「綾波も...です。」

 

皆は俺を責めることも咎める事もせずに俺の名前を知りたがっていた。そのせいか名前を言うのに躊躇いは無かった。俺は月明かりを背にして彼女達に名前を告げる。

 

「俺の本当の名前は...天城 優海(あまぎ ゆう)

 

天の城と書いて天城(あまぎ) 優しい海と書いて優海(ゆう)

それが俺の本当の名前。本当の苗字は忘れてしまったけど名前だけはしっかりと覚えていた。そして苗字は俺の母代わりだった人の名前だ。




今日は珍しく、エリザベスとウォースパイトに出会った。
そして半場強制的にお茶会へと招待された。
なにやら今回のお茶会は最後まで付き合って貰うとか何とか言っていた。執務は多少残っていたがまぁ、何とかなるレベルだったので甘んじてお茶会に参加した。
お茶会と言っても俺とエリザベスとウォースパイトの三人だけの小さなお茶会だったが有意義な時間が過ごせた。
例えば、高貴とは小さい事とかそれに比べてなんででかいヤツが多いのよとか何やら考えこんではいたがまぁ、気にしないでおく。
エリザベスとウォースパイトは女王とその側近みたいな関係だがそれ以前に学友同士らしい。
学友か...皆は元気にしてるのかな。

もしもの話(R-18)を観測しますか?

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