もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜   作:白だし茶漬け

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最近家でダラダラしながらゲームしている白だし茶漬けです。
アズレンで天城イベント復刻するってマジですか!?
んでその復刻イベのテイザーpv見たんですけどマジ尊くて泣きそうでした。
脳内で自分が書いている指揮官の過去を想像しながら見てるていうのは内緒。


竹刀と熱と向き合いと

第32話【竹刀と熱と向き合うと】

 

竹刀の重みと今対面している高雄さんからの圧が全身に伝わる。

高雄さんの目付きがますます鋭くなり、俺の額から汗が流れる。

今俺と高雄さんの間には見えない火花が散り、その勢いは高雄さんが圧倒していた。だとしてもここで怯んではいけない。

俺は竹刀を強く握り直し、その視線に怯むことなく高雄さんに挑む。

 

_それでは始め!

 

愛宕さんが始まりの合図を叫び俺と高雄さんが同時に地面を蹴る。

どちらも竹刀の間合いに入り同時に竹刀を大きく右振りする。

竹刀のぶつかり合う甲高い音が響き、鍔迫り合いが始まる。

高雄さんの一振が重くこのまま維持することさえ難しかった。

俺は高雄さんとの鍔迫り合いに確実に負けることを悟り、俺はわざと力を抜き高雄さんの竹刀を受け流す。高雄さんは一瞬体制を崩し俺はその隙を見逃さず、竹刀を振り下ろす。

 

_っ!?

 

しかし、高雄さんは体制を崩したのにも関わらずに強引に竹刀を振り上げる。高雄さんが振り上げた竹刀は無防備な俺の横腹に当たる。

 

ごハッ...!?

 

_しまっ...!?

 

竹刀に殴られた俺は無防備だった故に衝撃になすがままに勢いよく吹っ飛ばされる。竹刀も手から離れてしまう。

衝撃のせいで上手く体が動かせない。心配した愛宕さんと高雄さんが目もくれず俺を介抱する。

 

_優海君!しっかりして!

 

_しっかりしろ!優海!

 

高雄さんは持っていた竹刀を投げ捨て真っ直ぐ俺にちかづく。

二人とも俺の名前を呼びながら必死に呼びかける。俺はふらつきながらも何とか体を起こす。まだ腹の痛みが消えず、吹っ飛ばされた時に頭でも打ったのか頭も痛む。

 

_す、すまん...つい全力で叩き込んでしまった...

 

高雄さんは申し訳なさそうに謝り、顔を下げる。

 

あぁ...やっぱり高雄さんは強いな...まだまだだなぁ...

 

_そんな事言ってる場合じゃないでしょう!とにかく、今日はここまで。早く治療するからそのまま待っててね?

 

愛宕さんは駆け足で治療箱を探しに回る。一方で高雄さんは俺を思いっきり叩きつけた罪悪感でまだ気が沈んでいた。

 

あ、あの...今日の俺はどうでしたか?

 

俺は高雄さんを慰める...とは言えないがどうにかしようと思い。

今日の反省をする。高雄さんとの鍛錬が終わった後はいつもこうして反省会を開いている。

 

_あ、あぁ...無理に鍔迫り合いを続けようとはせず、受け流すと判断したのは良かったが、無理に決着を早めたのは些か問題だった。

さぁ、ここでは寝るのは何だから縁側で少し寝かせるぞ。

 

高雄さんは俺を抱き上げてそのまま縁側まで運んだ。少し冷たい木の床が心地よい。高雄さん縁側に座り、そのまま俺の頭を膝に乗せた。

 

あ、あの...これは?

 

_こ、これはだな...枕も無い今そのような状態で硬い床で寝かせるのは良くないと思ってだな...仕方がないから拙者がこうして膝枕をしている。別に他意などないからな!

 

高雄さんは咳き込みながら顔を赤くして俺から顔を逸らす。

まぁ、硬い床で寝転ぶのはちょっと嫌だったからこれはこれで良い。

人肌の温かさ、肌のやわらかさが頭から伝わって来る。

気のせいか痛みがだんだんと和らいで来たような気がした時、後ろから物が多く落ちた衝撃音がした。高雄さんと俺は振り返るとそこには治療箱を落として何やらショックを受けている愛宕さんがいた。

 

_ず...ずるいわ高雄ちゃん!私も優海君に膝枕したいのにー!

 

愛宕さんは子供らしくただをこねた後流れるように正座をした後に俺を膝に乗せた。

 

_どう?気持ちいいでしょう?

 

愛宕さんは俺の頭を優しく撫でる。感触とか以前に流れるような無駄の無い動きを見せられて少々戸惑ってしまう。高雄さんその動きに戸惑ったのか、一瞬だけ我を失っていた。

 

_...はっ!何をしているんだお前は!早く治療するのだろう。まずは横腹を冷やすぞ!

 

あ、いきなりは...冷っ!高雄さん!もうちょいゆっくりと!愛宕さんも胸を俺の顔に置かないでぇ!

 

桜が散る中で三人との日常はまた過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「....懐かしい夢だったな。」

 

懐かしい日常の夢で目が覚める。最近はどうも昔を思いだすと心の中で呟きながらまだ重い体を起こし目を擦る。

欠伸を一つしながらもう少しで鳴っていた目覚ましを止める。

クローゼットから数着ある軍服を一つ取って着替える。

この軍服を着るのも少なくともあと2日となった今、俺はきっちり軍服に着替える。

いつもなら食堂に足を運ぶのだが味覚が死んでいるので行く気にもなれない。だがそれでも腹は減るので食堂に足を運ぶ。

長い廊下を歩き、すれ違うKAN-SEN達に挨拶を交わしながら食堂の扉を開き、食堂に入る。いつもなら食堂からするいい匂いもすっかり感じられなくなり一向にわかない食欲に抗いながら朝食を選ぶ。

 

「お、指揮官じゃないか。どうしたそんな暗い顔をして。」

 

食堂のキッチンでトングをカチカチと音を鳴らしながら俺に話しかけてきたのはユニオンのネバダだった。どうやら今日の当番はユニオンらしい。ネバダは俺の皿に次々と食べ物を多く乗っけた。俺の皿には

厚切りのベーコンが三枚に目玉焼きが二つ、小さく丸く揚げたハッシュドポテトが山盛りに丸型のパンが二つ盛られ最後に小皿にサラダを盛った。

 

「えーと...何やってるの?しかもちょっと多い...」

 

「指揮官は男だからな。しっかり食べないといけないからな。」

 

彼女は俺が味覚を失っていることは知らないようだった。

ベルファスト達は俺の言う通りに俺の味覚の事は他の誰にも知られてはいない。俺が知ってる中で味覚の事を知ってるのは、ホーネット、ヴェスタル、クリーブランド、ウェールズ、ベルファスト、フッド、明石だ。

 

「...ありがとう。有難く頂くよ。」

 

俺は盛られた皿を持ちテーブルに着く。誰かと一緒に来たわけでも無いので俺は一人で朝食を食べる。

まず俺はパンを一つ頬張る。勿論味なんてしない。紙を食べてるようだった。それでも周りに悟られないように平静を装いながら食べる。

すると俺の席に近づく一人のKAN-SENがいた。

 

「おはよう指揮官...って、その量は..?」

 

振り返るとそこにはクリーブランドがいた。珍しく一人だった。いつもはモントピリア等妹たちと一緒だから一人で見かけるのは珍しく思った。クリーブランドは俺の前に座り、俺の皿を見る。

 

「あぁ...ネバダが盛ったんだ。俺の味覚の事知らない訳だし仕方がないよ。残すのは出来ないし折角の親切を無下には出来ないからな。」

 

そう言って俺は味のしないベーコンを一口サイズに切って食べる。

 

「うん、美味しい(・・・・)。」

 

味なんてする訳無いが、皆が笑って食卓を囲んでいる姿を見るとこれはきっととても美味しいのだろう。そう思って俺は言った。

「美味しい」なんて俺に言う資格なんて無いのに。

それを見たクリーブランドは席を出た後何も盛られていない皿を持って戻ってきた。

 

「指揮官、ちょっとごめんよ。」

 

クリーブランドは俺の皿から料理を自分の皿に盛り付ける。

俺の皿から半分程度の料理が消え、もう半分はクリーブランドの皿に移った。クリーブランドは早速厚切りのベーコンを切って一口食べた。

 

「このベーコンは厚切りだから食べ応えがあって、ブラックペッパーで味付けされていて更にこの焦げも中々で......」

 

クリーブランドはいきなり食レポを開始したが何故か途中で辞めてしまった。俺は何故かいきなり食レポをしたのか戸惑い、食事の手を止める。

 

「ごめん...指揮官は味を感じないからさ。だから私がこうして味を伝えれば良いかなって思ったんだけど...上手く伝わらないような気がしてますます指揮官が苦しむ事になるかもしれないから....」

 

クリーブランドは俺の為に食レポをしたのだ。もう味を感じない俺が少しでもこういう味付けだって知れる為に。

 

「続けて。」

 

「え...いやでも...」

 

俺は彼女の心遣いに感激しながら彼女に続けるように言った。

しかし、クリーブランドには続ける気は無かった。

俺は、一つのパンを食べる。

 

「クリーブランド、このパンって甘い?それともジャムとかいる?」

 

「え?ちょっと待ってて...」

 

クリーブランドはつられてパンを一口頬張ると味を確かめるように何度も噛む。クリーブランドは頬張ったパンを飲み込んだ後、味について話した。

 

「えーと、ほんのり甘いからジャムはいらないかも。」

 

「美味しい?」

 

「う、うん。」

 

「うん。それでいいんだよ。」

 

「え?」

 

クリーブランドは食べる手を止めて俺の話を聞く、俺も食べる手を一旦止めてクリーブランドの目を見て話す。

 

「俺はクリーブランドのその行動が嬉しいんだ。上手く伝えようとしなくても美味しいって言ってくれれば俺はそれで良いから。」

 

「指揮官...」

 

俺の励ましは届いたのかは分からないがクリーブランドは下を向くのは止めた。俺はフォークでハッシュドポテトを一つ指して、行儀が悪いのだが食べ物を上に向かせる。

 

「さ、そんな顔してないで次はこのハッシュドポテトの食レポを頼むよ。海上の騎士様?」

 

俺はからかうように彼女の通り名を言う。クリーブランドはそれを呼ばれた瞬間そう呼ばれている事に自覚を再度持ちさっきのような暗い顔が消え、けどその代わり少しムッとした顔になった。

 

「もぅ...今そう言うのはずるいぞ指揮官。...でもありがとう!」

 

クリーブランドは白い歯を見せながら満面の笑みを浮かべる。

その後クリーブランドは持ってきていた飲み物..コーラかな?それを飲み始める。

その笑みにつられたのか俺は少し微笑んでしまう。

 

「やっぱりその顔が良いよ。可愛いし。」

 

するとクリーブランドは口に含んでいたコーラを俺目掛けて吹き出す。綺麗に霧状になったコーラは俺の顔や髪やら服にべっとりと付いてしまう。ジュースのベタつきが髪に絡みついて少し髪がベタ付いてしまった。

 

「わわ!ごめん指揮官!大丈夫か!?」

 

その行動でまわりにいた奴らもこっちに向く。ちょっと注目の的にされているのは無視してクリーブランドが何故いきなりコーラを吹き出したのか気になる。多分何かに動揺したと思うのだが....

 

「あぁ大丈夫だよ。それよりどうしたまるで何かに驚いたような気がしたけど?」

 

そう問うとクリーブランドは急に赤面して手で顔を覆う。そして開いた指の隙間からチラチラとこちらを見ていた。

 

「そ、それは...指揮官が私のことを...か..かわ....」

 

歯切れの悪い言葉遣いで何を言ってるのか分からないので俺はクリーブランドに近づくようにテーブルから体を乗り出して耳をよくすませる。するとますますクリーブランドの声は小さくなりほとんど聞こえなくなっていた。

 

「あ...あわわ....そ、それより!早くその服とか身体とか洗わないと!この時間ならまだ誰も入ってないから早く早く!」

 

「へ?ちょ!?」

 

クリーブランドは食事を中断させて俺を大浴場まで引っ張った。

KAN-SENの力の前に為す術も無く大浴場に連行され、クリーブランドは基地の中を疾走してあっという間に大浴場に着いた。

 

「着替えとかはベルファストやメイド達に言っておいて準備させるから!それじゃごゆっくり!!」

 

クリーブランドは俺を更衣室に無理矢理入れるとすぐ様出て行った。

取り敢えず体のベタつきとかが気になるので服を脱いで風呂に入る。

クリーブランドは誰もいないと言っていたが心配なので更衣室を見回る。他のやつの着替えは無かったので取り敢えず誰もいないのは確かだ。

俺は少しの安心感を感じて大浴場へと入る。

 

その後に入る四人に気づかないまま.....

 

 

「もう〜明石ちゃんのせいで酷い目にあったよ〜。」

 

泣き顔でどうしてこんな事と嘆くジャベリン。

 

「すみませんなのです。明石の作る発明品は便利な物ばかりですがたまにこういうことがあるのです...ケホッ。」

 

明石の発明品の故障の爆発に巻き込まれながら灰だらけで少し咳き込む綾波。

 

「おかげで皆真っ黒。着替えもあるし綾波と一緒にお風呂に入れる。」

 

そんな事より綾波と一緒にお風呂に入れる喜びを感じるラフィー。

 

「あれ...これって...」

 

「ユニコーンちゃんどうしたの?」

 

「う、ううん。なんでもないの。」

 

何かに気づいたユニコーンだがそんな事ないと思い無視をするユニコーン。四人は灰だらけになった服を脱ぎ、仲良くお風呂に入る。

...一人の男が入ってる事を目撃しながら。

そして時が凍りついたような感覚が彼らを襲った。

 

「............はぇ?」

 

「「........へ?」」

 

一人の指揮官とジャベリン、ラフィー、ユニコーン、綾波の四人が指揮官と四人のKAN-SENを見つめる。世界が一緒に止まったように皆感じ、そして一人の男と一人のKAN-SENの叫びで止まっていたような時が動き出した。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?!?」

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?指揮官どうしてここにいるのぉぉぉぉ!?」

 

指揮官とジャベリンの叫びが大浴場に響いた。

 

 

 

 

何とかその場を治められて皆は落ち着く。いや皆と言うより俺とジャベリンだけ取り乱したのだが。とにかく今俺たちは五人仲良くサウナに入っている。なぜサウナなのかは知らん、ラフィーが決めたのだから。

因みに俺は今あの時のように目隠しはしていない。

ラフィーが必要ないからと言ったから取り敢えず言う通りにしている。

もう随分と長くサウナに入ってるので皆の様子を見る。右を見るとジャベリンとラフィーがいる。ジャベリンとラフィーは大丈夫そうだがラフィーは格好が大丈夫じゃ無かった。皆はタオルを体に巻いて見せないようにしているのにラフィーと来たらタオルを肩にかけて隠せているのは胸だけだ。大事な所は饅頭型のおもちゃで何とか隠していた。

 

「..指揮官、エッチ。」

 

「え...あ、ごめん...」

 

そんな格好でそれを言うのかと少し理不尽に思いながらも俺は反対を見る。反対には隣にユニコーンとその隣には綾波がいた。

ユニコーンは何度か苦しそうに息をしていた。俺はふらついていたユニコーンを支えるようにユニコーンの両肩を掴む。

 

「大丈夫か?無理はするなよ。」

 

「だ、大丈夫。でも、もうちょっとこうしていて...?」

 

ユニコーンにこのままでいるようにと言われ、俺はこのままユニコーンを支える。やはり長居しすぎたせいかユニコーンは俺の肩に寄り添って来た。

 

「えへへ...お兄ちゃんとくっ付いてる...//」

 

「ん?何か言った?」

 

「う、ううん!何でもないよ!」

 

ユニコーンは手をふってあわあわと否定する。まぁ、聞こえなかったからさして問題は無かった。ユニコーンは大丈夫そうなので次は綾波の様子を見る。綾波は大丈夫そうだったが何やら考えこんでいるようだった。

 

「綾波ちゃん大丈夫?もう上がる?」

 

心配したジャベリンはそう言い、綾波は首を横に振った。

 

「考え事をしてただけです。...重桜の皆が心配なのです。」

 

綾波は重桜の皆のことを心配していた。確かに赤城さんは恐らくまだ行方不明でこの前の戦闘で重桜のオロチの力で使役してきたセイレーンの艦は全て機能停止をしたので重桜のほとんどの人達がオロチ計画について疑惑を持っているはず。現段階では重桜の詳しい事は分からない故、綾波は少しの不安に狩られる。

 

「...アズールレーンの皆は良い人達ばかりなのです。でも重桜の皆も大切な人達で...」

 

「大切な人達」その言葉に俺は胸が掴まれたような苦しさを少し感じた。それは俺にも当てはまるからだ。昔過ごした人達。重桜の人達は俺を育てたと言っても過言では無い人達ばかりだ。

そんな人達と俺は今戦っている。その事実に恩を仇で返すような事を自覚をしているからこんな気持ちになる事は分かっている。

 

「綾波は重桜の人達を助けたいのです。」

 

綾波は迷いのない答えではっきりと言った。自分のやりたい事がしっかりと持ったその真っ直ぐな目を見て迷いが吹っ切れた綾波に安心感を感じる。

 

「うんうん!皆で重桜の人たちを助けようよ!」

 

ジャベリンは立ち上がり、綾波の前まで近づいて綾波の両手を握る。

 

「綾波の大切な人達。ラフィーにとっても大切な人達。」

 

ラフィーは無表情ながらも親指を立てて自分も助けるという意を示す。ユニコーンも同じなのか綾波に天使のような笑顔でじっと見つめる。

 

「盛り上がってる所悪いがそろそろ上がらないか?もう結構経ってるが....」

 

俺は水を指すようだがこれ以上長くサウナにいても意味が無いので上がることを提案した。

 

「た、確かにちょっと無理かも...」

 

ジャベリンはおでこを添えてふらつき出した。俺たちは暑いサウナを抜け出した。皆長時間入ったせい顔額から汗が出ているのが目に見えて分かった。

 

「指揮官。汗ひとつかいてない。凄い。」

 

「...え?」

 

ラフィーは俺の顔と体をマジマジと見ると俺が汗をかいてないことに気づく。俺は額や体をさわってみると汗のようなベタつきは感じられなかった。確かに俺は汗をかいていなかったのだ。

 

「暑くなかったのですか?」

 

ジャベリンは手を団扇のように仰ぎながら少し涼しんむが今いるのは浴場なのであまり意味は無いと思うのは心の中にしまい込む。

 

「いや、暑かったんだけど...まぁ取り敢えず先に着替えて来て。俺と一緒に出ると何だか誤解をうみそうだから。」

 

俺はここにいる皆と一緒に出ると一緒に入った事がバレてスキャンダルみたいな事が発覚するのを恐れて...いやそれ以前に着替えを一緒にするなんて以ての外だったからだ。だから俺はジャベリン達が着替えた後俺は浴場から出ることにする。四人もそれを承諾して先に浴場に上がった。

四人が上がったことを確認すると俺はもう一度額を触る。感じられるのは温泉の湯の感触だけだった。塩分特有のベタつきは無かった。

 

「....まさかな。」

 

俺は自身の変化に違和感を持ちながらジャベリン達が着替えるのを待った。そんなに時間が立たないままジャベリン達が更衣室から出た音がしたので俺は浴場を出てベルファストが用意してくれたであろう服を着替え、ある人の部屋へと足を運ぶ。外に出てユニオン寮へと移動する。そして俺は一つの扉の前に立ち止まる。

ドアをノックして部屋の主が居るどうか確認する。

 

「俺だ。エンタープライズいるか?」

 

俺が行ったのはエンタープライズの部屋だ。あれ以来俺とエンタープライズは会っていない。いや、昨日俺はエンタープライズをみたが彼女は俺を見ていない。一度話し合うべきだとここに来たがノックをしても返事が無い。ドアを開けようとするとドアが押し返すような衝撃が来た。どうやら、エンタープライズがドアを内側から押さえ込んでいるのだ。

 

「...指揮官か?私になんの用だ。」

 

最早英雄の威厳を感じられない弱々しい声がドアから聞こえる。

相当気に病んでいるのか俺は用件を手短に言う。

 

「今日の夜、俺とお前が初めて会った場所で話がしたい。」

 

俺はドアの向こうにいるエンタープライズにそう言った。

しかし、反応が無かった。俺は彼女の名前を呼んだが返事が無い。

時間が少し経って、ようやくエンタープライズから返事が来た。

 

「私は貴方を二度も撃ったんだ...もう私に構わないでくれ...」

 

「それでも待ってるぞ。」

 

弱々しい返事とは対称的に俺ははっきりと待つとエンタープライズに向けて言う。俺は早々とドアの前から立ち去る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_現時刻 重桜 横須賀鎮守府

 

「オロチを封印するだと...?本気で言ってるのか長門!」

 

加賀の叫びが辺りの桜を散らせるような勢いを出す。

しかし長門はそれを怯むことなく平然として加賀を突き放すように反論する。

 

「計画を一時休止するだけだ。赤城がいない以上無理は出来ぬ。」

 

長門はオロチ計画の発案者である赤城が未だに不在な為計画の一時休止を加賀に言い渡すが加賀はそれに納得しない様子だった。

 

「誰の入れ知恵だ?」

 

「あくまで余の判断だ。」

 

長門の言うことに偽りは無かった。だが、翔鶴のオロチ計画の疑惑も長門も薄々は感じていた。何しろセイレーンを使役するなど鉄血でも他の陣営でもなし得なかった事を黒箱一つでできるのだから。

しかもそれを詳しく説明すらしないのだから尚更だった。

 

「甘いぞ長門。オロチ無くしては重桜に未来はない。」

 

加賀も引きはしなかった。加賀は長門に近づこうとするが側近の江風に止められる。加賀は歯を食いしばり江風を睨むが江風は表示一つ変えずに加賀を睨み返す。

 

「加賀よ。お主はしばし休むと良い。赤城を失った悲しみ察するに余りある。ゆっくりと心を癒すがよい。」

 

「長門...!」

 

考えが変わらぬ長門を加賀は獲物を食い殺すような勢いで睨む。

 

「...優海がどうなっても良いのか!」

 

加賀はある男の名前を叫ぶと長門だけではなく、側にいた陸奥と江風も名前に反応するように獣耳を無意識に動かす。

 

「五航戦から聞いた話によるとあいつは艤装を持っていたそうだな。だが私にとってはそれはどうでも良いが、アズールレーンの奴らはどう思う?奴らは優海を不信に思い、優海を手にかける事も躊躇わない筈だ。」

 

長門達は脳裏にその惨劇がよぎった。それは直ぐに振りほどくように考えるのを止める。長門は一瞬、自分の考えが折れそうだったが一人の命と重桜の未来を天秤にかけ判断を下す。

 

「...余の判断は変わらぬ。下がれ。」

 

自分の表情に付け込まれないように加賀に背を向け、凛とした声で加賀を突き放すように答える。加賀は不本意ながらもこの場から立ち去った。

 

「...神子様。」

 

「言うな。我は重桜を担う者として判断を下した。一人の命と重桜の未来...天秤にかけるほどでも無い....」

 

長門は江風に顔を背けて話す。発した言葉は先程と違い弱々しく、これで良かったのかと思わせるような戸惑いが感じられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

_現時刻 アズールレーン基地

 

ユニオン寮を出て、執務室へと戻ってきた。執務室の扉を開け中に入るとイラストリアスが居た。まるで俺の事を待っていたかのようだった。

 

「お待ちしておりましたわ。指揮官様。」

 

イラストリアスは笑顔で俺を迎えてくれた。

 

「どうしてここに?」

 

「私は指揮官様の秘書艦なので。」

 

そうだった。俺は彼女に秘書艦を一度止めてとも言ってないのでイラストリアスはまだ秘書艦だった。

しかし、俺が指揮官を続けられるのは少なくともあと二日...

これ以上秘書艦をやらせる意味もないだろう。

 

「早速でごめんだけど秘書艦はもういいよ。今までありがとう。」

 

「...そうですか...少し残念ですね。」

 

イラストリアスは笑っていたが俺はイラストリアスに秘書艦を辞めさせた事実に少し罪悪感を感じる。現にイラストリアスは笑っていたが少し悲しげな顔をしていた。

 

「ごめん。俺、指揮官続けられるのか分からないからさ...」

 

「でしたら、少し外に出ませんか?執務の方も無いと言っても過言ではありませんし...」

 

俺は執務の確認の為に机の上を見たが確かに書類はほぼ無かった。

俺でなら一瞬で終わらせる量だ。そう言えば、確か俺が気を失っている間はベルファスト達が執務の方をやっていたんだった。

 

「分かった。それじゃ外に出ようか。」

 

俺はイラストリアスと外へと出掛けた。話が無い中、歩く音だけが響く廊下でイラストリアスについて行くと、向かった先はロイヤル寮だった。ユニオン寮とは違い派手な装飾が目立つ。その中でもイラストリアスは一つのテラスへと足を運ぶ。テラスは海が一望でき、小さな白いテーブルと椅子があった。

 

「お待ちしておりました。イラストリアス様、ご主人様。」

 

テラスにはベルファストが待っていた。どうやら、俺の事を待っていたらしいが...俺はテラスにある白い椅子に座る。イラストリアスは俺の前にある椅子に座り、ベルファストはイラストリアスに青い色の飲み物...サイダーかな。それをワイングラスに注ぎ、その縁に一切れのオレンジを添えてイラストリアスに渡した。

 

「...ご主人様は如何なさいますか。」

 

ベルファストは曇り顔で俺に聞く。ベルファストは俺の味覚の事を知っている数少ない者の一人だ。もう俺に味が感じられないことを知っているから何を出すのか躊躇っている。

 

「温かい紅茶で良いよ。砂糖とか何も入れなくていいから。」

 

ベルファストはティーカップにお湯を注ぎカップを温める。少し時間がかかるため、イラストリアスが話しかけてきた。

 

「恐れていた事が起こってしまいましたね...」

 

「恐れていた事...?」

 

俺はなんの事か分からず首を傾げてしまう。ベルファストの方を見ると何やら思い当たる節がある顔をした。

 

「エンタープライズ様の事ですわ。彼女は強いですが心は誰よりも繊細だった...分かっていたことなのに。」

 

イラストリアスは右手で頬杖のように顔を預け考え込む。

 

「避けられないことでした。今エンタープライズ様は自身と向き合う必要があるのですから。」

 

ベルファストはそう言いながら、紅茶を注ぎ俺に渡した。

カップから感じるほのかな熱さが手に感じる。俺は残っている感覚を大切に感じながらカップを両手で掴む。

 

「自分自身と向き合うか...」

 

俺は二人には聞こえないほど小さな声で呟きながら紅茶の水面が俺の顔を映し、俺は映った顔を見つめる。

 

「立ち直れるさ。」

 

俺はカップを置いて二人に伝えるように言う。二人は俺に顔を向けて話を聞く。

 

「あいつはお人好しで優しいからな。現にホーネットの部隊が襲われた時に真っ先に駆けつけたり、東煌の子達を誰よりも早く駆け付けて助けたりしてたらしいからな。それにあいつはユニオンの英雄だ。」

 

俺はエンタープライズが戦ってきたことを思い出す。

ホーネットが五航戦に襲われた時には誰よりも助け、俺はその時拉致されていたが、東煌の子達を誰よりも早く駆け付けて救助した事は東煌の子達からも聞いている。

だから立ち直れる。あいつの強さはそこにある。だから立ち直れると思った。

俺の言葉に二人は微笑んだ。

 

「確かに。仰る通りですご主人様。」

 

「はい。流石は指揮官様ですわ。」

 

「そ、そんな褒めることかな...アッっ!?」

 

俺は少し照れくささを感じ紅茶を飲もうとしたが。容れたばかりなのでまだ熱く紅茶が舌に触れた瞬間に熱さに襲われ、紅茶を直ぐにテーブルに置き舌を冷ますように出す。熱さで咄嗟に下げたので紅茶が少し零れてしまった。それを見たイラストリアスは小さく笑い、ベルファストは心配そうな目付きでこちらを見つめる。

 

「申し訳ございませんご主人様。熱かったですか?」

 

「あぁ大丈夫大丈夫。...うん。熱いのはまだ感じられる。」

 

俺に近かったベルファストには俺の呟きが聞こえたのかこちらを更に見つめる。俺は大丈夫と言う意味で首を縦に振った。それが通じたのかベルファストは何も言わなかった。気を取り直して紅茶をゆっくりと飲む。

 

「うふふ。指揮官様もおっちょこちょいな所があるのですね。」

 

「うぅ、面目ない。」

 

俺は持っていたハンカチで濡れた口元を拭く。ベルファストは紅茶や菓子がある荷台からタオルを取り出してそれでテーブルに零れた紅茶を拭いていく。

 

「そうですわ。指揮官様はこの後お時間ありますか?」

 

突然イラストリアスから時間はあるかと尋ねられた。執務の方があると一瞬考えたが別に大した量でも無いので問題ないと思った。

 

「あるけど、どうしたの?」

 

「では、この後私とデートをしませんか?」

 

時が止まった。いきなりデートのお誘いが来たのでその場が固まる。

ベルファストは表情こそ変わらなかったが流石にいきなりだったのか作業していた手が少し止まった。

 

「ベルファストも一緒にどうでしょうか?」

 

まさかのベルファストも誘うイラストリアスであった。

それを聞いたベルファストは急ぐように紅茶を拭く。拭き終わった後少し咳払いをしてイラストリアスに返答する。

 

「お誘いの事大変恐縮ですが私はメイドでございます故ご主人様との個人的な行動は謹んでおりますので。」

 

「あら、指揮官様の部屋に入って一緒に寝たのにですか?」

 

「え?どういうこ....」

 

突如後ろからの衝撃に為す術もなく俺は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

ベルファストの手刀により指揮官は気を失った。

ベルファストの顔は珍し紅くなっており顔から火が出るとはこの事のように動揺していた。

 

「...何故それを...?」

 

「聖なる光の導き...と言うより見てしまいました。」

 

イラストリアスは指揮官の事が気になって近くを通った後ベルファストを目撃したと言う。その後開いた扉の隙間からベルファストが指揮官と一緒に寝てたのをしっかりとこの目で見ていたのだ。

 

「それで、指揮官様と一緒に行きますか?」

 

ベルファストは落ち着くように深呼吸して答えを言う。

 

「私もお供させていただきます。」

 

こうして指揮官とイラストリアスとベルファストとのデートが決まった瞬間である。

 

「いてて...何だったんだ今の衝撃は。」

 

指揮官も丁度よく起き上がり、右手を首筋に当てる。まだ状況がわかってない今、イラストリアスに説明を求める。

 

「指揮官様は私とベルファストとデートする事に決まりましたわ。」

 

「え?」

 

「このベルファストもお供させていただきます故。」

 

いつの間にかベルファストもデートすると決まった状況が呑み込めず、指揮官は二人に翻弄されるがままにデートする事に決まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_現時刻 ????

 

暗い深海のような所に足を運ぶ。周りは海のような景色ただそれだけ。いや、所々に何かコードのような物が何処かに集中していた。

俺は歩き続けると人影があったので立ち止まる。

影はクラゲのような形をしており、白く淡く光っていた。

 

「お前が俺に何の用だ。オブザーバー零。」

 

影は名前を呼ばれたせいか動き出し姿を表す。

そいつは全体的に白く、肌も服も髪も白かった。左前髪の一部だけが青かったが艤装除く全てがとにかく白かった。零は無口を貫いたまま艤装を展開してそれに座り俺を見下していた。

 

「おい。なんとか言ったらどうだ。」

 

しかし零は何も言わなかった。俺はその態度が気に入らず舌打ちをする。呼ばれたからここに来たのに呼んだ側がこうじゃ話にならないのでそのまま立ち去ることにしようとしたその時零の口が動く。

 

「貴方に興味を持ったわ。」

 

「はぁ?」

 

意味が分からず、俺は呆れた。

 

「未完成でありながらもアヴィータとも渡り合えるその力、それなのに貴方はまだ力を欲する...何故?」

 

「目的の為だからだ。というかあいつはお前の差し金だったのか。」

 

俺の問いに零は答えなかった。そればかりか顔色も表情も変わらず無反応だった。

 

「目的...貴方の目的はどちらにしろ貴方を破滅させる。貴方は破滅を望んでいるのかしら。」

 

全てを見透かしているかのように俺に問いかける。全て分かっているなら答える義理は無いと思ったがそれでも俺は零に話すことにした。

 

「俺は世界と皆の為なら自分がどうなろうが構わない。それだけだ。」

 

俺はこれ以上話すことはないと思い、この場から立ち去る。

 

「世界の為なら自分がどうなっても良い...ますます興味を持ったわ。」

 

零は無表情のままだったがなぜが笑っていると感じた。まぁ、俺にはどうでもいい事だが。

暗く、深海のような暗い道を足音を立てながら一歩ずつ歩いて行く。

そして俺の計画ももうすぐで始まろうとしていた。




今日は東煌の平海と寧海と会った。
彼女達が救助された時には俺は重桜に連れ去られたので時間を取ってようやく会うことが出来た。
どうやら二人はこの基地で生活費を貯める為に店を出していたらしい。
寮の提供と食事ぐらい無償で提供すると彼女達に言うと二人はここの基地は居させてもらってるだけで充分だとしぶしぶ断った。
聞く所によると彼女達は日々節約の為に質素な生活をしていたらしい。
そう聞くと涙が出るので彼女達が売っている肉まんというものをを沢山買った。
肉まんを食べるのは初めてだったので緊張したがとても美味しかった。ふわふわな皮に中には熱々の豚肉やタケノコや玉ねぎ等の具が沢山でその具材もタレでしっかりと味付けされていた。
今度は差し入れでも持ってまた食べたい。

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