もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜   作:白だし茶漬け

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どうも白だし茶漬けです。
授業がオンライン授業になりました。
家でゴロゴロする時間が延びました。
最近はいかがですか?家で出来ることが限られている中、外出自粛の期間が延びてしまいましたが、私の小説で少しでも家で楽しめたら幸いです。


お守りと願いと虚構と

第34話【お守りと願いと虚構と】

 

ある昼下がりの日、服などの荷物を詰め込んだ鞄を背負い、玄関で靴を履く。

赤城姉さんと加賀姉さんが俺の事を見送来るように玄関に立っている。

今日は高雄さんの所で二週間に渡っての鍛錬をするので高雄さんの所に泊まりに行くからだ。

勿論、そこには愛宕さんだっている。しかし、赤城さんは妙に愛宕さんのことを嫌っている為、泊まりに行くことに少し反対している。

現に今、俺を見送っているけど嫌そうな顔をしていた。

 

_気をつけてね?特に愛宕には。

 

大丈夫だよ。愛宕さん優しいから。まぁ、過保護な所もあるけど。

 

_過保護って...例えばどんな風に?

 

過保護と言う言葉に赤城姉さんは気になりだした。俺は愛宕さんの行動を思い出しながら赤城姉さんにそれを伝える。

 

えぇっと...一緒にお風呂に入ったりとか寝たりとか...自分で食べられるご飯をわざわざ、あーんしたりとか...

 

_分かったもう良いわ。だったら尚更これを渡すわ。

 

これは...?

 

赤城姉さんは俺に白い式神のような紙を数枚渡した。

直ぐに赤城姉さん達が使ってる物と同じと分かった。

だが、何故これを渡したのか分からず、思わず戸惑う。

 

_それはお守りだ。察しがついてると思うが私と姉様が使ってるのと同じものだ。

 

加賀姉さんも赤城姉さんが渡した物と同じ物を俺に渡す。

しかし、お守りと言うがそれなら一枚でも良いはずだけど...

 

_お前がもし危険な目にあったらそれを使え。守ってくれるはずだ。

使い方は分かるか?紙を投げると炎の矢となり、少し念じると艦載機に変わる。

 

加賀姉さんからお守りの使い方を教わり、俺はお守りを服の裾の中に入れる。これなら直ぐに出せるし、無くすことも無いだろう。

 

二人ともありがとう!それじゃ、いってきます。

 

_行ってらっしゃい。気をつけてね。

 

_ちゃんと鍛錬してもらえよ。

 

俺は二人に見送られながら玄関のドアを開け、高雄さんの所に向かう。

外に出た後しばらく、服の裾からお守りを一枚取り出す。

二人に贈り物をされたのが嬉しくなりしばらくは笑いながらお守りを見ながら代わり映えのない石畳の道を走り続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜風の肌寒さが服を貫くように寒さが襲いかかる。

俺は今ある人を待っている。いつ来るかも分からない時を待ち、寒さを堪えると後ろから足音が聞こえた。草を踏む音が一定の感覚で聞こえ次第に大きくなっていく。

後ろに振り返ると、灰色の長髪と黒のコートが風でなびき、軍帽を風で飛ばされないようにしっかりと鍔を持ちながら来た者の名はエンタープライズ。

来てくれないかと不安だったが今その不安は消えた。

 

「来てくれたかエンタープライズ。」

 

「指揮官の命令に従っただけだ。」

 

エンタープライズは俺から少し離れた所で地面に座る。その距離はさほど遠くは無いが俺とエンタープライズの間には大きな溝があるかのように見えた。

 

「ところで私になんの用だ。」

 

「会って話をしたかったんだ。最近、ろくに部屋から出てないって聞いてね。」

 

別にエンタープライズと何かを話し合うなんて気はしない。

ただ会って話したかっただけだ。今のエンタープライズの状態で俺が全てを話してその後の決断を委ねようとしても彼女は本心では無い答え、もしくは何も答えないだろう。

 

「はぁ...そんな事より貴方は自身の全てを話すと聞いたぞ。そして自分の処遇を私達に委ねると。...私にそれを判断する資格は無い。」

 

エンタープライズは軍帽を深く被ってこちらに顔を背ける。

相当俺を撃った事に責任を感じてるようだった。

ここで俺が気にしないと言っても、彼女は更に自分を責め続けるだろう。どうしようかと悩んだ末、話題を変えることにした。

 

「...ヨークタウンと話したよ。」

 

ヨークタウンと言う彼女の姉の言葉を聞いてエンタープライズは顔を上げる。俺はその反応を見て話を続ける。

 

「やっぱり似てるね。エンタープライズとヨークタウンは。」

 

「どういう事だ?」

 

「どこか他人と距離を置く所、でも本当は誰よりも他人を思ってる所とか。」

 

ヨークタウンは自分がもう悲しまない為に他人と関わらず、暗い底に自ら居続け、更に壁を作っていた。だけどそれは本人は望んでいない。

エンタープライズも同じ様な者だ。誰かと関わろうとせず、ただ自分を兵器と言い聞かせて戦う。だけど、お人好しで率先して誰かを助けようした。エンタープライズが東煌のKAN-SEN達を助けようしたのがいい例だ。

 

「よしてくれ、私はただの兵器なんだ....いやもう私は兵器すら無いのかもしれない...」

 

エンタープライズは軍帽をまた深く被る。

 

「私は...海が怖いんだ。ヨークタウン姉さんの足は私のせいで失って、仲間達を撃って、更には貴方を二度も撃ってしまったんだ...もう、私は使い物にならないただの鉄の塊に過ぎないんだ。」

 

俺は黙ってエンタープライズの言った事を聞くことしか出来なかった。今の彼女をどうにかする言葉や手段を俺には待っていなかった。

何も出来ない歯がゆさが言葉に出来ない悔しい気持ちにさせる。

 

「指揮官、教えてくれ...私は後何隻沈めれば良いんだ?」

 

「え?」

 

エンタープライズの突然の質問に戸惑ってしまう。

 

「あと何隻沈めればこの戦いは終わるんだ?いや、そもそも戦いは果たして終わるのか?教えてくれ指揮官...」

 

エンタープライズは俺に近づくと俺の両肩を掴んで答えを求めるように俺の目を見続ける。余程思い詰めてたのだろうか、エンタープライズのその目にはユニオンの英雄としての目ではなく、一人の女性のような弱々しい目だった。その目には少し涙を零して...

俺はエンタープライズの質問に満足のいく答えは出せない。

俺だってそんな事を考えてる時だってある。だけど考える程に答えは遠のいてくいような感じがあって、今もそれを考えて続けている。

だから答えなんて出なかった。俺はそのまま沈黙を貫いてしまった。

 

「...すまない。取り乱してしまった...」

 

答えられないと悟ったのか、エンタープライズは俺の肩を掴んでいた手を離す。その後さっきよりも遠くに離れて座り直す。

エンタープライズとの心の距離がまた離れてしまったが彼女の本心が見えた気がした。

 

「やっぱりお前は兵器なんかじゃない。お前は...」

 

しかし、俺の言葉は最後まで言えず、エンタープライズによって遮られた。エンタープライズは俺の言う言葉が分かったのか俺に言わせないように俺を押し倒す。急に俺に近づいた為彼女の軍帽は彼女の頭から離れてしまう。しかし、それはエンタープライズは気にしなかった。

押し倒されたせいで全身に衝撃が走る。

エンタープライズは俺の肩をまた力強く掴む。エンタープライズとの距離がこれまでに無いほど近く、彼女の灰色の長髪が俺の顔の周りを覆ってる為、俺が見えているのはエンタープライズの顔だけとなっている。

 

「やめてくれ...私は兵器だ!その為に生まれてきたんだ!だが...それすらも叶わない今の私には存在する価値は無い...」

 

「じゃあ俺のような人間や人類は存在価値が無いと言いたいのか?」

 

「え...?」

 

エンタープライズが俺の肩を掴んでる力が弱まった。しかし、俺は跳ね除けようともせず話を続ける。

 

「俺たち人類は生まれてきた理由なんて持ってない。生まれて来た使命なんて物もない。だけどこうして生きてる。それはお前たちだって同じだ。」

 

俺たちはKAN-SEN達のように何か使命をもって生まれてきたんじゃない。KAN-SEN達のように戦うために生まれてきた訳でも無いのに今もこうして生きている。

エンタープライズが言ったことは生まれてきた使命がない人類は存在価値が無いと言ってるような物だ。

彼女自身はそんな事は微塵も思ってない事は分かっている。

 

「俺は言ったはずだ。生まれてきた理由は変われなくても、戦う理由は変えられはずだって。」

 

エンタープライズはその時の事を覚えていたのか、俺があの時言ったことを思い出した。

俺はエンタープライズから目をそらさず真っ直ぐ目を見て話し続ける。

 

「それと同じ様に、人類だって生きてる理由が、生きていきたい理由があるんだ。」

 

「...私には分からない。もう私の事は構わないでくれ...私が人間の真似事をしても滑稽なだけだ。」

 

エンタープライズは俺から離れ、飛ばされた軍帽を拾う。エンタープライズは顔を見せないように深く被り、重い足取りでここを去る。

その姿を見て何も言えずにただエンタープライズを見送る事しか出来なかった。

 

「結局こうなるか...」

 

俺は地面に倒れながら呟く。エンタープライズの事をなんとかしようかも思ってここに呼んだがますます状況が悪化したように思えてきた。

長居は無用なので身体を起こすと一匹の鳥がこちらに向かってきた。白い頭に茶色の体と翼からハクトゥワシだ。

目を凝らしてよく見るとエンタープライズがいつも連れているいーぐるちゃんだった。

いーぐるちゃんは俺目掛けて近づいて行くので咄嗟に身構える。

しかし、いーぐるちゃんは近くで速度を落とし俺の隣に着地する。

 

「おお、びっくりした...どうしたんだ?」

 

動物と会話出来るわけでは無いがいーぐるちゃんにどうしてここに来たのか尋ねる。しかし、いーぐるちゃんは首を傾げたままで何も言わない。まぁ、言葉が通じる訳でもないので俺の一方的な推測をイーグルちゃんに突きつける。

 

「エンタープライズの事が心配だった?」

 

イーグルちゃんはコクリと頷いた。言葉が通じた事が面白おかしかったので俺は小さく笑う。俺はエンタープライズがいつもイーグルちゃんを自分の腕に乗せている事を思い出し、今なら出来るかもと思って俺はイーグルちゃんに腕を差し出す。

するとイーグルちゃんは俺の右腕に飛び移る。

いーぐるちゃんは意外と少し重く、油断するとバランスが崩しそうだった。

しかし、なんとか安定していーぐるちゃんを乗せることが出来た。

俺は右腕に乗っているいーぐるちゃんに言い聞かせるようにエンタープライズのことについて話す。

 

「エンタープライズは本当は優しい奴なんだ。誰よりもお人好しで、助けようと一人で突っ走て...だからユニオンの英雄って呼ばれてるんだと思う。強いだけじゃ無い、皆が認めるから英雄って呼ばれるんだと俺は思うんだ。」

 

言葉が通じないいーぐるちゃんにこんな事を言っても無駄だと分かってはいたが、彼女の近くにいるこの子には伝えようと思った。

いーぐるちゃんはただ黙って俺の話を聞いてくれた。一歩も動かずじっとこちらを見て。

 

「だから気にかけてあげてくれ。俺だと無理だからさ...」

 

いくら俺が気にかけようとも今の彼女には届かない。そんな現実と自分の不甲斐なさで歯を食いしばった。

それを見兼ねたのかいーぐるちゃんは俺のこめかみにコツンと弱く、くちばしで叩く。尖った口先なので少し痛くかった。

 

「いてて!どうしたんだよ...」

 

俺はどうしたのかいーぐるちゃんを見ると、いーぐるちゃんの目付きが変わったように見えた。まるでそんな事は無いと訴えてるようなそんな目だった。

勿論これは俺の一方的な推測だ、俺がそう思いたがってるだけかもしれないが、いーぐるちゃんの目は鋭く俺を見る。

その目を見て俺は弱気になっていた気持ちを吹き飛ばした。

 

「そうだよな。ありがとうな、励ましてくれて。さ、早くエンタープライズの所に戻れよ。」

 

俺はいーぐるちゃんを飛び立たせるように腕を振ると、いーぐるちゃんは空に合わせて空を飛ぶ。俺は宙を舞ういーぐるちゃんを見えなくなるまで見送った。

 

「さて、そろそろ来る頃かな...」

 

俺は海から近づいて来る気配を察知する。近づいて来る物を俺は難なくキャッチする。それは白い封をした二通の手紙だった。重桜との宣戦布告の時の戦闘時、鉄血と重桜にある手紙を渡していた。これはその返事だ。

この封はただの紙で無い。赤木さんと加賀さんが使っているものと同じものだ。俺用にと御守りで作ってくれたものを手紙の封になるように折ったものだ。だから自力で俺の場所まで移動出来た。

長門ちゃんとビスマルクには手紙を書いた際にこの封を投げるようにすれば後は俺の所に来ると手紙で伝えていたので今こうして戻って来た訳だ。

 

「まさか二通同時に来るとは思わなかったけど。」

 

これが来たことはビスマルクと長門ちゃんは二人とも同じタイミングに手紙を出したという事だ、そんなささいな奇跡に感心しながら、手紙の封を切る。

一通目の手紙は書き方的に長門ちゃんの物だった。

 

「どれどれ...」

 

手紙にはこう書かれていた。

 

主の提案に賛同する。

これは余の意思である。

 

「相変わらず固いな...ん?」

 

たった二行だけの手紙をよく見ると小さく折られた紙が後から貼り付けられていた跡があった。その紙を取って広げるとまた手紙のようなものがあった。

 

またそなたと会える日を楽しみにしている。

今度は昔のようにもっと話してくれることを期待しているからな。

 

「...うん。今度の日記は結構凄いからね。」

 

ふと長門ちゃんに日記を渡していた昔を思い出す。

江風さんに見つからないように忍び込んで長門ちゃんと陸奥ちゃんの三人の秘密の出会い。

今思えばあれから数年が経つのにも関わらず欠かさず...とはいかないがそれでも日記を書き続けていた。

思い出は一旦閉まって、次は鉄血からの返答の手紙を見る。

 

卿の提案に乗るが条件がある。

まず一つはこちらのセイレーンの研究の邪魔をしない事。

二つ、この同盟が成立した時、卿自ら鉄血基地に同行すること。

その際、鉄血の者に案内をさせる。

三つ、鉄血の者には危害を加えない。

以上の事を踏まえ、同盟の件を受理する。

 

 

「これは...俺の提案に乗るってことで良いのか...?」

 

俺はビスマルクの二つ目の条件を気にしていた。一つ目と三つ目の条件は何となく分かるが、二つ目の条件にわざわざ俺を鉄血に呼び出す理由が分からない。

何か理由があるのかは知らないが今はその判断材料が無いため考えるのは後にした。

俺は二通の手紙を綺麗にしまう。夜風が急に吹き、寒さが襲いかかる。

 

「やっぱ夜は冷えるな...戻るか。」

 

俺は寒さに負けない為、腕を擦り、摩擦熱で体温を温めながら駆け足で自室に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

_現時刻 重桜

 

重桜にある数多くある宿の一室、鉄血のKAN-SEN達は夜に浮かぶ月を肴に杯を交わしていた。

 

「やっぱり重桜のお酒って美味しいわね〜どんどん飲んじゃえ〜」

 

もはや何杯目がも分からない杯をプリンツ・オイゲンは一杯、二杯とどんどん飲む。

そのせいか彼女の顔は赤くなり、呂律も回らなくなり普段のようなクールさは欠片程もなく、躊躇無く鉄血のKAN-SEN達に絡んでいく。

 

「やっぱり姉さんのお胸は〜ヒック...ぺったんこね〜私が揉んで大きく...しってあげる〜」

 

「余計なお世話よ!ああもう酒臭いっ!あっち行きなさいよ!ひゃ...胸を揉むな!胸を!」

 

オイゲンは姉であるヒッパーの背後をとりヒッパーの胸を揉む。

ヒッパーは必死にオイゲンを振りほどこうとする身体を左右に振ったりオイゲンの顔を身体から剥がそうとしても、どう足掻いてもオイゲンは離れずそのまま彼女になされるがままだった。

 

「はぁ...全くあの人は....」

 

それを見兼ねたZ23、またの名を二ーミは頭を抱える。

彼女の酒癖には昔から困らせていたので今回はどう被害が出るのかと考えると二ーミは更に頭を抱えた。

 

「まぁまぁ、でも確かに重桜のお酒は美味いな。鉄血とは違うものがある。」

 

彼女の隣にいたZ21、皆からはレーベと呼ばれている彼女は杯を一杯飲み干す。酒の後味を味わった後更にもう一杯、空になった杯に酒を注ぐ。

そして一人、ただ静かに夜空を見上げながら杯を飲む者がいた。

長い白髪に鋭い赤い目に胸元が大きく開いたタイトスカートの黒い軍服と軍帽を被った姿はまるで伯爵のようである。

 

「ほう、これが鬼をも殺す酒か...だが全てを憎んでいるこの私の憎悪までは殺せまい...」

 

「カッコつけてるところ悪いけど随分と酔ってるでしょ。」

 

レーベの的確なツッコミは当たっていた。よく見るとツェッペリンの顔は赤くなっておりかなり酔っていた。

 

「それより...二ーミは確かあの指揮官の事について調べていたな...ヒック我にもそれを聞かせてもらおうか。」

 

ツェッペリンは二ーミに近づく、あまりの酒臭さに二ーミは一瞬息をとめた。

 

「そうですね...この際ですのでここで全て話しましょうか。」

 

二ーミは指揮官の事を調べた資料を取り出す他にも自前の眼鏡を掛ける。

 

「お、二ーミ先生の出番かな?」

 

「お〜待ってました〜。」

 

酔いのせいで謎のテンションになってるオイゲンを二ーミはとにかく無視をして話を続けた。

 

「まず結論から言いますと、あの指揮官に関するデータはほぼ全て嘘でした。名前、年齢、経歴、出身等全てです。」

 

「はぁはぁ...何よそれ...」

 

オイゲンがようやく離れて体の自由を取り戻したヒッパーだがかなり弄ばれてしまったせいか息が荒く、満身創痍だった。最早立ち上がる気力がないのかそのまま畳の床で倒れ込んでいる。

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

「だ、大丈夫...続けて。後で...あいつ殴ってやるわ....」

 

二ーミの気遣いにヒッパーは遠慮し、変わりに妹であるオイゲンの殺意に目覚めた。しかし、当の本人のオイゲンはまだ酔いから覚めてないのかそのまま床に仰向けになって倒れ込む。

 

「...話を続けますね。彼の名前はマーレ・テネリタスでは無く天城優海(あまぎゆう)。名前からして重桜の出身ですね。彼はここに三年ほど住んでおり、事の始まりは赤城が近くの海域を哨戒してた際に保護したとのことです。」

 

二ーミはその後も重桜のKAN-SEN達から聞いた情報を元にした資料を読み上げる。

彼の過去、ここで過ごして来た事を読み上げる。

 

「ん?だったらそのマーレ本人はどうなってるの?実際には存在しない人物か?」

 

レーベは疑問に思った。その優海が、マーレと言うに成りすましたとしたらその本人はどうなっているのか。本人が存在していたら成りすます事など出来ないし、そもそもそんな人物がいるのか、もしくは存在していたか、答えは直ぐに二ーミの口から出た。

 

「その方は十ニ年前亡くなっていると考えます。」

 

その言葉を聞いてツェッペリンとオイゲンは酔いが覚めたのか先程のような酒乱は無くなった。

酒の酔い雰囲気は一気に無くなり全員が、二ーミに注目する。

二ーミもその事に気づいたのかより一層緊張感を持って話を進める。

 

「このマーレさんは十ニ年前セイレーンの襲撃に巻き込まれています。私達がアズールレーンの指揮官を奪還しようとしたあの島で。」

 

マーレは十ニ年前、二ーミ達がテンペストに初めて遭遇したあの島がマーレが亡くなった事を知った。

あの島はセイレーンによって崩壊された、マーレはそれに巻き込まれて亡くなったと二ーミは考えていた。

 

「ですが、公式では奇跡的に生還したとですが...その時その人は今のアズールレーンの指揮官...優海さんのことでしょうね。」

 

世間ではマーレは生き延びていた事が報道されていた。しかし、その時は本人では無く、何かの拍子で優海さんがマーレに成りすましていた。

 

「ゼェハァ....でも、どうしてその優海がマーレに成りすましていたわけ?顔は似てるけどそれだけじゃ理由としては弱いでしょ?」

 

息を整え、ようやく呼吸が安定したヒッパーは優海が何故成りすましていた理由について問う。

確かに、優海とマーレの顔は似ていた。瓜二つと言っても過言では無い程に、しかし、それだけでは成りすました理由としては弱い。

 

「テネリタスって確か英雄の家系でしょ?後継者にしたとか?」

 

「わざわざ血の繋がりが無い奴をそんな大層な後継者する?」

 

レーベの意見にヒッパーは反論する。

その後も議論は続いたが納得のいく結論は出なかった。

 

「はぁ...この議論は後にしましょう...」

 

行き着くことが出来ない議論に諦めがつき、議論は打ち切ることにした。

 

「つまりは、あの指揮官は嘘で塗り固められてるってことね。」

 

酔いから覚めたオイゲンか腕と体を伸ばす。

嘘で塗り固められてる指揮官を嘲笑うかのように不敵な笑みを浮かべる。

 

「まぁ、そうなりますね。正直、公式に出回っている情報は全部嘘だと判断して良いでしょう。」

 

二ーミは掛けていた眼鏡を取った後、眼鏡のレンズを布で綺麗に拭く。そして使った布を綺麗に折りたたみ、眼鏡と一緒にポーチに入れる。

 

「そしてあの艤装...もしかしたらアズールレーンの上層部も一枚噛んでいるのかも。」

 

ヒッパーの意見に鉄血の一同は頷く。

確かにここまで嘘の情報をでっち上げ、あまつさえ優海の艤装を隠していたとすると間違いなく、アズールレーンの上層部も絡んでくる。

現に、九代目テネリタス当主である人もアズールレーン上層部の一人なのだから。

 

「ふふ...虚構と空っぽの奏者と言うことか...あの卿は一体どんな破滅のプレリュードを指揮するのだろうな?」

 

ツェッペリンは持ってる杯に残ってる酒を一気に飲み干す。

指揮官の未来がどう転ぶか肴にして夜空を見上げながら酒に酔いしれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_現時刻 ????

 

「さて、そろそろブラックキューブをオロチに捧げようかしら。」

 

触手の艤装をうごめさせながらオブザーバーはオロチ計画を進めるという。そしてそれを待ってたと言わんばかりに体を伸ばしながら暗闇から姿を表す奴がいた。

ポニーテールで少し紫がかった髪に、丈の短いセーラ服にあるネクタイは黄色く丈が短いせいで腹がモロに見えてる。更にはまた丈が短いホットパンツを履き、セイレーンの中ではかなり人間に近い衣装した奴はピュリファイアーだった。

 

「なぁ、早く私にも戦わせろよ。この新入りばっかり戦わせてよ。こっちは早く血沸き踊る戦いがしたのによ〜!」

 

ピュリファイアーはテンペストに指をさしながら自分を戦わせろと急かす、早く戦いたいのか、少しイラついてるのがこの場にいる者に分かるほどだった。

 

「第一こいつはオロチの予備だろ?もう必要ないだろ?」

 

ピュリファイアーはテンペストに聞こえるようにわざとらしく大声をだしテンペストを挑発する素振りを見せるがテンペストは興味無いように無反応を示し、ピュリファイアーはその反応が気に食わなったかのか舌打ちをする。

 

「そうね...この子とあの子はオロチをより強力にさせる為の予備だった...でも二人ともオロチを超える力をとっくに備わっているのよ。」

 

「はあ?」

 

ピュリファイアーは呆気に取られたような反応をし、それを見たテンペストはピュリファイアーを逆に挑発するように肩を叩く。

 

「まぁ、お前らみたいな下層端末如きなら瞬殺出来るんだがな。」

 

「あぁ...?あんたさ...あまり調子に乗るなよ?」

 

ピュリファイアーはテンペストの手を振りほどきお互い睨み合う。

その間には火花が散っているのだろう。今からでも戦闘が始まる雰囲気の中、オブザーバーは焦ることもせずただいつも通りクスリと小さく笑ってこの場を宥める。

 

「大丈夫よ。貴方は二日後、目いっぱい暴れさせてあげるわ。まぁ、この子と一緒にだけどね?」

 

「ケッ!私だけでも良いのによ。あーあ...しらけた。もう良いよ。」

 

ピュリファイアーは欠伸をしながら家に帰るようにこの場を去った。

テンペストもこの場を離れようとするがオブザーバーの触手によって道は塞がれ、離れようとも離れない状況になった。

 

「なんのつもりだ。」

 

テンペストはオブザーバーをやめろと言わんばかりの目付きでオブザーバーを睨みつける。その目付きだけで人が殺せそうな殺気を全面的に出しているオーラにオブザーバーの反応は変わらなかった。

 

「まぁ怖い。...零に会ったそうね。何を話したのかしら、私の管制外の出来事だから気になっちゃって。」

 

いつものにやけ顔とは裏腹に明らかに声色が真剣だった。

 

「別にそんな大層な事は話してない。」

 

「あら、つれないわね。貴方は私が手塩をかけて育てたから少し妬いちゃうわ。」

 

薄っぺらい嘘だらけの声色を聞いてテンペストは溜息をつく。

そんなテンペストを見てオブザーバーはまたクスリと笑う。

飄々な態度のオブザーバーにテンペストは苛立ちを覚える。

 

「別にお前に育てて貰った覚えは無い。早くこの触手どけろ、潰すぞ。」

 

テンペストは本気だった。今すぐにでも触手をどけないと跡かともなく触手は切り刻まれてしまうだろう。

オブザーバーは素直に通路を塞いでいた触手をどかした。

 

「そういえば貴方、名前はどうするの?KAN-SEN達からは【テンペスト】って呼ばれてるけど...それとも【マーレ】って呼んだ方が良いのかしら?」

 

「名前はもう決めてある。...後、マーレは辞めろ。」

 

テンペストは本当の親に付けられた名前を呼ばれ、昔を思い出す。

暖かく、幸せで、そして何もかも失ったあの過去が蘇る。

それを振り払うように今はただこの場を離れる。

 

「もうあんな事が無いように...誰もが幸せになれるように...」

 

テンペストは口癖のように自分の目的を呟く。

それは紛れもなく純粋な願い。誰もが幸せに生きられると言う優しい願いをテンペストは唄う。

 




今日は見回りついでに戦術教室に行った。
ここはいわばKAN-SEN達の学校みたいな物であり、KAN-SEN達個人の長所を伸ばすことを目的として設置されたらしい。
因みに講師はラングレーとレンジャーらいし。うん、適任すぎる。
中の様子を見ようと戦術教室のドアを開けようとしたら突然上から黒板消しが落ちてきた。
チョークの粉が俺の周りを舞って頭も少し白くなってしまった。
この時はサラトガのイタズラと思ったが違った。
今回の犯人はユニオンのシムスだった。
シムスはイタズラを成功させて満足なのか特徴的に笑いながら逃げていった。
しかし、それを見たラングレーは自前のチョークをシムス目掛けて投げた。
チョークはまるで槍のように凄まじく風をきり、そしてシムスの頭に直撃する。相当痛かったのかシムスはその場に倒れ込み、ラングレーに連行された。
いやぁ、見事なチョーク投げたった...怖かったけど。

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