もしもアニメのアズールレーンに指揮官が出てきたら〜2nd season 海上の誓い〜   作:白だし茶漬け

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最近、課題とか多くなってきたので投稿ペースがガク落ちします。
何とか頑張って週一のペースを保ってみるのでどうかこれからもよろしくお願いいたします。


同名とライバルと個性と

第36話【同名とライバルと個性と】

 

窓越しの太陽の光のせいで目をあける。真っ白で知らない天井がそこにはあった。

いつの間にか俺は、腕に点滴と柔らかいベットの上にいた。

重い体を点滴が外れないようにゆっくりと起きあがらせ、周りを見渡す。辺りは白い壁に見た事ないが綺麗な装飾に壁に一つの絵があった。肖像画という物だろうか誰かの絵が描かれていた。その人はまるで...

 

_おや、ようやく起きたのですか。おはようございます。

 

ドアが開いた音と低い男の人の声が聞こえた。

声がした方向に振り向くと、そこには顎を囲むほどの髭があるにも関わらず、貫禄のある顎髭を生やしていて、眼鏡をかけていた男性だった。顔のシワとかを見ると50歳あたりだろうか。その人は笑いながら俺がいるベットまで歩く。

そして俺はその男が言った「ようやく」と言う言葉が引っかかる。

ようやくということは俺は何日か眠っていたのだろうか?

 

ようやくって...俺はどのくらい寝ていたのですか?

 

俺は敬語で尋ねると、男はベットの近くにある椅子に座ってから答える。

 

_三週間です。

 

三週...!?

 

三週間って...ほぼ一ヶ月じゃないか...俺はその驚きを隠せずに動揺すした。

 

_一時はどうなるかと思いましたよ。まさか海に人が浮かんでいるとは...名前は?

 

男は動揺している俺に名前を尋ねてきた、名前を尋ねられたせいか、少し俺は落ち着きを取り戻し素直に答えた。

 

天城...優海です。

 

_ゆう?どんな字で書くのですか?

 

俺は書くための紙とペンを探した。しかし、そんなもの無くどうしようか困っていた時、その人は俺が探している物が分かっていたように紙とペンを俺に渡す。

感謝の一礼をしてから紙とペンを受け取り、自分の名前を書く。

優しい海と書いて【優海】俺が唯一無くさなかった物だ。

名前を書いた紙をその人に渡すと、その人は驚いたような表情をする。

 

_顔が似ているだけでは無く、まさか名前が同じとは...これは何かの運命なんでしょうかね...

 

何を言ってるのか分からず首を傾げる。そんな置いてけぼりな状態を察したのかその人は肖像画に顔を向けながら話す。

 

_あの人は私の息子...マーレです。貴方にそっくりな顔で驚いたでしょう。私も驚きました。まさか息子にこんなに似ているとは...世の中には似たような顔の人が三人いると聞きますが、本当だったとは。

 

その人は小さく笑った。しかし、それはまるで悲しさを紛らわしているかのようだった。

俺は肖像画を見る。確かに俺によく似ていた。違う点と言えば髪の色だけだろう。俺は黒で少し蒼みがかった髪に対して、マーレっていう人は青髪に少し白みがかかった髪だった。

 

_それに名前が同じ...私たちの性、【テネリタス】は優しさという意味であり、息子の名前の【マーレ】は海という意味を込めてつけました。

 

優しさに海...それは紛うことなき俺と同じ名前だった。

名前が同じ事はいざ知らず、顔まで似ているとなると驚きが隠せなかった。俺はその人に興味を持ち始めた。

 

あの...そのマーレさんは何処に?

 

_...セイレーンの侵攻により、亡くなりました。今生きていれば15ですね...

 

あ...その、ごめんなさい...

 

驚きと申し訳なさが入り交じり、歯切れの悪い謝罪をして顔を俯かせる。まさか亡くなっているとは思わなかった。15歳...俺と5歳の差だ。

 

_良いんですよ。では、ここから本題と入りましょうか。

 

本題...?

 

_貴方の艤装の件ですよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

重い足取りで何処かに行くあても無いまま、何かを考えながらただ俺は基地内を歩いていた。

 

_貴方は一体何者かしら?

 

きっかけはウォースパイトに言われた言葉だった。

思い返せば、俺は自分の事を分かっていなかった。

豹変する性格に、いつの間にか使えていた艤装...

考えれば考える程分からなくなり、その苛つきを払うように頭を搔く。夜に行われる、ジン達の歓迎パーティまでは相当時間がある。

その間に執務でもしようとしてもその仕事が今日は無い。

何をしようかと頭を悩ませ、気づいたら外のベンチに座っていた。

上の空のまま、基地に咲いている桜の木を見つめる。桜は心地よい風と共に少しづつ風に乗って散っていく。風に乗って空を飛ぶ花びらもあれば、そのまま地面に落ちる花びらもあった。

そんな桜を見ると、重桜にいた頃を思い出してしまう。

あそこも桜が咲いていて、いつも美しい風景を保っていた。

そしていつも一緒にいてくれた人たちがいた。

 

「やっぱり...戦いたくないな...」

 

その本音とアズールレーンの指揮官としてレッドアクシズである重桜と戦わなくてはならない責務が俺の中で葛藤する。

赤城さん達と昔のように居たい。だが、俺を指揮官として認めてくれた人達も裏切る事は出来ない。そんな自分の脳内会議は結局意見は決まらずに崩壊した。

俺は何も考えずに空を見上げた。

 

「はぁ...」

 

「そんなにため息をつかれると幸せが逃げてしまいますよ?」

 

右から聞こえた女性の声に反応して俺は右を向くと、そこには一人ではなく、二人のKAN-SENがいた。一人は長い金髪に白いタイトスカートの軍服長いストッキングを履いており、もう一人はもみあげ部分だけが肩まで届いている銀髪のショートヘアーにウエストニッパーを兼ねた黒のトップスにニーソックス吊りを兼ねたミニスカートにノースカロライナと同じ軍服を羽織ったKAN-SENがこちらに近づく。

確か、金髪の方がノースカロライナで銀髪の方がワシントンだ。

ノースカロライナは挨拶代わりに笑いながら右手を小さく手を振る。

俺はベンチに持たれた体を起こし、二人の方を見る。

 

「ノースカロライナか、この基地にはもう慣れた?」

 

「えぇ、皆様のおかげで慣れてきました。それより指揮官、私の事覚えてくれてるなんて、指揮官もやりますね。自慢じゃないけど、私、自分の存在感の薄さには自信があったのに。」

 

「何故それを自慢するんだ...まぁ、とにかく座って。」

 

俺はベンチの左端に移動して二人が座れるスペースを作る。

二人は甘んじてベンチに座った。位置はノースカロライナは俺の隣に、ワシントンはノースカロライナの隣、つまりは右端だ。

二人がベンチに座ったのを確認してから俺たちは話を続ける。

 

「存在感が薄いって...どうしてそんなに自分を卑下するんだ?」

 

俺から言わせてみればノースカロライナは充分存在感があるが...当の本人がそれを認めていなかった。

ノースカロライナは右手の人差し指で小さく頬を掻きながら小さく笑いながら話してくれた。

 

「私、参加した戦闘では特筆した戦果がありませんでしたから。」

 

ノースカロライナは笑ってそう言ったが、何故だかその笑顔が悲しく感じた。

しかし、ノースカロライナはバトルスターと言う、ユニオンにおける戦闘勲章を15個も手にしている。決して存在感が薄い訳では無い。

その事も姉妹艦であるワシントンも承知していた。

 

「でも姉貴...だからってバニーガー...ムグッ」

 

突然ノースカロライナがワシントンの口を右手で塞いだ。余程の力を込めて口を塞いでいるのか、ワシントンが苦しそうにワシントンの腕を叩いてきながらもがいていた。

 

「指揮官、今のは聞かなかった事にしてください。」

 

そんなワシントンを無視して、俺に詮索をしないようにと警告するような笑顔のまま体ごとこちらに近づく。ノースカロライナとの距離が一気に縮まり、ノースカロライナの開いた胸元も視界に入ってしまう。俺は胸元を一瞬だけ見ると、ノースカロライナの服には確かに中に何か着込んでいた。しかし、このまま詮索するのは危険と感じ、俺はこの事を忘れるようにした。

ワシントンもそろそろ限界なのかさらに強くノースカロライナの腕を握ったり叩いたりしていた。ノースカロライナも流石にやりすぎだと思ったのか、ワシントンの口を塞いでいた手を離した。

 

「ぷはっ、ぜぇせぇ...姉貴、力入れすぎ...」

 

「ワシントンがあんな事いうからです。」

 

ワシントンは荒い呼吸を続け、息を整え続ける。余程の力で口を塞がれたのかワシントンの口の周りには少し手の跡が残っており、未だに息を整え続けていた。そんなに他人に知られたくない秘密なのだろうか。

ノースカロライナは俺との距離をおいてからコホンと咳払いをする。

 

「まぁとにかく、こんな無個性な私ですので、指揮官のような主人公属性や二重人格等の個性があって羨ましい限りです!」

 

「え?えぇと...ありがとう?」

 

ノースカロライナは目を輝かせながら俺を見つめる。褒められてるのかどうか分からず、取り敢えずはお礼を言う。ようやく息を整え終わったワシントンがようやく会話に入ってきた。

 

「はぁ...はぁ...姉貴はいつもこうなんだ。自分に個性とか無いとかそんな事言ってるけど、そんな事無いとは思うんだけどなぁ。姉貴は全部そつなくこなしてるし。」

 

ワシントンは足を組んで髪をいじりながらそう言う。

成程...つまりは全てそつなくこなしてるからこそ特徴が少ないと言う事だろう。非の打ち所が無い万能タイプみたいな物だ。

個性が無いと言っていたが、これでも充分個性的だと言えるだろうに。しかし、当の本人は納得がいかない様子だった。

 

「でも、他の艦はみんな可愛くて魅力的じゃないですか。それに、私には目立った戦果や特徴も無い。バトルスターだって私だけの力で貰ったものでもありませんし...」

 

「え?ノースカロライナだって充分魅力的だと思うけど...」

 

「へ?」

 

ノースカロライナは驚いたようにこちらに顔を向く。少し顔が赤くなっていたことに、俺はそれを気にせず話を続ける。

 

「その手入れが行き届いている綺麗な金髪に、ワシントンが言っていた全部そつなくこなす...前の戦闘でそれは分かっていたよ。」

 

ノースカロライナは前の戦闘で俺の指揮通りに動いていたにも関わらず、対空砲撃や敵艦の沈黙、全て完璧にこなしてくれていた事は全部見ていた。

俺はそれに飽き足らず、さらにノースカロライナの褒めちぎった。

 

「それに個性が無くたってそれが全部じゃ無いからさ。それにノースカロライナだって皆に負けずに綺麗なんだから、もっと気楽に考えたらいいんじゃないか?」

 

俺は言いたい事を言い終えると、ノースカロライナは何故だか顔を手で覆い隠していた。

 

「あぅ...も、もう良いです!では私はこれで!」

 

ノースカロライナは顔を真っ赤にしながらベンチから立ち上がってそのまま猛ダッシュでここを離れた。あまりの速さで、地面に落ちていた桜の花びらも一緒に宙を舞い、僅かな虚無感に俺とワシントンは浸っていた。

 

「あー、指揮官?もしかして姉貴の事を口説いていた?」

 

「いや全然。本当の事を言っただけだけど?」

 

口説きなんてそんな芸当俺には出来るわけが無い。するとワシントンは顔を手に当てて顔を手であげる。まるで「本当に?」と言ってるような感じだった。ワシントンは大きく息を吐いて、ノースカロライナが離れたことにより空いたスペースを詰めるように、ワシントンが近付いてきた。

 

「まぁ、ありがとうな。姉貴、個性に関しては気にしてたからな。あ、ちょっと耳貸してくれ。」

 

俺は耳を貸してくれと言われ、右耳をワシントンの口に近づける。

充分に近づかせた後、誰にも聞こえないように、俺にだけ聞こえるように耳打ちの体制になる。

 

「...実はさ、姉貴の服の中に着込んでいるの、バニーガールの服装なんだぜ。」

 

衝撃的すぎる事実だった。え、あんな清楚な塊みたいな人が中にバニーガールの服着てるの?何で?そんな俺の考えが読めていたかのようにワシントンは何故、ノースカロライナがバニースーツを着込んでいた理由を教える。

 

「姉貴の無個性を卒業する為に...色々と試行錯誤した結果があれ。

それ以降は何やら色々と着込んでるらしい...」

 

「えぇ...そんなの充分個性的だろ....」

 

無個性と言いながらも充分個性的な行動をしていたノースカロライナを思うと、俺とワシントンは面白おかしさで笑ってしまう。

 

「さて、私もバレるとまずいからさっき言ったことは内緒な?じゃ、姉貴を追いかけるからこれで。」

 

「あぁ、ノースカロライナの事をよろしく。」

 

ワシントンはノースカロライナを追いかけるように後を追う。

そしてワシントンの姿が見えなくなり、俺はまた虚無感に浸る。

そして、俺はまた自分が何者かを考え続けた。そしてさっきの話を思い出すように呟く。

 

「個性か...俺自身の個性って何だろうな。」

 

俺自身...【マーレ・テネリタス】としての自分では無く、【天城優海】としての自分を再確認する。【マーレ】として生きてきた俺に、果たして【優海】としての自分があるのかどうか、自問自答で答えを探す。

 

「その人として生きてきた俺に、何かあるのか...?」

 

たどり着けそうに無い答えを探すのに疲れ、俺はベンチから立ち上がると突然声をかけられる。馴染みある男の声...あいつしかいなかった。

 

「ようマーレ!ここに居たのか。」

 

声の主はジンだった。ジンは手を振りながらこちらに走って向かってくる。俺は、ジンがシェフィールドのゴム弾を二発連続頭に撃たれた事を思い出す。さっき見たジンは気絶しながらシェフィールドに何処かに連れ去られていたので、まずはジンの容態の確認をする。

 

「ジンか。頭は大丈夫か?」

 

「それが外傷の意味なら大丈夫だ。それよりさ...」

 

良かった正常な様だった。俺は安心をしたが、ジンの次の言葉により俺の安心は消え去った。

 

「今から、風呂覗きに行かね?」

 

「大丈夫じゃないな。」

 

「まぁまぁ!ほらほら、天国覗きに行こうぜ!」

 

天国に逝きかけた奴に言われたくは無いが、俺の抵抗も虚しく、ジンは俺の軍服の裾を引っ張り、俺を引きずりながら風呂場へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん...はぁ...凄く良いお風呂ですね。」

 

お湯の熱さで中は白い湯気に包まれながら、それに交じるように熱い吐息を吐く一人の女性がいた。その女性の素肌は雪のように白く、髪もまたそれに合うように白い。

 

「そうね。ほら、リフォルもこーんなに綺麗になってる。流石はメイド長ね。」

 

クリーム色の髪を束ね直した後、近くにいたリフォルを自分に寄せる。リフォルは無気力にお湯に浮かべられながらリフォルに身を委ねる。

 

「あー...KAN-SEN達の話を聞く気力も洗い流された...」

 

リフォルは力尽きるように仰向けに浮かぶ。それにより、リフォルの素肌は隠すべき所を隠さずに全てをさらけ出していた状態になっていた。

 

「あ、こら!みっともないわよ!」

 

リアはそれに気づいてリフォルに注意をするが、リフォルは聞く耳持たずにそのままお湯に流されていく。それを見たリアは諦めがつき、温泉をじっくり楽しむ事にした。

しかし、リアはある事が気になっていた。リアは他に入っているKAN-SEN達を凝視する。そこは人間ではありえないほどの豊満な胸がいくつも浮かんでいた。それに気を取られ、リアは自身の胸を寄せては掴む。リアも無くはないが、標準的な大きさだった。リアはKAN-SENとの差に深く落ち込み、熱いため息をつく。

 

「やっぱり...皆さん大きいですよね....」

 

「ひゃぁ!?ネージュ!?な、何が大きいの!?」

 

リアは水流のようにゆっくりと出てきたネージュに驚きながらも、質問に知らんぷりを貫こうとするが、ネージュの目は全て分かっているような目をしていたので、潔く考えていた事を話した。

 

「ま、まぁ。人とKAN-SENは違うから、気にする事は無いわ!」

 

「でも、マーレ君とジンさんも大きいのが良いのかな..?」

 

「な、何でアイツらが出てくるのよ!?」

 

リアは体を跳ね上がらせながら風呂の湯が沸騰しそうな程に顔を赤くさせ、リアは湯の中に潜る。そしてまるで沸騰しているかのようにリアが潜ったところはブクブクと泡が出てくる。

そして息が続かなくなったのか、勢いよくリアは湯から顔を出す。

リアが息を整え終わるのと同時にネージュは言葉を継ぐ。

 

「だってマーレ君はあんなにも魅力的なKAN-SEN達と一緒に過ごしているから...きっと....」

 

ネージュは周りのKAN-SENを見る。理想的な容姿に、理想的な体。

少なくともネージュはそう思っていた。

そんな思いもあってか、ネージュは一層KAN-SEN達のことを羨やみながら、自分の体を見る。ネージュは自身とKAN-SEN達の差を再確認させられ、また大きい溜息をつく。

 

「あらあら、そんなにしょげていたら折角の美人が台無しですよ?」

 

温泉内に充満している湯気の中から、現れたのは先程リフォルの手入れをしていたベルファストだった。

ベルファストは体に巻いていたタオルを畳むと、即座に温泉に入るとネージュの隣に移動しようとする。

 

「お隣、よろしいでしょうか?」

 

「は、はい。どうぞ...」

 

ネージュの許可をとり、丁寧に一礼してからネージュの隣にベルファストは移動した。

ネージュは隣に来たベルファストをまじまじと見つめる。

手入れの行き届いていている艶やかな長い雪のような白髪に、湯に浮かんでいるような豊満な胸に、細い体。そして、先程見せたメイド長にの名に相応しい完璧な奉仕。ネージュは自分の同じ髪色をしたベルファストを見て、ますます自分との差を感じさせる。

ネージュは小さい好奇心からあることを俯きながら尋ねる。

 

「ベルファストさんは、マーレ君の事をどう思ってるのですか?」

 

ネージュは、恥ずかしさを紛らわせるように湯の中に沈んでいる指を弄りながら、ベルファストに尋ねる。

ベルファストは想定外な質問に少し驚きながらも即座に答えた。

 

「ご主人様はとても素晴らしいお方です。メイドとして、私は幸福でございます。」

 

「そうじゃなくて...!」

 

ネージュは自分の求めているとは違う意図の答え方に不満を持ち、ベルファストとの距離を縮める。

ベルファストはネージュの顔を見て、ネージュが求めている事を察した。ベルファストは一瞬考え、心の準備をするかのように深呼吸をする。ベルファストは高ぶっている鼓動を抑えながらも、感じるかのように胸に手を置く。そして深呼吸を終え、ベルファストの口が言の葉を継ぐ。

 

「ご主人様の事を...お慕いしています。メイドしても...一人の女性としても。」

 

「っ...!」

 

それはネージュにとってライバルの出現だった。

ネージュはマーレの事を好意に思っていた。幼い頃から、彼と過ごした日々は愛しかった。彼の優しさ、彼の海のような心がネージュは心奪われた。

しかし、それはこの基地にいるKAN-SEN達もそうであった。

ネージュやベルファストのようにマーレに恋焦がれているKAN-SEN達は少なくは無かった。KAN-SEN達もネージュと同じように、そんなマーレを慕っていた。

ベルファストもそれは承知していた。

 

「ですが、それは皆様も同じ事...ここにいる艦の皆様もご主人様の事を少なからず思っているのでしょう。」

 

「モテモテなんですね...マーレ君は。」

 

「はい。とても節操無しな、悪いご主人様です。」

 

言葉とは裏腹にベルファストは小さく笑った。もし、この事をマーレに知られたら、彼はきっと大いに悩むのだろう。だからこそKAN-SEN達は敢えて言い出さなかった。その悩みが彼にとって苦しみになるのなら、言い出さないことにしよう。それがKAN-SEN達の間では暗黙の了解となっていた。

その事に僅かな燻りがあるのは間違いない。だが、今のKAN-SEN達は指揮官、マーレと過ごせる事が何よりも幸福に感じている。その幸福が燻りを紛らわせている。それで充分なのだから。

 

「ネージュ様はどのように思っているのですか?」

 

ネージュはそう言われ、昔を鮮明に思い出すように目を閉じる。

暗闇の中、ネージュはマーレとの思い出を語る。

 

「マーレ君は昔から本当に優しかったんです。困っている人は放っておけなくて、人と関わるのが苦手だった私の事も何度でも助けてくれたりして...」

 

ベルファストはネージュの昔話に耳を傾ける。そしてそれは、数少ないマーレの過去を知れる良い機会でもあったからだ。

マーレは自身の過去を語ろうとはしなかった。だから、KAN-SEN達はマーレの事をあまり知らないのだ。今基地にいる中で最もマーレの事で知っているのは、昔から過ごしているネージュだった。

ベルファストはそんなマーレの事を知れる好奇心を自分の中に疼きながらも、しっかりとネージュの話を聞く。

 

「マーレ君は天体観測が趣味で、星が綺麗に出てた日はいつも夜空を眺めていたのですよ。それに、世界を渡り歩くのも好きで色んな陣営の所にも行っていたのですよ。....だからあんな事になって...」

 

急にネージュの歯切れが悪くなり、ベルファストはネージュを気にかける。ネージュは言い出そうか迷っていたが、決心したように頷き、言葉を続ける。

 

「もう、十年前ぐらいの話になります。マーレ君はその時、セイレーンの侵攻に巻き込まれて...お母さんを亡くしました。」

 

ベルファストは言葉を失った。浸かっていた湯が一瞬で冷めたような気もした。当然、そんなこともなく湯は冷めること無く、ちょうど良い温度を保っていた。ネージュはベルファストの様子を伺いながら、続ける。

 

「何とかマーレ君は生き延びました。...そういえばあの頃から二重人格のような物が出てきたような気が....」

 

「それは、戦闘中で出てくるもう一人のご主人様の事でしょうか?」

 

ネージュは力強く頷いた。ネージュは軍学校時代のマーレが戦闘訓練中で豹変する所を、ベルファストはあの時、マーレを奪還する作戦の時に、セイレーンに破壊されたあの島で豹変状態の指揮官を見ていた。

この時、ベルファストにある考えがよぎる。

もしもこの時から既に艤装が使えていたのだとしたら?

少なくとも、マーレはその襲撃から何か変化していた。性格の豹変は勿論の事、艤装もその時にセイレーンに改造されていたのだとしたら?

 

「その襲撃から、ご主人様が見つかった時にかかったお時間は?」

 

「ええと...三年です。そして意識が回復したのは見つかってからその三週間後です。」

 

三年...その空白の時間にセイレーンから何かしらされた可能性があった。事実、マーレは艤装を使えていたのだ。それもセイレーンの艤装を。間違いなく関わっているのは確かだろう。

そして、そのせいでマーレは味覚を失っていた。ベルファストは静かに怒りを灯していた。もしそれが事実ならばベルファストはセイレーンを許さないだろう。人にこんな残酷な改造をしたセイレーンを。

 

「ベルファストさん?どうしましたか?」

 

ベルファストの静かな怒りを近くにいたネージュは少しだけ感じた。

ベルファストは直ぐに怒りを静めさせ、いつものように振る舞う。

 

「いえ、何でもありあません。では、ご主人様の事、お互い頑張りましょう。」

 

ベルファストはネージュに対して不敵な笑みを浮かべた。

ネージュはそんな挑発的な態度を受けて、さらにベルファストをライバル視した。

 

「ま、負けませんからね!」

 

ネージュとベルファストの間には火花が散っている様に見えたのは、一人でネージュとベルファストの事を見届けていたリアだった。

 

「...純粋ね。」

 

「リアもね〜」

 

突然後ろからリフォルが現れ、すかさずリアはリフォルから離れる。

そしてリフォルを注視をすると、リフォルの胸に注目した。

いつもは主張が少ない胸だが、改めて見るとリフォルも中々の持ち主だった。

 

「き、着痩せするタイプだったのね...それにしても、グヌヌ...何で二人ともこんなにも大きいのよ...」

 

リアはリフォルとネージュの胸を交互に見る。二人に比べ自分の胸が控えめである事に差を感じ、そのままお湯に溶け込むように顔を沈める。

 

「でも、リアも中々大きいよ?」

 

「貴方みたいな化け物の持ち主に言われると腹が立つのよー!」

 

リアは涙目になりながら八つ当たりするようにお湯を何度も強く叩く。そして、それは温泉内に響き渡ったのであった...

そしてそれに合わせるように、浴室の外にも響き渡る声を出した人物がいた。

 

 

 

「くっそぉぉぉぉぉぉぉ!この風呂場、ガードが固い!」

 

ジンは大声をだしながら、膝まづいて悔しみを右手に込めて思い切り床を叩く。

俺(巻き添え)とジンはこれまで浴室を覗こうと色んな所に回った、例えばボイラー室に行こうとしても、他のメイドが居たので覗く事は出来ない。換気用の窓から覗こうとしても道具が無いと届かない高さなので断念。それが今まで続いて、今は浴場のドアの前に俺とジンはいる。

 

「なぁ、もうこんな馬鹿げた事は止めよう。こんな事しても誰も幸せになんかなれやしない。」

 

流石にこれで諦めがつくだろうと俺はジンの肩を掴む。

というか本当に止めて欲しい。

ジンは俺の手を退けて力無く立ち上がる。ふらつきながらも何とか立ち上がる姿から諦めがついたかと思えたが、ジンは浴室の扉を手にかけようとした。俺は瞬時にジンのやる事を察知し直ぐに止めさせようとする。

 

「お前っ!馬鹿やめろ!そんな事したらお前は!」

 

ジンは俺にゆっくりと振り返りながら悔いのない笑みをこちらに向ける。

 

「良いかマーレ..男にはなやる時はやっとかねぇとカッコつけられないんだよ。どうせならカッコよく生きていきたい...そうだろ?」

 

「いや今お前がやってる事、最低な行為だからな!?だからその手を離せ!今なら間に合う!」

 

しかし、俺の言葉にジンは聞く耳を持たなかった。

ジンはそのまま扉に手をかけていざ開こうとしていた。

 

「じゃあな...マーレ。」

 

「やめろぉぉぉぉ!」

 

ジンがいざ、扉をスライドして開けようとした瞬間、一人の女性が俺たちの間に現れた。

そいつは金髪の短い髪に、赤い目と赤い貴族服を着ていた、プリンス・オブ・ウェールズだった。

 

「あら、指揮官。どうしたのかしら、浴室の前に立ち止まって。」

 

「あ、あぁ。ジンが浴室を....」

 

俺はジンを指を指そうとしたが、浴室の扉の前にジンは居なかった。

突然消えたジンを探すと、いつの間にか俺の後ろの壁にもたれかかっていた。

流石に見られる訳にはいかないだろうと思ったのか一瞬で扉の前から後ろの壁に移動したのだろうか。なんて早業だ。いや、そんな事はどうでもいい。今、この状況はまるで俺が風呂にでも入りたいと言ってるようなものだった。俺は何とか言い訳を考えようとしたが上手い言い訳が思いつかなった。

 

「指揮官...貴方もしかして...」

 

「いや、違うんだウェールズ。これはジンが...」

 

ウェールズが目を細くさせてこちらを見る。俺は真実を口にしようとしてジンが覗きに行こうとした事を話そうとするが、そのジンが知らんぷりを貫くが如く、口笛を吹いている。

元はと言えばお前が元凶のくせに...!俺はジンへの怒りを灯しながらもウェールズの相手をする。そしてウェールズが一つ咳払いをした後、ウェールズの口が開く。俺は濡れ衣を着る覚悟を決め、目をつぶってウェールズの言葉を聞く。

 

「指揮官、貴方また(・・)この時間帯の浴室に入りたいのかしら?」

 

「へ?」

 

「ん?また...?」

 

俺は呆気に取られ、ジンはウェールズが言った「また」という言葉に引っかかっていた。そんな俺たち二人を気にもとめようとせずウェールズは小さく笑って話を続ける。

 

「確かに、最近色んなことが起こって大変だからな。指揮官をリラックスさせたいが...今は貴方の友人が入っている。彼女たちから許可を出ることは無いだろうから、また時間を改めて来ると良いだろう。

...それに、もういちいち確認を取ろうとしなくも皆は貴方の事を信頼している。安心して好きな時間に入ってくれ。」

 

ウェールズはそう言いながらこの場を離れた。何か誤解を生んだような気がしたが、それとは別にここを切り抜けた安堵で俺はそのまま倒れ込んだ。しかし、直後に後ろから殺気を感じた。

その殺気は間違いなくジンから出ていた。ジンは揺らめきながら俺に近づいて行く。

 

「マーレ...お前、KAN-SEN達と一緒に風呂に入っていたのか...?」

 

謎の殺気と威圧感のせいかジンの声がさらに低く聞こえる。

俺はジンの問に嘘偽りなく答えた。

 

「あ、あぁ。俺が両足を負傷した時があってな、さっきのウェールズが付き添いで一緒に入って...それで他のKAN-SEN達と風呂に入る時間が被る事が多かったからそれで」

 

俺の言う事を最後まで聞かずにジンはいきなり俺に向かって右アッパーを仕掛けてきた。俺は目の前の拳を避けると、倒れ込んだ体を起き上がらせるために、一旦ジンから距離を置くため、体を転がせ、ジンに離れた後に体を起こす。

 

「いきなり何するんだよ!」

 

「うるせぇ!この全世界の男の敵がぁぁ!」

 

ジンからの殺気はますます高まっている事を感じ取り、俺は警戒態勢をとる。

間違いなくこの殺気は俺に対して発しているが何故だか理由は知らない。俺は先ずそれ探ることにする。

 

「なぁ、俺なんかお前になんかしたか?」

 

「きまってんだろ!お前があんな美人達と一緒に風呂に入った事だろうが!」

 

「えぇ!?それ!?」

 

ジンは一気に俺との間合いを詰めると右ストレートで仕掛けてくる。

これ以上面倒事を避ける為に二発でジンを仕留める事にする。

俺は全神経を集中させ、ジンの一撃を見極める。

集中しているせいか辺りがスローモーションに見える。ジンがゆっくりと右ストレートを俺の顔面に当てようとする。俺はその右手を受け流すように、右に体を避けながら左手でジンの右手首を掴む。

その後、右肘でジンの腹に一発、カウンターを喰らわせ、ジンは無防備だった腹を攻撃されそのままよろめく。その隙を俺は逃さず、最後に右足で蹴り飛ばす為、俺は体を時計回りに回転し、その遠心力で俺は回し蹴りをジンの腹にまた喰らわせる。

 

「ぐはぁぁぁぁあ!」

 

俺の回し蹴りでジンは吹き飛ばされ、そのまま気絶したように倒れ込む。気絶したか確認する為、ジンに近づいて脈を確認する。

 

「よし、大丈夫だな。ごめん、ちょっとやりすぎた...」

 

俺は気絶して聞こえるはずがないジンに謝った後、ポケットから携帯を取り出し、直ぐにヴェスタルに連絡を入れた。

 

「あ、もしもしヴェスタルか?ちょっと急患がでたから介抱してくれ。うん、場所は浴室前ね。」

 

『はーい。直ぐに行きますからちょっとまってて下さいね〜。』

 

ヴェスタルからの連絡を切り、これからどうしようか考える。

この後を考えているとこの騒ぎに気づいたのか数人の足音が聞こえて来た。足音がする方向に顔を上げると、そこにはリア、リフォル、ネージュがいた。

 

「マーレ...って何でジンが倒れているの!?」

 

「あ〜話せば長くなるけど..」

 

リアはジンの頬をつねったり叩いたりしてジンを起こそうとするが勿論反応は無かった。俺はこれまでの事を話した。話を聞いた3人は納得したように頷いた。

 

「はぁ...こいつ本当に馬鹿...」

 

幼なじみという事が恥ずかしいぐらいといいながら溜息を吐き、顔を手で覆うリア。

 

「自業自得...かな?」

 

ごもっともな意見を出すリフォル。あとジンの事をつつくのはもう止めなさい。

 

「あ、あのマーレ君はその...KAN-SEN達と一緒にお風呂に入った事あるの?」

 

ネージュはジンの事ではなく、俺に対しての質問をしてきた。

それのどこが気になるのかは知らないが、俺は包み隠さず本当の事を話す。

 

「まぁな...俺が両足使えない時に、ちょっとあって...あ、でも素肌を見る訳にはいかないからちゃんと目隠しとかしたぞ?」

 

「へぇ...そうなの。」

 

「なんか怒ってる?」

 

「怒ってないです...」

 

ネージュは俺から体ごと逸らし、そのまま目を合わせなかった。

しばらくするとヴェスタルが担架を持って現れてきた。

ヴェスタルは担架を広げてそのままジンを乗せる。

 

「それじゃ、指揮官も手伝ってもよろしいでしょうか?」

 

「あぁ。任せてくれ。」

 

俺はヴェスタルと一緒に担架を持ち上げ、そのまま医務室へと向かう前に、ネージュ達と一旦別れの挨拶を済ませる。

挨拶を済ませた後、ヴェスタルに合わせるように足を動かす。

 

「そういえば、指揮官はこの後何かご予定とかあるのですか?」

 

ヴェスタルが歩きながら俺の予定について尋ねてきた。

 

「この後、新しく来たイントレピッド達に会おうと思ってる。まだ挨拶済ませてないし...明日の事もあるからな。」

 

明日の事とは、俺の全てを話す日と俺の命運が決まる日でもある。

俺の全てを話した後、俺の処遇、指揮官と見るか、セイレーンとして見るか、それそれ以外か...もしも指揮官として見れない奴が一人でもいれば俺はそいつに沈めてもらうことになっている。

これは新しく来たあのKAN-SEN達も例外では無い。その事を伝えなければ、混乱を招くはずだと思い。今日中に会うことにする。

 

「大丈夫ですよ...私達は指揮官の味方です。」

 

ヴェスタルは優しい笑顔で俺を見る。その笑顔で少しは明日の不安が和らいだのを感じた。そうこうしていたらいつの間にか医務室に着いたので、ヴェスタルは開けっ放しの医務室に入り、そのままジンをベットに寝かした。

 

「では、後は任せて下さい。」

 

「頼んだよ。ヴェスタル。」

 

俺は医務室から出て、イントレピッド達に会うために彼女たちを探した。




基地内を見回りしていると大講堂の一室で何かをしていた雰囲気がした部屋があった。気になって覗いてみるとそこにはロイヤルのcクラスの駆逐艦、シグニット、コメット、クレッセントがいた。
何をしているの気になって覗いてみると、クレッセントにバレてしまった。
そのまま覗きに対してバッシングを喰らい、説教を10分程受けた。
その後聞いた話、彼女たちはアイドル活動をやっているらしい。
アイドルと言うと、サンディエゴもアイドル活動をしているが、彼女たちは時々、人類に対してアイドル活動もしているらしくファンもいるという。
覗いた時に見たあの頑張っている表情を見た時は彼女たちの本気が伝わって来た。きっと、これからも成長するだろう。

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